INTERVIEWSApril/07/2017

[Interview]Teen Daze – “Themes for Dying Earth”

 2010年にJamison Isaakのソロ・プロジェクトとして活動を開始し、チルウェイヴ・ムーヴメントに乗って頭角を現したTeen Daze。カナダの自然豊かなフレイザーバレーから世界を見つめてきた彼が、7年の月日を経て、チルウェイヴのその先に見たものは何か。

 サイケデリックな夢の中での現実逃避。人々は降りかかる困難から目を背けるためにフワフワした音に身を投げ出し、一時的な逃げ道の方法として頼ろうとした。しかし、すでにTeen Dazeのそれは単なる逃避の音楽ではない。

 彼自身が言うように、都市部から隔離されたフレイザーバレーに住むTeen Dazeに、切迫した警告とも取れる劇的な気候変動が大きな不安や不調を与えたと想像するのは難くない。事実、環境資源を犠牲にすることで得た富は私たちの過剰な消費社会を支えてきたが、一方で測ることもできない巨大な環境上の負債を残している。

 彼自身が不安や絶望に苦しんだとき、そんな彼を救ったのは、不安や絶望それ自体に向き合い、その身を投じた経験だった。今作に於ける彼のポジティヴなサウンドは、絶望の淵を経験した者だからこそ到達できる音楽、すなわち彼は自身の音楽を通して、世界に蔓延するネガティヴな力から目を背けるのではなく、どう立ち向かっていくべきかをこの作品で提示している。

 今回のインタビューでは、追加公演も決定したジャパンツアーを控えたTeen Dazeに、ニュー・アルバム『Themes for Dying Earth』について、自身の感情と音楽との関係、前作からの変化や他のアーティストとのコラボレーションなど、その背景の詳細を知るべく話を伺った。

__今作のタイトル『Themes for Dying Earth』は、「滅びゆく地球のテーマ」という意味であるように、ショッキングなテーマとなっています。改めて、その詳細を教えてください。

僕の住んでいる北アメリカは、去年から今年にかけてかなり不安定な状況にあった。今作に取り組んでいたとき、気候変動や、僕たちの周りにある儚い自然といったテーマがずっと頭の中にあって、いろんな意味で自分に影響を与える大事なトピックだと感じたよ。そのとき僕は不安とか落ち込みといった個人的な問題にさいなまれながら、そんな中で歌を書き続ける自分の感情が、気候や環境の変化に対して感じていた不安と実はとても近いところにあることに気づいた。このタイトルは、アルバムを制作したときの感情と、アルバムのテーマすべてをまとめあげる一番良い方法だったんだ。

__前作アルバムの制作以降、ネガティヴな感情に襲われ、今作では、そこから神経質なエネルギーを取り除きポジティヴな音にシフトチェンジしたとのことですが、そういった感情や音のシフトチェンジと、今作のタイトルおよびテーマはどういった関わりがあるのでしょうか。

僕は自分自身が世界をもっとポジティヴに捉えることができるように、前向きに聞こえる音を作りたかった。去年頃から、人々が立ち向かわなければいけない大きな壁がたくさん現れてきて、僕は単純にいつまでもシニカルな態度をとっていることにうんざりしたんだ。楽曲の雰囲気を変えることは、僕自身の精神状態を変化させるのに良い効果をもたらしたよ。

__前回(2013年)のインタビューでは、次作は伝統的な「歌」の構造に焦点を当てたものになるとのことでしたが、実際にその次のアルバム『Morning World』(2015)は、それまでの作風とは異なるバンド編成で録音された作品になりました。今作は再びソロへと回帰していますが、前作での経験は今作にどのように生かされましたか。

『Morning World』はたくさんのことを教えてくれたけど、一番は「ファーストテイクの感触」を捉える、ということだね。これはレコーディングをするときに、テイク1のエネルギーや感触をしっかり掴むということだ。それがパートとしてベストなテイクだったり、完璧だったりする必要はなくて、パフォーマンスに最も誠実だということが大事。そこにこだわったところが、『Moning World』がそれまでのアルバムと対照的に、ライブ感やパフォーマンス感を含んでいる理由だと思う。そういった不完全さを今作のアルバムにも出現させることで、親密さや心地よさが存分に感じられる作品になったと思うよ。

__本作では、ドリームポップ、アンビエント、エレクトロニックなどの要素に加え、美しい旋律が特徴的です。楽曲における旋律の役割をどのように捉えていますか。

旋律は僕にとってはほとんどの場合で、最も大切な要素になっている。僕は喜びや心地よさを良しとする美学には概ね惹かれていて、音楽においてはメロディやハーモニーといったものが好きなんだ。もちろんもっとチャレンジングで、実験的な音楽は好きだけど、常識や限界を超えるような音楽の中では、メロディによって実験しているような音楽が一番好き。僕の友達のDustin Wong(ギタリストで、今作でも共演)はそういった仕事で驚くべき力を発揮している。客観的にみて美しいメロディを維持しながら、型破りで常識外れなことに挑戦できる彼の能力には本当に驚かされるよ。

__今作の個々の楽曲について。冒頭「Cycle」は、精神的な不安を解消する過程がテーマになっているということですが、その詳細を聞かせてください。

2015年の初めに7ヶ月間、妻と一緒に旅をしたんだ。僕たちは素晴らしい時を過ごしたんだけど、僕がツアーに行く前に、信じられないくらい疲労してしまった。旅の後に家で休める時間が一ヶ月しかなくて、それはツアーの間僕が多大なストレスと不安に苦しめられるということを意味していた。「Cycle」はツアーが始まって最初の絶望を味わった瞬間をまさにイメージした楽曲なんだ。ベッドから出られず、1日をやり過ごすための余裕がなかった。そのときはその経験がどれだけ深刻で強烈な意味を持っていたか気づいていなかったけど、ツアーを終えて家に帰って、新しいアルバムに取り組みはじめたときに、あれは自分自身の限界を経験していたんだと気づいた。

僕は、その経験の中で何を感じていたかということにとどまらず、そこから自分がその経験に救われた過程、つまりその経験を通して、未来に対して自分が感じている不安をどのように捉えたら良いかを知ることができた、ということを表現したかった。

__「Lost」では、Phantom Posseのヴォーカルを務めるNadia Hulettと共演しています。コラボレーションのきっかけや、制作背景を教えてください。

僕の友人のDaveが彼女を紹介してくれた。僕はすでに「Lost」の旧バージョンを制作していたんだけど、もっと強い女性性を持った存在をアルバムに投入したくて、誰か良い女性アーティストはいないかDaveに相談したら、Nadiaが「Lost」を歌ったらフィットして良いんじゃないか、と提案してくれたんだ。それで彼女と知り合って、メールで何回かやりとりをした。僕が「Lost」を制作する際にどういったインスピレーションを受けたか伝えると、彼女も同じことを感じていたとわかって。結局Nadiaとはいろんな仕事をしたよ。彼女とすぐに打ち解けられてすごく良かった。Nadiaはアルバムの制作が終わる何日か前にレコーディングした素材を送ってきてくれて、僕にとってアルバムの中で最も気に入っている部分のひとつになったよ。

__「Cherry Blossoms」では日本でのライブでも共演したギタリストのDustin Wongとコラボレーションし、「First Rain」ではBon IverのバンドメンバーでもあるSean Careyがヴィヴラフォンを演奏しています。こうしたインストゥルメント奏者とのコラボレーションはどのようなきっかけで始まったのですか。特にDustin Wongについては、前回のインタビューで大ファンだと伺いました。これらの楽曲の制作背景を教えてください。

Dustinとはすぐに仲良くなった。彼が僕の作品に打ち込む時間を作ってくれてすごく嬉しい。前にも話したように、彼は本当に音楽の天才だと思うし、「Cherry Blossoms」を僕には決してできなかったような作品にしてくれた。「Cherry Blossoms」も、「First Rain」も、もともと僕がインストゥルメンタル・ヴァージョンを作っていて、DustinとSeanにそれぞれコラボレーターとして彼ら自身のアイディアを加えてもらったんだ。録音された素材が送られてきて、元の音と彼らの作った音を入れ替えてみたらすごくナチュラルだった。彼らの本領が発揮できるように全力を尽くして仕上げたよ。

__カナダ・バンクーバーでProtection Island Recordingを運営するエンジニア、Jonathan Andersonがミックス、マスタリングを手がけています。彼との音作りはどのように進められたのですか。

Jonathanとの音作りは素晴らしかったよ! 僕たちは何年も前から知り合いだったんだけど、プロジェクトを一緒にやったのはこれがはじめてなんだ。彼との仕事は自然にフィットする感覚があって、また一緒に仕事をしたいと思っている。

__このようなさまざまなアーティストとのコラボレーションは、作品全体にどのような影響を与えましたか。

アーティストたちはみんなそれぞれユニークな要素をアルバムに加えてくれて、とても良い経験になった。このアルバムは彼らとの共有物だという感覚がある。彼らは僕の友達であり、同時に僕のインスピレーションにもなったと感じている。

__最近では、Pacific Coliseumとしての活動が始まり、アルバム『Ocean City』のリリースも決定しています。新プロジェクト立ち上げのきっかけや理由を聞かせてください。また、今後Teen Daze、およびPacific Coliseumはご自身の活動にとってそれぞれどのような役割を果たしていくことになりそうですか。

新プロジェクトが始まったのはごく自然な流れだと感じている。前よりもDJをたくさんやるようになって、その影響でダンスミュージックを聴く機会も増えた。最近自宅でレコーディングをする際に実験的に取り入れているのがダンスミュージックのようなサウンドで、10曲ほど頑張って書き上げてからこれをフルアルバムにしようと思いついた。

ロンドンにあるレーベル〈Coastal Haze〉ならリリースしてくれるだろうかと考えて、連絡をとったんだ。リリースまでの道のりはすごく楽しくて、楽だった。名義を変えたのはTeen Dazeのアルバムとリリースがとても近かったから。Teen Dazeが一定の展望を持っているのに対して、Pacific Coliseumのプロジェクトはより控えめで、プレッシャーが少ないね。

__5月に行われる日本公演は2年ぶり3回目の来日公演となりますが、どのようなライブセットを予定していますか。

新しいアルバムからの選曲を中心にした、ソロのステージになる予定だよ。メロウで、ピースフルで、瞑想的なライブセットになると思う。

__来日公演後の予定を教えてください。

妻と一緒に3週間旅に出る予定。旅の最後にはハワイでバケーションを過ごして帰ってくるよ!

Themes For Dying Earth:
01. Cycle
02. Dream Host
03. Becoming
04. Lost (with Nadia Hulett)
05. Cherry Blossoms (with Dustin Wong)
06. First Rain (with S. Carey)
07. Rising
08. Anew
09. Water in Heaven
10. Breath
11. An Alpine Fores (Bonus Track)

◼︎公演情報
Teen Daze & Mozart’s Sister Japan Tour 2017

5/1[MON] – TOKYO

PLANCHA presents

Teen Daze “Themes For Dying Earth”
Mozart’s Sister “Field of Love”
Double Release Party in Tokyo

日程:2017/5/1(月)
会場:渋谷 TSUTAYA O-nest
時間:開場19:00 / 開演19:30
料金:前売4,000円 / 当日4,500円 (別途drink代)
チケット販売:
PLANCHA / ぴあ / LAWSON / e+ / O-nest店頭
※プレイガイドは3/11(土)より販売開始!

出演:
Teen Daze
Mozart’s Sister

前売りチケットのご予約はこちらのフォームからお申込み可能です。

5/2[TUE] – NAGOYA

club solanin vol.36 presents

Teen Daze “Themes For Dying Earth”
Mozart’s Sister “Field of Love”
Double Release Party in Nagoya
– w/ Special Guest: Dustin Wong –

日程:2017/5/2(火)
会場:鶴舞 K.D Japon
時間:開場18:30 / 開演19:00
料金:前売4,000円 / 当日4,500円 (別途drink代)

出演:
Teen Daze
Mozart’s Sister
Dustin Wong

DJ: sad_hyena (MOON PULSE)

主催:club solanin
club solanin TWITTER:https://twitter.com/i_nio

前売りチケットのご予約はこちらのフォームからもお申込み可能です。

5/3[WED] – OSAKA
Teen Daze “Themes For Dying Earth”
Mozart’s Sister “Field of Love”
Double Release Party in Osaka

日程:2017/5/3(水・祝)
会場:CIRCUS OSAKA
時間:開場18:00 / 開演18:00
料金:前売3,000円 / 当日3,500円 (別途drink代)
チケット販売:
ぴあ(Pコード:328585)*03/21~発売開始
LAWSON(Lコード:57298)*03/23~発売開始
e+*03/22~発売開始

出演:
Teen Daze
Mozart’s Sister
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Link: PLANCHA

インタビュー・文・翻訳:志田麻緒
1996年生まれ。青山学院大学総合文化政策学部在籍。和声やソルフェージュ、楽典などを学びながら幅広いジャンルの音楽を楽しむ。