ARTICLESOctober/16/2018

[Featured]Baths/Geotic来日公演──旅・ファンタジー・現実逃避、そしてロマンティシズムの世界へ

 LAのアーティスト、Will Wiesenfield(ウィル・ウィーゼンフェルド)による、二つのプロジェクト、Baths(バス)とGeotic(ジオティック)。今回のジャパン・ツアーでは、Bathsとして、東京、大阪で2公演、さらに日本では初となるGeoticとして東京公演が開催される。

 Wiesenfieldにとって、Bathsとはどのようなプロジェクトなのか。Wiesenfieldは、Bathsとして、2010年、LAの名門レーベル〈Anticon〉から、21才の時にデビュー・アルバム『Cerulean』をリリースしている。そしてLAビートミュージック・シーンを新たに担う存在として期待と注目を集める中、Wiesenfieldは、病を患い、重く苦しみ、そしてそれと闘いながら、セカンド・アルバムとなる『Obsidian』を完成させ、2013年にリリースする。無関心/無気力を一つのテーマに掲げたこの作品では、死そのものを表象するような幽玄的な美しさと、さらにそれらの情動を生へと反転させるような躍動感が見事に表現されている。

 そして昨年、2017年には、サード・アルバム『Romaplasm』をリリースする。Wiesenfieldは、同作においてロマンティシズムをテーマに掲げ、ファンタジーと現実逃避を表現したと述べている。それら収録された楽曲には、これまで以上にアクティブなBathsの独創的なビートメイキングが備わり、Wiesenfieldが崇敬する『新世紀エヴァンゲリオン』を直接的なリファレンスとして描いた「Adam Copies」や、「音楽に対して真剣だからこそ、映像は、不真面目なものを制作した」というMVが制作された「Out」など、Wiesenfieldの想像する美しく壮大なファンタジーの世界が描かれた楽曲たちが収録されている。

 そして今回、Bathsのライブは、二人による編成となっている。彼らの躍動感溢れるパフォーマンスによって、リアルタイムで描かれるであろう、Wiesenfieldが生み出すファンタジーと現実逃避による独特な音像の空間──それらの体験は、その日だけの唯一のものになることは間違いない。

 Wiesenfieldのもうひとつのプロジェクト、Geotic。主に、サイド・プロジェクトとして、『Morning Shore (Eon Isle)』や『Sunset Mountain』などのアンビエント作品に続き、2017年には、Wiesenfieldは、Geotic名義として初のスタジオ・アルバムとなる『Abysm』を〈Ghostly International〉からリリースしている。同作は、Geoticのテーマであるアンビエントの要素を含みながら、ダンスミュージックとして完成された作品に仕上がっている。Wiesenfieldが、自身のインタビューで、「ダンスミュージックっていうものは、普通は大勢で楽しむものかもしれないけど、僕にとってのそれは一人で聴くもの。だから、僕と同じような考えのリスナーのために音楽を作っている」と述べるように、同作では、内省的な繊細さを内合した、エレクトロニック・サウンドで構築された独自のダンスミュージックの世界が描かれている。

 そして今月、Wiesenfieldは、Geoticのセカンド・スタジオ・アルバム『Traversa』をリリース。旅にインスパイアされた楽曲を集めたという同作は、Wiesenfieldによれば、「現実逃避と旅というその二つの間にあるもの」が描かれているという。Wiesenfieldは、アクティブなリスニングのBathsに対して、Geoticは、パッシブなリスニング作品だと語っている。では、Geoticとしてのライブ・パフォーマンスは、Bathsとどのように異なるのか。作品からは、アンビエント、ダンスミュージック、そして、旅をキーワードとしながら、Geoticの世界観へと没入することで、まさにWiesenfieldが言うような、私たちの意識が違う場所へと持っていかれるような体験が期待できる。さらに、Geoticの公演では、Wiesenfield自身も作品を敬愛し、世界的な評価を獲得している日本のアーティスト、食品まつり a.k.a foodmanのライブ・アクトも決定している。

 BathsとGeotic──Wiesenfieldは、過去の様々なインタビューにおいて、自身のロマンティシズムについて言及している。一般にそれは、現実を離れ、夢や空想に浸ることを意味している。すなわち二つのプロジェクトは、それぞれが異なるアプローチを見せながら、目的地は同じ場所へと向かっているとも言える。BathsとGeotic、それぞれのアルバムを持って、Wiesenfieldが描き創造する空間、そして彼のロマンティシズムの世界を体感できる、3公演となるのではないだろうか。

■公演情報
Tugboat Records presents Baths Live in Japan 2018
東京公演

日程: 2018/10/22(月)
時間: OPEN 19:00 / START 19:30
会場: 渋谷WWW
レーベル割価格 ¥4,300(ドリンク代別)*限定100枚
https://goo.gl/forms/McdPioHT9vFL6BbB2
前売り価格 ¥4,800(ドリンク代別)
オープニング・アクト: Sodapop(Anticon. / Dublab)
各プレイガイド Pコード:130-011/Lコード:70460/e+/WWW店頭

大阪公演
日程: 2018/10/25(木)
時間: OPEN 19:00 / START 19:30
会場: 大阪 Socore Factory
レーベル割価格 ¥4,000(ドリンク代別)*限定50枚
https://goo.gl/forms/McdPioHT9vFL6BbB2
前売り価格 ¥4,500(ドリンク代別)
オープニング・アクト: Sodapop(Anticon. / Dublab)
各プレイガイド e+ のみ

Tugboat Records presents Geotic Live in Japan 2018
日程: 2018年10月23日(火)
時間: OPEN 19:00 / START 19:30
会場: CIRCUS Tokyo
料金: レーベル割価格 ¥3,500(ドリンク代別)*限定50枚
https://goo.gl/forms/lCgKeopvmrrjs7543
前売り価格 ¥4,000(ドリンク代別)
オープニング・アクト: 食品まつり a.k.a foodman
各プレイガイド Pコード:129991/Lコード:71470/e+

主催/企画制作:Tugboat Records Inc.

文: T_L