ARTIST:

Pixies

TITLE:
Indie Cindy
RELEASE DATE:
2014.4.23
LABEL:
PIAS Recordings / Hostess
FIND IT AT:
Amazon
REVIEWSMay/18/2014

【Review】Pixies | Indie Cindy

 Pixies復活。Radioheadのトム・ヨークが「学生時代、Pixiesが僕の人生を変えたんだ」と、U2のボノが「アメリカで最も偉大なバンドの一つ」とコメントを寄せるアメリカ、ボストンのオルタナティヴ・バンド、Pixies。そんな彼らが、23年振りとなるニューアルバム『Indie Cindy』をリリースした。

 93年に一度解散を発表したものの、04年にブラック・フランシス(Vo,Gt)、ジョーイ・サンティアゴ(Gt)、デイヴィッド・ラヴァリング(Ds)、キム・ディール(Dr)というオリジナルメンバーでの再結成を果たした彼らは同年のフジロック、05年の単独来日公演、10年のサマーソニックと続けざまに来日公演を決行し日本のファンを再び熱狂させた。しかし、彼らは再結成後すぐには新作アルバムを発表しなかった。数多くのライブ音源を発表していても新作アルバムを待ちわびるファンは心の中でいまかいまかという気持ちが拭いきれずにいた。昨年の突然の4曲入りEP『EP1』のリリース。立て続けに発表されたキム・ディールの脱退。数回のメンバー加入、脱退を繰り返しつつ、全世界ツアーの敢行、『EP2』のリリース、PVの公開などファンは焦らされるかのように多くの発表を喜び、そして待ち続けた。そのような一年間の間での慌しい活動の中で、遂に23年振りとなる新作オリジナルアルバム『Indie Cindy』が発表された。

 本アルバムは、彼らが発表したEPをまとめたような形式となっており、12曲の楽曲と2曲のライブ音源とで構成されている。いくつか紹介していこう。1曲目に収録の「What Goes Boom」は、パワーコードを刻みハウリング奏法を駆使した荒々しい印象を受ける。だが、サビで使用されるマイナーセブンスコードのもたらす優しい感情——そこでは、そのマイナー感を残しつつも、彼らの長い音楽キャリアで培われたポップ感が聴く者の耳に響いてくる。そして、今回のタイトルを冠したリード曲である「Indie Cindy」では、Oasisを彷彿させるようなイントロに始まるが、淡々と進んでいく曲調、徐々に盛り上がりを見せる昇降感はやはり彼らならではのものだ。「Bagboy」とは”bag + boy”という造語で英語圏ではレジで商品を袋に詰める係りの少年、という意味であるらしい。彼らはこの楽曲の中で「Cover your breath. Cover your teeth. Polish your speech」と延々と噛み締めさせるかのように歌い上げる。最後の「Jamie Bravo」でのシンプルでこそ有るものの特徴的なアルペジオフレーズは現代のポストロック、オルタナ、シューゲイズミュージックでも馴染み深い手法だ。感情の凝縮と爆散、沈静と激情。23年という長い年月は経ったが、Pixiesの創り出す世界、そして彼らにしか奏でることのできない音楽は顕在だ。

 昨年は、UK、シューゲイザーの総本山、My Bloody Valentineの新譜のリリースが話題となったが、今回、Pixiesの新作『Indie Cindy』のリリースと、伝説と言われているバンドの動きに再び注目が集まっている。ミュージシャンを志す者は誰もがやはり伝説と呼ばれるバンドの音楽を一度は聞くものだ。そして、その伝説と称されるバンドが“今”、新しい音楽を打ち出したら、若い世代とどのような音楽の化学反応が起きるのだろうか。真の復活を遂げたPixiesの活動に大きく注目していきたいと思う。

文・薩摩祐大
青山学院大学総合文化政策学部二年生。ポップロックバンド「いちもり」にギターとして参加。都内、仙台を中心に精力的に活動中。