- ARTICLESDecember/30/2021
The Best Albums of 2021
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Arushi Jain『Under the Lilac Sky』[Interview]
インド出身、現在はニューヨークを拠点に活動するArushi Jain。〈Leaving Records〉よりリリースされた本作は、複雑な理論を軸に据えたインド古典音楽、ヒンドゥスターニー音楽をモジュラーシンセサイザーを用いることで現代的な電子音楽へと昇華した、深く瞑想的な作品。*本サイトにインタビュー掲載。
black midi『Cavalcade』
UK、サウス・ロンドンのバンド、black midiによるセカンドアルバム。UKの伝統的なポストパンクやノイズを踏襲しながら、鮮烈なジャムセッションが展開され、混沌や破壊、偶然性を想起させるサウンドが奏でられる。
Dean Blunt『BLACK METAL 2』
Dean Bluntによる、2014年の『Black Metal』の続編。90年代後期のアンダーグラウンドヒップホップを、極めて前衛的に再解釈、再構築したアヴァン/エクスペリメンタルな楽曲が詰まったアルバム。アートワークの「2」は、Dr.Dreの1999年のアルバム『2001』のアートワークをサンプリングしたもの。
Dry Cleaning『New Long Leg』
UK、サウス・ロンドンを拠点とする4人組のバンドのデビューアルバム。アートスクール出身らしく、(多数の現代美術をアートワークに起用した)Sonic Youthなど、さまざまなバンドからの影響を感じさせつつ、アルバムは最後まで一貫したスタイルを見せ、彼らだけが持つ独自の雰囲気を纏っている。
Floating Points, Pharoah Sanders & The London Symphony Orchestra『Promises』
Floating Points、Pharoah Sanders、そしてロンドン交響楽団による作品。電子音楽、ジャズ、クラシックが融合する本作は、5年の歳月をかけて完成させたものだという。「音楽、アート、そしてカルチャーというものは生きていく意味を与えてくれるもの、そして、科学は僕たちが生き延びるために必要なものだと思う」と述べる、神経科学の博士号を持つFloating Pointsの一つの到達点。
Green-House『Music for Living Spaces』
LAを拠点とするアーティスト、Olive Ardizoniのプロジェクト、Green-Houseのファーストアルバム。人間と自然のつながりをテーマに制作されたという本作には、Ardizoni自身の優しさやユーモア、喜びといった、極めて繊細な感情と確かなメッセージが表情豊かに表現されている。
Grouper『Shade』
完璧という言葉は、作品について述べる上で使うべきではないものだが、完璧と言いたくなってしまう作品。ノイズと調和、存在や時間、生と死、そしてさまざまなテーゼが混在するなか、Grouperによって精緻に描かれた作品の力強さが際立つ楽曲がそろう。
Helado Negro『Far In』
Helado Negroこと、Roberto Carlos Langeは、南米エクアドル出身の両親の下に生まれ、現在はニューヨークを拠点に音楽活動を行っている。長い活動歴を持つ彼の作品は、ラテンアメリカの陽気さを纏いながら、ニューヨークという都市らしい洗練さ、そして厳しさをその裏側に併せ持っている。
Joy Orbison『still slipping vol. 1』
ロンドン出身のDJ /プロデューサー、Joy Orbisonによるミックステープ。2009年から楽曲をリリースし続ける彼のダンスミュージックに対するこだわりや愛情、地下のダンスフロアから生まれる文化、それらが極めて洗練された形で収録された作品となっている。
JPEGMAFIA『LP!』
ヒップホップよりはラップやノイズと表する方が近い、独創的なサウンドを展開するJPEGMAFIA。本作では、ストリーミングの“Online”ヴァージョンと、Bandcampなどで公開されている“Offline”ヴァージョンという2つのヴァージョンを発表している。Bandcampでは、音楽業界への決別を述べているが、“Online”ヴァージョンであってもその卓越した才覚は、存分に発揮されている。
Kumi Takahara『See-Through』[Interview]
日本のレーベル〈FLAU〉よりリリースされた、Kumi Takaharaのデビューアルバム。クラシックを軸に、現代音楽、アンビエント、電子音楽などさまざまな要素を組み合わせ、幼少期から積み上げてきた極めて高い音楽的知識や技術をもとに、1曲1曲を丁寧に作り上げ、アルバムを通じて、美しく、感情あふれる表情を見せてくれる。*本サイトにインタビュー掲載。
Men I Trust『Untourable Album』
カナダ、モントリオールを拠点とするバンド、Men I Trust。(パンデミックによって)ツアーができない、という意味のタイトルと想像できる本作では、まどろむような幻想的なポップソングが並び、故郷や家、恋愛など、身近な出来事を歌う抽象的なリリックと柔らかいサウンドが、さらに聴く者を夢の中へと誘う。
NTsKi『Orca』[Interview]
京都を拠点に活動するアーティスト、NTsKiのデビューアルバム。京都、マンチェスター、東京といったさまざまな都市での生活から得られた鋭利な感覚をもとに、自身が述べるように、彼女が捉えた“夢”の世界をヒントにリリックにしたという楽曲たちは、幻想的で広大な世界観を描き出す。*本サイトにインタビュー掲載。
박혜진 Park Hye Jin『Before I Die』
韓国出身、メルボルン、ロンドンから現在はLAを拠点とするアーティスト、Park Hye Jin。〈Ninja Tune〉よりリリースされた本作は、美しい旋律で魅力あふれるファーストトラック「Let’s Sing Let’s Dance」から幕を開け、ハウス・ミュージック、テクノ、R&Bなどのトラック、英語、韓国語によるリリックなど、さまざまな要素を混ぜ合わせたまさに現在(いま)を表象した楽曲が並ぶ。
Qrion『I Hope It Lasts Forever』
Qrionは、札幌出身、現在はアメリカを拠点に活動するDJ/プロデューサー。2016年の渡米から5年、deadmau5と同じマネジメントと契約するまでの評価を獲得した彼女にとって、今作は満を侍してのフルアルバムとなる。父親との思い出や日本で家族と過ごしたときの感情、札幌での出来事からの記憶などをインスピレーションに書かれたという本作には、そうした内省的なノスタルジーの感情がフロアに対応したダンスミュージックの中に、静かにそして力強く描かれている。
Satomimagae『Hanazono』[Interview]
〈Guruguru Brain〉とニューヨークのレーベル〈RVNG Intl.〉、そして日本の〈PLANCHA〉からリリースされた本作。東京在住のSatomimagaeは、本作で彼女の目から感じられる身の回りの世界を表現している。その世界観を彼女は、“小さな宇宙空間”と呼び、タイトルにもある花園のように限られた中でエネルギーがあふれるような、まさに全編を通して、“日々に潜む神秘へのオマージュ”が繊細に描かれてる。*本サイトにインタビュー掲載。
Tyler, the Creator『CALL ME IF YOU GET LOST』
Tyler, the Creatorは、コンスタントに作品を発表し、加えて常に文学性にあふれたユニークなアルバムを届け続けている。都市に蔓延する資本主義的な記号が組み合わされたスタイリッシュなスタイルや見えない幽霊のような権威を考慮しても、その作品からは、嘘偽りのないカルチャーの粋が詰まった要素が感じられる。
Wednesday『Twin Plagues』
資本主義が広く蔓延し固定化する世界において、DIYの精神にはさまざまな矛盾が生じる。それでも、その精神は忘れるべきではないだろう。アメリカ、アッシュビルの5人組のバンド、Wednesdayによる本作は、歪んだギターのノイジーなサウンドに甘美なメロディといった、シューゲイザー特有の楽曲に、アメリカの原風景を描くようなアコースティックサウンド、そしてそのミュージックビデオからも、DIYの精神を強く感じさせる。
Yen Tech『Assembler』[Interview]
中国、上海を拠点とするレーベル〈SVBKVLT〉よりリリースされた、Yen Techのセカンドアルバム。テクノロジーに起因する、未来に起こりうる心理状態をテーマとした知的かつコンセプチュアルな本作において、Yen Techはこのサイエンスフィクションの物語を、最新の電子音楽による極めて攻撃的なトラックメイキングで表現している。
Yu Su『Yellow River Blue』
中国出身、現在はカナダのバンクーバーを拠点に活動するアーティスト、Yu Su。今年3月には、日本のアーティスト、Cuusheにもリミックスを提供している。Yellow Riverとは黄河を意味し、2019年に行った、青島からチベット高原最大の都市、西寧まで、中国を巡るツアーをインスピレーションとし、制作されたものだという。中国文化を想起させる要素が散りばめられた電子音楽が収録された本作は、中国のレーベル〈bié Records〉とオランダ、アムステルダムの〈Music From Memory〉からリリースされている。