INTERVIEWSAugust/20/2013

【Interview】Boys Noize(ボーイズ・ノイズ)- “Out Of The Black”

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 新しい音楽の発見というのは、決して突発的なものではなく、ひとつのムーブメントの発達と共にもたらされるとも言える。そして、それがベースとなり、古い構造を破壊しながら、新たな構造を生成し、さらにまた新しい音楽が生み出される。

 2000 年代に「時代の音」としてムーブメントとなったエレクトロミュージックは、世界中で様々なジャンルへと細分化されていった。Boys NoizeことAlexander Ridhaは、そうしたエレクトロシーンを牽引する「エレクトロ界の寵児」として、その中心にいながらも常に新しいことに挑戦し、私たちを驚かせてきた。

 Boys Noizeは、ダンス/ロックのクロスオーバーという衝撃でエレクトロシーンを突き動かし、注目を浴び続けてきた。楽曲制作からプロデュース、あるいは自身のレーベル〈Boysnoize Records〉を設立・運営するなど、自身の人生のほとんどを積極的に音楽に費やしてきた彼だが、着実に活躍の場を広げながらも、決してその足下を見失う事はない。

 昨年10月に発売されたサード・アルバム『Out Of The Black』は、彼のデビュー当時から変わらない攻撃的で荒々しいサウンドはもちろん、今までになかったメロディアスなトラックやSnoop Dogとのコラボレーションなど新たなアイデアが詰まっており、メインストリームと言えるまで成長したエレクトロシーンにおいて、彼の実力とセンスが正に圧倒的であることを裏付ける一枚となった。

 エレクトロシーンの最前線で走り続ける彼だが、常に変化を恐れず新しいことに挑戦する情熱と原動力はどういうものなのだろうか。<FUJI ROCK FESTIVAL 2013>に出演するため来日したBoys Noizeにインタビューを行った。

_2010年にもフジロックに出演されていますが、今回はライブセットということで日本のファンの期待度も高いと思います。また、2メートル以上のスカル上でLEDを背負ってのライブということで大掛かりなステージになりそうですが、今回のライブセット全体のテーマを教えてください。また、DJとは異なるという意味で、ライブセットで演奏する際に、特に意識されている点は何でしょうか?

通常のDJセットよりも遥かにコンセプトがあるものになったよ。DJセットでは他アーティストの曲、新曲も含めた自分の曲なんかをプレイするんだ。それはそれで好きだけど、 ライブセットでは自分の曲しかプレイしないんだ。だから曲の一つ一つの要素をマッシュアップしたりミックスしたり出来る。僕はCDに収録されている曲をそのまま流すよりも、自分の曲を自由に流す方が好きなんだ。しかも、これからやるセットは全てビジュアルと連動しているんだよ。すごく大規模だし、とても複雑なセットになるよ。色々なものを同時にコントロールしないとならないし、その時に起こっている事に、その場で対応しなくちゃいけないから、いつもより集中力を高めないといけない。

_フジロック前日にはWOMBでSkrillexとのコラボ・プロジェクト、Dog Bloodとして出演されますが、Skrillexとはどういった経緯でこのプロジェクトが始まったのでしょうか?

すごく面白い経緯なんだよ。ふたりで一緒に何かしようと計画していた訳ではないんだ。去年の夏はあまりフェスに出演せずに少し休暇を取ったんだ。ベルリンに居たんだけどね。で、彼も丁度その時ベルリンでプレイしていたんだ。それ以前に彼とは何回か一緒にプレイした事があったから僕の家に彼を招待したんだ。僕のスタジオで音楽を聴きながら話を したりしたよ。すごく楽しかった。僕のスタジオにはドラムマシーンやシンセサイザーとかいろんなマシーンがあってそれを見て彼がすごくエキサイトしていたんだ。彼は今までそういうのを見た事がなかったからね。で、そのマシーンを使って僕が音で遊んでみたんだよ。そして僕が曲を作ってレコーディングして彼に渡したんだ。で、彼がそれに手を加えてあっという間に曲が出来上がったんだ。彼はそのまま僕の家に泊まっていったんだ(笑)。

ただふたりで楽しく遊んでいた中でたまたま音楽が出来上がったんだよ。僕らはその曲をすごく気に入っていたし、リリース出来たら良いなと思ったんだ。それから、このトラックに 新しい名前を付けたら面白いとも思ったんだ。実はこのトラックに関して誰にも言わなかったんだ。でも、自分のレーベルでその曲をリリースしたんだけど9ヶ月間僕の仲のいい友達を除いて皆それが僕らだと気づかなかったんだよ。それが僕らだと気づかれたのは今年の初旬僕らがフェスでプレイした時だったんだ。彼と仕事するのは楽しいし好きだよ。自分とは異なるスタイルや他のアーティストと実験的なことをするのは本当に素晴らしい体験だよ。彼はすごく良い奴だしね。

_Skrillexといえば、代表的なダブステップ・アーティストだと思います。彼とのコラボレーションはあなたにとって大きな挑戦では?

彼の音楽は間違いなく僕の音楽とは全然違うよ。でも僕らは音楽に対して共通の姿勢を持っているんだ。彼の音楽は僕のものとはスタイルも違うし、とてもポップよりだしね。だけどそれは関係ない。僕は皆が予想出来ない事をするアーティストと仕事をするのが好きなんだ。前にChilly Gonzalesとアルバムを作ったんだけど皆びっくりしていたよね。あとはMr. Oizoとも一緒に仕事をしたよ。

他のアーティストと一緒に仕事するとで、そこからまた新しいことに挑戦したくなるんだ。常に僕は常にオープンマインドでいたいしね。 自分にとってすごく良いチャレンジだし、すごく楽しいよ。一緒に曲を作って、僕が力を入れたらその分返してくれる人が好きだね。皆でべストなアイデアをだし合ってそれがまとまるのはすごくいいフィーリングだよ。出会って音楽制作をするだけじゃなくて何か新しいものを創りだそうとしているんだよ。

_昨年10月にリリースされたサード・アルバム『Out of The Black』は、いちリスナーとして、新しさの中にも、やはりどの曲もBoys Noizeらしいサウンドに仕上がっていると思いました。ご自身のオリジナリティは何だと思いますか? 例えば、制作するときに重要視している点は?

自分の音楽に関して話すのはすごく難しいよ。僕のスタイルは常に変化するしね。良く僕の音楽のスタイルについて聞かれるんだけど本当に分からないんだ。でも多分僕のサウンドの源となっているのは僕の耳であり、感性であるとは思うよ。僕はすごく直感的なプロデューサーだしね。僕がスタジオで作業する時は自分がやっていることに関してあまり考えないようにするんだ。出来るだけ楽しもうと努めて、その瞬間に出来る事をする。だから僕にとって曲作りは難しい事ではないんだ。

友達のアーティストは3、4年かけてアルバム制作をするんだけど僕はそうじゃない。僕はスタジオで楽しみながら作業をして結果にも満足している。さっきも話したけどサウンドの源は自分の耳であり感性なんだよ。僕が音楽を作る時は他の人たちとは違った音を出そうとするそして他のアーティストとは違う流れで曲を作ろうとしているんだよ。それが僕のオリジナリティなのかもしれないね。 制作の時に注意しているのは自分がエキサイト出来る音を出せるかということかな。メロディやソングライティングは重要ではなくて音自体が一番重要なんだ。だから自分自身がエキサイト出来る音である事が重要だね。あとは楽しむ事!

_また、『Out Of The Black』での、Snoop Dogとコラボレーションは、良い意味で意外性を感じました。コラボレーションすることになった経緯を教えてください。また、今後もこのような異なるジャンルのアーティストとのコラボレーションの予定はありますか?

話せば長くなるんだけど、2009年にSnoop Dogの楽曲のリミックスをつくったんだ。丁度その頃にTwitterを使い始めて、彼に僕のリミックスをどうかTwitter上で聞いてみたんだ。そうしたら「聴いたよ、もっと他の音楽を送ってよ」ってメッセージが返ってきたんだ。 だから彼にいろんなビートを送った。そうしたらすごく気に入ってくれたんだ。でも実際お互いに顔を会わせるまでには2、3年かかったんだ。LAで初めて出会った時は彼の家にも行ったよ。そこでレコーディングをしたんだけどすごく良いものが出来上がったよ。 僕の目標はエレクトロニックなサウンドを使ってかっこいいラップのトラックを作る事だったんだ。このトラックにはすごく満足しているよ。

_また、先月リリースされたEP『Go Hard』は、SoundCloud上で全曲フルで公開されていますが、普段からSoundCloudは他のアーティストの楽曲もチェックするのに使われますか?

SoundCloudは好きだよ。いろんな曲を発見出来るしね。色々探しながら色んなアーティストを見て新しい音楽を聴くのが好きだよ。それは僕が昔からやっていることなんだけど僕がレコードを買い始めた時は毎日レコード屋に行って新しいものを見つけようとしていたんだ。今はレコード屋もなくなってしまったんだけど、まだ毎日僕は新しい音楽を探しているよ。

_InstagramやVineなどをTwitter上で公開されていますが、SNSは私生活でよく利用されるのですか?

好きな点もあるし嫌いな点もあるよ。例えば、Facebookに関して言えば僕のアーティスト用のページはあるんだけど個人のページはないんだ。でもTwitterに関しては他のアーティストとの良いコミュニケーション・ツールだと思う。僕の好きなアーティスト達の最新情報もすぐに手に入るしね。ファンにとっても同じだと思うよ。もしファン達が僕の音楽を好きで僕をフォローしていたら、僕の最新情報や僕が今何に取り掛かっているのかが一瞬で分かる。あと僕は旅していることが多いから良い暇つぶしでもあるんだよ。飛行機の待ち時間や数時間かかる車移動の時に友達やファンとコミュニケーションを取るのに使ったりしているよ。でもインターネットには違和感を感じるときもあるからね。LoveとHateの両方かな。

_日本では以前にもBNRのオフィシャル・パーティーの開催など度々日本でプレイしているとは思うのですが、日本のクラブシーンに対してどう思いますか?

間違いなく世界一だと思うよ。アンダーグラウンドのシーンもすごく大きいと思うし日本のサブカルチャーシーンもすごいと思う。オーディエンスも違うしね。日本ではオーディエンスが知っている曲を掛けないといけないというプレッシャーもないしね。アメリカの大きなステージでDJする時は皆が知っている曲をかけなくちゃっていうプレッシャーがある。日本では、すごくオープンマインドだしエレクトロニック・ミュージックやアンダー グラウンドの音楽に精通している。皆音楽を良く知っているしいつも新しい音楽を求めている。だから日本でプレイできるのは僕にとってすごく光栄なことなんだよ。日本でプレイするのは大好きだよ。

_曲作りはもちろん、ワールドツアーにプロデュース活動、そしてデビュー時代からずっと継続的にリミックスワークを行うなど精力的に活動されていますが、その原動力はどこからくるのでしょうか?

僕は音楽に対してすごく情熱があるからね。最初は14、15歳くらいの時に単なる趣味としてDJを始めたんだ。レコードを買うために2つの仕事をしていたよ。で、ミッックステープを作って友達にあげていたよ。世界中でプレイするDJになりたいなんて当時は全く思ってなかったよ。ただ自分のやりたい事をしていただけなんだ。当時14、15歳で僕が聴いていたようなハウスやテクノを聴いていた人は友達の中でも居なかった。僕にとってはすごく特別なことだったんだ。そんな感じで新しい音楽を常に発見するということが今でも一番の原動力になっているよ。だからDJするのがすごく好きなんだ。音楽業界では常に新しい音楽や、新しい制作技術やアーティストが生まれている。そういうものを発見するのが好きだし、それをDJとしてプレイするのが好きなんだ。それからプロデュースも好きだし、他のアーティスト達と仕事をするのも好きだよ。色んな人に会いながらね。僕はすごくラッキーだと思うよ。自分がやりたいことをしながら世界中を旅出来るからね。素晴らしい場所にも行けるし最高だよ。自分がやっていることが本当に好きだよ。

_デビュー当初からの挑戦的なスタンスは変わりませんが、デビュー当時から変わったことはありますか? 着実に進化し続けていくので本当に目が離せないのですが、今後挑戦していきたいことなどはありますか? 今後の活躍にもぜひ期待しています。

正直に言うと今の状況が続けばすごく嬉しいよ。今、Gonzalesと新しいアルバムに取り掛かっているんだけどすごくエキサイトしているよ。それ以外で言うと僕がやりたいように音楽を作っていきたいね。でも特に計画している事はないんだよ。ただ自分のやるべきことをやり続けたいよ。さっきも言ったけど今みたいな状況が続けられたらすごく嬉しいよ。

インタビュー・文:細田 真菜葉
1994年生まれ。UNCANNY編集部員。青山学院大学総合文化政策学部在籍。主にファッションを得意分野とし、DJとしても活動中。

取材協力:田中 木里子(Beatink)

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Artist: Boys Noize
Title: Out of the Black
Release date: 2012.10.03
Label: Boys Noize Records / Beat Records
Number: BRC-352
Price: ¥1,980(tax in)
日本盤特典: ボーナス・トラック収録

01. What You Want
02. XTC
03. Missile
04. Ich R U
05. Rocky 2
06. Circus Full of Clowns feat. Gizzle
07. Conchord feat. Siriusmo
08. Touch It
09. Reality
10. Merlin
11. Stop
12. Got It feat. Snoop Dogg
13. Yellow feat. Siriusmo *Bonus Track for Japan