INTERVIEWSAugust/08/2013

【Interview】Mount Kimbie(マウント・キンビー)- “Cold Spring Fault Less Youth”

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 音楽の中から感じ取られる本質は、常に流行とは違った時間の流れの中に位置している。Mount Kimbieのアルバム『Cold Spring Fault Less Youth』は、まさにそういった普遍的な音楽要素を持ち得ている。

 Kai(Kai Campos)とDominic(Dominic Maker)の2人からなるMount Kimbieは、彼らの持つ暖かで懐かしい感性を、新たな音像と共に提示する確かな実力を持っている。また彼らは、ダンスミュージックの流れを脈々と受け継ぎながらも、生演奏を主とするライブスタイルを主体とし、DJや、PCを駆使したライブが主流となっている現在のクラブカルチャーからは一線を画した立場にいる。

 そして彼らは、流行を無心に追いかけるアーリーアダプターでもなければ、また、過去のスタイルに意固地に拘る頑固者でも決して無い。今作では若手シンガーソングライターであるKing Kruleとの共作が収録されており、クール且つ情熱的なサウンドの構築に彼の歌声が一役買っている。変わらぬサウンドを提示し続けるアーティストとしてではなく、自らのサウンドを持ちながらも、それに自らの好む要素を取り入れ、さらに応用することで、Mount Kimbieは多くのファンの支持を獲得し、また、彼らの予想を超えるサウンドを提示し続けてきたのだ。

 先日恵比寿LIQUIDROOMにて行われた<Red Bull Music Academy>×LIQUIDROOM 9周年に出演したMount Kimbieの来日公演でも、彼らのサウンドは多くの観客を魅了していた。ある者は魅入り、ある者は熱狂し、またある者は彼らのパフォーマンスを興味深く眺めていた。表現者として確固たる実力を持つ彼らのサウンドはどのような過程を経、またどのような信念のもとに生まれたのだろうか。

Mount Kimbie
Kai Campos, Dominic Maker


__まず、この度アルバム『Cold Spring Fault Less Youth』がリリースされましたが、それに先立ってアルバム内の楽曲「Made To Stray」が先行公開されました。ダブステップを通過した、新しい感覚のサウンドだと感じたのですが、どういう風にこのサウンドが作られたのでしょうか。

Kai: Dave Smith InstrumentsのTempestという機材でドラムループを作っていて、それで最初に完成したループがこの曲に使われているんだ。それをどういう風に使っていこうかとあれこれやっているうちに、最終的にこの曲で使われているウワモノを乗っけたら、ランダムな感じが凄くしっくりきたんだ。それからライブでこの曲を演奏しているうちにどんどん形になっていった。それと、この曲の最後に入るボーカルを一千テイクくらい録ったんだけど、それを使うか最後まで迷っていたんだ。そしたら、このアルバムのエンジニアが「絶対に(ボーカルを)使うべきだ」と後押ししてくれて、ああいう形になったんだ。構成的にはとてもシンプルな曲だよ。

__「Made To Stray」はアルバムにおいてどういう立ち位置にあるのでしょうか?

Dominic: この曲は作られたタイミングもアルバムにおいて初期の段階で、自分たちにとっての新しい一面を象徴するものと思えた。前作に比べてダンスミュージックの要素が色濃くなったから、この曲を実際にDJ達が使ってくれるのはとてもフレッシュな感覚だった。そういう意味でも、このアルバムのトーンを決めてくれる一曲だった。

Kai: この曲のアイデアがしっくりきたから、自分たちの新しい側面について確信が出来たんだ。

__続けて「Blood and Form」が先行公開されましたが、重たいビートの大胆な音使いが特徴的だと感じました。ある意味アルバム内で異彩を放っている一曲だと感じたのですが、これはどのように作られたのでしょうか。

Kai: この曲は、アルバムの制作の過程において最後の方にできたものなんだ。エンジニアをしてくれたStereolabのAndyが8トラックの古いドラムマシンを持っていて、それにはカセットテープを取り込む機能が付いていたんだけど、壊れかけていたからそれを修理しながら使っていた。ある日、スコットランドのドラマーが録ったドラムループが延々と録音されている30年もののカセットを見つけて、それを聴いてみたんだけど、カセットが古びていたから、音がすごく面白く聞こえたんだ。しかも、ドラムマシンには編集機能があって、そのカセットの編集をしているうちに「これはヤバいな…」という出来になったから、それを30分くらいレコーディングして持ち帰った。

それがきっかけで、自分たちがというより、音が自然に要素をかき集めるように曲が出来上がっていったんだ。あのビートのダルさや重さが凄くしっくりきてたから、最初は「この曲をまず公開しよう」と思っていたんだけど、みんなは「Made To Stray」の方が気に入っていたみたいだから、「それが好きなら『Blood and Form』はもっと好きだろう」という感じで公開した。だけど、今までのファンはそれで混乱しちゃったみたいで、自分の読みは外れちゃったかな (笑)。だけど、「Made To Stray」とはまた違った雰囲気のトラックを公開することでこのアルバムのコントラストがハッキリとするだろう、と思ったんだ。

__今作では「You Took Your Time」と「Meter, Pale, Tone」の2曲で若手シンガーソングライターであるKing Kruleとの共作を行なっていますが、どういった経緯があり共作に至ったのですか。

Dominic: 元々僕たちが彼のファンだった。それである日、南ロンドンで行われた彼のライブを観に行ってみたら、「彼とは相性がいい」という確信が持てたんだ。それで、彼をスタジオに呼んで、参加してもらうことになった2曲の元々の素材を聞かせてみたら、リアクションも凄くよかったし、「是非やってみよう」ということになった。彼の音楽性だけでなく、制作のスタイルから何まで自分たちと相性がいいと感じたし、僕たちはその段階で既にアルバム制作においてかなりディープなところまで意識がのめり込んでいたんだけど、それに彼が飛び込んできても凄くフィットした。そういうところから、凄く相性の良さを感じたんだ。

__このアルバム全体を通してみると、ベッドルームミュージック的な落ち着いた暖かさと、クラブミュージック的な要素が同居していて、ポストダブステップに加えて、例えばポストロックやヒップホップといった色々なジャンルのサウンドをバックグラウンドに感じました。どういうシーンに影響を受けてこういうサウンドになったのでしょうか。

Kai: 一個一個の要素に対してどのルーツがある、というところまで具体的なものは思いつかないのだけど、Micachu & The Shapesのアルバムで彼女らが見せた「好きなものはなんでも取り入れて自分のものにしてしまう」という姿勢には影響を受けたかもしれない。音楽的に、というよりスタンス的にね。このアルバムでも、ディテールというか、スペースを活かした曲作りをしていて、制作時間に余裕もあった。だから、自分たちが今まで影響を受けてきたものを正直に反映してもいいんだ、という自信が、今回のアルバムでは表現されているのかもしれない。

__このアルバムには、バンドサウンド的な要素も取り入れられていて、印象としてはクラブミュージックとバンドサウンドとの中間にあると感じました。Mount Kimbieとして、この先どちらのサイドに向かって行きたいと考えていますか。

Dominic: どういう方向性に行くかは今まで一回も話しあったこともなかったから、今も明確なビジョンがあるわけではないけれど、今回のアルバムの制作が凄く満足のいくもので、いつまでも曲作りを続けていたい、と思えるほどだったから、この先、すぐにでもEPとかをリリースしたいとも思っている。

Kai: 新作は、もしかしたらダンシーなものになるかもしれないし、全く違うものになるかもしれない。とにかく、今湧き出ているクリエイティビティを形にしたいという気持ちがある。

__普段のライブはどういった編成で行われているのでしょうか。

Kai: ライブはドラムが入った3人編成でやっていて、僕がTempestやギターを演奏して、Dominicがキーボードやその他の機材、というのが大体の編成なんだけど、実際は曲ごとに担当が変化するから、決まりきった役割はない。今後は、その辺りもオーガナイズして曲ごとにスムーズになるようにしたいとは思っているよ。ボーカルはドラム含めて3人ともが担当している。

__特に生演奏という要素に重点を置いていると感じましたが、自分たちで演奏をするということにはこだわりがあるのでしょうか。

Kai: 生演奏というのは、自分たちのスタイルをどう表現するか、に対する結果で、それによって自分たちがより自由になれたんだ。クラブでは普通、DJ達がずっと音楽を流しているけど、その中で無音の状態は無いし、テンポも一つのセットの中では大抵同じだけど、その中で、実際自分たちがライブをする時に一曲ごとに切れて無音になることがあんまりしっくりこないのもあったけど、伝統的なロックのライブスタイルの中で、自分たちの見せ方を確立できて、周りのリアクションも良くなった気がするんだ。とはいえ、ロックスタイルのショーの中でも僕たちは浮いてしまうから、どうもわけのわからないところにいるみたいなんだけど。

__最後に、日本のアーティストやシーンについて気になるものがあったら教えて下さい。

Kai: 知識的にはそんなにないんだけど、SOIL & “PIMP” SESSIONSはずっと好きなバンド。UKにもああいうバンドはいるんだけど、彼らの持っている日本らしさはユニークだと感じた。あと、SonarSound Tokyoで見たRyoji Ikeda(池田亮司)のセットには感銘を受けたね。

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Artist: Mount Kinbie
Title: Cold Spring Fault Less Youth
Release Date : 2013.5.22 (Wed)
Label : Warp Records / Beat Records
Number: BRC-380
Price : ¥1,980 (Tax incl)

01. Home Recording
02. You Took Your Time (feat. King Krule)
03. Break Well
04. Blood and Form
05. Made To Stray
06. So Many Times, So Many Ways
07. Lie Near
08. Meter, Pale, Tone (feat. King Krule)
09. Slow
10. Sullen Ground
11. Fall Out
12. Pulse *Bonus Tracks for Japan

取材・文:和田瑞生

1992年生まれ。UNCANNY編集部員。ネットレーベル中心のカルチャーの中で育ち、自身でも楽曲制作/DJ活動を行なっている。青山学院大学総合文化政策学部在籍。