INTERVIEWSMarch/11/2016
[Interview]Cuushe – “Night Lines”
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京都出身の女性アーティスト、Cuushe(クーシェ)。2015年4月に、最新EP『Night Lines』を、東京のレーベル〈flau〉とブルックリンのレーベル〈Cascine〉よりリリース。同年夏には、全国6都市で「Cuushe Night Lines Release Tour」を開催し、Flying Lotusのレーベル〈Brainfeeder〉から秋にリリースされたUKの新人プロデューサーIglooghostのデビュー曲に共演するなど、国内外での活躍を見せている。また、今月14日には、過去にCuusheのリミックスを手がけたBlackbird Blackbirdの来日公演への出演も決定している

 今回は原宿VACANTにて先月開催された〈flau〉のレーベルパーティ「flau night in tokyo 2016」に合わせ、デビューから7年が経過した現在の心境や自身のパーソナリティについて、また、最新EP『Night Lines』やアーティストとのコラボレーションなどについて話を聞いてみた。

__今回は2006年に設立された〈flau〉のレーベルパーティということで、Cuusheさんは2009年にデビューアルバム『Red Rocket Telepathy』をリリースされていますがおよそ7年経過した今、ご自身の状況はどのように変化しましたか?

周りに音楽の仲間が沢山増えました。最初は1人で始めて、自分1人で家で作って完結していたのですが、六本木のBULLETSというクラブに1度出演させてもらったところからバーっと広がって、周りにどんどん人が増えていって、今に至ります。本当に人に恵まれていると思います。

__そうすることでコラボなどもどんどん増えていったんですね。

はい。〈flau〉のオーナーがBULLET’Sのイベントをきっかけに声をかけてくれて、そこからだんだんとレーベルメイトや他のミュージシャンの方とも仲良くなっていきました。私自身音楽にそこまで詳しくなかったんですけど、色々教えてもらいながら自分も音楽的に成長していった感じです。リリースを重ねていくうちにお誘いをいただくことが多くなって、そこから色んなコラボが生まれました。

__そんな風に周りに関係者も増えていく中で、音楽性がロジカルな視点に変化することはありましたか?

音楽を作り始めた頃は作りたい音楽があっても、そこに到達する道筋がもやっとしていて不確かなことも多かったのですが、色んなフィードバックを受けたり、様々な音楽に触れる機会も多くなる中で、好きな音楽や自分が作りたい音楽が確かになってきた、というのはあると思います。

__楽曲はもちろんのことFacebookなどのSNSで英語中心に発信していっている理由はCuusheさんのどのようなルーツに基づくものなのでしょうか?

元々大学で海外文学を学んでいたり、海外にもよく行っていたので、英語はすごく近いところにありました。あとはなぜか私の音楽を聞いてくれる人が海外にも多くて、みんなに分かるようにと考えたら英語なのかな、と。

__ではもともと海外の人向けに発信していたわけではなく、自然とそうなっていったって感じなのでしょうか?

自然とそうなっていきましたね。私が音楽を始めた時はMyspaceに曲を載せていたんですけど、海外からのコンタクトも多くて。最初から外国の人と関わることは多かったです。

__Cuusheさんは活動のベースをベルリンやロンドンなど、何度か移されているようですが、その動きが作風など制作活動に影響を与えたことはありましたか?

最初のアルバムはロンドンでレコーディングして、2枚目はベルリンで録ったんですけど、日本にいるとなかなか時間が取れなくて、がっと集中することができなかったんです。海外に行くとそれしかやることがなくなるので、集中して取り組めました。ファーストアルバムを作る時はロンドンにいたとはいえ、完全にひきこもって作っていたので、その土地が影響したかどうかはよく分からないんですけど。ベルリンにいた時は1年間住んでいる中で作ったので、都市の空気を感じながらクラブに行ったり、テクノとか硬質な音楽を聞いたりしていたので、その影響は感じられると思います。明らかに曲のスピードが早くなりました(笑)。

__多くの海外サイトやレビューなどで“Dream Pop”というカテゴライズが使用されていますが、それに対してご自身ではどのような解釈をされていますか?

“Dream Pop”というジャンルを知らなくて、調べてみたらBeach Houseとかが該当するみたいで、「こういう感じで自分の音楽をとらえてくれているんだ」と面白く感じました。そもそもBeach House自体どこかのサイトがCuusheの音楽がBeach Houseみたいと書いていて、それで知ったんです。聞いてみたらめちゃくちゃいいって思って。だからBeach Houseみたいだと言われるのは嬉しいですね。あまり自分の中でもジャンルわけがそんなにクリアじゃないというか、だからリスナーの方々が聞いて、それをDream Popって思ってくれるのはいいなと思います。

__もともとDream Popを意識していたわけではないんですね。

特にジャンルを意識して作ることはないので、いつもリリースされてから知らないうちにカテゴライズされてる感じです。だけど、Dream Popって言われるのもいいと思います。

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__昨年発売された『Night Lines』についてお聞きします。このアルバムはどのようなコンセプトのもとに作られたのでしょうか?

『Night Lines』はベルリンから東京に移ってきて作り始めました。初めはコンセプトはなかったのですが、曲を作る時は夜の12時くらいから集中して作り始めることが多いので、夜のイメージが色濃いと思います。東京に帰ってきて、ベルリンよりもやっぱり東京は都会で、そこで感じる人との繋がりの多さと、逆にそれが故の希薄さとか、孤独とかも感じたり。外に出ると人はたくさんいるのに、自分は誰とも繋がれていない、そんな感覚が『Night Lines』の4曲にパッキングされていると思います。

__先ほどおっしゃられたように『Night Lines』は都会の夜をイメージして作られたということなのですが、サンゲイズとも評された前作『Butterfly Case』とはどのような変化があったのでしょうか?

前作はわりと開けた感じがあったのですが、今回はより暗くなったというか。なんでそうなったかはわからないのですが。ベルリンはわりと開放感がありましたね。公園に行くと、昼間からみんなビールを飲んでいるんです(笑)。最終的にがーっと集中して作っていた時期が、日が落ちるのが夜の9時とか10時くらいだった時で。それに合わせて周囲は春の兆しに盛り上がっていた頃だったんです。そういう環境で作っていた音楽と、東京の深夜に作っていた音楽。そういう差が生まれたんだと思います。

__作品の背景としてはがらっと変わったんですね。

音楽的に『Butterfly Case』は、始めはエフェクトをたくさん使ってファジーな雰囲気を出したいというコンセプトが自分の中にあったんですけど、『Night Lines』ではこれというコンセプトがなく、前作とは違うことがやりたいという意識だけはあったので、自然と前作よりクリアで固い音使いになっていると思います。

__『Night Lines』の1曲目である「Tie」のミュージックビデオが公開されています。“Tie”を直訳すると「束縛する」や、「結びつける」「繋ぎとめておく」などの意味がありますが、ミュージックビデオを作った時のコンセプトはありますか?

ミュージックビデオはNatalia Stuykさんに作っていただいたんですけど、彼女が作ったミュージックビデオを最初に見た時にとてもかっこいいな、Cuusheでも作ってくれたらなと思っていました。それを〈Cascine〉のオーナーであるJeffに伝えたら、彼がコンタクトをとってくれてこの話が実現しました。彼女からこの曲で歌われている内容が知りたいと連絡があり、「東京の夜」や「孤独感」っていうイメージを伝えました。コンセプトを話し合ったわけではなく、キーワードだけを伝えました。彼女の好きなように作って欲しかったので。

__ではNatalia StuykさんがCuusheさんの楽曲を解釈して自由に作っていただいたということなんですね。

そうです。「Tie」は繋がりとか、繋ぎとめておくっていう意味で、東京は人がいっぱいいるけど、それが故に繋がりが濃い人は数人で、知り合いは沢山いるけど、それぞれの繋がりは希薄だったりとかして。そんなイメージを伝えたくてこのタイトルをつけました。

インタビュー・文:池田礼
1996年生まれ。青山学院大学総合文化政策学部在籍。電子音楽を中心に幅広い領域で音楽を楽しむ。