INTERVIEWSJanuary/07/2014

【Interview】Delorean – “Apar”

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 デロレアンはエキ・ロペテギ(vo)、ギレルモ・アストレイン(g)、イゴール・エスクデオ(drums)、ウナイ・ラスカノ(key)から成るスペイン出身のインディ・ダンス・バンドだ。彼らは2000年に結成し、2004年にセルフ・タイトルのスタジオアルバムでデビューした。2009年にリリースしたEP『Ayrton Senna EP』がPitchforkでBest New Songになったことで火が付き、Ty SegallやKing Krueleも契約したニューヨークの名門レーベル〈True Panther Sounds〉と契約。翌年2010年に『Subiza』をリリースし、その名を世界に知れ渡らせた。そして昨年、ニュー・アルバム『Apar』がリリースされた。

 彼らの音楽の特徴は、リバーブを効かせたソフトで浮遊感のあるロックサウンドにダンスのビート、リズムを落とし込んでいるところにある。また、前作『Subiza』は突き抜けた陽気さと楽観を中心に据えて音の響きを最大限に広げていた開放的なアルバムであったのに対して、今作は余分なものを削ぎ落としてミニマルさをプラスした無駄の無い、洗練されたアルバムとなっている。

 今回のインタビューでは、アルバム『Apar』について、また、彼らの音楽との向き合い方について語ってもらった。

デロレアン:
エキ・ロペテギ(vo)
ギレルモ・アストレイン(g)
イゴール・エスクデオ(drums)
ウナイ・ラスカノ(key)


_まず、デロレアンというバンド名は、あの『バック・トゥー・ザ・フューチャー』からとった名前ということでよろしいのでしょうか。

エキ・ロペテギ(以下E): はっきり言ってイエスだよ。バンド名を決めるのはとても難しい。皆で映画を見ていて、デロレアンという響きが良いね、ってことでこの名前になったんだ。

_そうなんですね。他にもアメリカの文化に興味があるのですか?

E: うーん、そうだね。僕らが子供の頃っていうのは90年代なんだけど、当時僕らの育った小さな街にもスケートやサーフなどのカルフォルニアのカルチャーの影響はすごくあった。ハードコアも聴いていたよ。

_なるほど。ではアルバムについてお訊ねします。前回はスペインでレコーディングしたそうですが、今回はニューヨークでレコーディングしたんですよね。

E: そうだね、前回のアルバムはスペインの郊外のスビザでレコーディングして、今回はニューヨークで行ったよ。

_環境の面で影響を受けたことはありましたか。

E: いったんスタジオにはいってしまうと、できている曲を録音するだけだから、環境にはあんまり左右されないかな。

_曲はいろんなところで書くのですね。

E: そうだよ。曲はそれぞれの家で書いてくるか、スタジオで演奏してから家で仕上げてくるかのどっちかだな。でも曲を書く作業って言うのは、孤立した作業で、没頭してするものだから、周囲の環境には左右されないかな。

_また、今作はサウンド的には、前作の突き抜けた明るさに比べるとややダークな部分も表れていると感じましたが、何か理由はありますか?

E: 確かに前作に比べて楽観的な部分が少なくなっているね。まぁ意図的に、と言うよりは自然にそうなったのだと思うけど。今作は、よりシンプルなものを作りたかったんだ。レイヤーも少なくしてね。あとは、他のバンドにも影響を受け始めていることが言えるかな。特に今回、80年代のクラシカルなポップロックに影響された部分は多いと思う。

_特に影響を受けたアーティストはいますか。

E: たくさんいるけど、プリファブ・スプラウトやコクトー・ツインズに特に影響を受けたかな。

_それではアルバムでキャメロン・メジロー(グラッサー)とキャロライン・ポラチェック(チェアリフト)をフィーチャーすることになった経緯を教えてください。

E: 二人とも自然な形で一緒にやることになったんだ。キャメロンとは同じレーベルってことで共通の友達もいて、元々仲が良かったんだ。今までに一緒にツアーを回ったり、リミックスも2つくらい作ったりしているよ。今回はもう曲は仕上がっていて、はじめはボーカルサンプルを入れていたんだ。でも強いインパクトのある女性ボーカルが欲しくなった。そこで彼女に電話したら、すぐにニューヨークのスタジオにきてくれて録音したんだ。キャロラインの場合も同じで、曲は既に出来上がっていて、曲に合う女性ボーカルを探していたんだ。それでキャロラインに連絡をとって、きてもらったんだよ。でも実はこの曲のメロディラインはとても難しくて、彼女にとってもチャレンジとなるレコーディングだったんだ。それでも彼女はやってみたい、と言ってくれて、やることになった。結果的に彼女はすばらしいボーカルを入れてくれた。キャメロンには悪いけど、僕たちが一緒にやってきたボーカリストの中で一番すばらしいボーカリストだと感じるまでの成功をおさめたんだ。

_なるほど。それでは、ジャケットの十字架を二つ重ねたような形について教えてもらえますか。

E: ああ、あのマークはね、普通こっちの文化では、お墓に十字架を建てたりするんだけど、それでホルヘ・オテイサ(Jorge Oteiza)という有名なスペインの彫刻家が、彼の奥さんが亡くなったときに、一つは彼自身、もう一つは奥さんという意味で二つの十字架をつなげたものをお墓に置いたんだ。僕らはそれをパワフルで、意味のあるシンボルだと感じた。だから今回、アートワークに使わせてもらったんだよ。

_それは、今回のアルバムのコンセプトにも繋がりますか。

E: うん。全体的に歌詞のコンセプトになっているよ。

_わかりました。2000年に結成されて、今まで長く活動されていますよね。これまでで音楽に対する姿勢などで変化したことがあったら教えてください。

E: 10代のころから一緒にやってきて、今は皆30代にさしかかっている。一緒に歩んでいく中でたくさんの音楽の知識を得てきたし、人間としても成長してきた。その中で、やはり最初にあったような無邪気さは褪せてしまったと思う。例えば、昔は思いっきりできていたことが今はできなくなったりというのはある。でもそれと引き換えに経験や知識を得てきた。バンドとして重要なのは、昔と今のバランスを考えながら音楽をやって行くことだと思っているよ。

_それではずっと持ち続けているポリシーのようなものはありますか。

E: すべての決定を必ず全員で話し合って行うと言うことかな。

_なるほど。バンドが長く続いている秘訣かもしれませんね。今日の演奏やライブ映像を見て、ダンスミュージックからの影響を感じました。あなたたちの音楽においてダンスとはどのようなものでしょう。

E: 本当に重要な要素だと思っているよ。僕たちは決してクラブバンドではないし、テクノのプロデューサーがついていたことも無いけれど、バンドを始めた当初はテクノやハウスなど様々な音楽に影響されていた。バンドとしては今でもそういったダンスミュージックの影響を受け続けていると思う。

_ダンスの要素の何が重要だと思いますか。

E: 皆を動かすビートとリズムだね。

_これからさらにチャレンジしたいことはありますか。

E: シンフォニーのような20分ぐらいの長い曲を書いてみたいな。あとは、さっき言ったように、今までダンスの要素を重要視してきたけど、実際にクラブの曲を書いたことはないので、クラブ用の曲を書いてみたいかな。

インタビュー・文:永田夏帆


1992年生まれ。UNCANNY編集部員。趣味はベースと90年代アメリカのポップカルチャー。青山学院大学在籍の現役大学生。

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■リリース情報
アーティスト: Delorean (デロレアン)
タイトル: Apar (アパー)
レーベル: True Panther Sounds / Hostess
品番: BGJ-10184
発売日:発売中
価格:2,200円 (税込)
*初回仕様限定盤はボーナストラック・ダウンロードカード封入(フォーマット:mp3)、歌詞対訳、ライナーノーツ 付

1. Spirit
2. Destitute Time (feat. Cameron Mesirow (Glasser))
3. Dominion
4. Unhold (feat. Caroline Polachek (Chairlift))
5. You Know It’s Right
6. Keep Up
7. Walk High
8. Your Face
9. Inspire
10. Still You
【初回仕様限定盤ボーナストラック・ダウンロード(フォーマット:mp3)】
1. Spirit/Dominion (Live from the House of Vans)
2. Destitute Time (Live from the House of Vans)