INTERVIEWSMarch/30/2015

[Interview]LLLL – “Faithful”

__なるほど。制作の話になりますが、ディレクションとかもLLLLさんのペースでやったという感じですか?

そうですね。全部毎回こういう感じにしてほしいとかを伝えて、皆さんに多分2、3回位は送ってもらっています。順を追って、最初はiPhoneとかで上から重ねたものを送ってもらって、ここはこういう感じでお願いします、みたいなやりとりを2、3回繰り返して作り込んでいきましたね。例えばShinobuさんは僕が良いなと思う部分を引き出して歌ってもらったので、Meishi Smileとかには「あんまり『Her Ghost Friend』っぽくないね」と言われたりしましたね。

__元々のキャラクターよりも声の味を引き出したんですね。録音とかは立ち会いなんですか?

ケースバイケースなんですけど、メール上でのやり取りが多いですね。

__今回は全ての作品にボーカルが入っていてすごく良いなと思いました。

ありがとうございます。やっぱり歌モノが好きなので。歌モノ以外も将来的には作るかもしれないけれど、今は作りたくなかったですね。

__男性ボーカルを希望したりはしないんですか?

さっきのMeishi Smileが感情的だっていう話じゃないんですけど、僕の音楽もある一種の感情みたいなものを伝えたいっていうのがすごくあって。例えば当然それぞれの声にも感情があるわけじゃないですか、エレキギターやフルートの音色にもそれぞれの感情があって。勿論旋律だって使い方によってそれぞれ変わってくるんですけど、やっぱりそれに伴う感情ってすごくあると思うんですね、全く同じものでも別の楽器を使えば全く違うイメージを与えるところがあると思っていて。で、自分が描きたいと思っていた感情に近いってところで言えば、男性ボーカルって言うオプションが一切考えられなくて。その時点で自分が女性ボーカルを使いたいなと最初から思っていたんですね。もし描きたい感情が変わってくればそれもまた変わってくるとは思うんですけど、今回のアルバムではそれは全く無かったです。

__ありがとうございます。今回のアルバムは楽曲のひとつひとつに味があるというか…個人的に今作では「Blue」とか「夢の狭間」、あと「Sync」もメロディは正統なんだけどちょっと捻くれている感じがすごく好きで。11曲目の「You/We」の実験的なサウンドというか、あの曲だけ少しテンポが早いし異常な感じがして良いなと思って。そういう全体を作る上で、今作は何かコンセプトがあって作られたのですか?

やっぱりどのアーティストもそうだと思うんですけど、作品を作るって、完全に意識下に置けるものではないじゃないですか。例えば何かを完璧にコントロールして出来るものでもなければ、完璧に作ったもの後付け出来るものでもないと思うんですね。それを前提として、無意識の部分が大きいというか、作曲っていうプロセスそのものがそういうものであると僕は思うんですけど。

ただ、自分が思っていたコンセプトで言うと、さっきの話と被るんですけど、ポップスに対する自信が大きいですね。ここ数年の自分の環境だったりカルチャーだったり、マルチネや〈Zoom Lens〉とかもなんですけど。ポップスを聴いていて、ポップスに対する自信が湧いてきたっていうところもあるんです。なので、さっきおっしゃっていただいた、メロディに重きを置いているというのも、自分の中にカルチャーがあって、その中で自分なりの答えを出せるのかっていうのが大きかったんですよね。ただそこに寄せたいっていうのは全く無くて。マルチネっぽくしないでおこうっていうのも頭の中にはあったんですけど。あとやっぱりファンだからこそ外したいっていうものすごくあって。

あと、感情的という話なんですけど、前回のアルバムの時は震災後で、混沌とした暗い面が自分にあって、その時にあった辛い事とかも素直に音に反映していて。でも今回は、ポップスに対するものもあるんですけど、環境も変わって、自分の中でポジティブな明るい気持ちを込めての『Faithful』という作品になったのかなという気はなんとなくしていますね。まあ全然明るくもないんですけどね、このアルバム(笑)。前に比べたら明るいかもしれないんですけど。

__めちゃくちゃポップかと言うとそれとは違うんですよね。それこそさっき話に挙がったTomgggさんですとか、ああいうポップ化しすぎて毒々しさも感じるような。でもそれとはまた別に、LLLLさんのやられているポップスはもっとセンチメンタルというか感傷的なイメージがあって、そういうものも好きなんです。Meishi Smileは正直言うと、なんていうか、音の荒さというのがあると思うんですけど、あの音の荒々しさが逆にアンダーグラウンド感を出していて、そこにKazami Suzukiさんのイラストが挟まってくる感じがすごく良いんですよね(Meishi Smileのアルバム『Lust』のアートワーク、また、TomgggのEP『Butter Sugar Cream』のイラストも彼女の作品)。なんだろう、イメージとしては全然違うんですけど、全く同じものが応用して使われるみたいなのがちょっと面白いと思いましたね。

僕も最初Meishiさんを聴いた時に、あの、全然好きじゃなくて。全然分からなかったんですよ、良さが。でも何度か聴いているうちにある日すごく好きになって。何が好きかというと、多分旋律が好きなんですよね。僕にプロデュースさせて欲しいと思うくらい。プロダクションの面で出来る事は沢山あると思うんです。まあとにかく、ソングライターとしてめちゃくちゃ尊敬していて、結構そこに集約されているんですよね、僕の中の彼の魅力って。あとはノイズミュージシャンとしての素質も面白いんですけど、Meishi Smile名義になってからはやっぱり彼の旋律が一番好きですね。で、彼も僕もエモい奴だと思うんですよ。それが素直に感傷的な感じで現れてるんじゃないかなと思いますね。そのセンチメンタルな感じというか。

__逆に、LLLLさんの活動の中でわざと音とかを荒々しくしようとは考えられたりしているのですか?

ライブではやっていますね。僕、daahara君っていうVJの方と一緒に作業している時に思うんですけど、作業途中のものだったりとか、荒々しい、下手上手感のあるものってすごく良いなと思っていて。彼の制作途中のものがすごく良かったりして。今回のアーティスト写真も後ろのバックグラウンドが灰色のままになってたりするんですけど、僕、ああいうのが結構好きなんですね。洗練されていないものとかって非商業音楽的要素を過分に持っているので好きなんです。でもここまでずっとプロダクションをやってくると、僕はもうそこには行けなくなっちゃってるんですよね。そういう耳では聴けないというか。それはちょっと残念だなと思いますね。

__ちなみに音楽活動自体は何年くらいやられてるんですか?

もう作曲始めたのは12、13歳くらいからだから、もうずっとですね。

__僕はどちらかと言うと、ごちゃごちゃし過ぎていると、またかよって正直思っちゃう部分があるんですけど、なんだろうな、表と裏が同時に見える感じというか……。さっきの制作途中の話も、完成されかけているものとその裏のバックグラウンド的なごちゃごちゃした部分が同時に見えるのが面白いと思うんです。全然話は違うんですけど、元々僕World’s End Girlfriendとか、綺麗だけれども所々音はささくれ立っているような、ごちゃごちゃしたエレクトロニカとか大好きなんですね。両義的というか、綺麗な部分と荒々しい部分が両立しているのがすごく好きで。

そうですね、でもWorld’s End Girlfriendさんの場合って完全にコントロールされたカオスじゃないですか。それは勿論僕も好きだし、自分の楽曲にも取り入れたいなと思うんですけど。ただ一度完全にリミッターぶっちぎってデジタルノイズまみれにしちゃおうとか、そこにはさすがに行けないんですよね。名指しはしないけどそういうアーティストも多いじゃないですか、今の音楽って。単にフェーダーの見方分かってないだけだろ、とか思っちゃう時もあるんですけど(笑)。

__確かに実力不足でそうなっちゃうってこともありますもんね。

でもね、パンクとかそういうレコーディングがよかったりもするし、一概に否定したくもないんですけどね。それがアートの良いところでもあるし。

__先日のGOOFYのライブ、すごく楽しかったです。実はあの時ライブを見て、ああこの人本当にヤバいなって思ったんです(笑)。感動しました。綺麗なところから始まって、途中で倍速になって、アーメンブレイクみたいなのが混ざり始めて、最後メタリカがかかって、ドローンって感じで終わるっていう感じじゃないですか(笑)。普段アウトプットされている音楽とはかなり違う目線じゃないですか。さっきの完成されている、されてないの話じゃないですけど、ポップスの部分とハードコアの部分どっちが先なのか、それともその両極端な部分は同時に考えているものなんですか?

僕、ロックも昔からすごく好きで。単純にライブ体験をした時に僕が素晴らしいなと感じるライブって、大概身体的なものなんですね。僕が今でも思うフェイバリットコンサートは、一度だけ東京で行われたFUJI ROCK FESTIVALなんですね。僕もmus.hibaくんも、今度一緒にイベントやるオーガナイザーも行ってたんですけど、そこにKornが来てたんですね。僕、当時はKornを全然知らなくて、結構後ろの埋め立て地のところで観てたんですけど、なんかもう、何万人っていう人々全体がわーっと動いていて。で、なんか分からないけどアクシデントが起こったみたいで、ギタリストがだらだら血を流していたんですね。鬼気迫る感じというか、エモーショナルの塊だったし、来るものがあったんですね。僕がライブをやりたい時に、勿論自分のアルバムのままに綺麗にパッケージングして、最初の曲をやってそのまま切らずに続ける事も出来るんですけど、僕が思う、圧倒されるライブってそこじゃなくて。言い換えれば、それは別にいつでも音源で聴けるわけじゃないですか。

自分で作った作品をライブでどう再構築するかっていうジレンマは、今の電子音楽家皆が抱えるものだと思うんですね。で、僕の中で何となくある今の答えって、例えばKornの時に観た衝撃というか、身体性、あと自分があの時感じたエモーショナルの塊だと思うんですね。なんかこの2つを並べるのは矛盾してる気がするんですけど。そういうエモーショナルなものと、ベースを含めたグルーヴが上質なビートとともに迫ってくる感覚、ああいった身体性って、センチメンタルなもメロディが流れてくる時と違うベクトルにあるものだと思うんですね。でもライブの場合だと、センチメンタルなものよりも爆発音だとかの身体性を感じるものの方がすごいと思っちゃうんです。なので、ライブではそっちの方を引き出したいというのが、僕の電子音楽家としてのライブと盤とのジレンマの解消の1つとしてありますね。ライブと盤は全く別物だと考えています。

__さっきのライブの話って、それこそ本当に皆悩んでいる事だと思うんです。2mix流しても、DJ的なアプローチとしてのライブと言える時もあるし、勿論色々な答えはあると思うんです。僕は個人的には、ひとつのショーのように見せるべきなのではと思います。身体性という部分では近いと思うんですけど、そこでしか経験出来ないものを出すというか。あとは楽曲として、自分が作った楽曲にある別々のパーツみたいなものが、ライブの時には違った見方でくっつけて見せるというのも面白いと思うんです。それがアーティストがライブをする時の醍醐味のひとつだと思うんですよね。

ライブを観に来てくれた人に、ブレイクコアのアーティストさんなんですか?とか聞かれて困惑してしまう時もあるんですよね。でも確かにそういう見方も出来るのかなと思って。

__そういうブレイクコアを作ろうとは思わないんですか? 僕、個人的にそういうの大好きなので。

僕も勿論ブレイクコアも好きなのでそういうのを実験的にやってはみているんですけど、まだ上手く結実出来ていないんですよね。Remixだったらいくらでも出来るんですけど、自分が伝えたいと思う感情やビジョンにブレイクコアを混ぜてしまうと何か違うんですよね。ブレイクコアって時代背景や文脈があって、色々な意味を持っているじゃないですか。それを自分のイメージに突っ込んで消化するということがまだ出来ていないんですよね。何度も試みてはいるんですけど。

__確かに異質ですよね。特にポップスという見方からすると、サンプリングの嵐、文脈の嵐になってきちゃうし。真逆ですよね、旋律でいくみたいなところとは。今回の作品で言えば「You/We」の高速のドラムとか、ああいうアプローチもすごく好きだったので、そういう過激な部分にももっと接近する可能性はあるのかなと思って。

アーティスト活動をしてる方はどうやって解消しているのか僕の方から聞きたいくらいなんですけど、今の時代でこれしか聴きません、なんて人は本当にいるのかな、と僕は思っていて。例えばテクノのDJなんかも、家に帰っても本当にテクノばかり聴いているのかな、と思うんです。だって色んな音楽があるじゃないですか。僕も何でも聴くから、アウトプットもしようと思えば何でも出来るわけじゃないですか。機材があれば不可能ではなくて。で、出来るんですけど、どこまでを少なくとも場のアイデンティティとして見せていくのかというのはあって。僕が完全にブレイクコアの曲を作っちゃうと、分からなくなると思うんです。もし自分の中で、これはブレていない、自分のやりたい事なんだっていう意志があればやるとは思うんですけど、現時点では分からないですね。

__自分の中で、やろうと思えば出来る事をやらないで、LLLLとして活動する上でのひとつの世界観に忠実でありたいということですね。

勿論そうでありたいと思っています。「色んな事が出来ますよ」なんていう自分のポートフォリオを作っているわけではないし、そういうのは個人用のSoundCloudでやるからいいかなって(笑)。

インタビュー・文:和田瑞生
1992年生まれ。ネットレーベル中心のカルチャーの中で育ち、自身でも楽曲制作/DJ活動を行っている。青山学院大学総合文化政策学部在籍。

構成・アシスタント:成瀬光
1994年生まれ。青山学院大学総合文化政策学部在籍、音楽藝術研究部に所属。