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INTERVIEWSSeptember/29/2016
[Interview]tomad & takashi Morishita – “大都会と砂丘”(Part.1)
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 2015年の〈Maltine Records〉10周年を記念したイベント「天」、『MaltineBook』のリリースから早1年、10月8日にWWW、そして新たにこの秋オープンとなったWWW Xの2会場にてイベント「大都会」「砂丘」が開催される。

 カルチャー的にも、周期的にも定番となりつつあるマルチネの「フェス」とも「オフ会」とも言うべきイベントだが、今回特徴的なのは「2会場、2イベント」という形式であろう。入場は共通で、各会場の行き来は自由だが、移動の際には渋谷の街に一度降りることが必要となり、参加者はWWW、WWW Xを内包するビル「ライズビル」、そして都市と自分自身の関係をその都度確認することとなる。もちろん、出演アーティストも非常に豪華であり、「砂丘」にはBOREDOMSでも活躍するEYヨ、イルリメ等の活動で知られるJun Kamodaによるハウスセット、そしてマルチネの各アーティストに大きな影響を与えたCherryboy Functionらが参加する他、tofubeats、Seiho、okadada等のメンツも参加。「大都会」には、banvox、Yunomi、Pa’s Lam System、Tomgggをはじめとする、今のインターネットにおける音楽シーンを代表する各アーティストが名を連ねる。

 今回、〈Maltine Records〉主宰であるtomad氏と、今回のイベントと、2013年に開催された「山」で共同オーガナイズを行った森下氏に話を伺った。マルチネ結成から10年以上が経ち、インターネットにまつわるカルチャーが大きく様変わりした今、マルチネが出す次の一手はどこに向くのだろうか。

__まず、今回の共同主催者である森下さんとは、何者なのでしょうか。

森下:今は都内でしがないサラリーマンしてます。結構長くなりますが、いいですか?

元々出身が関西の方でして、大学卒業後、新卒で入った会社を脱サラして、専門学校に行ったんですね。建築を学んでいまして。で、2009〜2010年辺りにTwitterを始めたんですけど、当時のSNSに居た、所謂イノベーターやアーリーな人達がめちゃくちゃ面白かったんですよね。その時に感じたのが、中央と地方の格差というか。

Twitterではどこに居ても平等に扱われるけど、イベントとかハレの場って結局、大体東京で行われてるなぁと常々思ってました。僕も建築やってたから、色々な場所を起こしたいっていうのもあって。コミュニケーションの場を作りたいと思って東京に足を運んだんですよね。色々な展示会や建築のイベントに行ったり。

その中でtomadがマルチネのイベントをやってるっていうのを知って。多分初めて行ったイベントが「THE☆荒川智則」だったかな。「なんか面白そうだな」と思って行ったら、かなりの衝撃を受けたんですよね。クラブ自体はよく行ってたけど、もう全然熱気が違ってカルチャーショックで。代官山っていう、地方から見たら異常にキラキラしたイメージである場所に、荒川智則は1500円で入れるインターネットスペースを作ったんですよね。踊り方も知らないような、それこそマルチネしか聞いてないギークな人達がパソコン持ちながら踊ってる光景があって。あまりにも感動的で、これはすごいぞ、と。

それで、(tomadに)こちらから声かけて、イベントを企画したんですけど、イベント日が震災の翌日2011年3月12日だったんですね。3月10日に僕一人で親の車借りて大阪から東京に入って、当時恵比寿にあった渋家でスピーカー借りて、交通費浮かせる為にtomadと渋家の斉藤桂太とGraphersRockの民穂さんとみやあるをピックしつつ、夜中に東名高速道路を走ったんです。翌日の朝大阪について。サマソニの大阪会場になっている舞州の焼却施設(フンデルトヴァッサーのデザインによる建築が特徴)を、民穂さんが見たいって言ってたから、そこに寄ったり、西成の泥棒市とかあのあたりのディープな場所を通ったりして後、1時間くらい仮眠して。(イベント会場で)Pioneerの人が貸してくれた機材が届いてたので音出しとデモをしてたら揺れたわけですよね。地震が起きた。

__震災当時の、関西の雰囲気はどんな感じでしたか。

森下:大阪はあんまり揺れなかったよね。でもTwitter見たら大変なことになってて。施設にテレビがなかったので、近所にあるスーパー銭湯にみんなで行って、そこのロビーにあったテレビで東京や東北の現状を知ったって感じでしたね。最初はなんかもう、9.11を見てる感じに近くて、実際にこれが昨日までいた場所なんだというのが想像出来なかったです。テレビを隣で見ていたおっさんが「何人くらい死ぬんやろか」って能天気に言ってたのが印象的でした。

__東京はもう電車が止まったりしてたので。

森下:大阪も大阪湾が近い地域は警報とか出てたけどね。でも交通機関は新幹線が止まったくらいで大阪の地下鉄は動いてた。準備とかで忙しくホントに震災の情報源がtwitterぐらい。当時のSkypeのマルチネチャットでは「イベント中止にしたほうがいいんじゃないの」って議論が起こってて。

散々悩んだ挙句、イベント名と主催を変えてイベントを開催しました。関西の人で、元々イベントに行くって言ってくれてた人もいたし、あと友達とかも来てくれたんだけど、「家でテレビ見てるの辛いから踊りに来た」って言ってくれて。それが嬉しかった。やってよかったなって思ったんです。なんかもう暗い気持ちだったから。

__それで、そこから付き合いが続いているんですね。

森下:そうですね。震災の翌日にやったイベントは、東京でやっていたことを大阪でやったらどうなるかな、っていう軽い気持ちだったんです。それで震災が間接的に直撃した。翌年にもリベンジというかまたイベントをやろうっていう話になって。でもただ当時大阪が風営法で大変な時期だったので。

__一番危なかった時期ですね。

森下:フライヤーに「ダンス」とか書けないんですよ、書くと危ないって言われたレベルですから。でもそれを逆に利用するというか、まあ皮肉った感じで、「就職説明会」ってイベントをやったんですよね。

__あれもコーポ北加賀屋での開催でしたっけ?

森下:そう。みんなスーツ着て、音楽イベントって言葉は全く出さずに、講師が出てきて説明しますよっていうのをやりましたね。

__徹底し過ぎて本当に説明会なんじゃないかって言われることもありましたよね。

森下:なんか京大の女の子からイベント後にメールが来たよね。「今、就活に本当に行き詰まっています。就職説明会行きそびれたのですが、マルチネレコーズに就職出来ますか」って(笑)。

__あのフライヤーを見て「受けたい」という人がいる、という(笑)。

森下:フライヤーもすごく気を遣って、あまりに格好良くすると目付けられると思って、ワードアート的なダッサいデザインをオーダーして。あれ一応スケブリがデザインしたんですけど、イラレでワードアートっぽくするのに苦戦してた(笑)。

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その当時、EYヨさんがマルチネの音楽を聞いてるって情報があったんですよね。大阪だし、EYヨさん関西に住んでるから、声かけたら来てくれるんじゃないかって思って。で、お声を掛けたんだんだけど、その当時丁度BOREDOMSが忙しくて叶わなくて。じゃあ誰に出てもらうかってなった時に、イルリメさんに声かけたんですよね。で、あの時のイベントはイルリメさん以外出演者全員スーツ着てやりましたね。写真も結構残ってるんですけど。

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(photo by ふみやす)

__それが「山」や今回のイベント「大都会と砂丘」に繋がってくるんですね。

森下:そうです。「就職説明会」が終わった1年後くらい辺りに上京したんですよね。2013年とかかな。その時(上京前)土方みたいな仕事してて。何故か建築の図面書く方から現場で働いてて。上京したらなんとかなるんじゃないかなと思ったんですよね。tomadから東京でイベントやりましょうよ!と声かけてもらって、とりあえず日程だけ決定してて、最初代官山UNITでやろうって話だったんだけど、場所を押さえられなくて。それで、WWWの名取さんを紹介してもらって、「やろうよ」って快く言ってもらえて。そこから話が進んで、EYヨさんの出演も念願叶った形です。

__「山」があって、「東京」(2014年5月開催、会場は恵比寿LIQUIDROOM)があり、「」(2015年8月開催、会場は代官山UNIT)があり、で今回の「大都会と砂丘」。どうして今回おふたりは「山」以来となるタッグを組んだのでしょうか?

森下: 「山」やったのが2013年12月で、WWWもそんなに深夜のイベントをしない方針だったんだけど、結果ゲストとかスタッフ入れると700人くらい入ったのかな? もうパンパンで。深夜だったから、お酒とかもめちゃめちゃ出たらしくて、すごく喜んでくれて。

その後、WWWの名取さんから忘年会に呼んで頂いて、「渋谷のライズビルの下でWWWやってるんだけど、(ライズビルの)ここだけの話、上(現・WWW X)でもやりたいと思ってるんだよね」って話を聞いていたんです。ずっと気にはなってて、音沙汰もなかったんですけど、去年の年末くらいにそれが決まったって聞いて。そのタイミングで今年のあたま位に、「是非、イベントやらせてください」ってtomadと一緒にお願いをしに行った。

__渋谷WWW Xのオープニングに合わせてイベントが組まれたってことですか?

森下:殆どWWW Xがオープニングの企画をしているっぽいんだけど、ウチは持ち込み企画で。WWWとWWW Xの両方を使うのはウチが初めてだし。そういう感じでやらせていただくことになりましたね。持ち込み企画なので、やっぱり企画書とかを出さないと失礼だなと思って、イベントのコンセプトを固めて行く際に、最初は「山2」にしようと話になってたんだけど、そしたらオカダダから「やめてください」って出演NGが出て(笑)。

__「山2」、じわじわきますね。

森下:そう、じわじわくるよね、あまりにもアホだなって。企画書を持ってWWW名取さんに会いにいく前に、オカダダのNGの事もあったし、イベントどうするよって話してた時にtomad君からジャストアイデアが出たんですね。

「会場を両方使うんだから1つのイベントじゃなくて2つのイベントにすればいいじゃん」って、即採用。2つのイベントが同時に行われる、大きく1つのイベント。そこからコンセプトを決め始めましたね。「○○と○○」、みたいな。

__それで、今回は1つのイベントっていうよりも、コンセプトの違う2つのイベントを同時開催するってことになったんですよね。何で「大都会と砂丘」になったのですか?

森下:まず、英語でいくか日本語でいくかって話になって。もう、日本語のタイトルでどんどん短くなってたじゃん、「山」「東京」「天」ときて。じゃあ次なんだろうってなって考えた時に、やっぱり風景なのかなって思って。2つ場所があったときに、対比して面白くならないといけないし。

意識したのが、シネマライズがあった場所なので、ちょっと映画を絡めたいなと思ってて。まず『マッドマックス』に出てくる荒野の様なイメージがあって、そこから「砂丘」が出てきたんですね。ミケランジェロ・アントニオーニっていうイタリアの映画監督の作品に、邦題が『砂丘』、原題が『Zabriskie Point』っていう1970年代の作品がありまして、アメリカのヒッピー文化の全盛と資本主義下の大量消費社会についてを不条理に描いた作品なんですが、その映画が凄く好きで。「砂漠」じゃなくて「砂丘」っていうのも良いなと思ったんですよね。

__確かに「砂漠」よりも「砂丘」の方がしっくりきますね。

森下:イメージにあったのが、ドバイとかラスベガスとか、砂漠じゃないけど、でっかい砂丘の中に都市がどーんとあるみたいな。そこから、「砂丘から都市」だよねって。「砂丘と都市」はあんまり語呂が良くなくて。それに「都会」はありふれた言葉だし、なんか違うなって。「大都会」は?って、謎に「大」が付くのヤバいよねってなって。「大」が付くことで、願望というか意思が滲み出てるんだよね。なんか変なんだよね。幻想の都市、想像上の都市の投影なのかな。

__名前からコンセプトのイメージが出来たんですね。このイベントコンセプトについて、tomadさんはどういう風に考えていたんですか?

tomad:マルチネの今までの流れから言うと、「大都会」の方は今までのマルチネっぽいかなっていう話はある。「東京」とかは多分「大都会」のコンセプトに通ずると思っていて。ただそれだけならもうみんなやってるし、それなら今はやる必要はないなって思ってて。去年開催した「天」とかは、10周年ですって言えば集まってくれるのであまり深くは考えずに開催した(笑)、ただそれ以降の進む方向を去年からずっと考えていて。その時にWWWとWWW Xが使える話がそういえばあったなって頭の片隅で思い出して、じゃあとりあえず森下さんに会いにいくかって思って沖縄に行ったと思う。

森下:沖縄でレギュラーイベントがあったから来たんだよね。

tomad: (森下さんは)半年くらい沖縄に幽閉されていたんですよね。

森下:会社の辞令でね。精神的にもまいってた頃です。

tomad:そう、だから森下さんは「天」を体験してないんですよ。でもあれを体験してるとしてないじゃ結構違ってくる。

森下:地方から東京に遊びにくるっていうそれ自体がもうイベントなんですよ。それをずっと考えてたんです。移動する意味、距離の意味。勿論物理的な距離もあるし、精神的な距離もあるし、まなざしもある。出身が関西というのもそうなんだけど、良く2点間の距離や移動について考えるんです。

マルチネのイベントもそうですが、フジロックとか朝霧JAM、タイコクラブとか、どこかに足を向かわせる力のあるイベントって「多分何かがある」って期待して行ってるわけですよね、”大都会(=東京)”に。そのイメージと合うかなと思って。

それで、コンセプトを紙に書いてもらったんですけど、抽象的な言葉ばかり並んで決まんなくて大変だった。渋谷って、駅前もそうだし。渋谷PARCOもそうだし、WWWもそうだし、渋谷が未来に向けて変わっていく中で、テーマが「距離」って言うのがちょうど良すぎるなと思って。「砂丘」のWWW Xはフロアが平坦だって聞いてたから、どちらかというとハウス寄りで、その地がどんどんと続いていくイメージ。

フロアの構成は聞いてたんですけど、(WWW、WWW Xの入っているライズビルは)なんか動線が変なんですよ。イベントによって違うんだけど、まず建物の横にある非常階段を3階まで登る。そこでエントランスを払って、1階下に下りてWWW Xなんですよ。登らせるっていう体験がまずある。身体性を伴っているんですね。ダンジョン感がある。だからWWW XからWWWに移動するには一旦外に出ないといけない。どうしようかなって考えて、今回はリストバンドを配ってフリーアクセスにすることになりました。

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__企画書には「区画整理」という言葉があって、今回のイベントのコンセプト的には非常にその点を意識されたと思うのですが、今までの状況に関してはどのように捉えられていますか?

tomad: (現時点では)整備する人が居ない、みたいな。都市計画とかって国とかが整備するけど、そういう人がいないのでほっとかれてるみたいな。

__群雄割拠の時代というか。

森下:単発での計画はあるけど、大きなプランというか、マスタープランみたいなものはないし。

tomad:それをやろうとする人もあんまりいない。

__イメージ的には、現状のこのシーンは、イベントの規模の大小こそあれど、どれも軸として似通ってきている部分があるのかなって感じています。「同じようなアーティストが出てるよね」って印象を受けざるを得ない、っていうのが東京のシーンや、インターネット発信のシーンだとあると思うんですよね。

tomad:だからまあ、インターネット発信のオフ会みたいに既存のシーンのオルタナティブでやっていたものが、いつの間にかそこからで出てくる人が大半を占めていったという感じですよね。以前は明確にあったんですよ、クラブのシーンっていうものが。でも今は大きい箱までほとんどが知り合いになっちゃったから。

森下:インターネットっていうジャンルが1つ出来ちゃったっていうのもありますよね。

__だから個人的にはインターネット系っていう言葉をあんまり使いたくないんですけど、そういうことですよね。

tomad:そうなったし、そこに居る人ってある意味インターネットっていう大きなワードの中で自由にやってた人だから「設計力が弱い」と思うんですよね。例えばヒップホップを一本筋でずっとやってましたって人より、僕が思うに多分色々やりたいが故にそのワードを上手く利用してた人だから、その前提が弱くなるとバラけちゃう部分はあって。そんな状態の下で最近はいろんなイベントが成立しているなというのは観測していて、例えば、今「大都会」だけみたいなイベントを単発でやってもそれと同じになってしまうのでマルチネとしてやるには面白味はないなという状況だったからちょっと違うことをしようと。「大都会と砂丘」は2つの異なるコンセプトのイベントを同時に立てることによってある意味どうなるかを実験するみたいなイメージです。実は近年で一番実験的なイベントになってるんじゃないかと思う。

__2014年に開催された「東京」がありましたけど、”東京”っていう言葉からイメージされるものというのは、煌びやかさと雑多さが同時にあるからああいうイベントにマッチしていたと思うんですね。今回”大都会”っていう言葉にフォーカスを当てたのは、都会のもっと観念的な要素を抽出したかったのかな、という風に感じています。

森下: (東京は)固有名詞じゃないですか。東京っぽさっていうのは、すぐにイメージ出来ちゃうし。「東京」って曲も沢山あるし。それも好きなんだけど、もっと抽象的にしたかった。勿論、大都会ってワードからも東京というワードを想起出来るけど、「大都会」はイメージの追い付いていない都市を表してるSFぽい感じがして。ceroのlost my cityみたいな。

そうそう、面白かったのが、WWWが入っているライズビルなんですよね。tomad君もツイートしてたけど、北川原温さんっていう建築家の方の2つ目くらいの作品があの建物なんですけど、それが結構面白くて。かなり詩的ではあるけど、都市を一旦自分なりに解釈して、一つの建物として表現しているというか。

__都市の雑多なイメージを建築としてまとめた建築物だな、というイメージがあります。

tomad:多分どう雑多な都市の中で建築作品がその個性を出すのかっていうことを模索したと思うんですよね、北川原さんは。ただでさえ流されやすい東京という都市の中で個性を出すっていうのは難しくて、それに抗って奇抜になっても、逆にミニマルになっても個性は出せない。その葛藤の中でライズビルを作ったと思うんですね。多分、北川原さんの中で当時そういう作品が多かったと思います。本にも書いてあったし、他にも色々調べたりしたんですけど。それが今の状況と似てるなって僕は勝手に思ってて。

このライズビルの存在っていうのをマルチネと時空を超えて勝手に重ね合わせてしまって。インターネットが普及されきって無色透明になってしまった今、多分全体性と個性を語る為に都市というワードがまた多発されているし、それにあわせてシティポップって言われる音楽が流行ってきていると思うんですですが。そういった状況のなかで、それに埋もれることなく、かといって奇抜になりすぎることなく、この混沌としたシーンの中でどうアーティストとレーベルの個性を確立していくのかをライズビルと重ね合わせた部分があって。

__流されすぎず、流されなさ過ぎずってことですか。

tomad:そう。且つ、この2016年の中でマルチネがキャラ立ちするにはどうしたらいいんだろうっていう。

__ポジション的な意味で?

tomad:そうですね。多分今まではインターネットっていうのである程度はキャラがあったと思うんですけど、それが全体になりすぎて見えない存在になっている今マルチネをキャラ立ちさせる為にはどういうコンセプトと人選にしたら良いのかっていうのを多分ここ1〜2年考えてて。その時に、都市の中のあの建物のような、そんな感じに近いんじゃないかと徐々に思い始めて。北川原さんの言葉も読みつつ、でWWWっていう新しいハコの話もありつつっていうのを全部まとめあげた上で、このイベントにそれが落とし込まれているのかなっていう感じですかね。あと個人的にはぼんやりした感じを出したくて。イベントの総体として。多分「天」とかって、一つのクライマックスに向かっていくような流れがあったんですけど。

__今回のイベントは、クライマックスが2つありますね。

tomad:クライマックスが2つあるっていうのもそうだし、どちらがメインでサブでみたいなわけでもない。両方が並列して進行して終わるっていう感じなんで、多分誰も全体を見ることは出来ないんですよ。で、そこには移動があって。あと外にも出て欲しいっていうのもあるんですよ、実は。

森下:ちょっと話が飛んじゃうんだけど、あの場所って面白くて。目の前に渋谷PARCOがあるんです。渋谷PARCOって今まで沢山の物語を作ってきたし、あと公園通りには沢山の若者が集まったし、色んな言説も生んできた。個人的にも渋谷PARCOってすごく好きだったんです。田舎者だからってのあるのですが、明らかに都会の象徴なんですよ。それが今、建て替えの為の仮囲いが囲ってあるんですよね。当たり前だけどもう中に入れなくなっちゃってる。

さっきもチラっと触れたけど、砂丘(WWW X)から大都会(WWW)へ移動したときのその光景が絶対に目に入る。肉体的な足の疲れ、乳酸を溜めながら上へ下へと移動をしながら、幻想の砂丘から幻想の大都会に移動する際に必ず一回現実を見るんです。

__なるほど。渋谷という街で1つの時間を皆が共有しているように見えて、実は出来ていない。最近、パーティーにおいて大切だと思うことは、価値の共有なんですよね。何時に誰を見たかとか、どんな風にイベントが始まって終わったのかとか。それって今すごく重要だと思うんです。だからそこを取り外した時にどうなるのかなっていうのは気になります。フェスだと、その場に居るだけで共有されているものがあるように感じるんですが、今回のイベントだと、例えば「大都会」に行った、という言葉だけではどうしても他人と共有ができなくなる。

tomad:あんまり共有して欲しくないなっていうのはあって。ビジュアルとかも、ぱっと見ると孤独ではあるんだけど、悲観的なイメージにはしないっていうのを、制作チームと相談しながら撮ってもらって。最近はクラブイベントを一人で楽しむみたいなことが僕も周りも少なくなっていってるなっていうのが体感であって。且つ、マルチネはクルーじゃないから、多分みんな個々の内なる思いや考えで曲とかを作ってるんだと思うんですよ。だからこそああやってオフ会とかやった時にそれが特別だから一時的な一体感があるみたいな。

でもその一体感だけで捉えられて、その一体感を毎回求められるのも歯がゆいなと思ったんですよ。だから原点ってわけでもないですけど、個々で音楽と向き合って、それに対して観客がどう思われようと勝手っていう部分を大事にしたかったっていうか。だから、クライマックスに向かっていく感じをあえて作らなかったんですよね。多分、「東京」とか「天」とかで知った新規マルチネファンからすると、「あれ?」みたいに感じるかも。でもそういうこともしないと先には進めないかなって思いますね。

__マルチネのそもそもの発信地であるインターネットは個々の発散の場というか、クラスに馴染めなかったような人が集まって、何かを作っていくような場所、というイメージだったんですけど、今はもうインターネットというのは外れものの場所ではなくなっていると最近思っていて。今回のイベントはそういう風に考えると、個人に立ち返るというか、外れものだった感性をちゃんと肯定し直すみたいなイメージを今感じました。元々がそういう引っ込み思案の人達の集まりだったと思うので。去年の「天」とかを経て、そういうところでも新しい所に進んでいるのかなって感じました。

tomad:難しい時期ですね。だから時間が進まないと打ち出せなかったというのはあって。多分このイベントを去年やったとしても難解すぎたと思う。やっぱ10年目の集大成である「天」を経たからなんだよね。本(MaltineBook)も出たし。あそこで綺麗に道を作れたと思います。

(Part.2につづく)

■公演情報
Maltine Records presents 「大都会」 「砂丘」
日時:2016年10月8日(土) OPEN/START 14:30 / 15:00
場所:渋谷 WWW / WWW X http://www-shibuya.jp/
料金:前売り ¥3,900 / 当日 ¥4,500 (税込 / ドリンク代別 / オールスタンディング)
*WWW / WWW X フリーアクセスとなります。

出演者:
大都会」 – WWW
Aiobahn & Yunomi
Avec Avec
banvox & Nor
bo en
DJ WILDPARTY
in the blue shirt
Masayoshi Iimori
PARKGOLF
Pa’s Lam System
Tomggg
三毛猫ホームレス

砂丘」 – WWWX
Cherryboy Function
cool japan
EYヨ
Jun Kamoda
Meishi Smile
okadada
Seiho
tofubeats

チケット情報:
ローソンチケット[L:73312]
e+ http://eplus.jp/daitokai-sakyu/

インタビュー・文: 和田瑞生
1992年生まれ。UNCANNY編集部員。ネットレーベル中心のカルチャーの中で育ち、自身でも楽曲制作/DJ活動を行なっている。青山学院大学総合文化政策学部卒。

アシスタント: 成瀬光
1994年生まれ。UNCANNY編集部員。青山学院大学総合文化政策学部在籍、音楽藝術研究部に所属。

アシスタント: 矢口夏帆
1995年生まれ。UNCANNY編集部員。青山学院大学総合文化政策学部在籍。主に海外の幅広いジャンルの映画と音楽を楽しむ。