INTERVIEWSDecember/07/2017

[Interview]Garden City Movement − “Move On”

 イスラエル出身のJohnny Sharoni、Roi Avital、Joe Saar の3人で構成されたユニット、Garden City Movement。その名称は、イギリスのエベネーザー・ハワードが、1898年に提唱した都市形態「Garden City(田園都市)」から名付けられたものだという。2013年、イスラエルのレーベル〈BLGD5〉のコンピレーション『Ground Floor』に「Casa Mila」を提供後、彼らは本格的な活動を開始。同年『Entertainment』を、続く2014年には『Bengali Cinema』、2015年には『Modern West』と、これまで3作のEPをリリースしている。

 そして今年9月、日本のレーベル〈PLANCHA〉より、『Entertainment』と『Bengali Cinema』にボーナス・トラックを加えた全12曲が収録された作品『Move On』をリリース。また、彼らは、その映像作品においても高い評価を得ており、同作のタイトル・トラックでもある「Move On」のMVは、YouTubeで再生回数が200万を超え、MTVイスラエルのアワードでは「ベスト・ミュージック・ビデオ」にも選出されている。

 日本でリリースすることは夢であったと語る、Garden City Movement。イスラエルの地から様々な国を巡っている彼らにとって、音楽をつくることはどのような意味を持つのか、また、話題を集めたミュージックビデオにはどのような背景があるのか。以下は、彼らが音楽をいかに大切に捉えているのかを窺い知ることができるインタビューとなっている。

 
__飛行機で約15時間かかる日本という異国の地でGarden City Movementの音楽が正式にリリースされ、多くの人があなた方の作品を聴いていることについてどのように思いますか。

Johnny: 「音楽は国境が無い」っていう決まり文句は本当だったね。最終的にはどこにいても人は人なんだ。世界中の人々が同じ出来事を違う形で通ってきているんだけど、誰もが愛したり、憎んだり、喜びを感じるもので、同じように痛みも感じる。僕たちがつくり上げる音楽の雰囲気はメロディーとも歌詞ともよく混ざりあっているから、音楽を聴こうとする人をうまく結びつけているんだと思う。セラピーみたいなものだね。曲を聴くと一人じゃないことに気づくんだ。僕たちはみんな人生っていう同じ船に乗っていて、良いことも悪いことも通り抜けていくのは簡単じゃないんだ。

Roy: 僕にとってこの数年間は冒険に満ちていて、新しい土地で新しいファンに出会えたり、とても楽しい日々だよ。日本でリリースとツアーをするっていうのは僕たちのゴールだったから叶えられて本当に嬉しく思う。とても謙虚な気持ちになるよ。

__2013年の結成で、現在4年目となりますが、結成のきっかけと、この4年間で音楽を制作する姿勢において何か変化があれば教えてください。

Johnny: 僕は最初、歌詞だけ書いていたんだけど、物事がうまく運んで、創作が心地良く感じるようになった。制作のスタイルは常に変わるものだと思う。僕たちは音楽をやっているけれど、それ以前に人間なんだ。人生の色々な段階を通り抜けていて、そういう経験はつくる音楽に対しての力を変えていくんだ。いつも同じようなものをつくるとなったらつまんないだろうね。僕たちは常に変わり続けてはいるけれど、たとえそのスタイルが違う分野に向かったとしても、Garden City Movementらしさとそのスピリットは守っているよ。

Roy: Garden City Movementが結成したストーリーはこうだよ。Yoavと僕はもともとLo rena Bっていうバンドを組んでいたんだ。UKツアーも何回かしてうまくいっていたよ。Johnnyは僕たちを、歌詞だったり、何かと手伝ってくれていた友達だったんだ。バンドが解散して、Yoavと僕は何か僕たちでやろうと決めたんだ。それで、Johnnyに電話して、それが「Move On」(先へ進むこと)になるなんて知りもせず、音楽をつくり始めたんだ。

__「Move On」のテーマを教えてください。例えば、この歌詞はどのようなことを歌ったものなのでしょうか。

Johnny: 「Move On」は他の曲同様に特定した一個のテーマは無くて、いくつかのアイデアが合わさっている。僕たちは、リスナーそれぞれが個人的な意味を曲に与えてくれることが素敵だと思っている。なぜなら、それぞれが個人的な経験とか気分をもとに曲を解釈してくれるんだ。「Move On」は、たとえそうしたくないとしても、過去の出来事からは去って、前に進んでいくことだということは言えるね。人生には、何か好きな事や好きな人を諦めないと悪い状態から抜け出せない時もあって、「大丈夫、ゆっくり息を吸って前に進むんだ、すぐに良くなるから」って言ってくれる誰かからの特効薬が必要なんだよ。

__「Move On」のMVが2014年にはMTVイスラエルのアワードでベスト・ミュージック・ビデオ賞に選ばれ、音楽だけでなく繊細な映像作りにおいても評価されています。この映像の制作背景について詳しく教えてください。

Johnny: 僕たちのビデオの美しさは一緒に仕事する友達を信頼していることにあると思う。イスラエルで高く評価されていて有名な俳優のMichael Moshonovと初めて「Move On」のビデオについて話した時、彼はこのビデオ制作にも参加していて「She’s So Untouchable」ではディレクターを務めたMayan Toledanoとニューヨークにいて、記憶の中にある、二人の女の子とその切ないラブストーリーというアイデアを彼は持っていたんだ。そのときから、彼らが思うようにやってもらったんだけど、結果として正しかったことが証明されたね。Garden City Movementはバンドの枠を超えて、良い空気感のもとで僕らと繋がっている美しくて才能に溢れた人々のクルーでもあるし、彼らは、Garden City Movementにとって切り離すことの出来ない美的感覚をつくり上げることを助けてくれているんだ。

__音楽と映像において制作面で共通しているところ、異なっているところについてどのように考えているか教えてください。

Johnny: 空気感の作り方は同じだと思う。僕たちが僕たちの曲に合うような雰囲気を作るように、映像でもそれを作り出すことが本当に大事なんだ。音楽では、サウンドとテクスチャー、映像では、照明や撮影技術の知識、場所や役者を駆使するようにね。最終的には、小さい携帯の画面で映像を観たときに何かを感じてもらえたら結果が出たってことだよ。

__「She’s So Untouchable」のMVのテーマを教えてください。例えば、映像では、三人の若者が登場し、ボールペンで自分の体にタトゥーのようなものを描いたりしていますが、どのような意味があるのでしょうか。

Johnny: それはディレクターのMayan Toledanoに聞いたほうが良い質問だね。彼女は作品の中に僕たちですら知らない秘密の意味を込めているから。

__アルバムを通して全体的に歌詞が抽象的で、生きることや人生についてなど哲学的な内容が多い印象を受けました。歌詞を書くときは、どのようなプロセスで書いていますか。

Johnny: それは実際おもしろいプロセスなんだ。だいたいは良いものが全然浮かんでこなくて、何の意味も無いものをひたすら書き続けていることに気がつく。でも、人生で何かが起きたり(皮肉にも嫌な出来事のほうが良い歌詞になるね)、アートや本、音楽や人々に影響されると、聴く人に感じてほしいと思うストーリーが出てくる。

Garden City Movementの曲は、人生について考えたり、どう生きていくかを気づかせるような意味を持っているんだ。ちょっと言うのが難しいことだけど、音楽は君が一人の時に行く場所みたいなもので、僕たちは「君は絶対に一人じゃない、僕たちが支えている」ってことを気づかせる場所を作りたいんだ。いつでも僕たちの音楽を聴いていいし、寄り添う肩が必要だったら話しかけていいんだよ。

__Garden City Movementの音楽性は、ひとつに特定されない様々なジャンルに分類されていますが、何か制作面で意図していることはありますか。
 
Roy: その時に良いと思ったことなら色んなジャンルのことを出来るのが僕たちの特権だね。プロダクションする側としては、全てをつなぎ合わせているリンクみたいなものがあるように感じる。

__イスラエルの音楽シーンについて教えてください。例えば、Garden City Movementのように海外に向けて発信しているアーティストは多いのでしょうか。

Johnny: テルアビブの音楽シーンは世界が気づくべきことが起きている。僕たちはちょっと変わった立ち位置にいて、イスラエルで主流のヘブライ語での音楽は英語のものよりずっと良いのにイスラエル以外のところでは有名ではなくて、僕たちはその狭間で足踏みしている感じなんだ。でも、そのうち変わっていくと思う。

Roy: イスラエルの音楽シーンは、ほとんどテルアビブで起きている。外国に向けた音楽を作っているプロデューサーもバンドもたくさんいるよ。テルアビブのクラブシーンは大きくなってきていて、イスラエルのDJたちがこの2年くらいで世界的に有名になってきているね。

__これまで、影響を受けたアーティスト、または、最近よく聞いているアーティストがいれば教えて下さい。

Johnny: 僕たちはとてもたくさんのミュージシャンから影響を受けているから難しい質問だね。ジャンル関係なく本当にたくさんいて、日本だったら、僕はMidori Takada(高田みどり)とか、Food Brain(渋谷のディスクユニオンの店員さんに手伝ってもらって見つけた70年代の日本のバンド)が思いつくけど、Stereolab、Can、Spitulized、Nikki Sudden、Johnny Thundersとかインスパイアを受けたアーティストはたくさいんいて、〈Actuel〉みたいなフリージャズのレーベルのことは言うまでもなく、どんどん出てくるよ。プレイリストを作れるとしたら、僕たちが聴いている曲に関する考えのようなものを伝えることができるかもしれないね。

Roy: 一人の音楽プロデューサーとして色んな音楽を毎日聴いているよ。でも、すごくはまったりすることは無くて、僕の音楽に影響を与えているたくさんのものが好きだね。最近は、Andy Stott、Isaac Hayes、Tyler the Creator、Brian Eno、Drothy Ashbyあたりを聴いてるよ。

Yoav: 僕たち3人は全然違う音楽を聴くから本当に色んな国、ジャンルから色んな影響を受けているね。僕は最近、細野晴臣を聴いてるよ。彼は素晴らしいね!

__最後に、今後の予定を教えてください。

Johnny: これからベトナムから帰って(すごく楽しいライブだったよ!)、2018年前半に出す予定のアルバムのキャンペーンを行う。僕は来月誕生日で、東京に行くから、会いたかったら連絡してね。

(2017.11)

Move On:
01. CASA MILA
02. MOVE ON
03. ENTERTAINMENT
04. THE MORE YOU MAKE IT
05. TERRACOTTA
06. LOVE + LOSS
07. LIR
08. BENGALI CINEMA

BONUS TRACKS
09. SHE’S SO UNTOUCHABLE
10. THE BEST OF TIMES?
11. PONT DES ARTS
12. SHE’S SO UNTOUCHABLE 12” EDIT

インタビュー・文・訳: 星野智子
1996年生まれ。東京出身。青山学院大学総合文化政策学部在籍、ビートルズ訳詞研究会所属。