INTERVIEWSAugust/21/2013

[Interview]Savages - “Silence Your Self”

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Savagesは昨年末に海外の各音楽メディアが発表した「2013年注目したいバンド」に挙ってその名前を挙げられたロンドンを拠点とするバンドであり、期待通りに今年最も注目されているバンドの一つとなった。

彼女たちが日本でも注目を集めるきっかけとなったデビュー・アルバム『Silence Your Self』 は、〈Matador〉より今年1月にリリースされた。彼女たちの音楽は正統派ポストパンクの伝統を引き継いでいることはよく指摘される通りであるが、そのことは多くのインディ・ロック・ファンを惹き付けるほんの一要因にすぎない。例えば、ダンスを誘うようなミニマルなベース、ドラムのリズムセクションに、自由度の高いボーカルが重なるという構成は、特にライブにおいてその魅力を精妙に発揮する。そして今回のインタビューで本人たちからも実際に語られているような、何より音楽に対する情熱や決意、そして探究心やストイックさがその音から伝わってくるのである。

「意味合いとかを考える前に、音楽を聴いてほしい」と言うジェマの言葉がその感触を強固なものにする。そして、彼女たちの音楽には確かに魂が宿っている。今回、「FUJI ROCK FESTIVAL ‘13」とそれに続く単独公演の為に来日したSavagesに、彼女たちの音楽の持つ特徴の根源を探るべく、インタビューを行った。

Gemma Thompson(G)
Fay Milton(Dr)

__フジロックが終わって直後の昨夜のライブはどうでしたか?

Gemma(以下G): 非常に楽しかったわ。音も良かったし、コンディションも良かったし、観客も盛り上がったし…。ライブの後にすてきな人々に会って話をしたのも良かったわね。

__昨夜の演奏を観て、あなたたちに人の目を引きつけるカリスマ性のようなものを感じました。ステージ上での自分は日常の自分と全くの別人という意識はありますか?

G: うーん、イエス、ノー、両方ね。全く分けることはできないところはもちろんあると思う。でも違う顔っていうのは誰にでもあるでしょう? アスリートでも大工でも仕事のときとプライベートでは全く違うし。

Fay(以下F): 仕事場に放り出されたとき、普段は使っていないエネルギー、想像力、行動力を、力のすべてを絞り出せるかどうかの問題だと思うわ。

__それでは、バンドを結成したきっかけを教えてください。

G: 私はエイスとはSavagesの前にも4、5年バンドをやっていたの。このバンドを始めてからは1年半くらいになるわね。始めはSavagesという名前だけがあったの。始めは、ジョニーホスタルに参加してもらおうと思ったのだけど、彼は忙しくて参加できなくてね。それでジェニーが、私たちが人を探しているというのを聞きつけて、歌詞をもってきてくれたの。そこからいろんなアイディアが膨らんで、最後にフェイが入ってバンドが結成されたの。

__そのように集まった4人は、共通のコンセプトを持ち寄って集まったのですか?

G: それぞれ違う音楽経験があるから、それを持ち寄って一つのプロジェクトを作ろうという感じだったわ。でも4人ともパフォーマンス重視で、自分たちのエネルギー、情熱を音楽にすべて注ぎ込むという音楽への姿勢は同じだったわ。フェイは、朝から自分のスタジオでドラムを叩いてから仕事にいくような、プレイに対して熱意や決意があるというような人だから、自分たちに合うと思ったわ。

__それでは今の音楽の形は皆で徐々に作り上げたものなのですか。

G: 曲作りに関しては、同じ方法を毎回とっているわけではないのだけれど、すべての曲に共通することは、ライブパフォーマンスに最終的な目標においているってことね。だから、曲はパフォーマンスを通して毎回変化していくの。レコーディングする前に何度もライブを重ねて、そうやって出来上がったものをレコーディングする、という方法をとっているの。だから、今回のアルバムでも、ライブでのエネルギーを、ドキュメントとして残すような意識で制作したの。

__そのように重要なライブパフォーマンスは、バンドにとってどのような意味を持っていますか。

G: 良い質問ね。いくつかあるわ。ライブは音楽への決意が現れると思うの。言葉やメロディを繰り返すことによって観客にエクソシスムや、ヒーリングパワーを感じてもらいたいわ。でも土台には、音楽、アートを通して皆に物事の見方を変えてもらいたい、違う風に物事がみえるようになってほしいという願いがあるの。それで、そういう風に感じるのは、やはり、自分自身がSwansなどの他のバンドのライブを観て、そのように感じた経験があるからだと思う。観客とのつながりをそういったアーティストたちに教わったわ。

F: ライブを通して、生きている、という感覚を感じてほしい。人とつながって、コミュニケーションをとるというような、人間的な感覚を取り戻して欲しい。

__音楽を作る理由として、例えば、特に何を表現したいと思いますか。

G: そうね。「Shut Up」の冒頭で使っているのは、ジョン・カサヴェテス監督の『Opening Night』という映画作品から抜粋したシーンなの。彼自身は、とても独特な作品を作る監督で、好きな作品を撮るというスタンスの監督なの。その映画の話の中で、ある女優が自分より年上の役を演じることになって、でも、自分は子供もいないし、家庭も持ってないので、やはりできない、脚本をなおしてほしい、というの。自分らしさを素直な気持ちで表現したいと訴えているシーンなのだけど、それこそが自分たちの音楽のコンセプトなのだと思うわ。

__なるほど、曲はそのように他の芸術作品にインスパイアを受けて制作することは多いのですか。

G: そうね。色々な作品に影響を受けるけど、特に1970年代のニューヨークのノーウェイブ・ムーブメントのような、楽器を本来の使い方とは全く別の方法で使用するというカルチャーシーンにも影響を受けたわ。それに加え、たくさん本も読むし、今回のアルバムには、例えばJ・G・バラードなどの、現在の人間や、未来の人間の在り方についての考えているSF系の作家に影響を受けた曲も多いわ。日本の作家、阿部公房にも影響を受けているわ。

そういえば『ユービック』(フィリップ・K・ディック)も読んだわ。未来の世界を描いた小説で大好きなのだけど、ロボット自体が社会を作っているという内容の話なの。その中で、ある男性が高速を運転していると、ロボットの虫が入ってくるというシーンが印象に残っていて、そういった、作品の中の要所要所に影響を受けているわね。

__それでは生活の中でインスパイアされることはありますか。

G: あるわ。レコーディングする環境にも左右されたりするわね。今回はロンドンでつくったので工業的で、ダークな印象になっていると思うわ。もちろん曲にはそれぞれ四人の生きてきた人生経験も反映されているし。

__なるほど。そういった影響がある中で、「Hit Me」や「She Will」などの曲では、マゾヒズム、セクシーさ、繊細な女性の性が描かれていると捉えることもできると思います。そういった女性の性についてどのように捉えているのでしょうか。

G: 曲作りにおいて、原始的な感情などのエネルギーを大切にしているの。そうしてできた歌詞、演奏の緊迫感というのは、自分たちでも楽しむようにしているの。わたしたちはみんな、大きくなったら好きなように生きて良いよ、と言われて育てられたので、その自由な感覚が音楽に表れているのだと思う。だから、聴く人にもそのテンションを受け取って欲しいの。音楽を聴くときに入ってくるのは、意味合いとかよりも音楽であってほしいと願っているわ。

実は、「Hit Me」は、ポルノ女優が撮影のときに泣いているシーンを歌詞に捉えたの。とにかく、それが普通であっても普通じゃない状況であってもその何かおもしろさを汲み取って、それを描き出したいと思っている。歌詞に関しては、60年代のバンドのように男性が歌っても、女性が歌っても良いように作ってあると思うわ。

__女性らしさを押し出しているわけではないということですね。

G: 曲に関しては、ビーストが共感できる物を目指しているの。しかし、わたしたちの行動によって、若い女の子たちが何かをできる、という意味合いで、女性に対して良い影響になったら良いわね。演奏はラウドでアクティブであるということが、男性性に捉えられることもあるのだけど、そういったものは女性性の中にもある一面で、ただ抑圧されて出されていないだけのものだと思う。

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Artist: Savages
Title: Silence Yourself
Label: Matador / Hostess
Number: BGJ-10174 (オリジナル品番:OLE10362J)
Release date: 2013/5/22(水)
Price: ¥2,490
※ボーナストラック4曲、歌詞対訳、ライナーノーツ付

1. Shut Up
2. I Am Here
3. City’s Full
4. Strife
5. Waiting For A Sign
6. Dead Nature
7. She Will
8. No Face
9. Hit Me
10. Husbands
11. Marshal Dear
12. City’s Full (Live)*
13. Give Me A Gun (Live)*
14. I Am Here (Live)*
15. Husbands (Live)*
*日本盤ボーナストラック



インタビュー・文: 永田夏帆
1992年生まれ。UNCANNY編集部員。趣味はベースと90年代アメリカのポップカルチャー。青山学院大学総合文化制作学部在籍。