INTERVIEWSOctober/14/2020

[Interview]TOPS - “I Feel Alive”

 今年4月、世界中のさまざまな都市でロックダウンが行われるなか、TOPSの最新アルバム『I Feel Alive』がリリースされた。バンドは、昨年10月に自主レーベル〈Musique TOPS〉を設立。さらに、新たにキーボード奏者のMarta Cikojevic(マルチ・チコイェヴィッチ)がメンバーとして加わっている。
 リリースからおよそ半年、今回、2017年にリリースされた『Sugar At The Gate』に続く、およそ3年ぶりとなる最新アルバムについて、楽曲や映像など、さまざまな背景を語ってもらった。

__今作は昨年10月に設立された新レーベル〈Musique TOPS〉からのリリースですが、新たに自主レーベルを立ち上げた経緯や理由を教えてください。

〈Arbutus Records〉との契約が終了して、バンドとしてさまざまな選択肢を模索しました。そうすると経済的に見ても、セルフリリースがバンドにとって明らかに最善の道だったんです。私たちはこれまで、信念を曲げずにインディペンデントであり続けるという夢を持ち続けようとしてきました。そのためには、自主レーベルからのリリースしか方法はなかったんです。

TOPSがTOPSであり続けるということは、私にとってとても大切なことです。その信念は、私自身とバンドのみんなを支えるものになっているとも思っています。だからこそ、創造的な時間と自由を持てるんです。ただ、現状の50%がバンドに還元されるという伝統的なレーベル契約では、5人組のバンドにとって、それを維持することは不可能なことでした。

音楽ビジネス全般で言えば、その経済状況は危機的な状況にあると思っています。その結果、インディーズレーベルはもはやバンドにとって現実的な選択肢ではなくなってしまったんです。ここでは具体的にバンドについて話しているけれども、ソロアーティストや少人数のグループならインディーズレーベルという選択でもうまくいくこともあると思います。

悲しいことですね。メインストリームの音楽業界は、極めて収益性の高いアーティストだけを優先しています。彼らは、ほかの企業の利益を上げるために、メディアが追いかける物語がなんであれ、その人気を利用しているだけなんです。そこに独特なサウンドや個性的なアーティスト性といったものは、無関係なようにも感じます。そして、彼ら以外のその他のアーティストたちに与えられている場所はほとんどありません。

自主レーベルからリリースすれば、自分たちが始めた道を続けていけます。そしてこの選択は今、バンドにも大きな力を与えてくれているんです。

__「I Feel Alive」は、アルバムのタイトル曲でもありますが、そのテーマについて聞かせてください。

「I Feel Alive」は、生きている実感としての感情の激しさについての曲です。今は理想を追い求める風潮があるけれど、「I Feel Alive」は、めちゃくちゃで、もしかしたら少し“問題のある”とさえ言える愛についての作品なのかもしれません。

自立して礼儀正しくあること、良い習慣をもっていること、起きたらスマートフォンを見ないこと、水をたくさん飲むことなど、オンライン上にも現実社会にも模範的な考えがたくさんあふれています。誤解しないでほしいけれど、もちろんこれらはとてもいいことだと思います。ただ、良い習慣を持てば、確かに長生きできるようにはなるかもしれないけど、一番生きていると感じさせてくれるものって何なのでしょうか?

私にとってそれは、深く恋をすることなんです。たとえそれが面倒で人生に支障をきたしたり、さらには誰かを傷つけてしまったりしても、自分の心に従って、自分が一番生きていると感じられるような感情を追いかけていくことが大切なんです。

この曲はそうした激しい感情から 書き起こされた作品です。今私が言ったような、自分が一番生きていると感じる瞬間の喜びが、実際に聴こえてくるはずです。

__今作はキーボードのMarta Cikojevicが参加して以降初めてのアルバムとなっています。「Direct Sunlight」でのフルートの使用は、彼女がメンバーに加入したことも影響しているそうですが、バンドとしての表現の幅にどのような影響を与えたと考えていますか。

Martaは優れた表現力を持っているミュージシャンで、バンドにも大きな影響を与えてくれました。新しいメンバーが加わることで、私たちの関係性にも新しい展開が生まれたし、バンドのエネルギーを維持するためにもそれは大切なことだと思います。

彼女は積極的にバンドのサウンドを考えて貢献してくれました。それに、人としてもプレイヤーとしてもかなり直観的だから、これから一緒に作っていく曲のなかで、さらに大きな存在になっていくと思います(少なくともそう願っている!)。私たちは本当の意味で“バンド”であるし、私たちの音楽はいつもコラボレーションから生まれています。だからこそ、誰かが曲作りに参加してくれることは、バンドにとってとても大きなことなんです。

__「Colder & Closer」について、プレスリリースでは、「星に慰めを求めるのではなく、運命を恣意的なものとして拒絶している」と説明されていますが、その意味について詳しく教えてください。

私は、運命は恣意的なものではないと思っています。あなたが参照しているのは、この曲の歌詞の「星座を探している/星が並ぶかどうかを見てる/記号は国のような神話/歪んだ線の上に描かれた形」という部分ですよね。自分の歌詞を引用するのは少し傲慢な感じがするけど、とても具体的な質問だから、あえて引用するのは、このインタビューを読んでいる人みんなが、何について質問されているかわかるはず、とは思い込みたくないから(笑)。

この曲は途方に暮れてしまったときに、意味を捜し求めることについて歌った曲です。私にとっては占星術が、人生の目的や周りの人々との関係を理解しようとするために向かう、一つの場所なんです。運命は恣意的なもの、気まぐれなものではなくて、そこには宇宙の力が存在するんです。

国民性という概念と似ているように、占星術を取り巻く神話にも人間が作り上げた構造があります。私たちは星々の上に形を描き、自分たちのイメージで神々を作り、国々を境界線で分けて、遂には戦争を始めます。しかし、これらは物理的な世界に投影された想像上の概念に過ぎません。

星に認識できる形を描いて星座と呼ぶのは、地球に線を引いて自分のものであるかのように振る舞うのと似ているのではないか、という見解をはっきりと示したかったんです。どちらも世界を理解するのに役立つ魅力的な概念と言えるけれども、地球や星の力は私たちが語る物語なんかよりもずっと力強いものなんです。

__「Colder & Closer」のミュージックビデオは、サーモグラフィーを使用した技法や、顔に複数の人の手がまとわりつくシーンなどが印象的な映像作品ですが、これらは、楽曲のどのような部分を表現したものなのでしょうか。

サーモグラフィーは、感情を温度として視覚的に表現したものです。誰かと親しくなって、身体的に親密になることもできるけど、その意思疎通は冷たく表面的なまま、私たちに孤独や不安を感じさせることもあります。その閉じ込められたような不安と孤独が空間を介した動きのなかで表現されています。

監督のMashie Allamは、冷え切ったモダンな建物を歩くというヒントをくれて、最終的には自分を窒息させてしまうような何か(映像のなかのたくさんの手)を探している感覚を演出してくれました。その“手”が意味するものは、あなたにとどまり、一人になったときに、あなたの内に現れる“過去に愛した人たち”なんです。

__私たちが行った、前作『Sugar At The Gate』のインタビューで、収録曲の「Dayglow Bimbo」について、「現代のカルチャーや女性が経験するプレッシャーのようなものに焦点を当てている」と説明していました。レーベルからの資料によれば、今作の「Witching Hour」も「女性らしくあれというプレッシャーについて歌った曲」などと、共通する部分がありますが、 女性らしさや、男性らしさについてどのように考えていますか。

女性らしさ、男性らしさという概念は、すべての人やものに存在する二元的な力の一種だと考えています。それはすべての人々を蝕んでいる、社会構造としてのジェンダーにまつわる経験とは異なるものです。

私が女性らしさについて探求するのは、私にはとても強い男性的な側面があると感じるけれども、女性らしさが身近なものであり、私が生きてきたものだからです。それとまた、私の内なる男性らしさを尊重しないと、バランスを失ってしまいます。「Dayglow Bimbo」 と 「Witching Hour」 は、女性としての経験のまったく異なる側面について歌っています。そうした関係性については、あと100曲以上は書けますね。

__「Drowning In Paradise」では、モントリオールの公用語でもあるフランス語の歌詞が挿入されていますが、フランス語の語感や表現は、曲にどのような効果を与えていると思いますか。

ずっと曲中に、話言葉のセクションを入れてみたいと思っていたんです。私のフランス語は酷いアクセントだし、文法もよくはないけど、その言葉自体の美しさのおかげで、素直に受け入れることができました。Vanessa ParadisやMylene Farmer、Francois Hardy、France Gallといったフランスのポップシンガーたちの歌声は、私に大きな影響を与えているので、彼女たちの歌声を参照して、うまく取り入れてみたかったんです。

__前作『Sugar At The Gate』に引き続きアルバム全体として失恋や孤独を感じさせる曲が多いなか、「Drowning In Paradise」では、恋愛の喜びについて歌われていますが、この曲が生まれた背景について教えてください。

本当はアップビートなアルバムを作ろうとしていたから、失恋や孤独を感じたというのは少し不思議ではあるけれど(笑)、バラードが3、4曲あるから、そう感じるのもわかります。

「Drowning In Paradise」は最後に書いた曲の一つで、インストのトラックは先に録音しておいて、何人かの友人と一緒に歌詞を書いた作品です。そのせいか、それほどエモーショナルでも深刻なものでもないんです。みんなで書いていた曲なので、いわば絶対に“誠実”である必要もありませんから。

__7月の初めにライブセッション音源の『TOPS Live at Tropico Beauty』がリリースされ、また「Witching Hour」や「Direct Sunlight」などのドキュメンタリー調のライブビデオのシリーズも公開されるなど、さまざまなリリースが続いていますが、今後の活動について教えてください。

すべてのツアーがキャンセルになってしまって、今はその時間で新しい曲を書いたり、みんなで演奏したりしています。TOPSのリリースに関しては特に予定はないんですが、この秋にDavidがソロ作品をリリースする予定なので、みなさんに聴いてもらうのがとても楽しみです。

(回答: Jane Penny)

I Feel Alive:
01. Direct Sunlight
02. I Feel Alive
03. Pirouette
04. Ballads & Sad Movies
05. Colder & Closer
06. Witching Hour
07. Take Down
08. Drowning In Paradise
09. OK Fine Whatever
10. Looking To Remember
11. Too Much
12. Freeze Frame (Bonus Track)

Photo by Justin Aranha

インタビュー・翻訳:春日梨伽, 大嶺舞, 浅井虎太郎, 栗原玲乃(UNCANNY, 青山学院大学総合文化政策学部)
文:春日梨伽(UNCANNY, 青山学院大学総合文化政策学部)
英訳監修:杉田流司(UNCANNY, 青山学院大学総合文化政策学部)
編集:東海林修(UNCANNY)