INTERVIEWSMay/02/2013

[Interview]Vampire Weekend – “Modern Vampires Of The City”

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 今年2月2日、3日の二日間、Zepp Divercity Tokyoで開催されたHostess Club Weekenderでは初日のトリを務め、満員のオーディエンスを沸かせたVampire Weekend。新曲はあまり披露されなかったが、アルバム制作を経て彼らが確実に自信をつけて、さらに大きくなって帰って来たことが伺える圧巻のステージングであった。

 来日時はまだアルバムの詳細が発表されておらず、新作の偽ジャケット写真が出回るなど、様々な憶測が飛び交っていたが、公式サイトでのアルバム完成宣言後は、リリース日、アルバムタイトル、収録曲などが続々と発表され、発売日の延期などがありつつもいよいよ本当にアルバムが世に出ることになる。ブルックリン出身だったり、コロンビア大学出身だったりで、これまで人を食った面が強調されているようなイメージがあったが、特に今作は真摯に歌というものに向き合っていて、バンドとしての説得力が格段に上がっていたと同時に、アメリカのバンドの泥臭さみたいなものも感じられ、より表現の幅が大きく広がり、アコースティックギターを使った楽曲など前作までにはなかった曲も収録されており、バラエティに富んだアルバムになっている。

 インタビューをしていてもバンドの状態、モチベーションがすごく良いと感じたし、よりポジティブな方向へバンドが向かっているのは間違いないので、ニューアルバムはもちろん、出演が決まったフジロック等でファンを楽しませてくれるのは間違いないだろう。今回来日した2月に、バンドを代表して、メンバーのひとり、ロスタム・バトマングリにインタビューを行った。

__来日公演はものすごい盛り上がりで、日本のファンの新作に対する大きな期待を肌で感じました。また、その大きな歓声の中A$AP Rockyの「F**kin’ Problems」で登場したのには驚きました。常に新しい音楽へ興味を向けているイメージですが、前作からシーンはどのように変わったと思いますか?

アルバム制作に没頭していたので、シーンがどう変わったのかは分からないけど僕自身はGrimesの『Visions』、曲で言えばJay-Z & Kanye Westの「The Joy」を良く聴いていたね。

__個人的には、ソロ活動などからダンスミュージックにより踏み込んだアルバムになると思っていたのですが意外にもニューアルバムはアメリカのロックミュージックというものに向き合った作品のように感じました。

今回のアルバムはドラムに重点を置いて、伝統的なアメリカのロックとダンスミュージックの中間になるように注意したんだよ。生のドラムとドラムマシンの間のようにね。

__それぞれのメンバーのソロ活動はダンスミュージックが中心ですが、どのような位置づけで行なっているのですか?

特に別のものとは考えていなくてすべて同じものとして考えているよ。ただ、バンドで曲を書いたり、アレンジをしたりするときはライブで演奏することを意識して曲を書いているね。

__ご自身(ロスタム)は自分のサウンドクラウドにKaty PerryやCarly Rae Jepsenのマッシュアップをアップしていますが、そのようなポップ・ミュージックは新作に影響していますか?

あれは完全に息抜きだね(笑)。ただ僕はポップ・ミュージックが大好きだし、何百万人の人が聴いている音楽に注意を払うことはミュージシャンの使命だと思ってるよ。

__海外メディアから伝わってくる情報では、ダークでオーガニックなアルバムになると言われていましたが、ライブで聴くとそれほどダークだとは感じませんでした。どのようなコンセプトでアルバムを作りましたか?

ダークという印象は全曲に緊張感が生まれるように意識したからそこからそう思うんじゃないかな。ただすべてに希望を持たせているからただ単に暗いと言う訳じゃなくて全体に霧が立ち込めるような今の社会の状況をアルバムで表現したかったんだ。

__そのようなコンセプトは初めてニューヨーク以外でレコーディングしたり、初めてプロデューサーを迎えたりしたことが原因になっていると思いますか?

それは違うね。アリエル(アリエル・レヒトシェイド)をプロデューサーに迎えたのは彼とは長年の友達で肩の荷を下ろして制作をしたいっていう気持ちがあって今回プロデューサーを迎えたんだよ。

__最近のアリエルはメジャー・レイザーなどをプロデュースしていたりして、今回のアルバムのオーガニックなイメージとは異なると感じるのですが。

アリエルは日本ではリリースされていないアルバムもたくさんリリースしていて、オーガニックなイメージのアルバムのプロデュースもしているんだよ。だから、必ずしもイメージと異なるわけじゃないけどアリエルの名前を聞いてアルバムを聴くと驚くかもね。例えば、Plain Whiteの「Hey There Delilah」も彼のプロデュースなんだよね(笑)。彼は様々なプロデュースをしているけど、アナログ・デジタル両方を使ってレコーディングができるという所が彼を選んだ決め手だし、実際に今回のアルバムはそれに挑戦しているよ。そういう意味でも彼は本当に気の合う仲間であり尊敬するプロデューサーだね。

__曲はスタジオに入ってアリエルと一緒に組み立てていったのですか?

いや、曲は作り貯めていて2011年の夏頃にニューヨークで作った曲をアリエルに持っていって録音したんだ。

__では、今回のアルバムのダークだったり、パーソナルなイメージは何処から来たと思いますか?

曲作りにとにかく集中したっていうのと、空白を残して、そこにボーカルや楽器を入れていくようなミニマリズムを意識したからかな。それがバンドの内側を見つめ直すことに繋がったし、音にも現れたんだと思う。

__Hostess Club Weekenderでも披露された新曲「Unbelievers」はアコースティックギターに持ち替えて、今までのアフロビートを使ったリズムを重視した楽曲ではなくよりエズラの歌に重点を置いていると感じました。

「Unbelievers」はエズラとアパートで書き始めたんだけど、ソングライティングに意識を置いて、ピアノやボーカルといった基本的な部分を大切にしたんだ。それが曲の核になっているからエズラの歌が大きなポイントになってるし、パーソナルな部分が浮き彫りになっているんだと思う。

__残念ながら時間になってしまいました。バンドは、前作でビルボードチャート1位を獲得していますが、今回のアルバムの制作にあたって、改めて、アーティスト、プロデューサーとしてどのようなモチベーションで制作にあたりましたか?

これまで自分たちの作ったレコードが老若男女に愛されて本当に感謝している。だから、今回のアルバムも、いつも通り、より良い曲を作る、新境地を開拓する、新しい演奏をするという事だけを考えて作ったよ。

取材: 豊田諭志
1990年生まれ、大阪出身。UNCANNY編集部員。青山学院大学音楽芸術研究部の前部長。

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Artist: Vampire Weekend
Title: Modern Vampires Of The City
Label: XL/ Hostess
Number: BGJ-10167
Release Date: 2013.5.8
Price: ¥2,490(tax in)
※日本先行発売、ボーナストラック(ロスタムによるリミックス)2曲、歌詞対訳、ライナーノーツ(by 妹沢奈美)付

1. Obvious Bicycle
2. Unbelievers
3. Step
4. Diane Young
5. Don’t Lie
6. Hannah Hunt
7. Everlasting Arms
8. Finger Back
9. Worship You
10. Ya Hey
11. Hudson
12. Young Lion
13. Ya Hey (‘Paranoid Styles’ Mix)※
14. Unbelievers (‘Seeburg Drum Machine’ Mix)※
※日本盤ボーナストラック