INTERVIEWSApril/06/2018

[Interview]Meishi Smile – “FATHOM”

 Meishi Smileは、LAを拠点とするプロデューサー。〈ZOOM LENS〉を主宰し、自身のアルバム『Lust』、『…Belong』のほか、東京を拠点とするLLLL、Yoshino Yoshikawaや、ロンドン/シンガポールを拠点とするYeule、フィリピン出身のU-Pistolなどの作品をリリースしている。
 
 今年1月に、〈Maltine Records〉とのコラボレーション作「Always,」をリリース。同じく2月には、東京・CIRCUS Tokyoにて、〈Maltine Records〉、〈Secret Songs〉とコラボレーションしたイベント「AI.OFFLINE」を開催している。

 今週末となる2018年4月8日に、新たに〈ZOOM LENS〉主催のイベント「ZOOM LENS Presents: FATHOM」が、同じく東京・CIRCUS Tokyoにて開催される。同イベントでは、Meishi Smileのほか、3月に最新EPをリリースしたLLLL、初来日となるYeuleの出演に加え、レーベル外から、テンテンコ、Sho Asakawa、小林うてな、Ermhoi、Smany & Nyan-Nyan Orchestraが招かれ、その出演が発表されている。

 イベント直前となる今回、Meishi Smileに、「FATHOM」を中心に、〈ZOOM LENS〉について、また、作品「Always,」などについて、メール・インタビューを行なった。

__〈ZOOM LENS〉は、2009年にスタートしていますが、当時、なぜこのレーベルをはじめようと思ったのでしょうか。

音楽的に共感できる人が周りに誰もいなかったから、誰かと関わりを持てる自分の場所を作りたかった。僕は哲学を専攻するはずだった。それからジャーナリズムも。僕はそのどちらも何もやらなかった。レーベルは、僕がどのように世界を見ているかを人々に伝えるための僕自身のやり方なんだ。

__あなたは、Meishi SmileとYūko Imadaとして作品をリリースしています。Meishi SmileとYūko Imadaの、それぞれの名義での作品の違いについて教えてください。

Yuko Imadaは、”ノイズ”と”アンビエント”のプロセスに音響的、概念的に限定されたものだけど、僕の愛はいつも、よりポップな作品の範疇にある。僕はコンストラクトのある音の間で、その哲学を脱構築して顕在化させたかった。それで、Meishi Smileが生まれた。僕にとって、Yuko Imadaは、そんなに多くのことを言うことができなかった。永遠に続けたいと思うものではなかったんだ。

__また同じく、両方の名義に共通している点はどんなところでしょうか。

両方のプロジェクトは、アジアのポップカルチャーのダークサイドを検証する働きをもっている。しかし、Yuko Imadaは、否定と敵意にだけ焦点を当てている。Meishi Smileは、様々なアイデンティティーを反映したものになる。Meishi Smileがノイズをやるときは、それは単なる自己の対立というよりむしろ、より人間の対立についてのものになる。

__「Always,」を1月にリリースしています。作品について「デジタルと実生活の関係性の崩壊の局面」というような説明がありましたが、この作品のテーマについて詳しく教えてください。

僕にとって、デジタルと実生活での関係性の間の区別はもはやないんだ。僕が今オンラインに投稿するとき、人間というよりは、ある種のブランドのようなものを感じる。僕たちの多くは、自分たちが最も本物の自分自身になれる場所として感じたからインターネットに向かっていたと思う。でも今は、インターネットは少し本物ではないものと感じる場所になっている。

__また、同作での〈Maltine Records〉とのコラボレーションについての解説の中で、「デジタルカルチャーの劇的な変化」について言及していますが、具体的にはどのような変化を指しているのでしょうか。

日に日に増していく不安に満ちた世界の政治的な環境と、消耗を続ける資本主義の力学によって消費されるインターネットによって、インターネットは、かつてのように”安全な場所”ではもはやなくなっている。社会正義、意識、個性といった目的は、最初に僕たちを壊した同じブランドによって、利用され、汚染されている。新しいユース・カルチャーが必要とされている。僕たちは、以前よりも、より自己を認識する必要がある。僕たちは、来るべき未来のために、アート、カルチャー、ライフの次のステージを形作らなければならない。

__『Noisey』のインタビューで、”We’ve begun to ask ourselves, what is a net artist?”(僕たちは自問し始めた、何がネット・アーティストなのだろうかと)と回答していますが、改めて、この発言の真意を教えてください。

〈Maltine Records〉のtomadが、あるとき『ジャパンタイムズ』の中で、「ある意味で、すべてがインターネット・ミュージック。それらは本当に特別なものではもはやなくなっている」と言っていた。インディペンデント・レーベルとメジャー・レーベルの音楽、インターネット上の音楽には、明確な違いがあった。インターネット・アーティストであることは、ある種の哲学であったし、ルールを壊し、人々がどのように音楽を制作し消費するかを変化させた。インターネット・ミュージックにおけるその特別な時間と場所は、パンクが死んだように、今や死んでしまっている。しかしながら、これらはどの音楽シーンでも起こる。僕たちは、特定の時代にだけ生きることを止めて、変わる必要があることを認識することが早ければ早いほど良くなると思う。僕はノスタルジアを壊したいんだ。

__4月8日に東京のCIRCUS Tokyoで「ZOOM LENS Presents: FATHOM」が開催されます。このイベントのテーマを教えてください。

「FATHOM」には、何が理解されていないかを知るという意味がある。これは、〈Maltine Records〉、〈Secret Songs〉、〈ZOOM LENS〉のインターネット・アーティストが出演した前回の僕たちのショウ「AI.OFFLINE」と比較すると、深いレベルで対照的なものになる。「AI.OFFLINE」は、僕たちが誰だったかということへの最後の別れとして見ていた。これは再生(rebirth)なんだ。

「FATHOM」は、〈ZOOM LENS〉のオーディエンスと音楽文化の社会構造に挑戦することを目的としている。僕たちは、女性かまたは性別やセクシュアリティの共通バイナリに適合していないと認識されるアーティストを出演者として招待した。多様性の欠如というジレンマは、日本だけではなく、世界的なものだ。僕は、〈ZOOM LENS〉が、政治的、哲学的に何者であるかという、より確固なスタンスを確立したい。僕たちは、単なるレーベル以上のものであり、僕たちの音楽は、クラブミュージックというだけではない。でも、あなたは自由にダンスして良いし、好きなように泣いたっていい。

__今回、Yeuleが初来日公演を行いますが、彼女が〈ZOOM LENS〉から作品をリリースするようになった経緯を教えてください。また、レーベルの主宰者として、彼女のどの点を評価しているのでしょうか。

Yeuleとは、彼女が本当に若かった頃にオンライン上で出会った。最初に彼女の音楽を聴いた時、僕は、とても強い彼女が向かう先のビジョンを持つことができた。僕は、とてもエモーショナルに彼女の音楽に共鳴したんだ。彼女がやるすべてのことは、とてもよくキュレーションされていて、本物だ。彼女は、プロデューサーであり、モデルであり、映像作家でもある。彼女は真のアーティストそのものであり、唯一彼女が、彼女自身のやり方を定義し続けることができる。

__〈ZOOM LENS〉では、LLLLのプロジェト”Chains”を実施し、4作のEPが完成しました。ご自身やYeuleも作品に参加していますが、レーベルとして、なぜこのプロジェクトを行おうと思ったのでしょうか。

“Chains”については、最初は、2016年にLLLLと東京で話し合った。インターネット上の誰もが、とてもクイックに音楽をリリースするけど、僕はそれをほとんど無視することを選んだんだ。それは圧倒的な量でもあるし、クリエーターとリスナーの両方に義務のようなものを感じさせることもある。“Chains”の楽曲たちは、LLLLのアーティストとしての物語と一致している。最初に僕たちが話し合ったコンセプトのひとつは、悲しみの5つのステージと、1年という期間で、人間としてLLLLの成長を見せることだった。僕たちは、4つの“Chains”のEPをリリースした。そして、それらの感情を含み、編集したもうひとつの作品をリリースしたいと思っている。

__「ZOOM LENS Presents: FATHOM」には、〈ZOOM LENS〉以外から、Tentenko、Sho Asakawa、Utena Kobayashi、Ermhoi、Smany & Nyan-Nyan Orchestraが出演します。それぞれアーティストについて、なぜ出演をオファーしたのか教えてください。

「FATHOM」の各アーティストは音楽的にも社会的にも、より大きな物語に挑戦する何かをしていると感じている。Tentenkoのノイズとポップの邂逅や、Sho AsakawaのLGBTの問題に対してはっきり物を言うことであれ。彼らは幅広いジャンルにまたがっているけど、彼らが一緒になると、みんなは緊迫感と興奮を感じるだろう。LAと日本の両方で、いつも同じアーティストが一緒になって演奏をし、同じオーディエンスをいつも見ている。僕はみんなに、〈ZOOM LENS〉のイベントで、異なる場所から体験を共有することで、あなたがその一員であると感じて欲しいんだ。

__Meishi Smileとしては、どのようなライブを予定していますか。

前回に比べて、Meishi Smileのパフォーマンスは、異なったものになるように制作し始めた。前回の東京でのセットは、より”フルバンド”として提示され、エネルギッシュなダンスミュージックとポップ・ミュージックにより傾倒していた。「FATHOM」では、より内省的な方向に進んで、僕のアルバム『…Belong』のような、エモの要素や、パワー・エレクトロニクスに向かわせるつもりだよ。

__〈ZOOM LENS〉は、レーベルをスタートしておよそ10年になりますが、今後の展開についてどのように考えているのか教えてください。

僕にとって、〈ZOOM LENS〉は、10年ではない。レーベルに年齢はない。アイデアは、2009年頃のものだけど、2014年までは、真剣に取り組まれていなかった。2014年が、〈ZOOM LENS〉の本当の最初の年であり、そこで、自分や、LLLL、Yeule、U-Pistolといった主要アーティストがデビューした。インターナショナルなミュージック・カルチャーが盛り上がる中、アジアのコレクティヴやレーベルが増えているけど、その多くは、西洋か西洋的なものになるよう試行したりしている。その輸入と輸出の考えに関しては、僕はその両方に賛成できない。僕は、〈ZOOM LENS〉が世界的なアジアのアーティストになることという概念を発展させ続けたいし、僕たちは、西洋の基準にアピールしようとは考えていない。僕は、人々に自分のバックグラウンドとアイデンティティーに誇りを持って欲しいんだ。これは、みんなの間で共有できる当たり前のことだし、僕たちは、すべてのアウトサイダーたちが、この連続的な破壊と再生の旅に参加するのを歓迎する。 F u c k  R e a l L i f e .

■公演情報
ZOOM LENS Presents: FATHOM
日程: 2018年4月8日 (日)
時間: 16:00 to 22:00
会場: CIRCUS Tokyo
料金: 2,500yen(Door) / 2,000yen(Adv)

出演:
テンテンコ/Tentenko [LIVE]
Sho Asakawa (PLASTICZOOMS) [DJ SET]
Meishi Smile
LLLL
Yeule [JAPAN DEBUT]
小林うてな/Utena Kobayashi
Ermhoi
Smany & Nyan-Nyan Orchestra

You launched ZOOM LENS in 2009. Why did you decide to start this label?

There wasn’t anyone I could identify with musically, so I wanted to start my own space where people could relate. I was supposed to be a philosophy major. Then a journalism major. I didn’t do anything with either. The label is my own way to report to people about how I see the world.

You released works as Meishi Smile and Yūko Imada. Could you tell us the difference of works between Meishi Smile and Yūko Imada?

Yuko Imada was sonically and conceptually confined to the process of “noise” and “ambient” music, but my love has always been within more pop works. I wanted to deconstruct and expose the philosophy between contrasting sounds, and so Meishi Smile was born. To me, Yuko Imada could only say so much, it was something I didn’t want to last forever.

Also, please tell us the common points between Meishi Smile and Yūko Imada.

Both projects serve to discuss the dark side of Asian pop culture. However, Yuko Imada only focused on negativity and aggression. Meishi Smile serves as a reflection for various identities. When Meishi Smile does noise, it’s more about the confrontation of life, rather than just the confrontation of self.

“Always,” was released in January and it was explained like “the collapsing division of digital and real life relationships”. Please tell us the theme of this song in detail.

To me, there is no longer anymore separation between digital and real life relationships. When I post online now, I feel more like a brand than a human being. Many of us turned towards the Internet because we felt that’s where we could be our most authentic self, but now the Internet feels a bit inauthentic.

It was mentioned “a drastically changed digital culture” in the explanation of collaboration with Maltine Records. Specifically, what kind of change does it refer to?

Due to the increasingly anxious political atmosphere of the world and the Internet being consumed by an ever-exhausting capitalistic force, the Internet is no longer the “safe space” it used to be. The intentions of social justice, awareness, and individuality are utilized and soiled by the same brands who have broken us in the beginning. We need a new youth culture. We need to become even more self-aware than before. We must dictate the next stage of art, culture and life for everyone and those to come.

In Noisey’s interview, you answered “We’ve begun to ask ourselves, what is a net artist?”. Could you tell us the real intention of this remark?

Tomad [Maltine Records] once stated in the Japan Times “In a way, everything is internet music. It isn’t really special anymore.” There used to be a separation of music on independent and major labels, and music on the Internet. Being a net artist was a philosophy, it broke certain rules and it changed how people made & consumed music. That special time and place in net music is now dead like punk became dead. However, this happens with every music scene. The quicker we realize we need to change and stop living only in a certain era, the better. I want to destroy nostalgia.

“ZOOM LENS Presents: FATHOM” will be held at CIRCUS Tokyo. Could you tell us the theme of this event?

FATHOM is meant to understand what is not understood. This contrasts deeply in comparison to our last show, AI.OFFLINE, which saw net artists from Maltine Records, Secret Songs and ZOOM LENS. I saw AI.OFFLINE as a final goodbye to who we were. This is a rebirth.

FATHOM is meant to challenge the ZOOM LENS audience and the societal structure of music culture. We’ve invited a cast of artists who all identify as female or don’t fit into the common binary of gender or sexuality. The dilemma of the lack of diversity is not only unique to Japan, but it is universal. I wish for ZOOM LENS to make a firmer stance of who we are politically and philosophically, we are more than just a label and our sound is not really just club music. However, we do welcome you to dance, and we do welcome you to cry.

Yeule are going to act in this event. Please tell us why you released her works from ZOOM LENS and what point you appraise her songs as label head.

I met Yeule online when she was quite young. When I first heard her, I already had this vision of her path being very strong. I identified very emotionally with her music. Everything she does is very well curated and authentic, she is a producer, a model, a filmmaker, and more. She is a true definition of an artist, and someone who will only continue to define that in her own way.

ZOOM LENS released LLLL’s project “Chains” and completed 4 EP, and also you and Yeule featured them. Why did you decide to start this project?

The “Chains” project was first discussed with LLLL in Tokyo in 2016. Everyone on the Internet releases music so quickly, but I largely choose to ignore it. It’s overwhelming and it often feels like an obligation to both creator and listener. The songs in “Chains” fit a larger narrative of LLLL as an artist. One of the concepts we first discussed were the 5 stages of grief and to show LLLL’s development as a person in the span of 1 year. We did 4 “Chains” EPs, and we hope to release 1 more that compiles and concludes these feelings.

Tentenko, Sho Asakawa, Utena Kobayashi, Ermhoi, Smany & Nyan-Nyan Orchestra will appear on “ZOOM LENS Presents: FATHOM”. Could you tell us why you offered a cast for each artist?

We feel each artist in FATHOM are doing something which challenges a larger narrative, whether that be musically or societally in some way. Whether that be Tentenko’s meeting of noise and pop, or Sho Asakawa’s outspokenness on LGBT issues. They span a wide variety of genres, but when they come together you feel a sense of urgency and emotion. Both in LA and Japan, you always see the same artists play together and you see the same audience. I want people from different corners to find a shared experience at a ZOOM LENS event, I want you to feel like you belong.

What kind of live performance as Meishi Smile are you planning?

I set out to make every Meishi Smile performance different than the last. The previous set of shows I did in Tokyo were displayed more as a “full band,” and leaned more on energetic dance and pop music. For FATHOM, I intend to go more introspective and channel more elements of emo and power electronics circa my last full-length, “…Belong.”

You have run ZOOM LENS for almost 10 years. Could you tell us what do you think about future development of ZOOM LENS?

To me, ZOOM LENS is not 10 years. The label does not have an age. The idea was around in 2009, but not taken seriously till 2014. That was the first real year of Zoom Lens, and where major artists such as myself, LLLL, Yeule and U-Pistol made their debut. There are more and more Asian collectives and labels rising in international music culture now, but many continue to try and please the West or be like the West. That idea of import and export, I disagree with both. I want to continue to develop the notion of what Zoom Lens is globally to Asian artists, and that we are not trying to just appeal to a Western standard. I want people to be proud of their background and their identity. This is about a shared commonality between everyone, and we welcome all outsiders to join us on this journey of continuous destruction and rebirth. F u c k R e a l L i f e .

インタビュー・文・訳:T_L