- INTERVIEWSSeptember/04/2013
【Interview】Darkstar(ダークスター)- “News from Nowhere”
Darkstar。エイデン・ウォーリー、ジェイムス・ヤング、そしてボーカルのジェイムス・バッテリーの3人は2013年1月にリリースされたアルバム『News from Nowhere』において、前作『North』とは真逆とも言えるような作品を作り上げた。実際彼らは、レーベルを〈Hyperdub〉から〈Warp〉へと移籍し、制作拠点もまたロンドンからウェスト・ヨークシャーへと移るなど、本作は、前作とは異なる環境、場所で制作されている。そして、今作の最大の特徴とも言える多彩な世界観は、そのジャケットやミュージックビデオにも表象されており、それらを見ただけでも、Darkstarが新たなフェイズへと入っていることがわかる。
4月に開催された<SónarSound Tokyo>に続き、<FUJI ROCK FESTIVAL ‘13>に出演するため来日したDarkstarの3人にインタビューを行った。
Darkstar:
James Young
Aiden Whalley
James Buttery
_今回、4月の<SónarSound Tokyo>に続けての来日ですが、日本で演奏した感想をお聞かせください。
James Young (以下Y): すごく嬉しい事だし日本に来られるはとても光栄なことだよ。皆とても熱心に聴いてくれるし、僕らの音楽に対して理解があるからね。僕らが一生懸命やっていることに対して敬意を示してくれる人達の為に演奏できるのはすごく嬉しい事だよ。
James Buttery (以下B): あと日本は最高にクールだよ。世界で一番だと思うよ。本気でね!
_アルバムについてお聞きします。今年リリースした『News From Nowhere』では楽曲ひとつひとつが詳細なアイデアに富んでいると感じました。それらアイデアの源は何でしょうか?
Y: サイクル的なアプローチでリズムの部分を互いに繋げてユニゾンにしたからすごく複雑なリズムやメロディになっているんだ。それがこのアルバムから詳細な印象が打ち出されている理由だと思うよ。曲作りに関してはランダムに進むんだ。3人のうち誰かが曲作りを始めて皆がそれに参加するっていう感じだね。だから誰かが作った曲を皆で聴いて全員が好きだったら本格的に曲作りが始まる。
Aiden Whalley (以下A): 時にはそれぞれが曲作りを始めるんじゃなくてサンプルだったり、ボーカルの素材から始まることもある。そんな感じですごく自然に曲作りが始まるんだ。
B: 時にピアノで曲を書いたり、時にはジェームス(ヤング)がビートやサウンドを作ったりね。前作のアルバムを作った時は3人一緒に住んでいたんだよ。殆どの場合3人が別々の部屋で曲を書いているんだけど、時にはジェイムス(ヤング)とエイデンが僕の部屋に来たり、3人で一緒にミュージックルームに行って、お互いにアイデアを演奏してみたりするよ。だから曲作りにはすごく時間がかかる。素早く曲が出来る事はないね。
_また、「−(無題)」や「A Day’s Pay For A Day’s Work」などが顕著ですが、それぞれの楽曲のテーマがしっかりしていると感じました。それらの曲をアルバムにまとめあげた際のアルバム全体のコンセプトがありましたら教えてください。
E: そうだね、各曲がアルバムの中で適した位置に収まるようにしたからね。全体的に抑揚があるしこのアルバムが全体的に一つの旅になっているんだよ。
Y: コンセプトはないけどアルバム全体的には僕らが居たウェスト・ヨークシャーの環境が強く反映されている。でもトラックそれぞれにはメッセージがあるよ。例えば眠りのサイクルや友情、パートナーとの絆なんかかな。今作はすごく楽観的なものなんだよ。あとは1日の過ごし方も抽象的なテーマになっている。ロンドンで感じられなかった時間をウェスト・ヨークシャーではすごく実感することができたんだ。ロンドンはすごく騒がしくて忙しい街だからね。アルバム制作の時は誰にも邪魔されない時間が沢山あるし、ロンドンから離れてみると自分の体内時計が実感できるんだ。
B: もう一つエイデンが打ち出そうとしていたテーマがあるんだ。サイクルやメカニズムに関するものなんだけどその体内時計に通じているかもね。歌詞にもサイクルや時間の変化が反映されているんだ。
_なるほど。では、サウンドについてですが、例えば「Hold Me Down」などの電子音、弦楽器のストリングス、囁くような歌声はムームやシガー・ロスのような北欧産サウンドに似たようなものを感じるのですが、出身地であるイギリス北部の環境の影響でしょうか。
B: イギリス北部はスカンジナビアからそう遠くはないからね。
Y: それはいい見解だと思うよ。今までそれを質問されたことはないしね。僕自身スカンジナビアの音楽は好きなんだ。彼らは卓越した方法でバランスを取るんだ。
B: 彼らの音楽はすごくユニークだし、バランスが取れてるんだ。ザ・ナイフが良い例だね。
Y&E: リッキ・リーもそうだね。彼らはすごくいいポップソングを書いていると思う。
B: シガー・ロスのヨンシーもすごくいいと思う。すごくパワフルでね。
_『News From Nowhere』ではウェスト・ヨークシャーの田舎の一軒家に籠もり作曲を行ったと聞きましたが、そこではどのように作曲を行っていたのでしょうか。例えば、前作と、曲作りの面で変化したところはありますか。
E: このアルバムで初めてジェイムス(バッテリー)が新たに制作に参加したんだ。それに比べ、前作はジェイムス(ヤング)と僕の2人だけで曲を書いたんだ。だから前作とはバランスが違うし、このアルバムを制作するためにロンドンを離れた。皆で1年間一緒に住んで別々の部屋でそれぞれのアイデアに取り掛かり、それを3人で聴き合ったりしていたよ。前作の時とは違い新たな体験だったよ。
B: そうだね。今作のアルバムは前回とはバランスが違うね。前作では僕は曲を書かずにボーカル部分を担当しただけなんだけど<Warp>との契約後には3人で一緒に曲を書いたという点で前作とは異なるね。2人で作るのと3人で作るのでは大きな違いをもたらすんだ。2人だけだと互いに賛成するか反対するしか選択肢がない。だけど3人いるともっと違った意見が生まれるんだ。
_今作は<Warp>移籍後の作品となっていますが、移籍による作品への影響はありましたか。
Y: <Warp>と<Hyperdub>とでは組織的な違いはあるけど、それは僕らにとってはあまり重要なことではないんだ。両レーベルとも自分達がやっている事にプライドを持っているし、それぞれ成功している。あまり違いに関しては詳細に話せないし、作品への影響はないよ。ただ<Warp>はシェフィールドで始まったレーベルで、僕らも北部出身だからね。ジェイムスは2人共ヨークシャー出身だしね。だから<Warp>とは共通点が多いし僕らにとって適したレーベルだと思ったんだ。
B: <Warp>には僕らが昔から聞いていたかっこいいアーティストがたくさんいるしね。僕らは彼らと遊んだりしないけど彼らと繋がりがあるのはすごく嬉しい事だよ。
_ジャケットが作品にマッチしており、前作との対比が良く出ていると思うのですが、どのように決定したのですか。
Y: 前作はかなり有名なアーティストにアートワークを担当してもらったんだけどあまり気に入らなかった。で、今作はアーティストとして有名じゃない人にやってもらったんだけど、すごく気に入っているよ。彼はテレビドラマの「LOST」にも出ているんだよ。
E: アートワークの制作はすごく興味深くて、彼は花を置いていろんな角度から写真を撮っていたよ。今回のアートワークはすごく気に入ってる。
_最後に、これからの展望をお聞かせください。
B: まだ本当に初期段階だけれど次作には取り掛かっているよ。
E: でもまだ3人一緒に制作しているわけではなくて別々で作業をしているんだ。個人個人でいろんなアイデアに取り掛かっている段階だね。でも3人で定期的に話し合ったり実際に演奏しながら進める方がいいね。色んなアイデアが生まれるし、それぞれの趣向に偏らずにすむからね。
B: 今は生活する上でやらなくちゃいけない事がたくさんあってね。クリエイティブで生産的であるためには快適である必要があるし自分たちに合ったリズムを見つけなければいけない。ロンドンにまた戻るのはすごく大きな変化だしね。だからすごく時間がかかると思う。今は次作に関するアイデアに関して話し合う事に時間をかけているよ。ただ次作は今までのものと違うことをしたいと思っている。面白くて前衛的なことをね。『News from Nowhere』のパート2はやりたくないよ。
E: 今まで一番良いものになることは確かだよ。
インタビュー・文:永田夏帆
1992年生まれ。UNCANNY編集部員。趣味はベースと90年代アメリカのポップカルチャー。青山学院大学在籍の現役大学生。
取材協力:田中 木里子(Beatink)
Artist: Darkstar
Title: News from Nowhere
Rlease date: 2013.01.23 wed
Label: Warp Records / Beat Records
国内盤: BRC-360
日本盤特典: ボーナス・トラック追加収録
Tracklisting
01. Light Body Clock Starter
02. Timeaway
03. Armonica
04. –
05. A Day’s Pay For A Day’s Work
06. Young Heart’s
07. Amplified Ease
08. You Don’t Need A Weatherman
09. Bed Music – North View
10. Hold Me Down
11. *Bonus Track for Japan