INTERVIEWSJune/25/2019

[Interview]Mary Lattimore − “Hundreds of Days”

 ハープの音色が織りなすメロディとループでその世界観を表現するロサンゼルス在住のハーピスト、Mary Lattimore。ジャンルの垣根を超える多くのアーティストのレコーディングやライヴ・サポートを行う彼女のハープの演奏は、一つの楽器としての表現にとどまらない広がりを持ち、コラボレーションをするアーティストごとに異なる独特の存在感を放っている。

 彼女は昨年、オリジナル・アルバム『Hundreds of Days』を〈PLANCHA/Ghostly International〉より発表し、今年1月にはそのリミックス・アルバム『Hundreds of Days Remixes』をリリース。そして7月1日、渋谷WWWにて、リミキサーとして参加したJulianna Barwickとのダブルヘッドライナー公演を行うことが決定している。

 来日直前の彼女に、自身のバックグラウンドや、アルバム『Hundreds of Days』、また、Julianna Barwickとのパフォーマンスについて話を聞いてみた。

__プロのハーピストであった母親の影響で11歳からハープを続けているそうですね。ハープと長い時間を共に過ごしてきて、ハープがもつ魅力をどのように考えていますか。

ハープはとても美しい音色を持っていて、楽器そのものを彫刻として見ても面白い形をしている。ありふれた楽器ではないし、弾いている人もそう多くはない。ハープの持つ神秘性を手に入れるために学び続けることはとても意味のある挑戦だと思う。それがまさに、私がこれまでの27年間ずっと追い求めていること。私は今も常に学んでいる。ハープはとても多くの可能性を秘めている楽器だと思う。

__過去のインタビューで、「私は言葉を使わずに多くを語る曲が好き。メロディラインそれ自体が文章になっているような」と語っていますが、この回答について詳しく教えてください。

私の声は酷いものだから、めったに歌おうとは思わない。だから、まるでメロディ自身が歌っているように、楽曲のメロディを作らなければならなかった。私はフィクションや詩を読むことが好きで、その文章の流れが、弧を描き、起伏のあるリズムと共に、まさにメロディのように描かれる様子が好き。メロディラインを聴けば、あなたにもそうした弧が聞こえてくると思う。完璧で小さい、言葉なき詩のように。

__作品を制作するとき、インスピレーションはどのようなところから得ているのでしょうか。

訪れた場所の風景や本、心が傷ついた時や奇妙なニュース、好きな絵画といったものから、多くのインスピレーションを得ている。

__2年前にフィラデルフィアからロサンゼルスに活動の拠点を移していますが、そうした環境の変化は、音楽活動にどのような影響を与えましたか。

今は、映画音楽を演奏するようなものや、ほかの人の作品のためのセッションのように、自分以外のプロジェクトのためにより多くの音楽を作っている。ロサンゼルスでの生活はお金がかかるけど、こうしたたくさんのクリエイティブな仕事も提供してくれる。アルバイトをしながら片手間として音楽をするのではなく、ようやく音楽だけで生活していけるようになって、とても楽しく過ごせている。

__「Never Saw Him Again」のMVでは、夜の風景や暗闇に照らされた花がイメージとして印象 的に使われています。この映像のテーマを教えてください。

このミュージックビデオは、「GEORGIA」というアート音楽プロジェクトとして制作された作品。友人のJustin Trippが撮影してくれた。彼は私と同じ時期にロサンゼルスに越してきたんだけど、ロサンゼルスの様々な場所を巡って夜に咲く花々を撮影していた。彼がこの街のまったく新しい住人として、私と同じくらい街を散策するのが好きというところがよかった。映像のテーマは、発見、そして、巨大な人口を抱えるこうした大都市で、孤独になれる静かな場所と夜の時間。

__2017年にHeadlands Center of the Artsのアワードに表彰され、Artist in Residenceプログラムに参加していますね。様々な分野のアーティストが集まってコミュニティが形成され、交流のある環境での生活や、そこで受けた影響について教えてください。また、プログラムに参加した期間はどのくらいでしたか。

2年前の夏にそこに行って、2か月の間滞在した。本当に素晴らしい機会で、セコイヤでできた納屋のスタジオで過ごしながら、ヴィジュアル・アーティスト、詩人、活動家、パフォーマンス・アーティストといった人たちと出会った。そして、その共同体が生み出す創造性を吸収しながら、その場所で最新作の『Hundreds of Days』を制作した。

__これまでに様々なアーティストと共演していますが、特に印象に残っているコラボレーションを教えてください。

最近、私のヒーローでもある、Harold Buddと共演する機会があった。Haroldと知り合いになれたことは、本当に嬉しい出来事だった。新しい作品はパーカッションとハープのもので、またいつか彼と一緒に演奏したいと思う。

__『Hundreds of Days Remixes』は様々なアーティストによって『Hundreds of Days』がよりアンビエント寄りに解体・再解釈されている印象を受けました。自身の作品に対する異なる方面からのアプローチに対して、どのように捉えていますか。

あのリミックス作品は、本当に気に入っている。リミキサーはみんな私の友人だから、彼らが私の曲をどのように解釈したかを聴くのは素晴らしいことだった。とても魅力的だったし、こうした才能豊かなミュージシャンたちを知れることが本当に嬉しい。

__『Hundreds of Days Remixes』に収録の「Never Saw Him Again」でJulianna Barwickが リミックスに参加した経緯を教えてください。

Juliannaは私の親友のひとりで、姉妹のような関係。そしてあの曲(「Never Saw Him Again」)にはわずかなビートがあるから彼女にぴったりだったと思う。実際、彼女が曲を選んだのだけど、いずれにしても私も彼女にはあの曲を選ぼうと思っていた。この作品で、彼女は本当に素晴らしいリミックスを提供してくれた。

__Juliannaとのダブルヘッドライナー公演が開催されますが、どのようなソロ・パフォーマンス、 またコラボレーション・セットを予定していますか。

たぶん、私たちはそれぞれソロの演奏をして、それからふたりでコラボレーションした演奏をすると思う。まずキーを選んで、その雰囲気がどこに連れて行ってくれるのかを見るつもり! Juliannaと一緒に演奏するといつもわくわくする。それはまるでちょっとした旅行のように、小さな冒険に出かけるような感じだから。

Photo by Jackie Lee Young

Hundreds of Days:
01. It Feels Like Floating
02. Never Saw Him Again
03. Hello From the Edge of the Earth
04. Baltic Birch
05. Their Faces Streaked With Light and Filled With Pity
06. On the Day You Saw the Dead Whale
07. Wind Carries Seed (Bonus Track)
08 Be My Four Eyes (Bonus Track)

Julianna Barwick & Mary Lattimore
日程:2019年7月1日(月)
会場:Shibuya WWW
出演:Julianna Barwick / Mary Lattimore/ DJ:Shhhhh
時間:開場18:30 / 開演19:30
料金:前売¥4,500(税込 / ドリンク代別 / 全自由)

チケット:
◆先行受付
受付期間:4月17日(水)19:00〜4月21日(日)23:59 ※先着
受付URL:https://eplus.jp/juliannabarwick-mary-lattimore/0701/
◆一般発売:4月27日(土)
e+ / ローソンチケット[L:74382]/ チケットぴあ[P:150-223]/ WWW店頭

公演詳細: https://www-shibuya.jp/schedule/011048.php
問い合せ:WWW 03-5458-7685

主催・企画制作:WWW
協力:PLANCHA

インタビュー・文・翻訳: 加来愛美、杉田流司、佐藤圭悟(青山学院大学総合文化政策学部, UNCANNY)