- INTERVIEWSJuly/10/2013
【Interview】TOWA TEI – “LUCKY”
前作『SUNNY』からは約2年ぶりとなるが、昨年は『MACH2012』をリリース、そして自身初となるコラージュ展の開催など、コンスタントに独自のスタンスで音楽シーンに限らず幅広く活躍するTOWA TEI。そんな彼の7枚目のオリジナルアルバム『LUCKY』が7月10日に発売となった。アートワークを草間彌生が担当し話題となっている今作も一曲一曲にエレガントでどこかエキゾチックな”TOWA TEIの音”が詰まっており、純粋に音楽として、そしてポップアートとして楽しめる内容となっている。洗練されたセンスから生み出される音の粒子たちを、今回も最高のパッケージと共に楽しめることは音楽ファンにとってもまさしくLUCKYだ。
今回ニュー・アルバムに関することはもちろん、今の音楽シーンなどについても話を聞いた。
_まず今作に参加されている方々についてお聞きしたいのですが、「RADIO」でフィーチャリングされている玉城ティナさんに声をかけようと思ったのはなぜでしょうか。
最初に言っておくと、参加アーティストに関しては全員第一希望なんですよ。オファーしたら全員OKしてくれてそれがまずLUCKYでした。それで玉城ティナちゃんは、「RADIO」って曲を作ってて、これはリード曲でビデオ作るから可愛い子はマストだなと思って。それで誰にしようか悩んでる時に友達のヨネちゃん(フォトグラファーの米原康正)に聞いたら、「テイくん、Zipper とかNYLONとか読んでる? 新しい可愛いモデルたくさん出てきてるよ」って言うから二冊買って新幹線でバーッと読んで、そしたらなんかティナちゃんが引っかかったんですよね。それで検索してみたら、歌を歌ってる動画があって、「この子歌えるなー」と思って。歌えるしルックス可愛いしってことでオファーしたらOKしてくれて。思った通り勘のいい子でしたね。
_では「APPLE」で一緒にやられている椎名林檎さんはどういった経緯でしょうか?
林檎さんに関しては、実は彼女がデビューした時からずっとこの人といつか一緒にやりたいなと思っていたんですよ。タイミングがたまたま2013年までなくて。それで曲を作っていて、あーこれどう考えてもインストじゃねえなーって思ってそれを保存するときになんとなく「APPLE」ってつけて、その瞬間に林檎さんだったらいいなーと思ったんですよね。彼女が「とっておきの曲をありがとうございました」と言ってくれたので、今回一緒にやれて良かったです。
_今作は、初めて作詞作曲編曲テイさんご自身が手がけたということですが。
作曲編曲はいつも自分なんですが、作詞に関しては「RADIO」や「APPLE」はとりあえず自分で書いたものを幸宏さんや林檎さんに渡したんです。そしたらみなさんこれでいいとおっしゃってくれて、そのまま通ったっていう感じで結果的になんですよ。
_さらに「GENIUS」ではご自身で歌ってもいますね。
「GENIUS」って曲はへたくそな人が歌ってて、最後天才的にウマい人がいいなと思って。「へたくそな人誰だ?」と思って、自分だなと思ったんだよね(笑)。それで自分で歌うことにしたんですよ。それで手島さんとはずっとやってみたいと思ってたから、最後は手島さんに頼もうっていう。教授は “独特の味”ですね。久しぶりに聴きたいなと思って。
_今作は歌詞にアーティストの個人名が入っていたり、アートをリファレンスにしていたりと、アートからのインスピレーションが特に強いのかなと感じました。
いつもなんですけどね。音楽にはもちろんインスパイアされるんだけど、例えばダフト・パンクの新作が生っぽい音でどうのこうのっていうのがあったりしても、他人がやってることへの興味っていうのがだんだん薄れてきちゃって。前は今より自分に自信がなかったから、自分の曲のミックスダウンの時に流行ってる音楽、売れてる音楽と聴き比べて、「負けてねえぞ」なんてやってたけど、今はそんなことしないというか。だったら草間さんの画集とか見て、「あ、今やってる曲間違ってないな」とか、「今やってるこの曲ちょっとくすんでるかな」っていう、あくまでも自分の中での整合性なんだけど、そういうことをしたりね。だから具体的にこの作品からっていうのはないんだけど、尊敬する方々の画集なんか見て、そのエネルギーを自分のエネルギーに変換して音楽作ってるっていう感じです。
_今回アートワークを草間彌生さんが担当されていますがどういった経緯で実現したんでしょうか。
親友の山本宇一(空間プロデューサー)って人が、勝手にオファーしたんだよね。僕に内緒で草間さんの事務所の方に「テイくんのアルバムのアートワーク草間さんやったらいいんじゃない?」なんてことを言ったら脈アリそうだったらしく、「嘘? LUCKY!」ってことで正式にオファーして、まさか書き下ろしてくれるなんて思ってなかったですよ。本当にLUCKYです。早くからアルバムタイトルは『LUCKY』にしようと思ってたんだけど、LUCKYって言ってるとLUCKY続くんですよ。言霊だと思うんだけど。
_玉城ティナさんであったり、「ABBESSES」で歌われている中田綾千さんなど、普段歌手として活動されていない方々を起用するのは意識的にされているのでしょうか?
無意識的にかな。素人の歌声って聴いたことないでしょ? 素人が何億と世の中にいるわけで、その中から縁あった人にって感じ。もちろん誰でもいいってわけではなく、フランス語しゃべれたり、若々しい子がいいなっていうので絞っていって、あとはホントに縁ですよね。だから意識的に素人を選んではいないんだけど。でも、そういえばこないだ幸宏さんに「テイくんはホントにド素人を大抜擢するよね」って言われちゃった(笑)。
_では最近の音楽シーンなどについても伺いたいと思います。最近はJukeやTrapなど流行っていたりしますが、その辺も頻繁にチェックされていますか?
もちろん聴いてはいるけど、ダンスミュージックの新譜ってことに関してはもちろんチェックしていますよ。
_現在音楽をチェックする際にわざわざレコード屋に行って試聴して、というよりもSoundCloudなどを利用してウェブ上でチェックする人が多いかと思うのですが。テイさんは普段どのようにチェックされていますか?
SoundCloudはまず見ないなー。レコ屋のサイトで試聴したり、BeatportとかJunoとかでチェックするのが多いかな。まあ普段のルーティーンではだいぶなくなってきたけど、渋谷とか神田とか行った時に体力あればたまにレコ屋行ったり、NY行ったときに久しぶりにレコード買ってきたりとか。ただもう中古レコード屋のカビっぽい臭いが苦手で(笑)。若い時は気になんなかったけど気になってきちゃって。と言いつつもあいかわらず古い音楽は貪欲に漁っていますけどね。
_NY時代は足で稼いだものが糧になったと以前インタビューで読んだのですが。
もうそんな感じではないですよ。やっぱりステージって変わっていくものだし、人生って生まれてから死に向かうけど、RPGのようにステージをクリアしていかないとつまらないと思うんだよね。だから「継続は力なり」って若い時は馬鹿にしてたけど、それも一理あると思う。と同時に、死に向かう分体力的な衰えってのもあるから、次に行くために切り捨てていかないといけないこともあるんですよ。だから若い時みたいに、最新の音楽だったり、これを知っておかないとおっさんじゃん、なんてのはないし。もうおっさんだからね。おっさんで何が悪いっていう(笑)。
_では、Bandcampなどを使って音楽をリリースする若いアーティストが増えていますが、その辺に関してはどう思いますか?
Bandcamp……、知らないから何も思わないです(笑)。そういえばよくTwitterなんかで「曲作ったんでコメントください」なんてあるんだけど、申し訳ないけど正直そこまでチェックしてる暇がないんです。デモも受け付けてないし送ってこないでください(笑)。ただ、もちろん自分自身クローズドしたくないってのはあるんだけど、やっぱり全部をっていうのは無理なんだよね。だからそういうことで言うと、三年前くらいから意識的に切り捨ててるのは現場ですね。
_長年やられていたレギュラーイベントのMOTIVATIONも先日FINALということでしたね。
まあ、またなにか縁があればやったりするかもだけどね。現場のことに関しては何はともあれ歳だし、あとやっぱりクラブの良かった部分っていうのが今はずいぶん変わってきちゃったんですよ。良かった部分をすごく知っているからそれを若い人に伝えたくてレギュラーイベントとか定期的にやってましたけど、もうそのステージもいいかなというか。正直頑張ってた部分もありますし。だから別に今のクラブシーンを否定しているわけでは全然ないし、今の若い人は今の若い人で盛り上がればいいし。そもそも僕自身「昔は良かったな」っていうタイプではないから、次行こうっていう。その分増えることがあるし。例えば去年初めて個展やったりね。
_近年リリースペースが速いなと感じていたのですが。
それもだから切り捨てたものがあるから。他の人のプロデュースとかも基本やらなくなったし。集中と選択っていう話です。どこに比重を置くかっていう。今は作曲にベクトルが向いてるかな。だから作曲増えますよ。プロデュースというかやっぱりモノ作るの好きなので、そこを今はすごく楽しんでますね。楽しいことを続けられてLUCKYっていうことですかね。そして次に楽しみなのは孫だね(笑)。
_次はそのステージということで(笑)。
うん、そうだね(笑)。
取材・文:渡邉直之
1992年生まれ、大分県出身。青山学院大学音楽芸術研究部部長。ブラックミュージックやクラブカルチャーなどを通して音楽や芸術の研究を行っており、DJとしても活動。
取材:豊田諭志
1990年生まれ、大阪出身。UNCANNY編集部員。青山学院大学音楽芸術研究部の前部長。
Artist: TOWA TEI
Title: LUCKY
Release Date: 2013.07.10
Number: WPCL-11516
Price: ¥2,800(税抜き価格)
01.RADIO with Yukihiro Takahashi & Tina Tamashiro
02.BLUE FOR GIRLS,PINK FOR BOYS
03.ABBESSES with Ayaka Nakata
04.KATABURI
05.LICHT
06.TERIMA KASIH
07.JUXTAPOSE
08.APPLE with Ringo Sheena
09.WARM JETS
10.GENIUS with Aoi Teshima
11.LOVE FOREVER