ARTIST:

Chvrches

TITLE:
The Bones Of What You Believe
RELEASE DATE:
2013/9/25
LABEL:
Hostess
FIND IT AT:
Amazon, iTunes
REVIEWSOctober/11/2013

【Review】Chvrches | The Bones Of What You Believe

 2011年に結成されたローレン・ベイリー、イアン・クック、マーティン・ドハーティの3名から成るグラスゴー出身のバンド、Chvrches。ポップなメロディとシンプルなビートで構成された80年代シンセポップからの強い影響を感じさせる彼らの音楽は、レーベル契約前からネット上で話題を呼び、2012年9月には、シングル「The Mother We Share」で正式にデビューしている。その後、瞬く間に今年注目のバンドのひとつとなり、本アルバムにも収録されている「Gun」のPV再生回数は公開わずか3ヶ月にも関わらず、現時点(2013年10月)で100万回転を超えている。
 
 その評判の良さも本作を聴くと頷くことができる。透明感のあるサウンドや、牧歌的でメランコリックなメロディにはどこか懐かしみを感じさせ、アグレッシブなダンスを誘うビートの波は、すっと耳に入り、好奇心に満ちた躍動の芽を自然と植え付けられてしまう。もちろん、決して単に聴きやすい、というようなことを言っているのではない。確かに、彼らの音楽は難解さが強調されたものではない。その代わり、心の奥底にある自分でも意識していない深層心理に問いかけるような烈しい感情表現がある。

 例えば歌詞に、その特徴が表れている。作詞をしているローレン・ベイリーは雑誌記者として働いていたこともあるという経歴の持ち主で、その歌詞は感情が詳細に、そして的確に表現されているところが特徴的だ。彼女の詞からはすべてを手にしたい独占欲や壊してしまいたい破壊衝動、支配欲動が読み取れる。また、彼女が書く歌詞には、人間の弱さと欲望の強さの両方が表現されている。そして、幼さの残る彼女の見た目やシンセポップの明快なサウンドとのギャップによって、それらはより際立った魅力を発揮しているのだ。

 そして、ローレン・ベイリーは「すべて壊れてしまえ」と歌う。Chvrchesの最大の魅力は、そのポップさの裏側に存在する突き刺すような欲動の表象にあるのではないだろうか。

文:永田夏帆


1992年生まれ。UNCANNY編集部員。趣味はベースと90年代アメリカのポップカルチャー。青山学院大学在籍の現役大学生。