INTERVIEWSSeptember/14/2013

【Interview】Hercelot(ハースロット)- “Wakeup Fakepop”

///Loctek「HERCELOT」には、アルバム収録曲以外にも多数のHercelot楽曲が元ネタとして利用されている

__制作環境を教えていただけますか。

Hercelot: Ableton Liveですね。僕は元々ACIDでHIFANAを真似をするところから始めたんで、サンプル並べることにしかあんまり興味が無くて。最近はそうも言ってられないんですけど(笑)。「サンプルさえ拾ってこれればいい」って感じで、大層なシンセを使っているわけでもなく。あと、サンプリングをカットするためだけに音楽プレーヤーのランダム再生で上から5曲を持ってきて、DAW(Digital Audio Workstation、楽曲制作ソフトの総称)に貼り付けて、サンプル出来そうな箇所を切って保存するだけの作業を日課のようにやっていた時期があって。それ専用の音フォルダがあって、そこからよく音を持ってきたりします。

__「Dance Music (Hercelot Remix)」のピアニカの音や「Happy ODMC2」のリコーダーの音は自分で演奏されてるんですよね。

Hercelot: そうですね。でも別に僕は演奏者じゃないので、ピアニカの音もワンショットで録って、切り貼りでグルーヴを調整したりしてます。演奏感を出すために演奏していることはあんまりないですね。

__今後の制作予定等を教えていただけますか。

Hercelot: リミックスが幾つか依頼を戴いているのと、ミニ・アルバムを作っていて。そっちは「フェイクポップ」とは別に、…ちょっとフェイクポップについては語りたいことがあるので最後に話すけど(笑)、ちゃんとしたオリジナル・ポップを作らないといけないな、コンポジションに目を向けないといけないな、という気持ちがあって。そのための小作品集を出したいな、と思っています。あと、個人的に童謡を作りたくて、作っています。これは3曲くらいのEPにしようと思っていますが、これは時間をかけて作ります。


ミニ・アルバムの制作がアナウンスされた時に公開された楽曲。

__童謡といえば、Hercelotさんは最近絵本を読んでいますよね。

Hercelot: そうそう、何を思ったか絵本を読み始めて。ゆるい感じの感覚をガシガシインストールしているので、その感じを音楽に出したり。…というか絵本を作ろうとしているんですけど(笑)。でも僕は絵が全然描けないので、絵の練習から始めようかなと。周りに対してカッコつけるのが苦手なので。有名になりたいとかあんまり思わないし、知名度を上げたいとも思わないし。沢山の人を幸せにするよりは、自分の好きなものを数人と共有できればいいや、と、割りとコアな発想で曲を作っているので。もちろん、聞いてくれる人の為に作ることもあるけれど、気負いのない、自分だけに作れるものを優先してやりたいな、っていう。絵本っていうのもそれの延長で、自分の好きなものを作るためにやってるというか。逆の見方をすれば「俺について来い!」だよね(笑)。「あんまりついてこないな」みたいな(笑)、ついてこさせる努力はしてない(笑)。

__でも、本当はそういう人の作品こそフィジカルな形で見てみたい気がします。

Hercelot: 本当は町外のCDショップの中古棚とかに並ばれたいけど、焦ってはないです。人生まだ長いので。ジャン=ジャック・ペリーっていう人がいて、すごい有名な初期電子音楽のアーティストで、有名なのだと「エレクトロニカルパレード」とか。その2000年くらいに作ったアルバムを聞いたんだけど、それで凄く感動して。70歳越えてこんなにサンプリング・ポップが作れるんだ、っていう。人生長いじゃん、っていうポジティブに思ったので、ゆっくり好きなものを作りたいと思います。じゃあ最後に、フェイクポップって言葉について。

__是非、お願いします。

Hercelot: 「フェイクポップ」ってのには2種類の意味があった気がする。一つは「オリジナルポップ」の対義語って意味で、Ikkubaru(〈Maltine Records〉よりリリースしたインドネシアのバンド)のリリースがあったりとか、チップチューンのアーティストは基本みんな自分自身のアイディアを使って作ってるし。自分のオリジナリティを聴かせる音は過剰にさせることは出来ないし、過剰でないからこそ、要素がシンプルになるから、色んな人に聞かれて楽しまれて…っていうオリジナルポップの良さはもちろん凄いよくわかる。でも、そうじゃない音楽もあるんだよ、っていうのを世に知らしめる、ってそんな大層なことじゃないけども。誰かがやらないと誰もやらないよね、っていう気持ちがあったからやりたかった、っていうのが「フェイクポップ」。

あと、ポップを「ポピュラー」って意味で捉えたらこの音楽は全然ポップじゃないんだよ、っていうのを言い訳じゃないけど、使っているっていう。「フェイク」って名乗ってるのは卑下しているわけじゃなくて、「そういう在り方もあるんだよ」って、自分の作品を客観的に見てそう思ったので、そういう風になりました。Twitterとかで(アルバムを聞いて)「この曲可愛い」とか言ってくれる人がいるけど、これのどこが可愛いんだ、っていう(笑)。僕はそういう捻くれ方をして聞いているから。そういう人たちに偽物ってことがばれずに伝わっているならちょっと愉快だな、と。でも、そういう聞き方をしてくれるのは凄く嬉しいですね。

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Artist: Hercelot
Title: Wakeup Fakepop
Label: Maltine Records
cat# : MARU-124
Release date: 2013/08/15
Format : MP3 / 320kbps

1. Wakeup Fakepop (Shortcut)
2. Love You
3. chupa chup chip chop shop
4. gassyoh feat. mochilon – Dance Music (Hercelot Remix)
5. What’s Entertainment?
6. Happy ODMC2
7. kit kat fat cat chat
8. Love You (Ryoma Maeda Remix)
9. Loctek – HERCELOT
10.Happy ODMC2 (fo0d Remix)
11.Technoballet (Yoshino Yoshikawa Remix)
12.Technoballet
13.Hercelot & Mav. – Comfortable Hole Bye.

Artwork : タマキ

track4 origin : gassyoh / mochilon
track13 feat. : Mav.

Remixed
track8 : Ryoma Maeda
track9 : Loctek
track10 : fo0d
track11 : Yoshino Yoshikawa

*〈Maltine Records〉特設サイトにて入手可能

取材・文:和田瑞生

1992年生まれ。UNCANNY編集部員。ネットレーベル中心のカルチャーの中で育ち、自身でも楽曲制作/DJ活動を行なっている。青山学院大学総合文化政策学部在籍。