INTERVIEWSDecember/06/2013

【Interview】ISSUGI & BUDAMUNK (イスギ・アンド・ブダモンク) (We Nod Records × UNCANNY)

131106

 「ISSUGI & BUDAMUNKがアルバムをリリースする」という情報を耳にしただけでアルバムの購入を決めた人も多いのではないだろうか。それほどISSUGIとBUDAMUNKというアーティストに対するリスナーの期待値、信頼度は高いものであるといえるし、実際にWe Nod Recordsでも彼らがそれぞれ過去にリリースしてきた作品は未だにオーダーが絶えないという。

 今作『II BARRET』はその期待値を優に上回る作品だ。これまでに作られた多くの共作や、Sick Teamとしての活動を通して深められた互いの感覚に対する信頼感を土壌とし、互いのこだわりを随所に配置することで得られた音はロウな空気を孕んでリスナーの耳に届く。

 そして音と同時にリスナーを惹き付け魅了するのは彼らのスタイルだ。ブレることなく個々が考えうる最高のヒップホップを体現し続け、ヒップホップにストイックに向かい合うその姿勢には得も言われぬかっこよさを感じる。また、インタビュー中にも語られることだが彼らの過去の共作や個々の最新作と今作を聞き比べることもまた『II BARRET』の楽しみ方の一つだ。互いが唯一無二のスタンスで足跡を着実に残しながら歩き続けているからこそ、その軌跡を辿ることで彼らの空気感をより理解することができる。そしてその歩みが重なった今作では、そのスタイルがさらに研ぎすまされていることが確認できるだろう。

 今回のインタビューではアルバム『II BARRET』に関して、また両者間の制作過程などについて話を伺った。

_今作『II BARRET』はどのようなテーマで作られていますか?

ISSUGI(以下I ): テーマは特になくて、俺とBUDA君が一緒に作るっていうことですね。

_お二人はSick Teamでも共に活動されていますが、今回ISSUGI & BUDAMUNKとしてアルバムを制作するに至った経緯を教えてください。

I:元々一個前のアルバムの『EARR』を作ってる途中からBUDA君と一枚作りたいなと思ってて。で、『EARR』を作り終えたくらいからレコーディングし始めてトラックも俺がBUDA君から聴かせてもらって選んだりして、だんだん作っていったって感じですね。

_11月27日にリリースのJAZZY SPORTのコンピレーション『Pound For Pound Vol.3』にSick Teamの新曲が収録され、また今作でも「月ノ眼」で5lackさんが参加されていますが、ISSUGI & BUDAMUNKとしての活動と、5lackさんと三人で活動しているSick Teamでの違いはどこにありますか?

I:違いは混ざり方が違うと思うっすね。2人でいるか3人でいるかっていう感じで。

_特別差をつけよう等ということも一切考えていないということですね?

I:そうっすね。

BUDAMUNK(以下B): 差はつけようとは考えてないですけど、でも今回のアルバムはトラックも全部ISSUGI 君が選んでるんで、違いはSick Teamの時だと3人で色々聴きながら選んでる、ってことくらいですかね。

_BUDAMUNKさんは『FROM LA TO TOKYO』や『Blunted Monkey Fist 2』と同時期に今作を作っていたのでしょうか?

B:アルバムを作るときって、「この作品を作る為にビートを作る」っていう感じじゃなくて、基本いつも作ってるビートの中から選んでるっていう感じなので、「このアルバムのビートの制作期間はいつ」って決まってるわけじゃないんすよね。『FROM LA TO TOKYO』はJOE STYLESに渡してたやつから選んでもらって録音してって感じで。常にあるストックから選んでる感じですね。

_お二人が2008年にMyspaceを通じて繋がって、それから音源ではじめて共演したのは2010年のISSUGIさんのアルバム『The Joint LP』ですか?

I:一番最初はBUDA君が出してるミックスCDですね。

B:2008年の『Buda Session』ですね。

_出会われてからすぐに作品を作ったのですね。

I:結構速攻でしたね。出会ったときBUDA君はLAから日本に帰ってきてたので。すぐ連絡とって会ってるうちに「ミックス作ってるからラップしてよ」っていう話になって録ったんだと思います。

_お互いにISSUGI さんのラップ、BUDAMUNKさんのビートというものにどのような印象を持っていますか?

I:
俺は日本でアルバム一枚トラック任せるんだったらBUDA君しかいないと思ってて。それくらい信頼してます。

B:俺も同じですね。自分のビートに合うMCって日本には中々いないと思うんで。今の時代ストレートなヒップホップをやってる人が少ないんで。そこがでかいんだと思います。

_2008年に出会われてから多くの共作を経て今作に至るわけですが、お互いのビートやラップに対して印象が変わったと思う部分はありますか?

B:最初聴いたときにすげえ衝撃受けてるんすけど、そっから一緒に作ったりとかするようになって。で、具体的に言葉では言えないんですけどお互い絶対に進化してるのは間違いないですね。

I:昔の『Buda Session』から自分のセカンド、Sick Teamを経て今作を聴いたりしてくれれば2人が進化してる流れが絶対わかると思うから、そういう聴き方も面白いと思うし。

B:最初のMONJUのやつとか『Buda Session』のミックスとかそのとき出てた『BUDASTYLES Classics』とかその辺のを聴いてもらえたら進化がわかるんじゃないですかね。言葉では表せないけど聴いたらわかると思います。

_お二人の最新のリリースとして、BUDAMUNKさんはBUDAMUNK & JOE STYLESとして『FROM LA TO TOKYO』を出していて、ISSUGI さんは全曲16 Flipのビートで『EARR』をリリースされています。トラックメイカーやラッパーが変わることによる違いは、今作ではどのようなものがありましたか?

I: 自分が持ってるグルーヴとBUDA君に流れてるグルーヴが違うので、それがぶつかった時の一つのグルーヴが違いだと思います。

_BUDAさんのストックからラッパーが選ぶということでしたが、そのチョイスにはそれぞれどのような特徴がありますか?

B:JOE STYLESの場合は自分が活動を始めたときからずっと一緒にやってるやつなので一緒に今のスタイルを作り上げてきたっていう感じですね。ISSUGI 君は違うところで自分のスタイルを作り上げてきた人なんで、その組み合わせが面白いと思いますね。俺が作り上げてきたスタイルと、ISSUGI 君が東京で作り上げてきたスタイルの融合って感じですね。

_アルバムに先駆けてリリースされた12インチの『Get Ready EP』にも収録されている「Get Ready」で「造り出す空気それ自体がもろメッセージ」というリリックにもあるように、おふたりは空気感やノリをとても大切にしていると思います。今作ではお二人で作られたことでどのような空気感が生まれたとお考えでしょうか?

I:二人ともストレートなヒップホップだと思うので、さっきの話じゃないけどその二人が作り上げてきたのが混ざったものになってると思うんすよね。お互い一人でやってるときとはまた違うと思うし、Sick Teamでやってるときとも違うと思うんすよね。音楽って鳴った時に空気がどうしても生まれるじゃないですか。それがその人の音楽っていうか。思ってる事だと思うんですよね。

_「わかるやつには」というリリックや「ネクストの準備出来てるやつに聴かす」というリリックが登場しました。この言葉はリスナーを選定する、というより自分たちの音への自信や手応えの現れだと感じました。そしてその自信通りお二人が体現している「空気」に共振するリスナーが増えたと思うのですが、ライブ等でのリスナーの反応はどのように感じていますか?

I: 個人としては何枚かアルバム出して、聴いてくれるやつもだんだん増えていって、いろんな地方とかも呼んでもらって実際観客を目の前にしてライブとかしてるとやっぱり反応は返ってくるので…ってなんの質問でしたっけ(笑)?

B:音楽とかアートって自分の持ってる物を表現するものだと思うんで、聴いてくれてる人を意識するってことはあんまりないんです。自分の出したい音を出して、それを気に入ってくれたらうれしいって感じですね。

_「We know」での「のめり込んだ末に身に付いてたマインドで上見る癖」というリリックや「黒いやドープじゃ言い当てられないそう簡単にくくらせない一つのソウル」というリリックにはどのような思いがありますか?

I: 今言ってくれたリリックは、自分がヒップホップを10代の半ばくらいからずっと好きで聴いたりやったりしている中で、そのヒップホップが持ってるポジティブな力に自分も影響受けてたりしてて。そういう感覚ってヒップホップが好きなやつだったら共通してわかるヴァイブスみたいなものだと思うんですよね。。あとはなんでもかんでもが黒いとかドープでまとめられちゃうとちょっとそれは違うんじゃないか?みたいな内容のリリックでした(笑)。

_今回のアルバムにはDNCの方々が多く参加していますが、彼らはアルバムにどのようなエッセンスをもたらしたとお考えですか?

I:基本的にビート聴いた上で「これは5lackだ」「これはケビン(OYG)」だって感じで決めていったんすけど、普段一緒にライブしたりしてるやつを選んだので自然な流れで曲作れたって感じですね。

_全てBUDAMUNKさんのトラックというわけではなく、16Flipプロデュースの曲を入れたのは何故でしょうか。

I: 4曲目の「Move the crowd (interlude)」は16FlipがGreen Butterの曲のフレーズをループしてるのがあって、「これInterludeで入れたい」っていう話をBUDA君にしたら良いねって感じになって。そのノリで入れたって感じです。

B: 基本的にこのアルバムはISSUGI君がコーディネートしてて。ビートも選んでもらってるし曲順も全部ISSUGI 君が決めてるのでその流れで16Flipの曲が入ったって感じです。結構自分の今までのプロジェクトって自分が中心にまとめてたのがほとんどなんですけど今回は完全に任せましたね。ISSUGI 君のテイストを信頼してるんで任せきれたって感じです。

_BUDAMUNKさんは16Flipさんのビートにどのようなイメージを持っていますか?

B:MONJUの『Black de.ep』を聴いたのがはじめてだったんですけど、すごい衝撃受けましたね。10年くらい日本にいなかったから、帰ってきた時日本のヒップホップの状況が何もわからなくて。それで色々聴いたんですけど、中々自分に合ったスタイルのヒップホップをやってる人に出会えなくて。そんな中MONJUのEPを聴いたのがすごい衝撃で。「俺やりたいのこれだよ」みたいな(笑)。東京っぽさもすごく感じたし、日本語のヒップホップに、こんなかっこいいのあるんだっていうのをはじめて思って。ビートもそのときにすごい衝撃受けました。

_以前ISSUGIさんもBUDAさんと出会われて「これこれ、俺がやりたいのは」と思ったという発言をされていますがお互いがそれを感じているのは面白いですね(注1)。

I:確かにありましたね(笑)。 俺もMyspaceで聴いた「After Shock」でやばいと思って。「まじでこんな日本人いんの!?」って感じでした(笑)。

_「No more ballad」の冒頭や「outro」でK-Frashさんの名前が出てきますが、K-Frashさんは今作にはどういった形で関わっていらっしゃるのでしょうか?

I:K-Frashとは俺が大阪いった時とかK-Frashが東京きた時とかによく遊んでるんですけど、「このネタ良いんじゃん?」みたいな感じでレコード聴かしてくれるんですよね。「No more ballad」のビートもそんな感じで大阪のFedupで出来たやつなんですけど、このトラックがアルバムのここに入ってたら面白いんじゃないかなって感じで入れました。

_制作過程についてお伺いします。「Get Ready」では、BUDAMUNKさんがトラックの名前を付けたということがリリックにありますが、他の曲でもトラックの名前はBUDAMUNKさんがつけたのですか?

B:この曲も俺が名前つけたっていう感じではないですね。俺がビートを渡すときいつもサンプルした曲の名前がわかんなくなっちゃうんで、辿り着く鍵を残そうと思ってサンプルの名前の一部をビートにつけてたんですね。

I:やばいね、それ(笑)。

B:それがたまたま「Get Ready」だったんですけど、それが偶然アルバムのスタートにちょうどいいんじゃないかって思って。「これからこの動きが始まるから準備しとけ」っていう。

_他の曲はISSUGI さんが決めたのですか?

I:俺が一人で決めたのもあれば、BUDA君の家で「こんなんどうすか」みたいなこといった曲もあるし。BUDA君も「日本語の曲名があっても面白いんじゃないか」みたいなこといったりしてましたね。でも曲名に関しては結構その場のノリもあったりして。ケビン(OYG)もその場で「この曲は『We Know』でしょ」みたいなこといってたし。

_Sick Teamのアルバムでは、ラップは即興的にその場で書いてその場でレコーディングするということでしたが、今回もやり方はおなじですか?

I:曲によってですね。BUDA君の家に行って書いて録ったやつもあるし、家で書いてきて録ったっていう曲もあるしって感じです。

_ISSUGI さんのブログに「Five star recordsでレコーディングした」ということが書かれていたり、kid fresinoさんとの「Tokyo 4hours」でもFive starスタジオの話が出ていましたが、今作はBUDAMUNKさんの家ではなく、Five star のスタジオでレコーディングされたのですか?

I:Fla$hBackSのつながりで前からFive starのやつらが部屋借りてスタジオ持ってるっていうのは聞いてたんですね。佐々木(kid fresino)とやってる曲をそこで録ったんですけど、ちょうどBUDA君がLA行っててBUDA君の家では録れないし、せっかく佐々木と録るならいつもあいつらが遊んでるところでやった方が楽しいなと思って。J(JJJ)とかがRECとかやってくれたんですよね。

_アルバム制作にあたって多くの時間をお二人で過ごしたと思うのですが、その中でアルバムに関係なく音楽の話も多くされたと思います。お二人の中で今かっこいいと思うラッパーやビートメイカーはいますか?

I:共通でやばいと思うのはBUDA君が教えてくれるLAのアーティストですね。そんな有名じゃなかったりするのかもしれないんですけどBUDA君はやっぱりすごい詳しいんですよね。YouTubeとか見せてもらってます。

B:あとはMr. Bradyとかね。

I:Sick TeamのリミックスアルバムのトラックメイカーもBUDA君がチョイスしてくれてるんですけど、俺は全然知らない人なんだけど超やばい人物がどんどん出てきてて。

B:それは基本俺が繋がってるやつに大体リミックスを頼んでてるって感じですね。まだ発表されてないんですけど。

_ライブについてお伺いいたしますお二人のスタイルを提示するという意味においてもライブは大切なのではないかと思います。今後『II BARRET』ではどのようなライブをおこなっていきたいと考えていますか?

I:ライブに関しては前からSick TeamでBUDA君がDJしてくれてるんで、そのノリでって感じですね。

B:最近MONJUとかISSUGI 君のソロとかのときもライブDJしてるんで、いつものノリですね。

_最後の質問になります。お二人の今後の活動についてお聞かせください。

I:俺は、今ニューヨークに住んでるDJ SCRATCH NICEってやつとまたミックスCD作ろうと思ってます。あとMASS-HOLEがオレのいろんなアカペラ使ってREMIX ALBUM作っててそれもヤバいんでリリースされたらCHECKして欲しいっす。

B:俺は12月に出すビート集と、後はJAZZY SPORTのコンピレーションの中にSick Teamの新曲と、ILL BROTHER S.U.G.I(ILL SUGI)ってやつと作ったビートが入ってます。後は仙人掌のリミックスアルバムも、ILL SUGIと俺が半分ずつくらいでプロデュースしてます。JOE STYLESとは常に作り続けてます。あとはGreen Butterのセカンドももう少しで出来ると思うし、Sick Teamのリミックスアルバムもあるし、他にも色々あります。

I:BUDA君は色々平行して作ってるんで。完成した順に出るって感じですね(笑)。

*注1 Amebreak Interview「ISSUGI FROM MONJU」(2009/9/16)
http://amebreak.ameba.jp/interview/2009/09/001051.htmlより。

(We Nod Records×UNCANNY Vol.4 2013年11月、P-VINE RECORDSにて)

インタビュー・文: 森優也
1991年生まれ、埼玉県草加市出身。UNCANNY編集部員。POPGROUP所属のESMEを実兄に持つ。青山学院大学総合文化政策学部在籍。

131106_2

Artist: ISSUGI & BUDAMUNK
Title: II BARRET
Release Date: 2013.11.6
Label: DOGEAR RECORDS
Number: DERCD-042
Price: ¥2,415 (tax in)

1. Intro
2. II Barret
3. Get Ready
4. Move the crowd (interlude)
5. Thirsty Fonk feat 仙人掌
6. GGIDI (interlude) (by 16Flip)
7. Tokyo 4hours feat Kid Fresino
8. No more ballad (prod by 16Flip)
9. 月ノ眼 feat 5lack
10. We know feat OYG
11. 29 時 (interlude)
12. Writin in myhood
13. Rize again
14. Outro

Produced by BUDAMUNK

Find it at: We Nod Records