INTERVIEWSSeptember/25/2013

【Interview】Chvrches(チャーチズ)- “The Bones of What You Believe”

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 2000年代以降の音楽は、過去の音楽に再解釈を与えることで、新しい音楽の見方を我々に示してきた。そして、2011年に結成されたローレン・ベイリー、イアン・クック、マーティン・ドハーティの3名から成るグラスゴー出身のバンド、Chvrchesの音楽の特徴もまた、80年代シンセポップからの強い影響である。彼らは、そのような80年代からの影響のもと、現代の音楽機器を用いることで新しい旬なサウンドを作り上げている。シンプルで非常にわかりやすいキャッチーなビート、アイスランド・サウンドのような牧歌的で透明感のあるシンセサウンドに、ローレン・ベイリーの歌うポップで魅惑的なメロディが重なる。

 Chvrchesは80年代のシンセポップを基盤にする多くのバンドの中でも突出した存在感を放っている。シンプルなビートはメロディにより一層の自由さを与え、そのメロディは心地の良い音の波を作り出し、我々をダンスへと誘う。マーティン・ドハーティはインタビューの中で、ダンスの要素は観客と自らが楽しむことにおいて重要だと語っているが、ダンスすること、楽しむことが彼らの大きな核になっていることは楽曲からも見受けられる。そして、それらは、人間が音楽を聴くことの本質にも迫ることであるが故に、見逃すことのできない特徴だといえる。

 デビューアルバム『The Bones of What You Believe』のリリースを目前に、<SUMMER SONIC 2013>出演のために来日したChvrchesのメンバー、マーティン・ドハーティにインタビューを行った。

Chvrches
Martin Doherty(以下M)

_3人ともそれぞれ異なるバックグランドをお持ちですよね。Chvrches以前には何をしていましたか。

M: 4年前に4年半ほどThe Twilight Sadというイギリスのバンドでセッションキーボードを担当していたんだ。彼らと共に世界各国を回って、ライブを行って、ツアーを通してバンドが成長していくことを間近で学ぶことができた。だけど、自分は曲作りなどには参加していなかったから、自分の作った音楽を演奏したい、という思いが強まっていって、そのことがチャーチズの結成に繋がったんだ。

_それではプロジェクトの結成のいきさつを教えてください。

M: そのようにセッションキーボーディストとして活動することで自分の曲を演奏したいという欲が高まっていって、十年来の友達であるイアンと連絡をとったんだ。彼とは、以前に一緒に仕事をした経験もあって、一緒に音楽を作りたいと前から話していたんだ。そこで、一緒にデモ作りを始めることになったんだ。その時たまたまイアンがプロデュースしていたバンドのボーカルだったローレンを紹介してもらって、彼女の声はとても魅力的だと思ったので彼女にスタジオにきてもらったんだ。そして当時作っていたエレクトロミュージックに軽くボーカルを入れてもらったら、とってもいい感じだった。それで、三人で話をして、音楽を一緒に作っていくことになったんだ。そこからは、6ヶ月から8ヶ月くらいだれにも知られずに曲を作っていたよ。そして去年の6月にネット上に曲をアップしたら、周りからすごく反響があって、その反響が広がっていってそれでこうして日本にまで来られるようになったというわけ。

_なるほど。先日、デビューアルバムリリースの詳細が発表されていましたが、『EP』リリース以前の曲で、例えばバンドが注目を浴びるきっかけとなったデビューアルバムに収録予定の「Lies」などは、EP収録曲に比べて少しアグレッシブなエレクトロミュージックという印象を受けます。EP収録曲とそれ以前の曲では、曲作りの面や周りの環境面で何か楽曲に影響を与えたものはあったのですか。

M: 実は、結成した当初から、僕たちはアルバムを作ることを念頭に曲づくりを行っていたんだ。アルバムには「Lies」のようなアグレッシブなものや、「Gun」や「Recover」のようにポップでキャッチーなもの、他にもより実験的な曲が収録されているのだけど、そういう多彩な曲の収録されたアルバムをつくることには非常にこだわっているよ。最近は曲単位でダウンロードして聴くという方法があることもわかってはいるけれど、やっぱりアルバムというフォーマットを重視したいんだ。アルバムの抑揚や流れを大事にするために、多彩な曲を入れているんだ。

_アルバム全体のバランスを考えて作曲しているのですね。

M: 僕たちのやり方は、作曲をしながらレコーディングをする、という方法なんだ。アルバムに収録されている曲は、結成当初から9ヶ月間かけて作曲、レコーディングを繰り返して作られたものが多い。もともとこのバンドは、三人で曲をつくるというソングライティングプロジェクトとして開始されたものだから、常にこのバンドの可能性を広げるために新しい音、曲を作っていくということはこのアルバムを作り終わった後でも行っているよ。

_全体的にはChvrchesのサウンドは、わかりやすいダンスリズムに透明感のあるシンセの音の重なりが特徴的だと思うのですが、シンセの音作りではどんなところを工夫しているのですか。

M: 僕たちが大事にしていることは、昔のアナログ機械を用いてそれと一緒に、ソフトウェアやプラグイン、エフェクターの最先端技術を使って音をよりモダンな音に加工していくことなんだ。アナログシンセとコンピューターをかけあわせることでフレッシュな音を作っているんだ。

_透明感のあるサウンドはグラスゴーの土地で育った音だとも捉えられると思うのですが、それは多くのグラスゴー出身のアーティストたちに共通する点だと思います。グラスゴーという土地を音楽を作る上でどのように捉えますか。

M: 僕はグラスゴーは、クリエイティブなエネルギーに富んだ街だと思うよ。一つのジャンルに限らず、いろんなジャンルのバンドを輩出しているよね。その中で育ってきたことは、自分にとっても大きな刺激になっているし、これまでOrange Juice やBell & Sebastian、Franz Ferdinandなどを見ながら育ってきたしね。また、現在でも、グラスゴーからはエレクトロポップバンドも、コアなエレクトロのバンドもいっぱいでてきているよね。特に〈Lucky Me〉というレーベルから多くのエレクトロミュージックがリリースされていて、そういうところに僕たちは直接的には関係はないけど、そういう環境の中で活動をしていることや、昔から地元で小さい会場でのライブを見てきて、自然と地元の音楽が身にしみ込んでいることは、今行っている音楽作りにとても影響を与えていると思う。また、Hudson Mohawkeのようにそれこそベッドルームで作曲していた同郷のアーティストが、Kanye Westのトラックを作っていることや、Franz Ferdinandなどが世界を制覇していることは大きな刺激になっているよ。自分たちも何かできるのではないかという気持ちにさせてくれるんだ。

_最後に、あなたたちの楽曲では、ダンスの要素がとても重要だと思うのですが、あなたたちバンドにとってダンスとはどのようなものですか。

M: 音楽においてダンスの要素はとても重要だと思うよ。ライブでは特に重要だね。盛り上がることのできるようなダンスの要素にヒップポップや80sの音楽を混ぜていくことで自分たちの個性を加えているんだ。ダンスの要素は観客の心をつかむことにおいても、自分たちで演奏を楽しむ上でもとても大切なことなんだ。

インタビュー・文:永田夏帆

1992年生まれ。UNCANNY編集部員。趣味はベースと90年代アメリカのポップカルチャー。青山学院大学在籍の現役大学生。

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Artist: CHVRCHES
Title: The Bones of What You Believe
Label: Hostess Entertainment
Cat#: HSE-60166
Release Date: 2013年9月25日
Price : ¥2,490(tax in)

■日本盤はボーナストラック6曲、歌詞対訳、ライナーノーツ付

1. The Mother We Share
2. We Sink
3. Gun
4. Tether
5. Lies
6. Under The Tide
7. Recover
8. Night Sky
9. Science/Visions
10. Lungs
11. By The Throat
12. You Caught The Light
13. Strong Hand *
14. Broken Bones *
15. Gun – KDA Remix *
16. The Mother We Share – We Were Promised Jetpacks Remix *
17. The Mother We Share (Blood Diamonds Remix) *
18. The Mother We Share (Kowton’s Feeling Fragile Remix) *

*日本盤ボーナストラック