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INTERVIEWSOctober/12/2016
[Interview]Holy Fuck – “Congrats”
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 〈XL / Young Turks〉からリリースされた2010年のアルバム『Latin』から6年。今年5月に最新アルバム『Congrats』をリリースした彼らは、6年という年月を前向きにとらえることのできる先進的な進化を遂げていた。一方で、演奏ツールの基本は、ラップトップを使用せずに、身体を駆使し、全身で音を表現するアナログとも呼べるような独特の手法に変わりはない。バンド名が一際目を引くHoly Fuckだが、インタビューで見えてきたのは、ラベルや周囲に固執せず、自然体で表現することを楽しむ、純粋な彼らの姿だった。

 今回は、時にライブバンドと評されるHoly Fuckのパフォーマンスについて、また、最新作『Congrats』について、来日したHoly FuckのBrian Borcherdt(ブライアン・ボーチャード)とGraham Walsh(グラハム・ウォルシュ)にインタビューを行った。

__始めにライブパフォーマンスについてお聞かせください。聴き手としてHoly Fuckの音楽を聴いていると高揚感を抑えられないことがありますが、実際にプレーヤーとして、演奏中に高揚感に支配されてしまうことはありますか?

Graham Walsh(以下、G.W):もちろん、時々ね。演奏中はとても興奮するし自分達自身確かに浸る瞬間もある。実際それはとても自然なことで、音の組み合わせがうまくいっている時なんだ。

Brian Borcherdt(以下、B.B):もしそれがいい方向に行けば最高なんだけど、そうじゃない時もある。ステージ上には大量のケーブルがあるし、よく自分達もどうなっているかわからなくなってしまう時もある。だから、どっちに転じるかだね。最高か、最悪か……。でも結局は最高な方に持って行くんだ、メンバー同士で解決しながらね。

__ラップトップを使わないからか、実験的で抑えきれないパワーが放出したような生々しい演奏に感じますが、そのスタイルを作り上げていく中で、バンドにおいて守っていく拘りのようなものはありますか?

B.B:ステージ上では元々ある構成の中でパターンに従っているんだけど、同時にそのような中でフリーダムも存在している。毎回同じ時間の中で同じように演奏しているわけではないから、そのすでに構築された構成の中で、自由に変化を作り出していくようにしているよ。

__そのようにパフォーマンスの中で、特にブライアンさんは演奏器具にナイフを使用されたりしますが、そのアイデアはどのように生まれたのですか?

B.B:これはいつも少し悩ましいネタではあるよ。楽器屋に行けば多種多様なシンセサイザーが売っていたり、選択肢は無限だけど、僕たちは狭い領域範囲で何ができるか、できないかを考えているんだ。それに、人間には手が2つしかなくて、もしパソコンを使えばたくさんのボタンに振り回される。ギザギザがついているナイフを使えば片手でそれを動かせるし楽器には作り出せない音を作ることができて幅が広がるから面白いんだ。それに何より、観客に向けたライブパフォーマンスをしたいと思っているしね。

__ナイフは定番のツールなのですか?

B.B:ナイフを持って行くのは今回のツアーが初めてだよ。『Congrats』ではいくつかの曲のレコーディングでも使用したし、僕たちが作り出そうとしている音を作るのにはちょうどいいんだ。今はまだいろいろ試している最中なんだけど、ライブでは機材をたくさん運ぶから、なるべく小さいものを選ぶようにしている。

__では、次に、アルバムについてお聞かせください。今作の発売までに前作から6年、その間バンドとしてのライブ活動や個人のプロジェクト活動を行なっていたようですが、アルバムの制作も同時に進行していたのでしょうか?

B.B:2012年に少し休暇をとって、その後に制作を始めたんだ。実は2014年頃にはアルバムは大体完成していたんだけど、もっと良いものにしたかったし、どのレーベルから発売するかなどを話し合っていたら、知らないうちに6年も経っていたんだ!

__その間お子さんが生まれるなど、プライベートにおいても変化があったとお聞きしました。それらの変化により、制作活動において何か影響はありましたか?

G.W:そうだね。子供が生まれるってことは人生を変える出来事であるし、同時に人生観をも変えると思うんだ。もちろん音楽的にも変わったよ。普通は少し落ち着いたり保守的になったりすると思うんだけど、自分の場合は正反対で、逆に以前よりもっとクリエイティブになりたいと思ったし、いろんなことを試したいと思うようになったんだ。人生に対する考え方が変わったよ。色々なことに感謝するようにもなったしね。

B.B:僕には子供が生まれていないんだけど……(笑)。バンドでの変化といえば、しっかりとした休暇をとった中でのアルバム制作への取り組みかな。今まではツアー中に、限られた時間の中で曲を作っていたんだけど、このレコードはなんの妥協もせずに作りたかったんだ。メンバー中3人に子供が生まれたんだけど、それでも、全員一致で、ちゃんとしたアルバムを作りたいという思いがあった。可能な限りクリエイティブに、可能な限り良い作品を作りたいという思いがね。それがバンドにおける変化で、今回のアルバムがこれまでとまったく異なる視点から制作された理由でもあるよ。僕自身、自宅の地下にスタジオを作ったことで時間をより投じることができるようになったこともあるしね。

__アルバムタイトル『Congrats』の所以はどのようなものですか?

B.B:僕たちはいろんなことを自己流でやってきて、プレッシャーにも屈せず、誰かに釘を刺されようとも自分たちのスタイルでやってきた。そうして今作を作り上げた今がある。”Congrats”は、そんな自分たちへ向けた祝福の意だよ。

__「Tom Tom」のMVでは、小さな町のコミュニティ特有の抜け出せないフラストレーションのような葛藤を感じました。実際にどのようなコンセプトでこの映像の制作に至ったのでしょうか?

B.B:そうだね。彼が抜け出せない葛藤のようなものを、彼自身の想像で道を切り開いていく。ほとんど自然的な行為の中でね。そんなイメージで、制作にあたった作品なんだ。

__曲名の「Tom Tom」とは?

B.B:はじめは、繰り返される“ドゥンドゥンドゥンドゥン”というドラムの音に因んでつけたんだ。だから「Bum Bum」 でも「Tom Tom」でもよかったんだけど、「Bum Bum」だと少しダサいから、最終的には「Tom Tom」にしたんだよ(笑)。

__「Xed Eyes」のMVはカナダ出身のミュージシャンChad VanGaalenが制作にあたったようですが、Holy Fuckもカナダ出身ということで、何かつながりがあったのですか?

B.B:彼はとてもいい友達だよ。とても才能がある音楽家であると同時に、映像作家でもあるんだ。変人だけどね(笑)。

__「Shimmering」は58秒のトラックですが、制作の経緯を教えてください。また、58秒で完結させるに至った意図は?

B.B:実はアルバムを作る過程で少なくとも20曲の曲をレコーディングしたんだ。だけど色々調節して、自分たちが本当にいい曲であると思える曲を厳選していく中で、アルバム全体のバランスなども考慮して「Shimmering」を58秒で完結させるに至ったんだ。人には集中力っていうものがあるし、アルバム全体を飽きずに楽しんでもらいたいという思いもあったから、わざわざ曲をまるまる使うことはせず、このような手段をとったんだ。結果的にとても満足している。

__以前までは声がサウンドの一部としての働きをなしていたようですが、今回の『Congrats』ではより鮮明な言葉、リリックとしての声になっているように感じます。どのような変化があったのでしょうか?

B.B:これは自然な進化で、ほとんど無意識的なものだ。これまでのアルバムでは、ヴォーカルがいないと思っている人も多くいるだろうね。でも実際これまでもヴォーカルは存在していて、僕たちが進化を遂げたことで結果的に言葉として現れただけなんだ。「Neon Dad」では「Tom Tom」のような感じと違って歌詞として歌っているから、本当にこれでいいのかどうか、疑問を抱いたりもしたけどね。僕たちは実験的で、思い切り音を鳴らすことに慣れているけど、ヴォーカルが入ることでそのスタイルも少し変えないといけないから、大きなチャレンジではあったよ。

__これまでアルバムジャケットではアルバムタイトルよりもバンド名を主張しているように見えますが、それには何か特別な意図があるのでしょうか?

B.B:バンド名ってものは看板であるし、逃れられないものなのに、時々バンド名を隠すべきとか、小さく掲載すべきだとか意見をもらうことがある。そっちのほうがお店に置きやすいし、売れるんじゃないかって。だけど実際にはそれが僕たちのバンド名であるし、避けることはできないんだよ。だから、隠そうとするよりも、自分たちの作品の一部として考えるようにしている。

__最後の質問になりますが、改めてバンド名の由来を教えてください。

B.B:僕たちにとってバンド名はそんなに固執するものではないよ。バンドを始めた当初は、曲を演奏して、友達とかに披露したかっただけなんだ。まさか日本に来てライブをするほどになるとは考えもしなかったよ。だから後先考えずに、適当に”Holy Fuck”と名乗ることにした。周囲には良くないんじゃないかとか、そんなバンド名だったらいつまでたってもウォルマートで売ることはできないよって言われたりしたけど、僕らはそんなこと気にしていなかったし、そもそもアルバムを作ることなんて考えもしていなかったよ。僕たちは音楽を友達、そして自分たちのためにやっていただけだからね。自分たちのバンド名を攻撃的な意味合いでつけたわけではないし、ネガティブな意味合いは一切含んでいない。それよりももっと楽しくて、喜ばしい表現であると考えていたから、結果的に誰のアドバイスも受け止めなかった。僕たちは無知であったし、2、3年経った後に問題となることもあったけど、当初は、只々何も気にすることなどなかった。それだけさ。

(2016年9月26日、渋谷・WWW Xにて)

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■リリース情報
Artist: HOLY FUCK
Title: Congrats
Label: Innovative Leisure / Beat Records
Release date: 2016/05/27
Price: ¥2,200+tax

01. Chimes Broken
02. Tom Tom
03. Shivering
04. Xed Eyes
05. Neon Dad
06. House Of Glass
07. Sabbatics
08. Shimmering
09. Acidic
10. Crapture
11. New Dang *Bonus Track for Japan

インタビュー・文:池田礼
1996年生まれ。青山学院大学総合文化政策学部在籍。電子音楽を中心に幅広い領域で音楽を楽しむ。