EVENT REPORTSJanuary/23/2019

[Event Report]BACARDÍ “Over The Border” 2018──Little Simz、限界を超える挑戦

 2018年11月5日、バカルディ主催の完全招待制フリーパーティー「BACARDÍ “Over The Border”」が、渋谷ストリーム ホールにて開催された。同イベントでは、渋谷に新しく完成した会場の4、5、6階のフロアを使って、様々なアート作品の展示やライブなどが行われ、多くの来場者が詰め掛けた。その中から本稿では、ロンドン出身のアーティスト、Little Simz(リトル・シムズ)のライブの模様を紹介したい。

 今月、最新アルバム『GREY Area』のリリースを発表した、Little Simz。アルバムからは、「101FM」「Offence」「Boss」が発表されており、アルバムリリースの発表時には、「Selfish (feat. Cleo Sol)」のミュージックビデオが公開されている。Little Simzこと、Simbi Ajikawoは、ナイジェリア出身の両親を持ち、移民二世としてロンドンで生まれ育った。

 現在、ラッパー、ソングライター、プロデューサー、そして女優としても活動する彼女は、Little Simzとして、2010年頃から複数のミックステープを発表し、2015年にデビュー・スタジオ・アルバム『A Curious Tale of Trials + Persons』をリリースしている。インディペンデントなスタンスで活動を行う彼女は、自身のレーベル〈Age 101 Music〉を設立し、同レーベルから現在も作品を発表し続けている。2016年には、セカンド・スタジオ・アルバム『Stillness in Wonderland』をリリース。続く、2017年には、Gorillazのツアー「Humanz Tour」にも参加し、Gorillazとの共演曲「Garage Palace」を発表している。

 Little Simzは、6階ホールの最終アクトとして登場。1MC、1DJといったオーソドックスなスタイルで会場を盛り上げていく。すでに、新旧様々な楽曲を持ち、数多くのライブアクトをこなしている彼女は、厚みのある多彩な音楽性を見せる。ライブの中盤では、彼女の新曲である「Offence」と「Boss」を続けて披露。Infloのプロデュースによる「Offence」では、「I don’t care who I offend(誰を怒らせようと気にしない)」と力強いメッセージを放ち、同じくInfloによる「Boss」では、割れるような音圧のビートの上で巧みなフロウと共に「I’m a BOSS(私がボス)」と、自己の存在をはっきりと宣言する。セットには、「Shotgun」や「Dead Body」「Picture Perfect」など前作、前々作からの楽曲も加えられ、この時まだ未発表であった最新アルバム『GREY Area』からの新曲「Selfish」も披露している。

 「自分自身に強烈なビジョンがある」と語るLittle Simz。彼女は、自身が影響を受けたというオールドスクール・ヒップホップの精神を体現するかのように、確固たるスタイルで自分自身を表現し、ストレートなメッセージを聴衆へと送り続けた。ロンドンから東京へ──会場は狂的な音の渦で包み込まれ、Little Simzは場所や言葉を超えて自己の存在を示し、その場に在るすべてを支配していた。

→Interview | Little Simz - “GREY Area”

Photo by Masanori Naruse

*公開時に、一部表記に誤りがありました。訂正してお詫び申し上げます。

Link: BACARDÍ “Over The Border” 2018

取材/文・東海林 修(UNCANNY)