- INTERVIEWSFebruary/28/2017
[Interview]Neon Bunny – “Stay Gold”
韓国の首都、ソウルを拠点とするシンセ・ポップ・アーティスト、Neon Bunny。母国を中心に活動していた彼女だったが、2015年にブルックリンのレーベル〈CASCINE〉よりリリースされたMark Reditoとのコラボレーション・トラック「Daytime Disco」は、StarRo、Kero Kero Bonito、Blackbird Blackbirdなど各国のアーティストがリミックスを提供、ここ日本でも多くの反響を呼び、広くその名を知られるようになる。
彼女のセカンドアルバムとなる本作では、囁くような歌声に透明感のあるシンセ・サウンドが重なる、統一された世界観を持つ楽曲たちが収録されている。それらの美しいメロディは、ただ美しいというだけではなく、何かを訴えているようにも聴こえる。ファースト・トラックの「Romance in Seoul」からラストまで、時間はあっという間に過ぎるが、ただ通り過ぎていくだけのポップ・サウンドとは異なる印象を聴く者に与える。
本流のK-POPとは異なるオルタナティヴな立ち位置でありながら、本作は、他のK-POPと同様に、韓国・ソウルから発信された作品である。これまで彼女には、ブルックリン、ロンドン、LA、東京などを拠点とするインディペンデントのアーティストやレーベルが関わっており、そのアーティスト性や作品は、それらの都市や人々が共有する何かを持っていることは確かと言えるだろう。
今回、本作『Stay Gold』の〈flau〉盤のリリース、また2017年3月5日に開催される彼女の来日公演に合わせ、メールにてインタビューを行った。
__Neon Bunnyというプロジェクトはどのようなきっかけで始まったのでしょうか。
自分自身の音楽を作りたいと思ったから。
__2014年にリリースしたシングル「It’s You」は、同年Pitchforkの「20 Essential K-Pop Songs」に選出されたとのことですが、どのように生まれた曲なのでしょうか。
マライア・キャリーにすごくハマっていて、彼女のような曲を作りたかった。まさに90年代のような雰囲気がありながら、モダンな曲をね。最初にDemicatと一緒に曲作りを始めて、すごく良かったのだけど、何かが足りない感じがして、それでプロデューサーのCliffが強めのサブベースを付け加えて、今に至るという感じ。
__2015年に、〈CASCINE〉からMark Redito(f.k.a. Spazzkid)と共演した「Daytime Disco」をリリースしていますが、どのような経緯でこのコラボレーションは決まったのでしょうか。
私たちはお互いにファンだったので、Twitterを通じて友達になって、それでコラボレーションをしようということになって(笑)。Markとの仕事はいつも楽しい!
__「Daytime Disco」の反響はどのようなものでしたか。
インターネット上での反響が大きかったような気がする。H&Mの世界的な音楽プレイリストにも追加されたし、日本のミュージシャンにも「Daytime Disco」によって認識されてとても良かった。
__2015年に、同じく〈CASCINE〉より、シングル「Romance in Seoul」をリリースしています。この曲は、Ella FitzgeraldやDinah Washingtonが歌ったジャズ・スタンダードの「Manhattan」からインスパイアされたとのことですが、どのような部分に魅かれたのでしょうか。また、どのようなメッセージがこの曲にはあるのでしょうか。
私はジャズ・クラブの娘として育って、才能がないのにジャズピアノをやっていて(笑)、ジャズは今でも私のルーツと言える。Dinah Washingtonの「Manhattan」を聴いて、人々はニューヨークを思い浮かべる。私は韓国・ソウルを代表するようなミュージシャンになりたくて、そして一度はなくなったけれど去年また再開した両親のジャズ・クラブに、この歌をささげようと思って作ったんです。
__『Stay Gold』は、ドリームポップ的な作品で統一されていますが、なぜそのようなスタイルを選んだのでしょうか。
ドリームポップのような作品になったとは思っていないけれど、ジャズの影響でもしかしたらそういう印象を与えるかもしれない。
__『Stay Gold』のタイトルの意味を教えてください。
タイトルはRobert Frostの「Nothing Gold Can Stay」という詩にちなんで名付けた。正確には、『Outsiders』という小説でそれを目にして、その小説で、Johnnyという少年が死ぬときに、Ponyboyという別の少年に「Stay gold(輝き続けろ)」と語りかけるんです。
Johnny: 子供のときは、お前は輝いていられるんだ。子供のときは、すべてが新しく見える。お前が夕日を見つめるとき、それは日の出のように感じられるんだ。Ponyboy、それが輝きだ。それを忘れるな、それがあるべき姿なんだよ。
これは、子供のときのままのように、純粋で、ありのままの自分でいることを意味していると思う。若いときにはそれは簡単なことだけれど、年を重ねることで難しくなってしまう。
__『Stay Gold』には、再びMark Reditoと共演した「Room 314」が収録されています。この曲の制作はいかがでしたか。また、タイトル「Room 314」の意味を教えてください。
Markはクールなシンセサイザー・ソロでイメージをまさに再現してくれた! ”Room 314”の意味は、私がRoom 314に住んでいたから(笑)。
__「Forest of Skyscrapers」のミュージックビデオは、日本のアニメーションの『AKIRA』と香港の映画監督ウォン・カーウァイの映画からインスピレーションを得ていると伺いました。Twitterでも言及されていますが、この映像のテーマを改めてお聞かせください。
私は『AKIRA』とウォン・カーウァイの大ファンで、両方に影響を受けたし、インスパイアされたけれど、私たちはもう少し未来のソウルのようなセットを作りたかった。Twitterでは、韓国のSAMPO世代(三放世代、サムポ世代)と言われる20〜30代の路頭に迷う若者たちのことについて触れて、私たちは愛をあきらめて、お金のために結婚して子供をつくる、ということについて言及した。
資本主義が、全世界を支配している。スティーヴン・ホーキンスは、ロボットではなく資本主義を恐れるべきだと言ったけれど、お金のためにすべてをあきらめなければいけないのは、韓国だけの話じゃない。とても悲しくて、お金にとらわれずに自分の愛情を保てるくらい、自分が強かったらと思う。
__3月の来日公演では、同じく〈flau〉、〈CASCINE〉からリリースしているCuusheの出演が発表されています。Cuusheの作品については、どのような印象を持っていますか。
とても繊細でピュアだし、彼女の音楽には彼女独自のカラーが表れているところがとても良いと思う。私は彼女の作品のファンであるし、同じく共演するSubmerseももちろん楽しみだし、彼女と共演することもとても楽しみにしている。
__今年開催されるSXSWへの出演が決定していますが、2017年はどのような活動を予定していますか。
今のところSXSWと、3月にLAでMarkと一緒にライブを予定している。それに加えてヨーロッパツアーもやろうと思っているけれど、それに関してはまだ確定していなくて。あとは、夏に最高のEPをリリースしようと思っている! ジャズ・クラブでも演奏したいし、ソウルのアーティストをサポートするような、『Seoulight』の小規模なプロモーション企画もやりたい。ああ、やりたいことがたくさんありすぎる……(笑)。うまくいくように祈っていてね!
Forest of Skyscrapers
長い影がだんだんと短くなって、消え去っていこうとするまで
私たちは恋に落ちて、子供のころの怖かった思い出を話していた
あんなに大きくて怖かったものに今は何も感じないことを、不思議に思いながら
カーテンの向こうの世界は、あまりにも早く変わっていってしまう
あなたといると私は、闇に怯えるあの少女のよう
世界のすき間で育って
ビルの群れの間で、私たちの愛はどれほど強く育まれたのだろう
考えれば考えるほど、怖くなってしまう
鈍かった鼓動が再び足を早めるまで
私たちは互いに見つめあって、この先どうなっていくかということについて話した
あなたを前にすると、自分がとてもちっぽけな存在になってしまうのを少し可笑しく思いながら
私はあなたにもたれていないといけないから、お願い、そこにいたままでいて
あなたといると私は、闇に怯えるあの少女のよう
世界のすき間で育って
ビルの群れの間で、私たちの愛はどれほど強く育まれたのだろう
考えれば考えるほど、怖くなってしまう
Stay Gold:
01. Romance in Seoul
02. Forest of Skyscrapers
03. Room314 feat.Mark Redito
04. All i want is you
05. It’s you
06. Ai
07. Bugaksanlo
08. New Moon
09. Don’t forget me
10. Blue (bonus track)
◼︎公演情報
Neon Bunny『Stay Gold』Release Party
日程: 2017年3月5日(日)
会場: CIRCUS Tokyo (渋谷区渋谷3-26-16第5叶ビル1F/ B1F)
開場: 18:00
料金: 前売 2,500yen / 当日 3,000yen(+1D)
LIVE:
Neon Bunny / Submerse / Cuushe
チケット取扱:
チケットぴあ P-CODE(323194)
ローソンチケット L-CODE(76641)
e+(イープラス)
Peatix
訳:志田麻緒
1996年生まれ。青山学院大学総合文化政策学部在籍。