INTERVIEWSMay/24/2016

[Interview]Seiho – “Collapse”(Part.2)

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(Part.1からの続き)

__ありがとうございます。また、映像作品はしばらく出してないと思うのですが、MVなどのイメージはありますか?

アルバムのMVは自分で撮ってて、それはたぶん公開されるんですけど、まあそこも含めて、今めっちゃ映像作品を自分で撮りたい欲が強くて。

__インスタにあがっているちょっとした映像だけ見ても、明確なイメージがありますよね。作るとしたらどういうテーマで制作しますか?

最近はもうちょっと無意識的な映像と意識的な映像みたいなのを長期的に撮って一個の作品にしたいなっていうことと、しゃべってる今のインタビューとかライブの映像とか、というより、なんかこうもっと生活のなかの場面を大量に撮っていって、つなぎ合わせてストーリーにするみたいなカットアップ的な作品はちょっと作りたいなっていう。

__それはどういった理由ですか?

なんか思い出なんですよね。やっぱ、なんか思い出ってめっちゃやばいですよね。共有を求めてたんですよね、2010年から2015年までって。みんな何求めてたかって時代の共有性で、SNSの一回大きい波っていうのがあったからなんですけども、OPN(Oneohtrix Point Never)がやってることとかも共有の話やし、結局共有の世代、逆に言うと時間とかまで超えた共有感覚みたいなのをどう作っていくかみたいなのがアーティストの前までのテーマだったんですけど、今回からはたぶんそれがパーソナルに落とし込まれるみたいな話になっていくと思うんですよ。けど、僕はあまりパーソナルな部分は全然興味なくて、こうパーソナルな作品を作れば作るほど、その新しくなくなっていくみたいな。

新しい形の人間が作ったら別ですけど、もう人間の形だって脳みそだってほとんど同じやからパーソナルに落とし込んでもあんまり変わんないんですよね。で、そうなるともう関係性のほうが新しくなって、でもそれが共有までいかないんだよね、ってところでいうと、思い出って規模はすごいになるねん。思い出っていうのは二人のっていうのがすごい重要で、三人以上の思い出は共有になっちゃうんですけど、二人の思い出って二人だけが知ってることで、なんかすごいそこをテーマにした作品を作りたいんですよね。

__一人だとパーソナル(個人)になってしまうけど、二人だと社会性が生まれるような。

そう、そこが第三者じゃないから二人の思い込みっていうか。例えば、僕おばあちゃんのことを「おきたんたん」って呼んでるんですよ。で、ちっちゃい頃におかんのことを「たんたん」って呼んでたんですよ。それのおっきいから「おきたんたん」で、おかんのことはもうおかんなのにいまだに、「おきたんたん」は「おきたんたん」なんですよ。家族全員「おきたんたん」って呼ぶんですよ。これって思い出の話なんですよね。これが共有の話で、でもこれが家族単位ぐらいだから奇妙な現象が起こってるみたいな状態。これがやっぱすごい僕ずっと興味があって、この二人の思い込みっていうか二人だけが知ってる名前とかそういうもの、「情」を外に出すか、みたいな。まあ見せたいから見せるんでしょうけども、見るものはどう捉えたらいい、どうやったらいいって言ったら難しいけど。こうダサい言い方すると「情」ってよく思ったら全部そうなんですよ。でも僕は「情」は、言ったら万人が持ってる、万人がいいと思うのはそれが愛だからなんですよね、思い出って。でも僕はその愛っていうのは男女だけじゃないみたいなもっとこう全く会ったことないあなたとの二人の思い出を歌にしても「情」っていう同じようなものになるってことを証明したいっていうか、そういう欲求がものすごく強いですね。

__例えば、今回で言えば、どの曲になりますか?

今回の作品でいうとそれこそ「The Vase」って曲は、結構その思いがあって。これサウンドには、フィールドレコーディングがすごい使われてて、外で録ってるものが多いんですけど、これで録ってるものの内の一個は、僕が「apostrophy」やってるメンバーとか友達とかそういう自分の昔のレコーダーから録った、旅行とか行ったときのフィールドレコーディングが使われてるんですよ。残りのやつは映画のサウンドライブラリーから録ってきてるんですよ。

で、映画のサウンドライブラリーの方は同じ鳥の声を使ってて、違う曲でも、それになることによって、フィールドレコーディングを後ろにひくっていうのは森で聞いてるような感覚にさせるための要素だったりするわけやないですか。でもそれが同じ鳥が同じ時間に鳴いてるってことはもうそれはスピーカーから流れてきてる状態を作り出せるみたいなので、でもそれとこっちは僕にとってのすごい思い出があることみたいな。で、これがこう両方入り混じってて、だから僕が聞いたときは思い出とこれは分けれるんですよ。けども他人が聞いたらそんなことどうでもよくて、他人が聞いちゃうとそれは一緒になっちゃうわけじゃないですか。

で、何かね、僕はそこを一緒にしたいんですよね、今。今回のアルバムのジャケットも生け花と陶器なんですけど、生け花の方は本物の花で陶器はCGなんですよ。CGの方は影をつけてないとみんなCGってわからないですけど、影をつけたとたんにみんな、「CGと思わんかった」って言うんですよ。で、影をつけたらそれができるんなら生け花も別にCGでもよかったんですよ。けども本物を撮って、しかも生きてる花を生けてこっちはCGにしたみたいな、ここの垣根をどんどんリアルとアンリアルな、バーチャルとリアルな垣根をどんどん薄くしていけばしていくほど、なんで花が生きているのかとか、なんでCGが生まれたのかっていう意味だけが、輪郭だけが出てくる世界みたいな、ここを結構表現したいんですよね。

で、これとさっきのこう二人の思い出が重なるみたいな。重なるっていうかね、これでもね、ここは説明しにくいな。たぶんね、これさっき言ったみたいに5年後くらいにたぶんもうちょっとわかりやすく説明できるんですよね。今はたぶんそれがこう二つ僕の頭の中でも別のものとしてあって、けどなんか僕の中では一個筋は通ってるんですよ、その話。

__自分の中では筋は通ってるんだけど、Seihoさんでも説明するのが今なかなか難しいと。

分けて説明するしかできないんですよね。そのさっき言ったリアルとバーチャルの世界の垣根がすごい薄くなっていって。どんどん境界線がなくなればなくなるほど、僕はだからオーガニックがやばいとかってなっていく世界に向かっていくんやろなみたいなと思う。なんかこうたぶん人工で試験管ベイビーもできるし、お腹痛めて生むのもできる世界になったら、だからお腹痛めて生むんいいよなとか、だから試験管いいよなっていう、この輪郭だけが浮いてくる世界みたいな。これはそのぼやっとした何かが悪いとかぼやっとした何か良いに違いない、っていうことじゃなくて明確な理由が生まれるみたいな、それが両方できた瞬間に、なんか今回のアルバムはここを表現したかったっていうのがすごい強くあったりします。

そのさっきの決断っていうところもそうなんですけど、だからなぜソフトシンセがいいアナログシンセがいいとかっていう機材の、なんかこう、インタビューとかでも「Seihoくんってアナログシンセにこだわってますけど、アナログシンセってやっぱり温かみがあっていいですよね」とか言われるんですけど、僕はちょっとなんかどうでもよくて、温かみがあるからアナログシンセを使ってるんじゃなくて、その温かみがあるからアナログシンセを使ってるとかっていうのと、なんていうかな、冷たいからソフトシンセは使わないんじゃなくて、こう両方あるから選択できるっていうか。両方使えるからこそ、なぜそれを選んだかっていう輪郭だけが浮き上がってくるわけじゃないですか。

だって今回は全部ソフトシンセでやったんですよ。ホテルの中で作業したからっていうことは、ホテルの中で作業したっていうことがやっぱ一番おっきかったとか、アナログシンセ使ったのもある程度なんかこう触ってて楽しいかってとか、なんかその輪郭だけが浮き上がってくるからそのこう垣根をどんどん薄くしていきたいっていう話で。さっきの海外の話になってくるんですよね、行けば行くほど垣根が無くなっていけば無くなっていくほど自分が何者かっていうバックボーンのその輪郭がすごい濃くなっていく。それと二者間の思い出が僕の中では筋が合ってるんですけど、まだちょっと言葉でうまく説明できないですよね。

フランス行ってたのもあるんですけどなんかやっぱりドゥルーズとかガタリとか、なんかもう一回ちょっとフランス哲学を読み直そうみたいな時が去年ぐらいにあって。で、なんかドゥルーズとかガタリが言ってるには、やっぱりなんかこう近いところがあったりするんですよ。器官なき身体っていう、こう身体から出た意識みたいな話をすればするほど人間がどれだけ体に縛られているかわかるし、それは縛られない方がいいとか縛られる方がいいじゃなくて感覚をそこにもっていったからこそ人間がなぜ五本指なのかっていうのが分かることができるみたいな、その行けば行くほど自分のことが理解できるっていうのが僕は結構好きやなという。

__哲学に正面からまともに向き合うのも、難しいことのように思います。

そうなんですよ、結果なんかフランス哲学も今回〈Leaving Records〉から出したっていうのもそうなんですけど、〈Leaving Records〉とマシュー(Matthewdavid)が結構ニューエイジな感じで、だいぶスピってるんですけど、なんかこうスピリチュアルって強者にしかできないんですよね。スピることってやっぱある程度お金を持ってたり、ある程度強くないとスピれなくて。で、スピるって自信の塊なんですよね、あれ。それの逆が宗教で、宗教とスピリチュアルって全然逆で、神を信じるか自分を信じるかじゃないですか。

だからなんか、だからこうAvec Avecとか、トーフくん(tofubeats)とかとしゃべると、なんか「Seihoの論理は強者の論理にしかすぎひん」みたいな、「弱者を排除してるからもう嫌」って怒られるんで。関西の人と話してると楽しいんですよね、なんかそのまあしゃべるってことが大事なんですけど単純になんか僕にとってやっぱ”Think”って、ほぼ”Speak”と一緒なんですよね。考えるってこう話すってことと一緒で、頭の中で考えるっていうのはたぶんできないんですよね。たぶん頭の中だけでだからこうしゃべればしゃべるほど自分の考えの輪郭がまとまってくるっていうか。だからみんなで集まってほんまにこの二年間のうち一年ぐらいしゃべったんちゃうかぐらいしゃべって。

__話を伺って、Seihoさんは、当初の目標をほとんど実現しながらも、次の展開に悩んだ時期もあって今に至っているということですが、改めて今後やりたいことは何でしょうか?

やっぱりそれこそ、マネジメントとか、レーベルとか、去年のメジャーデビューとかもそうなんですけど、それを通過して一番思うのは、僕は何よりも続けたいってすごい執着してるなっていう、音楽を作り続けるってことにすごい執着してるなってすごく感じて。例えば、僕にとって売れるとか売れないとか関係なくて、一人の人が毎月100万円くれて作り続けるなら、誰に聞かせなくてもいいって、そうなっていくんですよ。でも、最近大人になって、いや、とは言え、レコード会社にいる人たちも、マネジメントの人たちも、音楽業界に携わってる人って音楽好きなんやな、みたいな。それで、僕以上に僕が好きな人とかもやっぱいるから、なんかもっとこれはちょっと大人になって考えようっていうのがちょっと最近あって。それまでは結構切り離してたんですよね。だってそうじゃないですか、本当に。毎日お金くれるんやったら別に自分の部屋でちまちま作ってるだけでいいやんってとこから、ちょっと大人になりました、この一年で。

シュガーズ(Sugar’s Campaign)などを経て、音楽業界に携わってる人たちと一緒にやっていくとは何かっていうのをちゃんとこう大人的な目線で考えないとなっていう。でも、なんか自由になるために音楽を作ってるじゃないですか。で、やっぱり自由やったんですよね、2010年からそれこそ2013年までって。なんかこう呼ばれるのもオープニングでやってくださいとか、まあラストなんですけどやってくださいとか、いや今日はメインの時間でやってくださいとか、セカンドステージでやってくださいとか、で呼ばれるときもバンドのとこに入れられたり、全然よーわからんヒップホップのライブにいれられたりしてたのが、やっぱりここ1、2年は本数は増えてるけども、ラインナップもほとんど知ってる面子やし、大体出演する時間もラインナップ見たらわかるようになってくるし、みたいな。

そうなると、やることも同じになってくるからどんどんどんどん自由じゃなくなっていくんですよね。ここはもうどうにかして人工的に一回バラさないといけないんですよ、僕は。例えば夜帯のクラブも出るけども、昼の日曜日のお昼とかからコンサートホールで座って聞けるイベントも企画するような。僕たちさっきの世代の話でいうと、僕たちの世代も朝まで遊ぶのがそろそろ疲れてきて、みたいなのも始まってくるから、そっちにシフトしたり。あとはさっき言ったみたいに現実味はなくてもインターネット上の作品の在り方として、もうちょっと面白いやり方考えます、みたいな。

自由な形に一回バラして、そっからまた特性を見つけだして、その5年後に向けてまっすぐ進めていくみたいな形ですかね。一回今は風呂敷を広げる時期みたいなのかなって感じではある。だからさっき言ったみたいに映像がすごい撮りたくて。映像作品は、いつも自分で撮っちゃってたんで、例えば映画監督と一緒に組むとか、例えばライブっていうスタイルをやめて映像作品とインスタレーションで2週間くらいエキシビション開いちゃって、もうそこが作品ですって言いきっちゃうのもいいかなって。そうなったら逆に海外にも、もっと持っていけるじゃないですか。二週間行って最後の日だけライブしてツアー回ってみたいな。なんかたぶんそっちの方向にも広げて行きたい感じではあります。

(2016.4.25 外苑前にて)

Photo credit: copyright belongs to ZOO (ZOO AS ZOO, LLC)
www.zooaszoo.com
@zoo_as_zoo

Styling credit: top/coat from Clarissa Elena Arocena

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■リリース情報
Artist: Seiho
Title: Collapse
Label: BEAT RECORDS / LEAVING RECORDS
Price: 2,200yen (tax out)
Release date: 2016.05.18
Format: 日本盤CD(ライナーノーツ封入/ボーナス・トラック追加収録)

1. COLLAPSE (Demoware)
2. Plastic
3. Edible Chrysanthemum
4. Deep House
5. Exhibition
6. The Dish
7. Rubber
8. Peach and Pomegranate
9. The Vase
10. DO NOT LEAVE WET
11. Ballet No.6 (Bonus track only for Japan)

■公演情報
Seiho
Collapse Release Party

2016/6/30 (THU) WWW

[SPECIAL BAND SET]
Seiho with
Kan Sano [Key.]
松下マサナオ [Ds.] (Yasei Collective)
and more.

前売TICKET ¥3,500(税込/1ドリンク代別途)
19:00 OPEN
INFO: BEATINK 03 5768 1277

インタビュー・文:T_L

アシスタント:千葉ゆりあ
1996年生まれ。青山学院大学総合文化政策学部在籍。ポップスをメインとした洋楽を得意とする。