INTERVIEWSFebruary/13/2015

[Interview]Sugar’s Campaign – “FRIENDS”

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1月21日、満を持してリリースされたSugar’s Campaignによる1st Album『FRIENDS』。さらに、2月14日には、HMV Record Shop渋谷、及び、HMV三宮にて、7インチシングル「ホリデイ」「となりタウン」が先行同時リリースされるという。また、リリースを記念した単独公演となる『~FRIENDSリリパ~』が、3月19日(木)に東京・代官山UNITで、3月20日(金)に大阪・心斎橋SUN HALLで開催されることが発表されている。

原型が高校時代のバンド経験にあったとする彼らAvec AvecとSeihoを中心に制作されたこのアルバム『FRIENDS』は、リリース前から異様な人気を放った「ネトカノ」やミュージックビデオも話題となった「ホリデイ」、シブカル祭のテーマソングとしても採用された「有名な映画のようにラブリーな恋がしたい」などの、まさに次世代ポップスというような作品から、ストレートなロックチューンである「カレイドスコープ」や、作品の中でも独特の立ち位置にあるインスト曲「Shopping Center」など、ふたりの化学反応的なサウンドスケープが覗える楽曲までが立ち並ぶ、Sugar’s Campaignによる挨拶状のような作品集に仕上がった。今回は、彼らの音楽観、Sugar’s Campaignの持つコンセプトといった話から、制作に関する話まで、広くインタビューを行った。

///Sugar’s Campaignは「プロジェクトというよりは舞台みたいな立ち位置」///

_メジャーデビューおめでとうございます。結成が2012年とのことですが、メジャーでやろう、となったきっかけなどはあるのでしょうか。

Avec Avec(以下A): 一番はやっぱりメジャーだと広がるから。インディでやってると10~20代の若い子にはリーチできるんですけど地方に住んでる50歳くらいのお父さんとか主婦の人にはどうしても届きにくい。メジャーが持ってるシステムがあれば広がるんじゃないかと。

Seiho(以下 S): 潜在的にというか元々シュガーズは世代や地域を限定した音楽をやっているつもりはなくて、どっちかっていうと50代くらいのおっちゃんがCD買ってきて、若い子に「知ってるこれ? 最近のバンドなんやけど」みたいに聴かせてくれるような音楽を作りたいっていうのがあったから、そうなっていくにはやっぱりメジャーのシステムの方が合理的。もう一つは自分でもレーベルやってる中でメジャーとインディそれぞれのメリット、デメリットを客観的に見てきた部分から判断すると、今はメジャーでやったほうがギャンブル性が高いというか、攻めの姿勢に見えるっていうのを僕はすごいいいことだと思っていて。これが90年代だったら「これからはインディで、自分たちの力でやっていくんやで」ってことを絶対言ってたと思うし、10年代になって「いやーメジャーっしょ、上がる上がる」みたいな攻めの感じでメジャーと契約する日が来るなんて夢にも思ってなかったから。ここが俺らの一番嬉しいところでしょう。

_そういう価値観の逆転は僕も面白いと思っています。tofubeatsさんも昨年メジャーデビューされましたが、音楽業界のシステムとどう効果的に組んでいくかという点についてはよく話されていました。Avec AvecさんもSeihoさんも、言ってしまえばネットレーベルメインの活動だったと思うんですけど、シュガーズは打って変わって全年齢層、全地域をターゲットにしていると思います。これから日本のポップシーンで重要な役割を果たしていく存在になると思っていますが、お二人はどんな立ち位置で音楽を作っていきたいと考えていますか。

S: 僕らは誰かと戦っているつもりはあまりなくて、アーティストはいつも自由だと思っています。ただひたすら曲を作って聴いてもらうっていうのを繰り返す。もし今システムとか全部なくなったとしても、じゃあ隣の人に向けて弾き語りでもやろうって考えてそれが出来れば満足だし。メジャーというシステムがあればインディというシステムもあるというだけの話で、僕らはただそのシステムに乗っけてどう音楽を届けるかっていうのを考えるだけ。

A:「シーン」っていうのもよくわからなくて。ポップスのシーンっていうのが本当にあるかどうかもわからない。Jポップシーンてどういうこと? バンド?

S: シュガーズは「ネットから出てきた新しいポップミュージック」「打ち込みを使った新しいポップス」みたいな文脈で紹介されることが多い。「90年代リバイバルの良質なJポップ」「シティポップ特集」みたいな。そういう感じ(笑)。

A: いろんな切り方しても大丈夫みたいな。

S: どっかの代表みたいになりたくないし、何かを背負っていくつもりもないけど。

A: シュガーズは何かを背負うとかシーンを牽引するといった部分はあんまり意識してないですね。自分たちの世界を構築して、そこにみんなが遊びに来てくれたらっていう。

S: 僕たちはなるべく細かくライブをやりたくないんですよね。年に二回、一回くらいで、チケットを買った瞬間から「あー、今日よかったね」って言って帰る瞬間までを演出するバンドになりたい。Sugar’s Campaignをどうしていくかは考えるけど、シーンの事はそこまで意識してない。よく言うのは、Sugar’s Campaignはサーカス団みたいなもので、SeihoとAvec Avecはシュガーズではないんです。SeihoとAvec Avecが脚本と演出を手がけている組織がシュガーズなんだっていう。

A: Sugar’s Campaignって名前で誰かをプロデュースしたりすることはあまりないし、作家でもない。プロジェクトというよりは舞台みたいな立ち位置でいたい。

_今後とも一つの舞台の中での事として、ゲストボーカルの様な形でいろんなアーティストと一緒にシュガーズをやっていきたいですか。

S: そうですね。僕達の舞台の看板俳優はあの人で、いつもあの人が脇役で出てるのがいいんだよねー、みたいな。

A: 監督でもあるんじゃないですか。あの監督の作品なら絶対あの俳優くるよね、みたいな。たまには客演とかですごいゲストを呼ぶ事もあるかもしれないけど、基本的な形は決まっているような感じでやりたいですね。

S: とはいえコントとは違うんです。シュガーズの場合、脚本を誰かに渡して別の俳優でやったら舞台として成立しない。シュガーズの2人が演出して、この俳優とこの女優でやるからここが面白いんだってなる。

A: いい作品ってそういう事だと思うんですよ。この人とこの人じゃないとダメで、この人達がやったからいい作品になるっていう。入れ替え不可能な感じにしたい。一応僕らの世界があるけれど、ゲストで迎える人の立ち位置も大事にしたい。

S: 2人がMCをする時も、僕らのパーソナルを知っている人にとってどうしたら面白いのかを考えながらやってます。東京の人が大阪の芸人見ておもんないって言うことがあるけど、大阪の人はそうじゃない。その芸人の立ち位置とかパーソナルを知ってるからこそ、ギャグの面白さとかを感じることができる。これがひどくなると内輪ノリだけど、その間の程よいところを取っていきたい。そういう意味では劇団より吉本新喜劇に近いのかな。

A: それはふっとメタ視点に帰れるところでもある。

S: 舞台としてみっちり計算されてるけど、ふっと力抜いたとき「え、めっちゃ素じゃん」ってなるときの面白さ。

A: それが吉本新喜劇の面白さでもあると思うんです。その一瞬のメタ視点が関西のノリの本質かなと思っていて、そこは大事にしたいです。世界もあるんだけど、それをやってるのは、僕達二人だっていうところの面白さもある。

_「ホリデイ」のPVでは、PCがあってパッドがあってという、シュガーズではお馴染みのライブセットで演奏する様子が描かれています。これは通常のバンド演奏やシンガーの様子に慣れている今までのポップスの層には新鮮に映るように感じました。

A: これは思わぬ意見ですね。あんまり意識してなかった。

S: これはなるほどやな。逆だったもん。わかりやすくしてるつもりだった。

_僕もそう思いました。でもそれでも一般の人からしたらPCがあってパッドがあって音が出るけどそれはなんでだろうみたいな部分もあるかもしれない。

A: シュガーズで今できる形をやったらこうなった、みたいな。

S: 別に弾き語りでもいいし、見え方はそこまで意識してないかな。メロディとコードだけあればドラム・ベース・ギターみたいな普通のバンド形態でも構わない。

A: 今後これがいいと思ったらどんどんバンドセットにしていくかもしれない。していきたいとも思ってるし。

S: ドラムとベースとギターが入ってて、プラス打ち込み。

A: 音源とライブは全然違う形でもいいかなと思ってる。

///2人で音楽を作るということ///

_リスナーにとってのシュガーズの在り方というか、この先どこかで、自分達のやりたいこととリスナーが求めていることのどちらかを選ばなくてはいけない時が来るかもしれません。そういった事についてはどうお考えですか。

A: ポップスはそことのバランスを取るのが楽しいんですよ、ゲーム性があって。「ネトカノ」とかはどれだけギリギリのラインでびっくりさせるかとか楽しませるかとかがポップスのあり方だと思うから、そこは楽しんでやれると思う。

S: 2人でやるメリットは、ソロの時よりも客観的に見れるところだと思う。ソロでやってると、作ったあとに、「あーここ自意識強いな」とか、「これはちょっと寄せすぎだったな」かめちゃくちゃあるけど、シュガーズの場合そこは瞬時に判断できる。

A: 僕の考えが強かったり好きなものが多すぎる状態で作られたものに対してSeihoがくれる一言によって、曲の見え方がガラッと変わってじゃあここはこうしようって出来るのが本当に2人でやってるメリットですね。

S: 今回のジャケットも、僕のセンスで作ったとするとゴージャスさとシンプルさがあと30%増で入ってたと思うんですよ。でも、みんながイメージしてるSugar’s Campaignの手作り感と今っぽさとあどけなさを足した結果あのジャケットになったっていうのがあって。

A: 「となりタウン」っていう曲があるんですけど、あれは本当に僕が1人でやってたら使わないようなJ-POP的なコード進行を使ってるんですけど、そういうのもあったら面白いのかなってあえて入れてたりする。ただ、そのへんも楽しめてやれてるので、特に苦しさとかはないです。バランスを取るのが楽しいし、そこが本質かな。

_シュガーズの音楽をつくる中でインスパイアされていたりルーツになっているアーティストがいれば教えてください。

A: どこでシュガーズらしさを出すかっていうと、メロディとかコード進行ではなくどこからアーカイブを引っ張ってくるかが一番の決め手になると思う。たとえば「ネトカノ」ならAORとかエレポップとチルウェイヴと日本の90年代アニソンを組み合わせてる。何を組み合わせるかっていうのはものすごく個人的な選び方をしてて、この選び方は真似できない。1曲目はこの選び方をしてるから2曲目は違うものを選ぶけど、でも選んでる人は同じだから似てるんですよ。選び方自体に記名性があるという意味ではTumblrっぽい。Tumblrはモノを選んでるだけなのにものすごくその人の個性が出るでしょ。

S: 個性以上の、深層心理にある、見えたら気持ち悪いものまで見えたりしちゃうのがTumblrなんですよ。選ぶっていう事がいかに危険かっていう。

A: DJが個性的なプレイを目指すってことにも通じると思うんですけど、僕はそういう風に曲を作ってるので、膨大なアーカイブの中から何を選ぶかっていうのが一番です。ルーツ的に好きなものもあるんですけど、そこよりかはシュガーズに関してはもっと広く考えたほうがいいと思ってますね。Seihoはあまり好きなものを追求するタイプではないし好きなものがコロコロ変わるので、時代とかタイミングに合わせて何を出すかっていうのを重視してる。

S: 僕は逆に過去のアーカイブよりも、新しいものが一番いいと思うタイプ。新しく見つけたものは何よりもいいみたいな。

A: 初めて70年代のポストロックを聴いた人にとってはそれが一番新しいものなわけじゃないですか。新しいものって人によって違うからそこは主観だし、主観を大事にするということだよね。

S: いや主観というよりかは俺の感覚こそがすべて、みたいな(笑)。

A: 僕はポール・マッカートニーみたいな職人的なポップスを作る人が好きだけど、シュガーズではもう少し手広くやりたい。選ぶのは自分だからブレないとは思ってるんですよ。

S: 俺は逆。ブレる。新しいものを追求し続けた結果、0か100にしかならない。

A: うんうん、僕も色々考えた結果、あんま考えない方がいいんじゃないかと思って。自然に任せた方がうまく選べるかなと最近思いました。

S: Avec Avecが選んできたものを俺が見て、こんな組み合わせがあるねんなと。でも、ここをこうしたら、まったく新しいものになるって言う。Avec Avecは膨大なアーカイブから引っ張ってくるから、知ってるものの塊なんです。けど、そこをソリッドに、切れ目を入れたらこの音はどのアーカイブから取ってきたものなのかわからへんようになるでって。見え方的に新しいけどどこか懐かしさもある感じに。Avec Avecが塊を持ってきて、僕が削っていくっていうのが2人の役割分担になっているかも。

A: それは本当に楽曲だけでなくアートワーク一つでもそう。ネトカノのPVもそうだし、それが付属するだけで見え方が全然変わるものもあったりする。

///『FRIENDS』について///

_今回のアルバムの制作期間はどのくらいだったのでしょうか。

A: ほとんどの曲が元からできてる曲で、「カレイドスコープ」なんかは7年前のままで入れました。あれはバンド時代の曲です。

S: 「ネトカノ」はファンの思い入れも強いからリアレンジしないで入れたいって気持ちがあって。じゃあその前の曲とかもって。

A: Seihoが加入する前のスリーピース時代まで入れるとシュガーズは7、8年やってるから、その集大成になるアルバムにしようと思いました。

S: だから僕は入る前のシュガーズの曲の中で一番好きだったものを入れてもらいました。

A: 新しい曲に関して言うと本当に2日くらいで。全体で3ヶ月くらい? 「パラボラシャボンライン」と「となりタウン」「Shopping Center」が新しい曲ですね。「Shopping Center」はモノラルマスタリングしました。

_今回ゲストボーカルとして新しい方々が迎えられました。起用に至った理由を教えてください。

A: まずシェリーちゃん(M-7「夢見ちゃいなガール」ボーカル参加)はやばいですよね。

S: やばい。

A: 僕もネットでしかやりとりしてなくて、シェリーちゃんは上海に住んでる。僕達が元々中国の曲をやりたいっていうのがあって。元々『らんま1/2』とか好きやから。

S: 「夢見ちゃいなガール」が出来た時に、これは中国語でいきたいと。

A: ほんまもんの中国人が歌うのが一番かっこいいかなと思って、それならなんとかして中国の方に歌ってもらおうと思ってシェリーちゃんに声をかけました。最初「女の子らしくて可愛い曲で」ってリクエストしたら、朗読みたいなのが送られてきた(笑)。「私は妻、雨の中働き続けている…」みたいな。で、もうちょっと可愛くできませんかねってお願いしたらもっと暗いのが来た(笑)。でも最終的な歌詞としては夢に向かって頑張る女の子って感じです。「夢見ちゃいなガール」そのまんま。シェリーちゃん会ってみたいなあ。これから中国のSNSで楽曲発表していくみたいです。

S: IZUMIちゃん(※M-10「有名な映画のようにラブリーな恋がしたい」ボーカル参加)は「シブカル祭」の時にゲストボーカルで呼んでみたら声いいし、リリパにも出てもらってそのままポンとアルバムにも参加してもらった感じですね。

_歌詞ですが、文章そのものというよりは単語や世界観の部分で攻めてるという印象を受けました。

A: 曲によっても違うんですけど、2人で書くときは基本的に音重視で、プラス単語重視みたいな。一個のテーマ決めたらそのテーマに合う単語をバーって並べていってそこからさらに音に合うものを選んで、なんとなくその単語で世界が構築されていくようなイメージで作ってますね。オガ(小川リョウスケ※バンド時代のベースを担当)は「ホリデイ」とか「パラボラシャボンライン」の歌詞を書いてるんですけど、彼はもっとしっかりストーリーがある。

_たとえばゲストボーカルに歌詞の執筆を頼んだ時は手直しなどするのでしょうか。

S: 今回あんまりなかったな。付き合い長いとやっぱりあんま無いんですよね。分かってくれてるというか。

A: オガとかの歌詞もすっごい分かってくれてた。

S: 普段人に任せるのって嫌なんですけど、オガやmomoちゃん(※M-7「It’s too late」ボーカル参加)に任せた結果、自分達だけでやる以上のものが生まれたりするってことも今回やっと分かった。みんなのやりたい事にプラスして僕達2人のやりたい事がきちっと伝わっているのもあって、任せてみた結果上がってきたものがすごく良いっていうのは多くなった。

A: 映画や舞台みたいに集団でやるものの良さの出し方っていうか。ゲストボーカルの個性も大事にしていきたいですね、一回歌ったら終わりとかじゃなくて。

S: IZUMIちゃんもこれから一緒にやっていけば絶対どこかで面白い事になるじゃん。この曲のこの部分のために前にやった1曲があるんやー、みたいな。

A: 「分かってる」みたいなね。

S: 実験的なことじゃなくてちょっとずつマイナーチェンジしていけば、どっかでお客さんも気づいてくれるっていうか、そういう面白さもあると思う。たとえばakioくんがこの曲にこうして入ってるのはこのタイプの役作りだからなんだ!、みたいなのがみんな分かっていくんじゃないかな。

A: シュガーズの読み方みたいなのが分かっていく。

S: そのリテラシーがついたときにシュガーズはもっと面白くなると思う。

_「カレイドスコープ」は透明感があって素直な音作りをしていて、お二人のソロ活動の楽曲とはまた違う仕上がりになってると感じたんですが、それはやはり先程お話があったように「メロディとコードさえあれば」というスタンスが影響しているのでしょうか。

A: それは大きいですね。そこを出したいがために音に関しては削ったものも多いですね。「Big Wave」とか、ライブでやってた音源とはかなり変わってると思うんですけど、それはできるだけ歌というかメロディが映えるような工夫です。ドラムも生録りしてて、スって叩いた音をドラムの近くで録ってそれの音量を上げるっていう方法を取り入れてます。

S: すごいちっちゃい音だけど、音量上げて耳元で鳴ってるみたいにする。

A: ボーカルも、いわゆるステージで歌っているみたいな感じではなくて、狭い空間でボーカルが耳元で歌ってくれてるような音を出したかった。

S: 「パラボラシャボンライン」のボーカルが上がってきた時に思ったのは、雪の振る六畳一間のアパートの午前4時頃に隣を気にしながら歌ってる感じだなって。でも歌いたい気持ちが先走ってる切ない感じを出したかった。

A: リバーブとかもあんまかけなかったんですよ。そういうの残したくて。

S: Avec Avecの場合はボーカルがボーカルらしくしてた方がNGが多い。歌い上げる感じがあると絶対止めるんです。

A: もうちょっと抑えて欲しいっていうか、ガッといかずに寸止め。寸止めが一番好きなんですけどそれも難しいですよね。結構akioとかには難しい事を要求してるのかもしれないけど、付き合いが長いから結構わかってくれる。あえてダブにしたりとか。ライブとは全然違うけど。

///最初から複数の見方が存在してる。物事って実はそういうものなんだっていう///

_メロディとコードのために小さな音を録ったり、強いメッセージ性は削ぎ落として世界観を全面に出したりされていますが、シュガーズの音楽はリスナーにどんな風に響いて欲しいですか。

A: どんな風に聴いてくれてもいい。トイレで聴いてくれてもいいしじっくり聴いてくれてもいいし、全然意識してないですね。

S: 出た先は自由やからな。「そういう聴き方は僕らも好きですー」みたいなのはあるけど、出た作品はもう俺らのものではないから、自由にしてほしいかな。単純にトマト見て感動する人はするし、怒る人は怒るし、泣く人は泣くやん。

A: トマトに思い入れのある人は泣くかも知れないし、そこの感じは想像しようがないから。シュガーズのイメージを作るのは大事だけどそれがすべてじゃない。

S: 俺らはこういうの作ってて、こういうふうに楽しめると思うので楽しんでくださいっていうのは提供するけど、別にその通りにする必要ないし、別の楽しみ方があってもいい。

_初回限定盤には5種類のコミックスがついてきますね。

S: さっきも話に出たけど、俺らが考えるシュガーズの楽しみ方っていうのは「悲しいと嬉しいは同時にある」っていう部分なんです。

A: よく言葉では悲しいっていうけど、そこにはちょっと嬉しいとか恥ずかしいみたいな感情も含まれてる。どの気持ちが一番強いかっていうパーセンテージの問題やから。

S: 嬉し泣きとかそういう単純な話ではなくて、悲しみと嬉しさが同時に存在してるとしか言いようがない感情というか。たとえば「ホリデイ」のジャケットは男の子に見えるかもしれないけど、あれは僕の中では男の子でもあり女の子でもあるんですよ。その両方がパラレルワールド的に存在してる。

A: そもそも最初から複数の見方が存在してる。物事って実はそういうものなんだっていう。5つくらいの見方が同時にできる。無数の見方があるからいい。

S: 僕らがゲストの方にしたのって本当にその説明だけなんですけど、上がってきたらシュガーズの話とこの同時存在みたいなテーマがまとまったすごくいい作品になった。

A: こういう見方もあるよ、じゃなくて、そもそも存在してるんです。絵画を見た時みたいにいろんな感情が同時に入ってくるイメージかな。その感じを音楽でもやりたいんです。

S: だからあのコミックスを読んでから聴いてくれた方がわかりやすいと思う。あれがシュガーズを知る手引きになる。こういう漫画の読み方みたいな感じで聴くのがいいと思う。

A: 音楽は時間軸のもので、メジャーの「楽しい」とマイナーの「悲しい」を組み合わせて作っていくけど、絵画は悲しいも楽しいも全部が同時に入ってくるでしょ。どっちかっていうと絵画的な感情の伝え方をしたいと思ってます。

S: 漫画だから時間軸で進んでいくけど、セリフがないから絵画的に見るしかない。セリフがないのはそういう手引きになればいいなっていう意図がある。

_「ネトカノ」の特典がレターセットでしたが、紙だとか物質的なものへの思い入れがあるのでしょうか。

A: よく思うのは「思い出す」とか「記憶する」って部分ですね。データではなく物として棚にポンと置いてあれば、読まなくても思い出せるんですよ。

S: 年間100本映画見てもその全部は思い出せないと思うけど、棚にDVDが100本あればその全部を思い出すからね。

A: もしかしたら50年後とかは人間も進化してるのかもしれないけど、今のところ僕らは物にしか記憶を残せない。iPodの文字の羅列見ても、そもそも量的に人間の記憶のキャパシティを軽く超えてるだろうから、そこから何かの記憶を引っ張ってくるのは不可能だし。けどCDとかならパって棚見たときに3年くらい聴いてなかったとしてもすぐ思い出せる。紙とかはそれが強い。

S: レターセットにしたのはもう少し含みを持たせたかったというのがある。「ネトカノ」というタイトルがあるのにレターセット。逆にあるものなのに、同じみたいな。

A: だからこそ意味がある。

S: ステッカーやTシャツじゃなく、もっと作品自体がエキスパンドする特典を付けたかった。今後もそういう特典をつけていきたいですね。

_残念ながら時間になりましたが、最後に言い残したことがあればぜひお願いします。

A: 今回のアルバムは集大成だし、特にメロディとかハーモニーにこだわって作ったからそれを聴いてもらえれば嬉しいかなって思います。

S: これで興味を持った人はもうちょい中まで入ってきて欲しいかな。シュガーズの場合近づけばいいってものでもないかもしれないけど、入ってくればもっと面白さが分かると思うから。気軽に入ってきて欲しい。シュガーズに帰って来れるっていうのは俺らにとっても重要で、ソロでかっこつけられるのもシュガーズがあるからなんですよ。シュガーズがあると「あれ、この人どっちが本物なの」みたいになるからずっと出来るみたいな。

A: この関係があるのはすっごく強いですね。

S: シュガーズは本当に場所。だから気軽に入って来て欲しい。

(2014年12月24日、ビクターエンタテインメントにて)

インタビュー・文:和田瑞生
1992年生まれ。UNCANNY編集部員。ネットレーベル中心のカルチャーの中で育ち、自身でも楽曲制作/DJ活動を行っている。青山学院大学総合文化政策学部在籍。

構成:野口美沙希
1992年生まれ。UNCANNY編集部員。青山学院大学総合文化政策学部在学し、音楽藝術研究部に所属。現在ウェブジンのノウハウを勉強中。

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■アルバム情報
アーティスト名:Sugar’s Campaign
アルバムタイトル名:FRIENDS
発売日:2015年1月21日(水)
価格:
初回限定盤 CD+オリジナルコミック※ VIZL-767 ¥3,400(税抜)※初回限定生産
通常盤    CD12トラック収録 VICL-64276 ¥2,500(税抜)
収録曲:
01.ホリデイ
02.ネトカノ
03.It’s too late
04.となりタウン
05.MEMORY MELODY
06. Big Wave
07.夢見ちゃいなガール
08.カレイドスコープ
09.Shopping Center
10.有名な映画のようにラブリーな恋がしたい
11.香港生活
12.パラボラシャボンライン
全12トラック収録

※オリジナルコミック
Sugar’s Campaign編集による漫画本。彼らが選んだ新世代作家5名(色・川西ノブヒロ・水野しず・黒崎聡之・西尾雄太)によるアルバム曲からインスパイアされたセリフなしのサイレント漫画。アルバムを聴きながら読む、オリジナルコミックが初回限定盤の特典となる。