INTERVIEWSApril/30/2014

【Interview】tofubeats – “ディスコの神様”

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 『Don’t Stop The Music』で鮮烈なメジャー・デビューを果たしたtofubeatsが、4月30日にセカンドEP『ディスコの神様』をリリースした。今作では藤井隆をボーカルに招き、tofubeats流の王道ポップスサウンドを展開している。また、「ディスコの神様」のコーラスにはShiggy Jr.のいけだともこ、ラブリーサマーちゃんが参加する他、カップリング曲の「Her favorite」はtofubeatsと共にdancinthruthenightsとしても活動しているokadadaとの合作となっており、また、「ディスコの神様」のリミックスをSeimei & Taimeiとしても活動しているTaimeiのソロプロジェクトであるCarpainterが務める等、tofubeats周辺の実力アーティストがその脇を固める布陣のシングルに仕上がっている。メジャー・デビューからしばらく経ち、その間にもCOUNTDOWN JAPANへの出演など、様々な現場を経験してきた彼だが、『ディスコの神様』には様々な経験を積んできたからこそ出せるようなある種の風格や、更にはちょっとした遊び心、そして彼という存在を育む土壌となったインターネットに対するリスペクトが垣間見えている。「ディスコ」と「インターネット」というリアルと仮想(もしくはその逆)を行き来するtofubeatsにとっての「ディスコの神様」とは一体何であるのか? シングルの制作秘話、別名義での活動秘話と共に、その答えを探ってみた。

_4月30日にメジャーとしてはセカンドのEP『ディスコの神様』が発売となるわけですが、前回の「Don’t Stop The Music」での森高千里さんに続き、今回は藤井隆さん、そしてゲストボーカルにShiggy Jr.のTomoko Ikedaさんとラブリーサマーちゃんを迎えています。何故この3人の起用に至ったのでしょうか。

 藤井隆さんは去年松田聖子さん作詞作曲で「She is my new town」という曲を出してるんですよ。それを聴いた時にもうこれはアカンと、呼ばなアカンと。そこからずっと呼びたくて、今回のタイミングでやっと実現したと。藤井さんの起用が決まってからこの曲を作ってみたんですが、あまりにも通常にJ-POP過ぎると感じたんです。そこでもっとインターネットっぽい子を呼ぼうと思い、僕に直接「仕事のチャンスがあればください」と言って来た女の子を呼んだんです。Shiggy Jr.のいけださんはアルバム出す前に「コーラスの仕事があったら呼んでください」って言ってCDを渡してくれたり、その時からいいなって思ってたんですけど。ラブリーサマーちゃんはTwitterで女性コーラス誰かいないかなって呟いた時にいきなりメール送ってきたんですよ。この子は有名な人を起用しているからこそ生きてくるカードだなと思って。あとは本音を言えば同世代と音楽をやってめっちゃ売れるのが理想なので、A面でも同世代の子を積極的に呼んでいこうと思うんです。

_藤井隆さんの起用がきまったからこそその2人の起用があったと。

 そうそう。だからこそ遊んでも平気かな、みたいな。

_実際、すごくキャッチーなんですけど遊び心がすごいというか、間奏のコーラスとか何言ってるかわからないくらいに詰め込んでるじゃないですか。あれはどういう感じで録音したんですか。

 あれはアイドルのレコーディングの時によく使うやり方で、メトロノームをずっと流しておくんですよ。で、アーティストに「メトロノーム流しとくんで面白いこと言ってください」って言う。みんなカメラ前から出て行って、スタジオに一人きりにして面白いこと言うまで待つんです。アイドルはそこでワーとかキャーとか言うのが一番可愛いので僕はこの手法をlyrical schoolのレコーディングとかでもよく使うんですけど、今回は藤井さんだしやっとこうと思って。これを10分くらいやってたんで、リミックスに入ってる「止めてー!」っていうのは本当に限界が来た時の「止めてー!」だったんです(笑)。出る出ないはともかくそういう素材をいっぱい集めるのが好きなんですよ。決め打ちとかじゃなく、面白いものがあったらリミックスで使いますよって。藤井さん自身が音楽に凄く詳しい方なので、何も言わなくても声ネタとして使えそうなことを沢山言ってくださるんですよ。完成型が目に見えてるから勝手に上手いこと録れていく。

_今回歌詞もすごく踏み込んでいますよね。神様って!というか。「水星」もそうですけど、今まではと男の子と女の子がいて、みたいな小規模な世界だったのにそこから急にボンっと爆発した感じがあります。

 男の子と女の子の方がよっぽど神っぽいとも思うんですけど(笑)。神様っていうともっとアホっぽいし、最近みんながミラーボール置いて神様神様って言うから自分の中で使いやすい言葉になってきたんでしょうね。実はこの曲のタイトルをディスコの神様にしたのは僕じゃないんですよ。みんながディスコの神様の方がいいって言うからそうなりました。あと、ちょうど曲が出来なくて苦しんでた時にTomadと話をしてて、「いやーディスコの神様ってどこから来るんでしょうねー」ってなった時に浮かんだ部分もあります。前もそうですけど神にもすがる思いで。曲が出来ないから神様にお願いしてみる。この曲出来た時にはデスクからさえ動けないという歌詞について「これ今のトーフくんじゃん!」と爆笑されました。

_じゃあそこはある程度自分自身を投影してたんですね。

 なくはないですね。基本的には藤井さんの「new town〜」がすごかったっていうのと、new townをテーマにしてるのがデデさん(DE DE MOUSE)以降見当たらなくて。その前にはキリンジさんとかいましたけど、最近やってるって明言する人はあんまりいない。そういう「ガチさ」を藤井さんからは感じたのでそれをやりたかったんですよね。で、実際喋ったらやっぱり明るいし、関西ではテレビもバンバン出てる帯の顔なので、そういう人とミドルテンポの曲やりたくないなって思ったんですよ。前にも出してるし。だったら明るい感じにはしたいけどあんまり遠出する感じにはしたくないなと思ってこの曲作ったんですけど、後日藤井さんから「結局これは家を出ないという曲なんですよね」って言われてこの人は全てをわかっているなと思いましたね。

_今回2曲目「Her Favorite」はokadadaさんとの合作ですが、このお二人と言えばdancinthruthenightですよね。この曲の歌詞は前半がtofubeatsさんで後半がokadadaさんですか?

 この曲は珍しく一緒に作りました。okadadaとSkypeでカップリングの曲が出来てないんだよ~って話をしてたら「じゃあ明日トーフの家行って作ろうよ」って言ってくれて、その日の朝から全部作って録りもやりました。あんまりそういうセッション的なノリと言うか、二人で顔を合わせて作るというのが今までなかったんでそれをやってみようってなって作ったのがこの曲なんですよ。ちょっと享楽的というか、二人のChromeoになりたい気持ちを出して楽しく作りました。PVも「撮ってみる?」って話になってモデルの子に連絡してカメラ買って、またまたChromeoになりたいという気持ちを全面に出して。ミニの助手席に女の子乗せる、みたいな(笑)

_思いつきの割には趣向を凝らしたPVなんですね。

 こういうのやりたかったしやろうという事ですね。okadadaさんはそういうのじゃあやろうって言ってくれる人なんで貴重な存在ですよね。

_「ディスコの神様」も「Her Favorite」も普遍的なチューンで素晴らしいのですが、僕は「衣替え」が個人的には一番好きですね。哀愁漂う感じが。

 以前SoundCloudにもアップしてた曲ですね。宇多田ヒカルさんが好きだっていう話をよくするんですけど、僕は自分が歌えたらこういう事ばかりしたいです。歌えないからクラブミュージックやってるみたいなところもあるんですけど、やっぱり自分で歌わないと100%のフィーリングって出てこないので、自己矛盾を抱えながらなんとかやってる部分もあります。普段はこういう曲ばっかり聴いてるんですよね。クラブミュージックを作ってはいるけれど。

_「HANERO」も以前SoundCloudにあげていた楽曲ですよね。これは一種の小休止みたいな立ち位置でいいんでしょうか。

 そうです。こういう普通っぽいハウスって最近CDに入ってないなあって思って。一曲空いてるし入れたいなと。小休止という意味合いもあるだろうし、僕はシングルに関してはあんまり統一感とか気にしない方がいいと思っていて。こういうこともできるんだよということだけ言ってみたり、コンセプトとかないようなわけわかんないくらいがちょうどいいのかなと思ってます。

_「ディスコの神様」のセルフリミックスは今までの感じから一変してインターネット音楽をぎゅっと詰め込んだ感じになってますね。前回のインタビューではインターネットはジャンルの消費が早くてなかなかいろんなことができないということをおっしゃっていましたが、今回は逆に全部入れちゃうみたいな。

 頭悪い感じの(笑)。このシングルの敷居を下げるにはどうしたらいいのかなと思って、原曲のインストとアカペラの音源とパソコンを持って出かけたんです。フラッシュメモリーに入れた素材だけで曲を作る、雑になりきると自分を縛って作った曲です。最初の声ネタもそのままパソコンのマイクで読み上げ機能を読ませたものを録りました。「Temple of Internet」とか訳わかんないこと言ってるんですけど。B面もCarpainterが一週間くらいでリミックスをカチっと入れてきくれて、だったら僕は崩そうと思いました。自分でもこれは来年は聴いてないだろうなーと思うんですけど、「ディスコの神様」がちゃんとできたからこそですね。リミックスっていうのは落差なので。いい曲ほど寄せない方がいい。

_インターネット感といえば、tofubeatsさんの別名義の話ですが、今年の3月に「WAVE」というイベントでcontent ID マンション(3月の名古屋で開催されたイベント「WAVE」では、出演時間直前にライブ用の2mixをTwitterで公開し、話題となった。現在はほとんどの楽曲が消去されている)としてライブをされて。

 ライブをしながらtofubeatsのアカウントを消していくっていう。ライブっていうかWAVをCDJで流しながら、これは僕にしか見えてないんですけど、PVをパソコンの画面半分に映して、SoundCloudで自分のアカウントを順番に消していきました。で、最後にcontent Idのリポストだけが残るという。そしてその一週間後に「ディスコの神様」がポンと上がる。曲を消したのは単に「WAVEやるし!」っていうだけだったので、自分の中でcontent IDがどれだけ大事かということですね。やっぱり真面目な曲を作るには100曲のダサい曲がいるというか、dj newtownとかもそういう意味では両輪になってたので。サンプリングとかして外角に投げると自分のメインの活動にちゃんとフィードバックがある。tofubeatsという名前だと外角に投げるチャンスがあんまりないから、どんどん守りに入っちゃう。その中でああいうことをすると自分の中でスッキリするというか、「こういうことやってよかったな」っていう気持ちになれるので。何も言われないとついつい真面目になってっちゃうし周りも「いい曲書きなよ」ってなってくるんで、ああいう雑さがあったほうが得てしていいことがある。

_Carpainterとは去年の「UNCANNY LIVE SHOW」で共演されましたが、その後、リミックスを依頼したという感じですか。

 もともと2stepがすごい好きなのでそれをやってる若者で、しかもまだメジャーの仕事もやってないなら早くやった方がいいなと思って。僕が大人にしてもらったようにこの人も早く仕事をした方がいいという気持ちでした。普段通りのドライな感じに仕上げてきてくれて、とてもいい仕事だなと感じましたね。

_特典の方は前回のソノシートに引き続き今回はカセットと、とても面白いと思いました。

 「面白い」というその一点だけを狙ってやりました。本当はMDにしようと思ってたんですけど、それは製造ライン上無理だと。CDをガサゴソやってその中からコロンとカセット出てきたらめっちゃ面白いじゃないですか。あと、カセットでは僕が「ディスコの神様、リミックスでーす どうぞー」みたいな口上を入れてたりします。そういう悪目立ちみたいなことを何かしらしたかったというか、前と一緒で興味が湧くきっかけになるかなって思ってます。こんなものが昔はあったのか、こんなもので音は鳴るんだ、という興味を持ってほしい気持ちもあるし、これを機に全国のジャンクショップが潤えばいいなって気持ちもあります。カセットとかレコード再生できる環境自体今はそんなに無いはずなので。

_シングルとしての立ち位置となるようなEPを立て続けに2枚出されたということで、次はアルバムが見えてくるのかなーと思っているのですが、そのあたりはいかがでしょうか。

 今リミックスの仕事がとても多くて、最近だと、くるりさんのリミックスとかそういったところもありまして、全然曲が作れてないです。今はどうすべきか、これから何を提示していくのかみたいなところで悩んでいる時期ではあります。『lost decade』とかはゴールが決まってからが早かったんですけど、今はゴールが決まってないんですよね。ただ、アルバムの話は本当にタイムリーで、今僕が「本当に出るのかなー?」とか言ってる状況です。前のアルバムでやりたい事をほぼやらせてもらった感じがあるので……もちろんやっていかなきゃいけないですけど。

_『lost decade』の時よりも成長していなければいけないと。

 『lost decade』の時以上に手広くいろいろやるというのは不可能なので、見せ方を考えていかなきゃいけないですよね。かといっていいとことってガッツリプロモーションするのがいいのかというとそうも思わないし、考えあぐねています。前みたいに〈Maltine Records〉からポーンとリミックスとか出せればいいんですけどね、そうはいかないので考えどころです。まあその代りに森高さんや藤井さんとやらせていただいて引きを作れてるので、何で引きを作るかということを追って相談させていただければという感じですね。

_アルバムのアートワークはすごくバブリーな感じで、「そうきたか」と思いました。

 これはもともとはガネーシャというインドの象の神様だけだったんですけど、後からいろんな宗教を混ぜ込んであの姿になりました。蓮の花が下にあって、ミラーボールがあって。ごちゃまぜのバブル感、海外から見たよくわかんない日本のイメージのような。コピーの「次はディスコでイケルっしょ?!」とかも、輸入盤の7インチを意識してます。昔の輸入盤のディスコのジャケットですね。

_「次はディスコでイケルっしょ?!」とてもインパクトがありました。全体的にやっぱり底抜けの明るさがありますね。

 コピーは10分で決まりました。「いける」はカタカナで、みたいな修正を後から入れたりして。ジャケットはよく見たらおどろおどろしいものだったりするんですけどパッと見は明るく見えるようにしました。こうでないと普通の人に聴いてもらえないというか。あと、いろんな宗教を出すと神戸っぽさを出せるというのもある。家の近所には宗教施設がめっちゃあって、毎朝教会の音で目が覚めるくらいだったし、そういうのも簡単に「神様」とか言うようになる理由なのかもしれない。もともと神様とかすぐ言うタイプで、仕事する前は必ず神社行ってお参りしたりだとか、学校がキリスト教系だったりとかでそういうのはあるような気がします。

_では、「ディスコの神様」とは一体何なのでしょうか。実在するのかしないのか。

 ディスコの神様はミラーボールです。ディスコにおける仏像だからジャケットでもちゃんと書いておいてくださいってお願いしました。光放ってるんですよ。フロアに光を放つっていうのは神以外のなんでもない。大阪で「ディスコ大戦争」っていうとんでもないイベントがあるんですけど、みんな「ディスコ大学何年生」みたいな設定を決めてて、割とそういうノリに近い。ディスコが今ない分、「ディスコ悪ふざけ」をするみたいな。そんな感じですね。

(2014年3月27日、ワーナーミュージック・ジャパンにて)

インタビュー・文:和田瑞生


1992年生まれ。UNCANNY編集部員。ネットレーベル中心のカルチャーの中で育ち、自身でも楽曲制作/DJ活動を行なっている。青山学院大学総合文化政策学部在籍。

インタビュー:野口美沙希

1992年生まれ。UNCANNY編集部員。青山学院大学総合文化政策学部在学中。音楽藝術研究部に所属し、ジャズを中心に聴いている。

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Artist: tofubeats
Title: ディスコの神様
Number: WPZL-30807/8 | WPCL-11708
Price: 初回限定盤 ¥2,000(税抜)| 通常盤 ¥1,500(税抜)
Release date: 2014.4.30

1. ディスコの神様 feat.藤井隆
2. Her Favorite feat.okadada
3. 衣替え
4. HANERO
5. ディスコの神様 feat.藤井隆(tofubeats remix)
6. ディスコの神様 feat.藤井隆(Carpainter remix)
7. ディスコの神様 feat.藤井隆(Instrumental)
8. Her Favorite feat.okadada(Instrumental)
9. 衣替え(Instrumental)

初回限定盤 カセットテープ収録内容
1. ディスコの神様 feat.藤井隆 カセットver.
2. ディスコの神様 feat.藤井隆 カセットver.(remix)