ARTICLESMay/04/2014

Featured |「東京」特集 – Interview with Tomad (Maltine Records)

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 ついに開催直前となった〈Maltine Records〉のイベント「東京」。UNCANNYでは、前回のイベント「山」に引き続き、〈Maltine Records〉の主宰であるTomadへのインタビューを行った。「東京」というワード、そしてイベントに込められた意味、マルチネの目指す方向性等、Tomad氏の非常に興味深い考察が窺えるインタビューとなった。ぜひこのイベントに込められた意味と意思を噛み締めながら、「東京」へと臨んでほしい。

_〈Maltine Records〉過去最大規模となるイベント「東京」ですが、LIQUIDROOMでやると決めたのはいつですか?

Tomad: 去年の秋ごろですね。1年位前からOL KIllerのマネジメントをされている瀧澤さんに「でっかいところでやりなよ」って声をかけられていて、瀧澤さんは閉館してしまう渋谷のAXを薦めてきたんだけど、さすがにそれはでかすぎるって(笑)。それでLIQUIDROOMでゴールデンウィーク中にやろうと、「山」の前くらいには決めていました。

_収容人数的にはだいたい2倍の規模になりますよね。前回の「山」は森下さんと共同で企画されたイベントでしたが、「東京」はtomadさん単独によるものということで、「山」との差別化で意識したことを教えてください。

Tomad: 「山」は元々は代官山UNITとかでやりたかったんですが、うまく取れなくて。それで渋谷WWWになったんですが、WWWはライブハウス寄りなので踊りづらいという部分がありました。それにあくまでEYƎさんがメインであって、マルチネ色があまり強く出てはいなくて。そういったところから今回の「東京」は“本気のやつやっときたい”っていう気持ちが強くて。でも風営法などでオールナイトのイベントも厳しくなってきてるので、デイイベントにすることで未成年も来れるような、開かれたイベントを意識しました。

_「山」が玄人向けであったならば「東京」は、様々な層に向けて開かれていて、またbo enが出演することもありポップさが全面に出ているなと感じました。bo enやMEISHI SMILEといった海外アーティストをブッキングするに至った経緯はどういったものでしたか?

Tomad: MEISHI SMILEの場合は向こうからデモが送られてきました。最初は関心を持たなかったんですが、自分自身で〈ZOOM LENS〉というレーベルも主宰していて、調べてみると結構興味深い活動をしていたんです。それで去年〈Maltine Records〉からアルバムをリリースさせてもらいました。普段はエモーショナルなエレクトロミュージックを作っているのに、〈Maltine Records〉に合わせた日本語ネタ、dj newtownの影響を感じるカットアップを使ったアルバムで、そういう一面もあって面白いなと思いました。

_なるほど。たしかにMEISHI SMILEのミックスはロックの早回しを使ったり、シューゲイザーっぽい雰囲気がある感じがしました。そういった幅広い音楽性が〈Maltine Records〉の雰囲気にあっていた、ということでしょうか。

Tomad: それに、MEISHI SMILEは結構な反骨精神を持っていて。戸川純が好きだったり、神聖かまってちゃんに影響を受けているらしいです。あと日本人の血が混じっているみたいで、日本のカルチャーに強い興味を持ってますね。

_一度お話してみたいです(笑)。ではbo enは?

Tomad:FOGPAK』を聴いていたらbo enが拙い日本語で歌う「miss you」が流れてきてすごい衝撃を受けて、それですぐに英語で連絡を取りました。普通に日本語で返事がきましたけど(笑)。その後もしばらく連絡を取っていて、深夜3時頃になるとYouTubeにある全然知らない渋谷系の音楽や日本のミュージカルを送ってくるようになって。向こうではその時間帯がピーク時みたいで、朝まで付き合わされてたりしました。

_「東京」の構想段階から二人を呼ぼうと考えていたのですか。

Tomad: 日本のカルチャーに影響を受けているアーティストがいるんだなって気づいて、イベントに呼びたかった。でも二人ともお互いに会ったことがなくて、その舞台を用意するのも東京でやりたかったことのひとつです。他にもいろいろと声をかけたんですが、最終的には〈Maltine Records〉からリリースした二人が来てくれることになりました。

_文化の発信地としての東京という意味で次世代の音楽が一堂に会する事となる「東京」ですが、イベント名を「東京」としたのはどういう経緯なのですか?

Tomad: 凝ってないけどインパクトのある名前にしたくて、ギャグなのかベタなのかわからなくしたかったんです。お洒落なサブカル感みたいなものを覚える人もいるだろうけど、個人的には結構ギャグ要素もあったりして、それが混ざってよくわからなくなるような(笑)。

_サイトのデザイン含めインパクト大でした(笑)。それとPPSさんの出演の印象がとても強かったです。

Tomad: サラっとしすぎるメンツでやりたくなかったっていうのがあって、毒的な要素でPPSをブッキングしました。〈Maltine Records〉のアーティストって結構有名になってきてどんどん表に出てきている中、そのサラッとしたスープにPPSというスパイスを入れてよりおいしく食べてもらおうっていう狙いがあります。

_〈Maltine Records〉をずっと追ってきた一個人的には毒々しさが残っていて良いな、と感じました。タイムテーブルの組み分けで意識したことは何ですか?

Tomad: Carpainterで始まって〈Maltine Records〉のイベントでは鉄板のokadadaやDJ WILDPARTY、そこからtofubeats、Sugar’s Campaignやbo enと後半へいくにつれてライブ要素の強いアーティストを並べるよう意識しました。

_〈Maltine Records〉的には、DJ的な部分とライブ的な部分という2つのパーツがあると思うのですが、今後はどんな風に活動していきたいですか?

Tomad: どっちもやっていきたい。クラブ的な要素も残したいけど極端にクラブっぽくなりすぎるのは嫌で、でも極端にバンドっぽくなるのも嫌っていうのがあって。あとネットレーベルという枠にとらわれ過ぎるのもよくないと思っていて、海外のBandcampで活動しているインディーレーベルでフィジカルでもリリースしているようなレーベルはチェックしているし、最近はもはや普通のレーベルとネットレーベルの境界線はほぼ見えなくなっていて、SoundCloudでどんどん新しいアーティストが出てきているし、そういうシーンのほうが今後活気があるのも目に見えている。だからポップミュージックともダンスミュージックともいえない中間のシーンで面白いことができたらな、と。

_なるほど。今後〈Maltine Records〉でフィジカル的なリリースは考えていますか?

Tomad: 来年で〈Maltine Records〉が10周年を迎えるのでそれに合わせて何かやりたいとは思っています。アナログに回帰するように逆にフィジカルのほうがインターネットっぽいみたいな、実物として手に取りたいという欲求はかなりあると思いますので。

_「東京」以降の構想について、何か考えていますか?

Tomad: ここまでの規模のことをやると金銭的負担や、さまざまな不安があるので、しばらくは小さめのコアなイベントをやっていきたい。

_東京に興味がある人に一言お願いします。

Tomad: マルチネレコーズらしさを押し出したイベントをこの規模で、このメンツで開催するというのはそうそうないと思うので、無理してでも来て欲しいです。

▷▷▷MaltineRecords「東京」公式ページ: http://tokyo-0505.cs8.biz/

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■イベント情報
Maltine Records presents 「東京」
@LIQUIDROOM + KATA
OPEN / START 15:00
ADV / ¥3,300(税込・ドリンクチャージ別)

出演アーティスト:tofubeats / Sugar’s Campaign / MEISHI SMILE / bo en / okadada / DJ WILDPARTY / PARKGOLF / Pa’s Lam System / ラブリーサマーちゃん / Fazerock / Gigandect / Carpainter / Tomggg / PPS / ACID WHITE HOUSE / Yoshino Yoshikawa / Qrion / Miii / 三毛猫ホームレス / パジャマパーティズ / Hercelot / MadMaid

TICKET: チケットぴあ [225-911] ローソンチケット [72527] e+ 楽天チケット,3/22 ON SALE
※未就学児童の入場不可
Info:HOT STUFF PROMOTION 03(5720)9999
MaltineRecords「東京」公式ページ: http://tokyo-0505.cs8.biz/

インタビュー・文:和田瑞生
1992年生まれ。UNCANNY編集部員。ネットレーベル中心のカルチャーの中で育ち、自身でも楽曲制作/DJ活動を行なっている。青山学院大学総合文化政策学部在籍。