EVENT REPORTSFebruary/26/2013

【Live Report】Hostess Club Weekender at Zepp Divercity Tokyo – 2月2日(土) Vampire Weekend / Band Of Horses / Palma Violets / Unknown Mortal Orchestra / FIDLAR

今回で第4回目となるHostess Club Weekender 。ヘッドライナーにVampire Weekendが決定し、FIDLAR、Unknown Mortal Orchestra、Palma Violetsといった注目度の高い若手バンドと、Band Of Horses、Vampire Weekendといった人気の高いベテランバンドが一日で楽しめてしまう、インディ・ロック・ファンにはたまらないブッキングであった初日、2月2日の様子をレポートする。

 一組目のバンドはLA出身の新人4人組バンド、FIDLAR。ドラッグやスケートボードのことだらけの歌詞からもわかるように、全員がスケーターのいわゆる”元気な”アメリカの若者のバンドである。余談だが、彼らは楽屋裏でも廊下をスケボーで滑り、なぜかボーカルのザックはスケボーにエフェクターを張り付けてうろうろするなど、彼らはステージの外でもその期待を裏切らないイメージそのままの姿であった。

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ライブは、80年代LAメタルバンドのサウンドの影響が色濃い「Cheap Beer」からスタートし、最後の「Wake Bake Skate」まで徹頭徹尾ハイテンションなパフォーマンスを見せてくれた。彼らはわかりやすいコード進行の上に、先に述べたようなほぼ意味のない歌詞を大声で喚き散らすスタイルのバンドでありそこが最大の魅力なのだが、その実、最も驚いたのはその演奏力の高さだった。一見雑なように聴こえるギターやベースは、荒々しさと勢いを保ちながらも、要所は見事なまでの絶妙なタイミングで合わせていた。彼らのスタイルや歌詞とは裏腹に、バンドの音楽に対する堅実さや真面目さが伺える。そんなことを思いながらも、会場では、前ブロックの観客は彼らに負けないくらいの盛り上がりを見せ、前方ではダイブが起こり、ザックも観客にダイブするなど、一組目から会場のテンションは、ほぼ最大値まで上昇。Hostess Club Weekenderのスタートである。

 二組目は今回の来日に合わせてニュー・アルバム『Ⅱ』が日本先行リリースされたUnknown Mortal Orchestra。ニュー・アルバムでは、60年代のサイケ・ロック・サウンドにファンクやソウル、R&Bの要素を見事に取り入れ、バンド独自のサウンドを確立しており、実際のライブでは果たしてどのような音が鳴るのかと楽しみにしていた。そして、ライブでは楽曲を毎回違うアレンジをすると聞いていたが、噂通りほとんどの曲がアルバムとは異なるライブ・ヴァージョンでの演奏となった。

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一曲目はファースト・アルバム収録の「Little Blu House」。浮遊感のあるサイケなギターソロから始まり、魔法をかけられたような不思議で少し怪しげなサウンドが鳴りだすと、会場は、非日常的な空間へと一変した。その後も、「So Good At Being In Trouble」やニュー・アルバム『Ⅱ』の核となる「Swim and Sleep」などが黙々と演奏されていった。様々な古いレコードからの影響を感じさせる楽曲たちは、録音されたアルバムとはまた違う輝きを見せ、ライブならではの魅力を発揮していた。一組目のFIDLARとは対照的に、決して派手なパフォーマンスはなかったが、演奏される楽曲達は、まさにその現場でしか体感できない一回性のパフォーマンスのみが持つ不思議な魅力を帯びており、ライブでは敢えて、録音とは同じ演奏をしないという彼ら自身の楽曲に対する強い信念を強く感じさせられるライブであった。

 三組目は、Palma Violets。デビュー前にしてNME誌の表紙を飾り、同誌が発表した2013年注目のニュー・バンドにも選出されるなど、メディアの注目度も高い彼らの初来日公演となった。

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彼らは各メディアでLibertinesの再来などと囁かれているが、ライブでは、実際のところ、Libertinesの二番煎じという感じは全くしなかった。確かにツインボーカルで、メロディアスでドライなサウンドという部分は受け継いでいるかもしれないが、それは部分的でしかない。Palma Violetsは、より現代的でポップであり、The Oxford Studentのインタビューで、チリ・ ジェッソンが、デビュー・シングル「Best of Friends」について、「パーティーで友達が踊れるような曲を作りたかった」と述べているように、ポップで踊れる、と言っては単純だが、そんな彼らの持つこだわりや感性が最大限に表現された良い意味でかなりキャッチーなパフォーマンスであった。ラスト、「Brand New Song」では、チリ・ ジェッソンとキーボードのピート・メイヒューが踊りまくり、最終的に観客にダイブする、という彼らのライブ・パフォーマンスは定番であるが、今回の来日公演でもそれは見事に敢行された。

四組目は初日公演の中で最も古株のBand Of Horsesが登場。初来日は2008年まで遡り、ここ日本でもファンを着実に増やしているバンドのひとつだ。<Sub Pop>出身の彼らは正統派インディ・ロック・バンドという印象で、今回のライブではベテランバンドらしい、安定感抜群の演奏をしてくれた。

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一曲目「Islands On The Coast」から彼らの持ち味である、骨太なサウンドでありながらも繊細なメロディが会場に響き渡る。今回の来日前にRolling Stones やEaglesの仕事で知られるGlyn Johnsをプロデューサーに迎えたことで話題となったニュー・アルバム『Mirage Rock』がリリースされたが、ライブでは『Mirage Rock』から「Knock Knock」と「Electric Music」が演奏された。「Knock Knock」では、Eaglesを思わせるような壮大な透明感のあるボーカルのハーモニーを聴かせてくれた。個々人の持つ細部にわたるスキルの高さやメンバー同士の息の合った演奏、そして、やはりその高い演奏力だからこそ可能な安定感の面からみて、前出の若手バンドとは明らかに一線を画するベテランだからこそなせる至高のパフォーマンスであった。

 そして、初日、ラストに登場したのは、Vampire Weekend。Vampire Weekendは、ファースト、セカンド・アルバム共に100万枚を超えるセールスを誇る、インディ・ロックの奇跡とも言えるバンドだ。来日直前に、サード・アルバム『Modern Vampires Of The City』のリリースをアナウンスしたばかりの彼らに、会場の期待は最高潮に高まっていた。そして、会場はこの日最大の熱気に包まれることになる。

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周知の通り、Vampire Weekendはロックとか、パンクとかそういった枠組みにすんなり収まるようなバンドではない。アフロ・ミュージックから受け継いだビートやリフ、クラシックを感じさせるバロック調ストリングス等々、すでに様々なメディアで指摘されている通り、音楽に対する自由度の高さが特徴的なバンドだ。かつてジョン・ライドンが、「レゲエは大好きだけど、自分の文化じゃないからやらない」と語ったのは有名な話であるが、対照的に、Vampire Weekendは、どんな音楽にも簡単にアクセスできるという現代の音楽聴取体験を通して、文化や音楽史など、音楽に付随する諸々の経験に囚われない自由でより創造的なスタンスを貫いている。

ライブは、『Contra』収録の「Cousins」からスタートし、「White Sky」から「Cape Cod Kwassa Kwassa」へと次々に彼ら持前の陽気なサウンドと跳ねるリズムが全面に押し出されると、観客各々が踊ったり、歌ったり、手拍子をしたりと、会場全体が大きく揺れていった。「Diplomat’s Son」や「One (Blake’s Got A New Face)」ではコーラスの部分を観客が合唱するなど、さらには曲の合間も歓声が途切れる事はなく、会場は終始盛り上っていた。そして、何より印象的だったのがボーカルのエズラ・クーニグがステージの真ん中で誰よりも楽しそうにギターを弾き、歌っている姿であった。前述した彼らの自由な音楽への向き合い方は、彼らが心の底から純粋に音楽を楽しむことに繋がっているのだと感じた。

途中、ニュー・アルバムに収録予定の新曲「Unbelievers」も演奏したが、跳ねるリズムはそのままに、明るさと切なさが絶妙なバランスで同居する不思議な曲であった。底抜けに陽気で明るい印象が強い彼らだが、それだけでなく、ちょっとだけ湿っぽさを持った彼らの新しい魅力が垣間見える楽曲だった。次作が楽しみだ。

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そして、アンコールの最後に演奏された「Walcott」では、「Get out of Cape Cod, out of Cape Cod tonight?」の大合唱が起き、観客の一体感が最高潮に達した祝祭的なエンディングを迎え、4回目となるHostess Club Weekenderの初日は終了した。(2日目のレポートへ続く)

取材・文: 永田夏帆
1992年生まれ。UNCANNY編集部員。趣味はベースと90年代アメリカのポップカルチャー。青山学院大学在籍の現役大学生。

撮影: 古溪 一道

*次回の<Hostess Club Weekender>は、2013/6/8(土)&9(日)恵比寿ガーデンホールにて開催決定。詳細はこちら

Hostess presents No Shit_3_HSE-60142

Artist: Various Artist(ヴァリアス・アーティスト)
Title: Hostess presents NO SHIT! 3(ホステス・プレゼンツ・ノー・シット!3)
Number: HSE-60142
Label: Hostess Entertainment
Price: ¥1,980
Relese date: 2013.2.13
※特殊ポスター・パレット・パッケージ仕様。スタッフによる各曲解説ライナー
ノーツ付。
More Info: www.hostess.co.jp/noshit

<DISC 1>
1. Animal Collective – Moonjock
2. alt-J – Breezeblocks
3. Gotye – Eyes Wide Open
4. Dirty Projectors – Just From Chevron
5. Alabama Shakes – I Found You
6. Howler – This One’s Different
7. Cloud Nothings – Stay Useless
8. Dinosaur Jr – Don’t Pretend You Didn’t Know
9. Bloc Party – V.A.L.I.S.
10. Hot Chip – Night & Day
11. Purity Ring – Belispeak
12. Grimes – Genesis
13. Melody’s Echo Chamber – Endless Shore
14. Sharon Van Etten – Leonard 15. Cat Power – Ruin
16. Bobby Womack – Dayglo Reflection (feat.Lana Del Rey)
17. Ultraísta – Smalltalk
18. The xx – Sunset
19. Spiritualized – So Long You Pretty Thing

<DISC 2>
1. FIDLAR – No Wave
2. San Cisco – Golden Revolver
3. People Get Ready – Windy Cindy
4. Theme Park – Jamaica
5. Biffy Clyro – Black Chandelier
6. Ra Ra Riot – Beta Love
7. The Child Of Lov – Heal
8. The Men – Half Angel Half Light
9. Buke And Gase – Hiccup
10. Villagers – The Waves
11. Unknown Mortal Orchestra – Swim and Sleep (Like A Shark)
12. Night Beds – Ramona
13. Indians – Magic Kids
14. Local Natives – Breakers
15. Atoms For Peace – Default
16. Toro Y Moi – So Many Details
17. Ducktails – The Flower Lane

■レーベル・プロフィール
ホステス・エンタテインメントは、日本市場での独自のアイデンティティ確立を目指す厳選された海外アーティストやレーベルの商品全般の国内マネージメント、プロモーション、営業、マーケティング・サービスを展開。アークティック・モンキーズ、アデル、ゴティエ、ベック、モグワイ、レディオへッド、アトムス・フォー・ピース、アニマル・コレクティヴ、ソニック・ユース、ヴァンパイア・ウィークエンドといったアーティスト作品を発売。
www.hostess.co.jp
www.hostess.co.jp/noshit


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