INTERVIEWSAugust/12/2019

[Interview]Emily A. Sprague - “Water Memory / Mount Vision”

 ニューヨーク出身の音楽家、Emily A. Sprague(エミリー・エイ・スプレイグ)。今年6月、〈RVNG / PLANCHA〉より、彼女の新作『Water Memory / Mount Vision』がリリースされた。同作は、過去にカセットで自主リリースされていたアンビエント2作品、『Water Memory』と『Mount Vision』が一つにまとめられた作品となっており、〈PLANCHA〉からリリースされた日本盤には、現在ニューヨークを拠点とする、Kiki Kudo(工藤キキ)による日本語による詩の朗読が収録。それらはまた、まるで二つの作品を繋ぎ合わせるような独特の存在感を放っている。

 ブルックリンを拠点とするバンド、Floristのメンバーとしても活動するEmily A. Sprague。以下のインタビューでは、そうした彼女のソロ・プロジェクトとして、完璧なまでのアンビエント・ミュージックとして生み出された本作のバックストーリーについて、様々なエピソードを語ってくれている。

__14歳からソングライティングを始め、15歳のころには音作りに夢中になっていたそうですね。幼い頃はどんな子どもでしたか。

私は一人っ子でした。兄も妹もいなかったのです。山の麓にある本当に小さな町の入り江のすぐとなりで育って、いつも一人で外の木や水と一緒に遊んでいました。そこでは常に刺激的で新しい何かを探していたんです。だから、音楽を見つけたときは、まるで恋に落ちたようにすぐに夢中になりました。音楽はそれからずっと私の人生の中心に存在しています。

__あなたの故郷であるキャッツキル山地は、ニューヨークにある穏やかな山地です。公式ウェブサイトには「(ニューヨークの)あの空はいつも、押し潰そうとしてくる。まるで飛行機の真ん中の席で、知らない二人の間に座ってるみたいに」と綴っている一方、「ニューヨークを愛している理由を思い出した」ともあります。あなたの現在の創作活動にとって、その場所はどのような影響を与えていますか。

私が住んでいたのは田舎の方だったけど、ニューヨークは私の故郷であって、これからもずっとそうであり続けると思います。今はカリフォルニアに住んでいます。暖かくて太平洋が近くて大きな空があるような場所に住みたいと思っていたので。ニューヨークは自分の故郷だし、大好きだけど、アメリカの西海岸とは違ってどこか重苦しい感じがあります。ニューヨークの空はどんよりしていて、それが私を複雑な感情だったり、ときにはひどく憂うつな気分にさせてしまうこともあるんです。カリフォルニアではそうはなりません。

また、慣れ親しんだ家にいるという感覚は、私がつくる作品のすべてに、とても大きな影響を与えています。私にとってはそこが、思い出や憂うつな気分、喜びが生まれる場所だからです。私のすべての作品の原点は、感じることと経験することにあります。あまりにも複雑すぎて言葉だけでは言い表せない何かを作品に取り込もうとしているのです。だから、ニューヨークの家もロサンゼルスの家も、まだわからないけど将来の家すらもすべて、私がつくる作品に大きな影響を与えています。なぜならそれらは、私が何者かということ、そして、どうして私がそう感じるのかということの一部だからです。

__〈PLANCHA〉から、ソロでのアンビエント2作品『Water Memory』と『Mount Vision』がコンパイルされてリリースされました。あなたがギター、ヴォーカルを務めるバンドFloristとは異なるこのソロ・プロジェクトは、どのようにして始まったのでしょうか。

10年くらいFloristの曲を書いてきて、いろんな意味でFloristというプロジェクトのおかげで、私はミュージシャンというものになれました。ただ、私にとっての音楽とは、表現とコミュニケーションにおいて制限のない領域だと捉えてきました。子どもの頃に音楽をつくり始めてからずっと、インストゥルメンタルやアンビエントはつくり続けてきたし、やわらかく瞑想的で穏やかな美しいサウンドとメロディにはいつも魅了されるのです。

もっと若い頃は、フォークやポップの曲作りに集中していて、アンビエントは曲のアレンジとしてその背景で演奏するものという認識でした。だけど、Floristで何年かツアーをしたあとに、Floristとは切り離された別の活動が必要だと強く感じたんです。それは、音楽的に自分自身をもっと知るために、もう一度“新しい”何かにインスピレーションを受けるために、そして、私が創作することについて情熱を傾けてきたことに、改めて本当の時間を捧げるために、というように、すべては私自身のために考え抜いた結果でした。今では、私のアンビエント・ミュージックとFloristは、共存することができています。それぞれがそれぞれの存在のために、互いを必要としていて、それぞれの音楽を活かすためにも、両方が持っている相違が重要なのです。

__『The Creative Independent』のインタビューであなたは、「(モジュラーシンセを使ったアンビエント・ミュージックの制作について)その哲学に強く惹かれたんです。構築的なガイドラインがまったくない存在とはまさにこのこと」や、「私が毎日作っているアンビエント・ミュージックは本当に純粋な直観から生まれているし、生活の一部にもなっているのです」と述べています。そうした非構築的で思索に頼らないような音楽に魅力を感じる理由を教えてください。

私は、様々な面で自分の感情を信じています。今まで下してきたほとんどの決断は、自分の直感に耳を傾けてきた結果です。何より私は、まず自分が感じたことを信頼しています。そうすることで、この地球と今起きている現実、私自身の存在とのつながりを感じ取ろうとしているのです。

私にとって、生きてここにいるということは、周りで何が起きているのか、どこにいるのか、何者なのか、どのように何を感じてるのかということを敏感に感じ取るということ。だから、そうした思考を拡張したような音楽をつくる方法を見つけたときは、まるで自分の声を見つけたように感じました。それはまさに私の脳を解き放ってくれたのです。そしてそのときから、「そうあるべき」ものではなく、「ただ、そうある」ものを捉えるような音を導き出せるようになりました。

自分自身の直感に耳を傾けること、それに、ありのままに音を捉えれば、自由に多くの決断ができるという思考を融合させて音楽を生み出す──それは私にとって、作曲する完璧な方法だったのです。

__2017年に発表された『Water Memory』について、Bandcampには、この作品が、ここにある自然の間を漂うような感情の想像から始まったとあります。この作品のテーマについて詳しく教えてください。

『Water Memory』は、分子やエネルギーという意味での、感情と水の関係についての作品です。私たちは水でできていて、生命も水から構成されています。水はまた、地球の71%を占めています。私たちのエネルギーはとてもパワフルで、感情と意思を絶えず生み出すという、私たちの人間としてのこうした能力は、身の回りのものすべてに影響を与えています。ときどき、私たちがしたことや感じたことが、時間をかけてその結果を実際に見せてくれることがあります。私たちはまた、人間として感情的に循環するような存在なのです。

__あなたがお気に入りにあげるHiroshi Yoshimuraの作品にも「Water Copy」という曲があります。日本のアンビエント・シーンやカルチャーがあなたに影響を与えたことはありますか。

日本のアンビエント・ミュージシャンやアーティスト、そして日本の文化、祭礼、生命観にはたくさんの影響を受けてきました。小さいころから、そして今でも、日本の工芸品には特に興味があります。何か美しくて、精密なものをつくりあげるために、両足を床につけて、自分の手を使って作業しながら、何年もの間、同じ道具を使って作業するという考え方がとても好きなんです。

アメリカ人の私からすると、少なくともそこには、私たちにはない日本の文化の一部が現れていると思います。自然を重要視して尊敬しているところや、自然と身体との関係、マインドフルネス、スローネス、禅といったもののように。日本に行ったことはないので、実際どうなのかはわかりません。それでも今まで学んだり、読んできたりしてきたことから、日本の職人たちが作品に注ぐ細かい部分への配慮というものに、とてもインスピレーションを受けてきました。

__一方で『Mount Vision』では雄大で穏やかな山々が、よりニューエイジ調にミニマルに描かれています。あなたの故郷を思い起こすようなジャケットも印象的です。このとき、活動拠点がロサンゼルスに変わったことは、作品、または制作に向かう姿勢に影響を与えましたか。

ニューヨークからロサンゼルスに引っ越したとき、それはとても遠い距離で、二つの土地の間にあるアメリカを横切って、見える風景もまた劇的に変わりました。それはとても遠くに感じました。ニューヨークでは家や山が大きな影響を与えてくれていたので、引っ越してすぐに、ここでもインスピレーションを与えてくれるものを探しました。

何か月もの間、新しい場所からインスピレーションを受けた作品をつくろうとしていたのですが、なじみのない場所だし、思い出すらまだないから、結局はうまくいきませんでした。何時間もかけて、本当の自分じゃないような音楽をたくさんつくっていたのです。

『Mount Vision』をつくったのは、ある週末、カリフォルニアの北部に友人と訪れたときでした。私は小さなシンセサイザーのセットとフィールドレコーダーを持っていっていました。私が泊まっていた家にはピアノがあって、それを見たら子供の頃に家にあったピアノのことを思いだして、その瞬間自分が録音したいと思っていることにすぐに気がついたんです。

その家も山の上にありました。育ったところとは全然違う山ですが、まるで前から知っている家のような、自分の新しい家のように感じたのです。こうして『Mount Vision』は生まれました。私の内側にあの家があって、どこへでも一緒に行けると気づけたことが、私にとって正しく真実だと思えるような音楽をつくれるという確信を与えてくれました。

__今作は、対をなす二つの作品について書かれた詩によって補完され、二つの章として機能しています。言葉が二つの作品をつなぎ合わせているように、あなたの表現の中で、言葉は重要な役割を占めているようにも捉えられます。音楽と言葉の関係について、あなたはどのように考えますか。

音楽と詩は、互いに補い合うものであると同時にまったく同じものでもあるとも思います。ある音楽にぴったりと当てはまる言葉を見つけることは、とても美しいパズルのようなものです。そしてその逆もまた同じとも言えます。サウンドによっては言葉がまったくない場合もあれば、たくさんある場合も、数行の場合もあります。アンビエント・ミュージックは詩的なので、書かれた詩によって作品のアイデアのひとつひとつをはっきりさせたかったんだと思います。どちらかが多くを占めてしまうのではなくて、美しい対をなすように。

__改めて最後に、あなたのソロ・プロジェクト、Emily A. Spragueとしての制作や活動におけるテーマを教えてください。

このプロジェクトは、ヒーリングや内観的思考、リラクゼーションのための直観的な音楽を探索するためのものです。究極的な目的は、サウンドを通して、複雑な感情や経験と向き合うことでもあります。言葉を使わずにストーリーをどれだけ伝えられるのかを知りたいのです。

制作をしている私にとって、このプロジェクトは私自身を構成するとても大きな存在です。それは私の心の糧となり、気持ちを落ち着かせてくれる、ミュージシャンやアーティストとしての私に必要不可欠なものです。また、このプロジェクトを聴いてくれる人たちにとって、このプロジェクトが優しい友だちや精神的な案内役になってくれればと思います。良いときも、調子が乗らないときも、辛いときも、それがどんなときであっても、あなたの周りを暖めて、そっと落ち着きを与えてくれるような。そう願っています。

According to press release, you started writing a song when you were 14. Then when you became 15, you got engrossed in making sounds. What were you like as a child? Could you tell us one of episodes that makes what you are now?

I am an only child – no brothers or sisters. And I grew up right next to a creek in a very small town at the bottom of a mountain, so I spent a lot of my time playing by myself outside in the woods and in the water. I was always exploring, trying to find new things that excited me and when I found music, I just fell in love. And it’s been the center of my life ever since.

The Catskill Mountains that is your hometown is the rolling hills in New York. Your poem on your website says, “The sky (of New York) is always pushing back down against you like sitting in between two strangers in the middle section of an airplane”. Whereas, we can see the poem says, “I remember why I love New York”. How does the city play a role in your today’s creation?

New York (the rural where I am from, and the city where I lived) is my home, and will always be home to me. I am in California now because I wanted to be somewhere warmer, somewhere close to the Pacific ocean, somewhere with a bigger sky. I love New York because it is my home, but also because there is a heaviness to it that is different from the west coast of America. The air is thicker and it’s emotionally complex, sometimes dark, in a way that California is not. The idea of feeling at home plays a big role in all things I make – it’s where memory and melancholy and joy stems from. The root of all work I make is emotion and an experience of life. Tying to put into art something too complex or esoteric for words alone. So my home in NY, my home in LA, my future homes that I don’t know about yet – they all play a role in the things I create because they are a part of who I am and why I feel.

Your solo ambient works “Water Memory” and “Mount Vision” were compiled and will release from PLANCHA. These are different from your band Florist, so how did the project start?

I’ve been writing Florist songs for almost 10 years now, and that project in a lot of ways really became the way that I was a musician. But music to me is, and always has been, a limitless realm of expression and communication. I also have been making instrumental music, ambient music, since I started playing music when I was a child. I have always been attracted to soft, meditative, gentle and beautiful sounds and melodies. When I was younger all I focused on was folk/pop songwriting, and the ambient music was what I got to play in the background as arrangement for those songs. But after Florist had been touring for some years, I really felt like I needed another musical practice that was separated from that project. For myself – to know more parts of myself musically, to be inspired by something “new” again, and to dedicate real time to something that I have always been passionate about making. Now the balance between my ambient music and Florist is symbiotic, they each need each other to be able to exist, and I need to diversity of both to be excited about each one on its own.

According to the interview on The Creative Independent, you said “I was really, really attracted to the philosophy of it. It is truly about existing without any sort of structural guidelines” and “This music that I make every day, this ambient music, is really from a place of pure intuition, and that’s also part of my practice with this art form as a part of my life”. Why do you get attracted to the music that is unconstructed and independent of a headwork?

I am a feeling based person in a lot of ways. Most decisions I’ve ever made come from a place of listening to my intuition. I trust what I feel, usually above all else. I try to feel connected to the earth, to reality, my existence in this way. Being a part of life as in being alive is, for me, all about being sensitive to what is happening around you, where you are, who you are, how and what you feel. So when I found a way to make music that is a very close extension of that idea, I felt like I found my voice. It unlocked a part of my brain that all of a sudden was able to guide sounds not based on what “should be” but what just is, to me. Having a music practice that blends this idea of listening to the core of your being and being able to freely make so many decisions based on where you want the sounds to go – it’s the perfect way for me to compose.

You explained “Water Memory” released on 2017 as “the beginning as an imagination of the feelings that are floating through the natural world around us” on Bandcamp. Would you tell us the specific theme of this work?

Water Memory is about the relationship between emotions and water – in a molecular, energetic sense. We are water, life is water, 71% of the earth is water. Our energy is so powerful, our ability as humans to send streams of emotion and intention that affect all things around us. Sometimes the things we do and feel take time to really show their outcomes. We are also emotionally cyclical as humans.

One of your favorite musician Hiroshi Yoshimura made a song called “Water Copy”. Have you ever been influenced by ambient music scene in Japan or any Japanese culture?

I’ve been very inspired by Japanese ambient musicians, artists, Japanese culture, ideas about ritual, and some philosophies for life. I was very interested in Japanese woodworking when I was younger (and still am), because I loved the idea of working with hand tools that have been the same for so many years, working with your hands and feet on the floor to build something so beautiful and intentional. At least from my perspective as an American, there is a part of Japanese culture that we do not have so much of over here: really valuing and respecting the natural world, your body’s relationship to it, mindfulness, slowness, zen. I’ve never been to Japan, so I really don’t know what it’s like! But from the things I’ve studied and read, I’ve been very inspired by the care that gets put into things by Japanese artisans.

On the other hand, grand and rolling mountains are drawn like more new age and minimal music in the following “Mount Vision”. It is striking for us that the jacket design reminds us your hometown. And at that time, you moved from New York to Los Angeles. Did that move change your later works and creation?

When I moved to LA from NY, which is a very very far distance, the landscape changes so dramatically across the US between these two places. You feel far away. At first after the move, I was searching for my inspiration in this way, because my home of New York and the mountains was always such a huge influence on me. I was trying for months to make work that was inspired by this new place, this place that was un-familiar to me, that I had no memories in yet. And it didn’t work! I had hours and hours of music that was not my truth.

I made Mount Vision when I was visiting with a friend in northern California for a weekend. I brought a very minimal synthesizer set up and my field recorder. The house I was staying in had a piano, and I immediately knew I wanted to record with that as it reminded me of the piano at my childhood home. This house was also on a mountain – a very different mountain from the ones I grew up around, but it was this feeling of a new home that feels, inside of you, like homes you used to know. That was how Mount Vision came. That realization that home is inside of me and I can bring it with me wherever I go gave me the clarity to create music that felt correct and true to me.

“Water Memory/Mount Vision” works as two chapters when the two works Water Memory and Mount Vision are complemented by a written verse. It seems that the word plays a great roll in your expression like the verse connecting the two different music. What do you think about the relation between music and lyrics?

I think music and poem are complementary to each other as well as one in the same. It’s a beautiful puzzle to find words that belong to music, and vice versa. Sometimes it’s none at all, sometimes it’s many, sometimes it’s a few lines and you let the sounds do the rest. I think because ambient music is poetry, I wanted to enhance the idea of each piece with a written poem. Not to take up too much space, but to be a pretty companion.

Once again, could you tell us the theme of your creation as the solo project Emily A. Sprague?

This project is for exploring intuition based music for healing, introspection, relaxation. The ultimate goal is to communicate complex feelings and experiences through sounds. I’d like to see how much of a story I can tell without words. For me making it, it’s a huge part of my fabric, it feeds my life and calms my mind, and is a necessary part of my whole as a musician and artist. For the people who listen to it, I would like it to be a gentle friend and spirit guide through good times, strange times, hard times, any time when it can warm up space in the air around you and bring calm.

Water Memory / Mount Vision (Special Japanese Edition):
01. Water Memory Poem
02. A Lake
03. Water Memory 1
04. Water Memory 2
05. Dock
06. Your Pond
07. Mount Vision Poem
08. Synth 1
09. Piano 1
10. Synth 2
11. Huckleberry
12. Synth 3
13. Piano 2 (Mount Vision)
14. Outdoor (Bonus)

BONUS DISC FOR JAPAN:
01. Water Memory Poem (Japanese – Kiki Kudo)
02. Blessings
03. Mount Vision Poem (Japanese – Kiki Kudo)
04. Untitled

Photo by Carly Solether

インタビュー・文・翻訳: 杉田流司
翻訳・アシスタント: 春日梨伽, 川崎りよん, 倉田莉沙, 濱田稜平