INTERVIEWSJune/23/2017

[Interview]TOPS – “Sugar At The Gate”

 TOPSが、およそ3年ぶりとなるスタジオ・アルバム『Sugar At The Gate』をリリースした。本作の制作にあたり、バンドは、一時モントリオールからロサンゼルスへと拠点を移し、グレンデールにあるかつては売春宿であったというミニ・マンションでレコーディングを行っている。ベッドルームとまではいかないが、その閉ざされた空間で録音された本作は、バンドメンバーの生活感や息づかいを密に感じることのできる、まるでノイズが混じった古いビデオテープのような仕上がりになっている。

 また、メンバーのJane Pennyがそのほとんどを書いたという歌詞には、「明日を生きること以外に選択肢はない」(Cloudy Skies)、「もう全部終わってしまった」(Further)、「変わることは怖くない」(Marigold & Gray)、「私たちの困難はいつか終わる」(Cutlass Cruiser)といったように、その天真爛漫なあどけなさの間を揺れ動く彼女の不安定な心情が率直に綴られている。

 本文は、今作『Sugar At The Gate』についてのインタビューとなる。その制作背景について、本作で中心的な役割を果たしたJaneが答えてくれた。

__バンド結成のきっかけや、スタートした経緯を教えてください。

はじめは、ただ単に楽しかったから。音楽を作ることが楽しくて、私たちはいつも一緒に演奏することを楽しんできた。最初の方は歌詞もみんなで考えて、一緒に物事を理解していこうとしていた。

最初に買ったシンセはローランドのJ8 XPで、今でもレコーディングやライブで使っているんだけど、それを買ったのをきっかけに音作りの幅が広がって、それから私はキーボードを弾くことに夢中になっていった。

__カナダのアーティストたちとのローカルな交流はバンドの活動にどのような影響を与えていますか。

私はどこから来たかという区別で人をカテゴライズしないようにしている。世界中に友達がいるし、その人たちとの交流を通して絶えずみんなにインスパイアされている。私の交友関係とは私自身の世界でもあって、彼ら、彼女らとの交流は私のクリエイティブな仕事に大きな影響を及ぼしていると言える。

__過去、影響を受けたアーティストや、最近気になっているアーティストはいますか。

最近とてもインスパイアされたのは、甲田益也子(dip in the pool)。あとは、Joni MitchellやSade、Heart、Gil Scott Heron、坂本龍一、そしてMarianne Faithfulといったアーティストにも影響を受けてきた。

__モントリオールを離れて、カリフォルニアのグレンデールへ移り、「グラムデール」と呼ばれる売春宿を改修した建物に住み込んでのレコーディングを行ったとのことですが、なぜ今回そのようにしたのでしょうか。そこでの生活や作業はどのようなものでしたか。

メンバーのRileyのビザが切れたのがきっかけで、私とDavidはもう8年もモントリオールに住み続けていたし、カナダを離れてどこか新しい場所へ行こうということになった。そうしたら、駐車場のあるレコーディングスタジオ兼練習場所となる家をグレンデールで見つけたからそこに移ることにした。みんなで一緒に住みながら、同時に作業やレコーディングのできる場所が与えられたということは、私たちにとってとても良い効果をもたらしたと思う。

__アルバム全体として、愛情や失恋をほのめかす歌詞を持つ楽曲が多いように感じますが、アルバムの制作に影響を与えた出来事などはありますか。

Davidと私は長い間恋人同士だったけれど、今はもうそうではない。このことは作品に少なからず影響しているとは思う。明らかに何かが変わったというわけじゃないんだけどね。

__「Further」では、「本当の感情を抑制しているという認識と、より多くを望む自分を許しているという認識との間を歌ったもの。感情的な曲だけど、最後には前向きになれればと思う」とあなた(Jane)がコメントしています。なぜこのようなコンセプトにしたのでしょうか。

この曲は、ずっとこのままでいることの決意を表明するような忍耐をテーマにしたアップリフティングな曲。そこにはある種の感情の発露があって、この曲ではそこに焦点を絞りたかった。現状維持を決意することは、いつもそこから離脱する理由を含んでいる。この二つの視点を持っていることは、人が生きて行くうえで大切なことだと思う。

__「Petals」のMVもあなたが手がけています。映像では、Michael Jacksonが埋葬されたフォレスト・ローン・メモリアル・パークをドライブし、Michael Jackson、Madonna、Princeなどのインパーソネーター(ものまねをするパフォーマー)たちが登場しています。なぜこのような演出にしたのでしょうか。

私はこのビデオを、ショービジネスの持つ独特な印象に焦点を当てたものにしたかった。それと、ロサンゼルスにいたとき、そしてグランデールにいたときの私の生活を描き出したものにしたいという思いがあった。映像は私たちがこのアルバムを作った家で撮影したもの。

__「Dayglow Bimbo」は、アルバムの大半の楽曲の歌詞をあなたが手がける中、メンバー全員で共作したとのことですが、どのように制作されたのですか。

Rileyが「Dayglow Bimbo and Rainbow Dildo」という歌詞を考えたのを除いて、実際には私がすべての歌詞を書いている。この曲は、女の子であることや、女の子が性的に成熟していく過程について歌った曲で、現代のカルチャーや女性が経験するプレッシャーのようなものに焦点を当てている。

__「Marigold & Gray」には、「Sugar at the Gate(門の前の砂糖)」とアルバムのタイトルにもなっているフレーズが出てきます。あなたはこれを「手の届かないものが持っている魅力や、性的な悦び、そして社会から約束されたのに、引き延ばしになっている充足感」と説明しています。この言葉の意味について詳しく聞かせてください。

私たちはこのタイトルの持つ人々に喚起できる力が気に入っている。丘の上のマンションのエントランスにある門の後ろの砂糖の山が、溶けながら蝿にたかられているところをイメージしてこのタイトルを考え出した。

__日本盤のボーナス・トラックに収録されている「Echo Of Dawn」は、古代エジプト人が天の川を「ヌト」と名付け、星の船に乗った神々がその川を渡っていくという伝説がモチーフとなっているとのことですが、なぜこのようなテーマで楽曲を制作したのですか。

ここ数年、占星術に興味を持つようになって、いろいろな地域の星の読み方についての本を読んでいて。その中でも、パンテオン(ギリシア語の「すべての神々」という言葉に由来する、あらゆる神を意味する言葉)の、自分とは異なる文化が作り上げた星の読み方に興味を引かれた。この曲は、窓からの眺めの中で路頭に迷いながら、ヤシの木の間を走る光を見つめて、無限の時間に接していることをテーマにしている。

__最後に、今後の予定を教えてください。

私たちは常にツアーを計画したりするタイプではないんだけど、どこかに旅をしたいなとは考えている。どこか良い場所はあるかな?

Sugar At The Gate:
01. Cloudy Skies
02. Further
03. Petals
04. Dayglow Bimbo
05. Marigold & Gray
06. Cutlass Cruiser
07. Hours Between
08. I Just Wanna Make You Real
09. Seconds Erase
10. Topless
11. Echo Of Dawn (Bonus Track)

インタビュー・文・翻訳:志田麻緒
1996年生まれ。青山学院大学総合文化政策学部在籍。和声やソルフェージュ、楽典などを学びながら幅広いジャンルの音楽を楽しむ。