INTERVIEWSSeptember/14/2013

【Interview】Hercelot(ハースロット)- “Wakeup Fakepop”

///「What’s Entertainment」は楽曲にサンプリングした、「ハッチポッチステーション」の音声が元となって付けられたタイトル。

__Tr.6「Happy ODMC2」は非常に情報量が多いブレイクコアで、ジャングルやレイブミュージックへのオマージュや、民謡音楽の様なフレーズのサンプリングに加え、ガバキックがメロディーを追っていたりするちょっとした仕掛けも面白かったです。

Hercelot: キックの部分は、COM.Aが同じことをやっていたからやろうって思って。で、最後のレイブピアノは91年くらいのハウスの曲からのフレーズ。これは色々細かいことしたからあんまり覚えてないけど、YouTubeとかニコニコ動画にあったおもしろ動画の叫び声を色々サンプリングしたような気がする。ゲームのBGMからのサンプリングからも多かったような。あと、最初のリコーダーの音色ですが、あれは自分で録ってます(笑)。サンプル探してくるのすらめんどくさくなっちゃって(笑)。だけど、あの音をイントロにしてあるから「バカな曲だ」って一発でわかる感じに、アイコン的になってると思う。

__この曲、ひいてはこのアルバムと最近のEDMとを比べると、特徴的なのは音の要素の量で、やはり最近の音楽は音の要素がどんどん減ってきているような気がします。

Hercelot: ダンスの機能というところに目を向けて、目標の為の機能を作るというところから逆算すると、そういう形にどうしてもなってしまいますよね。例えば、箱の中に石を詰めましょう、という時は、数を少なくするほどデカい石がいれられる。つまり、音楽の要素を減らしていくほどパワーの強いものを搭載することが出来る。つまり、目標のためには余計なものはできる限り減らしたほうがよくて。で、僕の曲は砂利を詰めている、つまり小さい要素を詰め込んでいるわけだけど、願わくば、その砂利をよく見ると絵とかが描いてあって、一個一個も注目してみればやたらと特徴がある、みたいな過剰な詰め込みがいいなと。

遠くからその箱を眺めている分には、砂利の一個一個に絵が描いてあるとか本当にどうでもいいし、普通のリスナーはそんなこと気にしないんだけど、よく見てみると何か変で、自分で深められる、という構造が好きで、これはさっきの運転席の話にもつながってくるんだけど。そういう感覚で音楽を作りたいし、そういう感覚で作ってる人が現在あんまりいないなと思ってしまうからこそ、やりたいなと思います。

__Tr.7「kit kat fat cat chat」は、〈Maltine Records〉初期の様な疾走感が感じられて、コンセプト的にもよく出来ているな、という印象でした。

Hercelot: 本当はこれはインタールードのつもりで作っていて、「Happy ODMC2」の勢いを殺さずに次の曲に繋げたいなという気持ちがあったから、その中間に詰める曲を作ろうと思っていたらとりあえず2分くらいの尺になって。

__〈Maltine Records〉のサウンドクラウドでも「kit kat fat cat chat」がアルバムに先駆けて先行公開されていました。

Hercelot: だけど、蓋を開けてみれば「kit kat fat cat chat」っぽいのはそんなに多くなかった、っていう(苦笑)。あと小話としては「kit kat fat cat chat」がSoundCloudで公開された時の歯がキーボードになってる猫の画像なんだけど、あのおもちゃの音をちゃんと録音して使ったりしているっていう。子供の歌声が再生できるボタンとバックトラックを再生できるボタンがあるんだけど、そのテンポがいじれて、それがピッチごとズレるから擬似スクリューみたいなことができる。音色も5色くらいあって…。あとは、途中でドカーンと曲自体が爆発して止まるんだけど、あれは一番気持ちいいところで止めたから、(拍子が)512分の何拍子になってて、ライブで使うのが凄くダルい(苦笑)

取材・文:和田瑞生

1992年生まれ。UNCANNY編集部員。ネットレーベル中心のカルチャーの中で育ち、自身でも楽曲制作/DJ活動を行なっている。青山学院大学総合文化政策学部在籍。