INTERVIEWSDecember/25/2015

[Interview]Madegg – “NEW” (Part. 2)

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Part. 1からの続き)

__では次は違う角度からのことをお聞きしたいと思います。Madeggさんたちが主催している「INTEL」というイベントですが、このイベントがスタートしたきっかけは何ですか?

D/P/Iのツアーの話があって、僕はイベントとか全然やったこと無かったんですけど、面白そうだなと思って。今までは先輩方がやっていたんですけど、「IdleMoments」とか「INNIT」とか。みんなその時ちょっと忙しくて、消極的なモードに入っていたので、じゃあやってみようかなと。「IdleMoments」のEadonmmさんに相談して、それなら僕と「IdleMoments」の合体で何かやりましょうってことになって、あれがきっかけでしたね。

__D/P/Iの来日がきっかけだったということですね。

そうですね。そのツアーがなかったら始まらなかったです。

__dagshenmaさんやAndviceversaさん、Asparaさんなど、コアな大阪京都周辺のアーティストが出ているイメージがあるんですが、その辺は意識したものなのですか?

そうですね、僕が本当に好きだからブッキングしてやってもらっているんですけど、他にも良いアーティストがいれば誘いたいし、全然クローズなイメージでは無くて。もっとオープンなスタディのような感じにしていきたくて。今までは単純に僕の好きな人達を呼んでいたから結果的にそうなったっていう感じです。

__それと「INTEL」も、〈NO CREDIT RECORDS〉っていうMadeggさんのレーベルとのコラボレーションという形だったと思うんですけど、レーベルはどうして始めようと思ったんですか?

うーん、自分としてはレーベルを主宰しているってイメージはなくて。ただ楽しいからやっているってだけで意味は無いですね。まさに「No Credit」(笑)。だからむしろちゃんとやりたいとも思わないですね。思った時に誰かに言って作ってもらって形に出来たらなと。

__Acryl(Madeggとdagshenmaによるユニット)の作品もリリースされていますが、dagshenmaさんも〈NO CREDIT RECORDS〉から出していたと思うのでその辺の繋がりはあったのかもしれませんが、一緒にやるきっかけみたいなものはあったんですか? dagshenmaさんが出した作品もすごかったですが。

dagshenmaさんはもう奇人ですよね。奇人じゃおかしいか、奇才か(笑)。理解に及ばないというか。作るスピードも早いんですよね、仕事もしてるのに。あと僕と10コ以上も歳が離れてるのにフラットに係わり合えるし、やっぱり単純に音もすごく良いし。皆にどう聞こえるかっていうよりも僕が聞いてヤバいなって思うからイベントに出てもらったり、リリースしたりしましたね。あと僕京都の左京区に住んでたんですけど、大学が変わって右京区に引っ越したんですね。それで家が近くなったんで、結構会うようになりましたね。

__よくMadeggさんは、東京は本当に嫌いだってツイートすると思うのですが、そこに住むアーティストだったり、イベントだったり色々なものを含めて、Madeggさんにとって京都の良さって何ですか?

うーん、京都が特別良いとも思っていなくて。住みやすいっちゃ住みやすいんですけど。何だろう、東京は理解出来ないんですよね。大きいし。制作するって考えると絶対出来ないと思います。

__それは何が理由だと思いますか?

ある程度の自然が無いと駄目なんですよね。僕、人間からはあんまり影響されないんで。この人と出会って何かが変わったとかあんまりないんで。じゃないと影響されたら固定される気がして、あんまり良くはないのかなと。京都はちょうどいいですよね。都会ではないので。でも機能はそろっているし。METROがあったり、昔からの文化もあって。MeditationsとかJet Setとか全国的に見てもよいレコードショップもあって。あと僕が住んでいる所は割と端っこなので、歩いてすぐ桂川があるし。嵐山も歩いて10分くらいだし。広いんですよね、拓けているから。だから好きかどうかは別にして住みやすいんですよね。東京はちょっときつそうですね。おかしくなりそう(笑)。多分どこかで慣れないといけないんだろうけど、それが怖いんですよね。

__なるほど。では、今後の活動などについてお伺いします。今までMadeggさんは、海外のメディアで何度もピックアップされていると思うんですけど、勿論レーベルの〈flau〉の尽力もあると思うんですが、それでも作品が良くなかったらメディアはピックアップしないと思うので、海外の人も良い楽曲だと思って聞いているんだと思います。今作も海外リリースされるなかで、今後海外での活動について何か考えていることはありますか?

そうですね、ツアーも回ってみたいし、一回住んでみたいとは思いますね。でも僕、前もそうだったんですけど、これが終わったら多分一旦時間は空くと思うんですね。大学院での勉強もあるし、展示や制作の活動もあるし。だからそれに関連してその延長で向こうに勉強しに行けたら良いなとは思います。

__デザインや現代アートの勉強を今されていて、それと平行してっていう感じですか?

デザインはもう一旦学んだって感じなんですけど、今回の『NEW』や自分の作品のアートワークは自分でやっているし、他にも仕事でやっているので、常に自分の生活では、デザインは大きい部分を占めています。それで、他に興味があるとなると現代アートだったので。

__現代アートの方面に進むということでしょうか? (職業という意味では)かなり険しい道という印象があります。

いや、でも親とか普通に心配してます。お前は一体何がしたいんだって。もちろん僕が理解されようとしていないせいでもあるんですけど、多分突拍子もない方向から『POPEYE』に載ったりとか、活動が繋がらないというか。着実に評判が上がって掲載されたとかならわかりますけど、突拍子もないから「これは私の息子なんか?」みたいな(笑)。わかってくれよとも思いますけど、そんな心配はされますね。『POPEYE』に関しては、僕もなぜ僕なのか意味が分からなかったんですけど(笑)。

__Madeggさんはシティボーイではない?

シティボーイは……嫌いなわけではないけど、僕からしたら存在してなくて。彼らはシティボーイと言う自立した存在ではなくて、都市を構成する要素の一部だと思うんです。彼らが出没しているのは確実にある程度大きい都会な訳じゃないですか。結構クオリティの高い都会。僕が住んでる右京区で、そこに彼らがいたときに彼らは成立しないんですよ。その点では彼らは幻想なんですよね。だからシティボーイって自分で本気で言ってる人ってあんまりいないと思うんですよね。じゃあ誰が言ってるんだっていうと、メディアでしかないでしょ(笑)? そう考えると面白いですけどね、シティボーイって。

__そうですね。ありがとうございます。ではまた少し大学院の話に戻りますが、先ほども仰っていましたが、やはりそこでの学びが自分の音楽にフィードバックされていますか?

ありますね。かなり大きいです。

__今は修士課程だと思うんですけど、博士まで行く予定はありますか?

いや、博士課程は難しいと思いますね。多分本腰を入れてそれだけをやっていく覚悟じゃないと出来ないと思うし。作品だけでなく論文も書かないといけないし。僕が行ってるところって京都市立芸術大学の構想設計専攻って言うんですけど。メディアアートの方に行くんですけど、最後そこに行く必要があるのかっていうのはあるんですよね。表現や活動において縛られる部分もあるだろうし。研究者になるわけではないし、半端な感じで行ける所でもないので行かないと思いますね。

__その流れでお聞きしようと思っていたのですが、池田亮司さんとも共演をされていますよね。池田亮司さんは、まさに世界で活躍する現代美術家だと思いますが、今後Madeggさん自身がそういうフィールドで活動したいという気持ちはあるのかなって。今話を聞いている限りでは『NEW』はまさにそういう作品だと思うんですけど、まずご自身ではそういう気持ちはあるのか教えてください。

そうですね。でも、池田亮司さんになりたいということでなるわけではないから、今まで通り続けることでそれが現代アートというフィールドで何かしらになるっていうのがベストなんですけど、多分そこには入港証みたいなものが必要だと思うんですよね。市芸に行ってるっていうのも一種のファクターだと思うんですけど、多分言い切る必要がありますよね。自分は現代美術家だ、みたいに。でもそういう意味では、言うとか、なるとかじゃなくて、今の活動を続けていくうちにきっかけがあってそうなれれば、って感じですね。現代美術の方向からアプローチしてる人も何人かいますし。今、都現美(東京都現代美術館)でやっているJames Ferraro、TCFとか、EBM(T)、松本望睦さんとかナイル・ケティングさんとかそうですよね。その裾野は確実に広がってきているし、キュレーションしたり、そのブレインになってる人達の視線も、このままじゃ駄目だなってなって思っているのかなと。あんまり考えないようにはしてるんですけど。

__区切らないようにしてるんですね。

そうですね。で、Madeggってプロジェクトなので、それが僕の全てではないんですね。結構もう、Madeggは良いかなって思ってますもん、最近(笑)。『NEW』で墓に埋めた感じありますね。なんかもう、Madeggっていうものをやり尽くしたっていうか。

__前回も似た様なことを仰っていましたが(笑)。

そうなんですよね、毎回それで、ああ、またやらなあかん、って差し迫ってやってる。でも、名義を変えたりとかはちょっと考えてますね。

__また、Madeggさんと同世代で、音楽活動と就職で悩んで揺れ動いているひともいたりしますが、Madeggさんは大学院に進学されて現代アートを学びながら音楽活動をして、でも博士課程まで突き進むわけでもなくて。その辺のバランスとかってどう考えてるのかなって。

うーん……、僕、その辺は結局全部お金だと思ってて。お金っていうものはいかに得れるかっていうのと、それの対価として支払う時間だと思うので、それは要領よくやりたいなっていう。だから音楽活動と違うこともきっぱりやれるんじゃないかと思います。デザインの仕事とか、普通に働いてるとか。日本だとそうせざるを得ないし。長く続けてる人が評価される国だと思うので。まあそれもどうなのかなって思いますけど。まさに僕の先輩にあたる人達は音楽活動以外の仕事に大きな時間を取られたりだとか。CDの売上とかもあるけどそんなものは機材とかシステムだとかに費やすし。うーん……、問題意識はあるんですけどね。でも僕はそこにそんな熱意は持ち合わせていないので、きっぱり諦めちゃう所もありますけど。あんまり先のことを考えないようにしてます。

__そういう風に思えるのは、先ほどの話からすると、もしかして東京と違って、京都という場所の影響もあるのでしょうか。

いや、そうだと思います。東京は現象として人が歩くのが早いんですよ。普段歩くスピードが遅いこっちとしては抗う必要があって。自分が遅くて周りが早かったら違うのは自分じゃないですか。対峙した時に自分の歩くスピードを変えないといけないし、そのためには普段と違うギアを入れないといけないんですよ。でも、早く歩く必要がないんですよね。仮に目的地に早く着いたとしても恐らく2、3分しか変わらないし。あと車も同じで法定速度を破って走っても守って走っても、結局信号とかに食い止められるから、10分もないくらいしか変わらないと思うし、それで死を呼ぶぞとも言いますよね。あれと一緒の様な気がします。

__なるほど。きっぱり諦めるっていうのは要するに音楽活動そのもののことではなくて、他の仕事をしながら音楽活動をする選択肢に対して別に抵抗は無いっていうことですね。

そうです、そうです。

__そこでは別に悩んでないということでしょうか。

そうですね。悩んでるだけ時間が消費するじゃないですか。結局、悩むっていうか、そのプランがある筈なのに躊躇してるというか。悩みってそうじゃないですか。わかっている筈なのに恐怖心があったり、あとはまとめとしてみんなにシェアするとか。だとしたら、死ななければいいんじゃないのかという。

__東京というものすごい早さで変わっていくシステムの中に組み込まれるというよりは、京都で自分自身のペースを保ちながらやっていくってことでしょうか。

そうですね。音の構造の話ですけど、MetomeさんとかSeihoさんとか、僕はあのふたりを指標として見てるんですけど、あの人たちと比べて見てみた時に、東京でやってる他の人達もそうですけど、消費されるものを消費物って貼って出すし。それは、こう来たかっていう認識って変わるのを前提にしてて。こっからまた変わるよなっていう。一歩先の予感っていうか。僕はその外にいたくて。止まっているし、もう反復するだけだしこれはなんの魅力も無い(笑)。変わり様が無い。でも僕はそういう音楽が好きだし。変わらずいつでも聞ける、でも悪く言えば当たり障りの無いというか。

__では、最後の質問になりますが、『Yonige』(1) って終わってしまったんですか?

いやまだやってますよ! 『YONG』って名前で。結構早い段階で変わってました。

__たいへん失礼しました。

いえいえ、僕らが全然表に出ようとしていないんで。でも他のメンバーは僕と違って就職したし。だからこれからもがっつりとはやれないんですけど、いい感じに続けていきたいなと思ってます。

(1)…Madeggこと、Kazumichi Komatsuらが編集・発刊している京都発のジン。2013年に発刊された第1号では、徳利、泉まくら、daokoのインタビューを収録している。(http://yong-jp.tumblr.com)

(2015.12.9、恵比寿LIQUIDROOM 2F、Time Out Café & Dinerにて)

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■リリース情報
Artist: Madegg
Title: NEW
Format: LP/CD/Digital
Release Date: CD/Digital – Nov 18th (Japan) 20th (Overseas) 2015
LP – Jan 19th 2016

1. Savages
2. Portrait of a Diagram
3. Palace of Robe
4. National Water
5. Chain
6. Dragon
7. Cave Reflection
8. Paste Dream
9. Lineage of Stones
10. Chandelier
11. Unicorn
12. EFS (bonus track for CD)
12. Secret Track (bonus track for LP)

インタビュー・文: T_L

構成・アシスタント: 成瀬光
1994年生まれ。UNCANNY編集部員。青山学院大学総合文化政策学部在籍、音楽藝術研究部に所属。