INTERVIEWSDecember/21/2018

[Interview]Soccer Mommy – “Clean”

 Soccer Mommy(サッカー・マミー)は、米テネシー州ナッシュビルを拠点に活動するSophie Allison(ソフィー・アリソン)によるプロジェクト。高校を卒業する2015年の夏にBandcampにアップした楽曲が徐々に支持を集め、〈Fat Possum〉と契約。今年3月に同レーベルよりリリースされたデビュー・アルバム『Clean』では、恋愛関係における他者からの承認欲求や、自身の欠点、脆さと向き合う彼女の等身大の姿が鮮やかに表現されている。

 来年1月には初の来日公演を行うことが発表されており、来日への期待も高まる中、デビューのきっかけや新作について本人に話を聞くことができた。

__はじめに、自分のプロジェクト名をSoccer Mommy(教育熱心な母親)にした理由について教えてください。

“Soccer Mommy”という名前は元々自分のTwitterで使っていた名前。高校生の終わりくらいのとき、Bandcampに曲をアップするようになって、BandcampからTwitterに曲をアップしていたから自然にその名前を使うようになった。だから自分のTwitterでのジョークがそのままプロジェクト名になっている。

__6歳から音楽を始めて、2015年からSoccer MommyとしてBandcampに楽曲をアップするようになったとのことですが、本格的に音楽を始めようと思ったきっかけについて教えてください。

私は物心ついた頃からずっと曲を書いていて、それを自分の中だけに留めておくことがほとんどだったけれど、たまにそれをレコーディングしたりしていた。でも高校生の終わりにレコーディングのやり方やプロデュースについてちょっと学んでみたくなって、それで始めた。それから曲をいじってみたり、命を吹き込んだりして、自分が満足できるようなものが作れるようになったら、それをオンライン上にアップしていくようになっていった。

__大学進学があってナッシュビルからニューヨークに移り住んだあと、本格的に音楽活動を開始するために大学を辞め、再びナッシュビルに戻ったそうですが、ミュージシャンにとってナッシュビルはどのような場所だと思いますか。

ナッシュビルはいくつかのタイプの音楽にとってはいい場所だと思う。SSWやカントリーミュージックとか。でもインディ・ロックにとっては、あまりふさわしい場所ではないと思う。ニューヨークに引っ越したことは確実に私の助けになった。私と同じような音楽の、より大きなシーンに触れていただけだけど、ニューヨークに引っ越していなかったら自分の音楽がそれと同じレベルに到達していたかどうかわからない。でもナッシュビルは本当にいい場所だし、そのコミュニティには支援してくれる人もたくさんいる。もしカントリーミュージックやSSWになりたい、もしくはカントリーのバンドでプレイしたいと思っているならナッシュビルは確実にいい場所だと思う。

__元々ベッド・ルームで全てDIYで楽曲制作をしていて、そこからファースト・スタジオ・アルバム『Clean』をフルバンドを従えて制作したとのことですが、他の人を制作プロセスに巻き込むことに苦労はありましたか。

『Clean』を作ったとき、ライヴ演奏をするためのドラマーしかいなかった。ベーシックなトラックを作ってプロダクションをしたあとに、ギターとプロデューサーを付けた。あまり苦労はなかったし、自分で選ばずに相性の悪いプロデューサーやミュージシャンたちと組んでいたらもっと大変だったと思う。でも私には状況をコントロールする力があったし、一緒に作業をした人たちは自分がやりやすいと思う人たちだったから、あまり難しいとは思わなかったかな。

__『Clean』は、Deerhunterなども手掛けるGabe Waxがプロデュースを手掛けていますが、彼は作品にどのような影響を及ぼしましたか?

Gabeは完成したサウンドに大きな影響を与えている。自分の曲のいくつかは、こうしたいという特定のアイデアもあまり持っていなかった。ただ曲といくつかのパートだけ書いていたんだけど、彼はそれをまとめて今の形に仕上げるのをすごく手伝ってくれた。

__アルバム収録曲「Your Dog」のMVはシカゴを拠点にするフィルムメイカー・コレクティヴ、WEIRD LIFE FILMSが手がけています。コラボレーションのきっかけや、MV制作にあたってどのような意見の交換があったか教えてください。

Weird Life Filmsは、私の所属している〈Fat Possum〉と前に仕事をしていたことがきっかけで見つけて、彼らの作品をとてもいいなと思っていた。ミュージック・ビデオは、私がそのビデオの大きなアイデアみたいなものを思いついて、それを彼らに投げたら、こういうショットを撮ろうっていう具体的なアイデアを出してくれた。完成したものにはとても満足してる。本当に楽しいって思った。

__同じく収録曲の「Scorpio Rising」は、アルバムのクライマックスだそうですが、具体的に本楽曲はアルバム全体の中でどのような役割を担っていますか?

『Clean』は、私が自分自身や、恋愛関係においてどうなるか、あとその時の恋愛関係についての考えが大きく反映されている。「Scorpio Rising」は、最後に自分の欠点や弱さ、そしてそれらを自分を守るために利用しようしても傷ついてしまうこともある、と気づくことについての歌。その曲以降、アルバムがより内省的なステージへと変わっていくと思う。

__「Scorpio Rising」のMVのテーマについても教えてください。

アメリカ南部の夏というか、天体観測をしたり、そういうものを捉えたかった。「Scorpio Rising」を書いているとき、私はいろいろなことを経験していて、ナッシュビルのある公園で友達や当時付き合っていた人と小惑星や流れ星を探したりして多くの時間を過ごしていた。「Scorpio Rising」は、その夏のことがテーマになっているから、そういう場面をナッシュビルで捉えたかったし、ミュージック・ビデオのメインのアイデアも、そのヴィジュアルを捉えることだった。

__これまでにMitskiやPhoebe Bridgers、Jay Somなどの女性アーティストのツアーに同行していますが、ツアーを一緒に回った中でアーティストとして何か学んだことがあれば教えてください。

なんだろう……。ツアーをするたびに少しずつ学んでいくものだと思うし、特に始めたばかりのころだとなおさらそうだと思う。でも、特にJay Somがその3人の中でも最初に一緒にツアーをしていると思う。それ以外も合わせると2回目か3回目のツアーだったかな。今までやってきた中で一番長いツアーでもあった。ツアーで必要なものとか、何があれば安心かとか、友達と旅行に行くんじゃなくて、プロとしてどうツアーを回るかということを学んだ。あと、稼ぎが少ないけれど、それで何とかやっていこうと全力を尽くすミュージシャンとして生きるとはどういうことか学んだ。お金も稼げないし、むしろ失うときもあるからね。Mitskiは、1回しかオープニングを務めたことがないんだけど、彼女は本当にパフォーマーとしてもアーティストとしても素晴らしい。彼女の音楽や、プロフェッショナルな姿勢を生で見て、とても刺激を受けた。

__Phoebeとのツアーはいかがでしたか?

もちろん、Phoebeからも刺激を受けた。彼女とのツアーは1カ月近くあって、私たちがやってきた中で一番長いツアーの一つだった。彼女のライブは本当に素晴らしいし、彼女のバンドも本当に才能があって、毎晩どのセッションも素晴らしかった。みんな真剣で、独自な方法で物事をまとめることができていてすごいと思った。彼女とツアーをして、毎日彼女やバンドに会えたことで、自分のライブをもっと拡大していきたいと思うようになった。

__来年1月には初の来日公演が行われますが、どんなライブセットを予定していますか?

日本に行くのは初めてだから、とても楽しみにしてる。ショーが終わったあとに何日間か滞在して遊ぶつもり。セットに関しては、新しいアルバムの曲をたくさんやる予定。アルバムと同じくらいのエネルギーを感じられるようなライブにしようとしていて、悲しいスロウな曲が多い分、観客の人たちと楽しめるようにしたい。私たちはアップビートで楽しい曲もやって全体を中和させるのが好きなんだけど、昔の曲も何曲かやる。でもほとんどが新しいアルバムからの曲になると思う。

Clean:
1. Still Clean
2. Cool
3. Your Dog
4. Flaw
5. Blossom (Wasting All My Time)
6. Last Girl
7. Skin
8. Scorpio Rising
9. Interlude
10. Wildflowers

ダウンロード・ボーナス・トラック
1. Be Seeing You
2. Blossom (Wasting All My Time) (Demo)

SOCCER MOMMY JAPAN TOUR 2019
日程: 2019/1/10 (Thu)
時間: OPEN 18:30 START 19:20
会場: Shibuya WWW
東京都渋谷区宇田川町13-17 ライズビル地下
料金: スタンディング 前売り:¥4,500
ドリンク代別

お問い合わせ
SMASH 03-3444-6751

インタビュー・文: 小林香織