INTERVIEWSOctober/01/2018

[Interview]ポコラヂ – “Lost In Karaoke”[Part.2]

(Part.1からのつづき)

「Lost in Karaoke」への出演

__次に、今回参加する「Lost in Karaoke」について聞かせてください。まず、過去の「Lost in Karaoke」についてはどうですか?

tomad:毎回マルチネで出演メンバーを集めてくるという記憶がある。2014年は、Pa’s Lam Systemが出ていたり

てぃーやま:2015年は、Jackマルチネ(POKO presents JACK vs MALTINE)の一環だったんだよね。Jackマルチネの最初。「Lost in Karaoke」に出演して、次の日に韓国行って、帰ってきて翌日にMograでイベントして、みたいな。あの時は、Simon、Maxo、ワイパさん(DJ WILDPARTY)、パーゴルさん(PARKGOLF)とかでしたね。なので一応、tomadさんは「Lost in Karaoke」皆勤賞ですね。

tomad:出ているというか、いる。

てぃーやま:でも最初はマルチネって感じで、それからどんどん穴埋めみたいになってきている(笑)。

tomad:それは感じていますよ。今回とか、企画絡んでいませんからね。ポコラヂやってくださいって、何をやれるかわからないけど。

てぃーやま:「Lost in Karaoke」は、やっぱり最初が一番良かった。

tomad:なんかもっと以前の方がちゃんと狙えてたと思う。ちょっと惰性になっている気がする。

横山:なんかサブカルチャーのオールスター感謝祭みたい。

tomad:もうちょっとコンセプトを固めた方がよかった。このメンツだったら。

てぃーやま:「Lost in Karaoke」は、最初は「カラオケでライブやっちゃうんだ」みたいな、でも内容もちゃんとキュレーションされてて、海外からもしっかりとしたアクトが出てて、さすがだなって思ったのは覚えてる。

tomad:部屋ごとのキュレーションがちゃんとあったと思う。箱がそれぞれたくさんあるみたいなことになるから、本当はそれを活かした方がいい。

横山:今回は、まさに東京のクラブシーンの現状を象徴しているような感じですね。同時多発的にバラバラに、有象無象のアーティストが出演するイベントが行われている。視聴者はそれをザッピングする感じ。

てぃーやま:「響け、新宿から。日本独自の文化=カラオケボックスを丸ごとジャックして各部屋から気鋭のアーティストのパフォーマンスをライブストリーミング配信するRed Bull Musicの人気コンテンツ、Lost in Karaokeがカムバック!」っていう文章見ても、広告の企画提案みたいだよね。カラオケでやるってことだけが先行しちゃってる感じがする。

横山:実際、自分たちが何をすればいいかわかってないし、当日になってみないと何がどんな感じになるか分からないですね。ポコラヂ部屋はそもそも地味なので誰かゲストを呼んだりしようかなと考えています。不安なので(笑)。


日本と海外のRBMF/RBMAの違いについて

__日本と海外のRBMF(Red Bull Music Festival)/RBMA(Red Bull Music Academy)の違いについて、ご意見があれば聞かせてください。

てぃーやま:RBMAについては、『レトリカ3』の僕の原稿は、RBMAのマンチェスターのスケプタのレクチャーをみて、「めっちゃいいじゃん!」ってなって書いたやつなんですよ。最近「20 Years of RBMA Lectures」のレクチャー動画も出ていて、昨日も見直してたんですけど。けっこうやっぱり面白いっていうか、なかなか話を聞けない人のインタビューとかめっちゃ面白かった。skreamの地元がこんなんでとか。あとDJ SPINNとDJ RASHADのレクチャーだとか、普通に面白いんです。だけど、なんかさっきの言った通り、今回の「Lost in Karaoke」みたいに、目的がどんどん最初と変わってきている気もしていて。

RBMAって今、アカデミー以外もやってるじゃないですか、フェスティバル。昨日各国のフェスティバルのレポート写真を見てたんですよ。けどなんか正直わかんないなと思っていて、外から見てると。多分日本と同じようなところもあってシカゴとLAとかは結構キュレーションがちゃんとしてるように見えるんだけど、僕らもLA出身でLAに住んでたら、いやなんかつまらないな、とか思ってるかもしれない。去年の東京でやったフェスティバルの写真とかレポートとか見てても、そんなにインパクトなかった気がしてたんですが、レポート写真からはすごくよさそうに見える。人も入ってるし。

だからなんかRed Bull自体がそういうものになってるのかな。でもレクチャーとか見直して、興行っぽいものだけじゃなくて、もっと教育だったり若手育成やリサーチをやってほしいとは思ってます。

__フェスティバルとアカデミーは違うものだとしても、雰囲気が変わってきたと感じると。であるならば、今後Red Bullのようなブランドがこういったカルチャーに資本を投下する際に、どのような役割を期待しますか?

てぃーやま:最後の希望っていっちゃあれですけど、ぼくらが大学生くらいのころにやっていた2014年のRBMAの一発目は、企業がいわゆるマーケティング目的で楽曲の制作をやらせたりとか、タイアップ的なものとか、タレントとして企業のCMにアーティストを使うとかではない、文化への関わり方をRed Bullが見せてくれた。RBMAっていう音楽的なアクティビティとRed Bullっていうエナジードリンク自体のブランディングが別々にありながらも、でも両方のアクティビティを同じRed Bullっていうブランドの下でやってて。

そういう大きな資本を持った企業が文化に投資したり、アーティストが使えるスタジオをつくったりしててかっこいいなと思ったし、アカデミーも若手育成みたいな側面が強かったと思うので、カルチャーとお金が結びつくモデルとして新しかったと思う。でもそういう側面をあんまりシビアに考えなくなったのかなってのは最近感じています。文化と企業の関係について新しい洞察を得られる何かになる可能性はあったと思うので。

でもそれはいつでも修正可能というか。ディレクションの問題だと思うのですごく属人的だとは思うんですけど、例えばRed Bullにすごくいい人が何人か入って、何かしら日本の音楽を変えていこうとするムーヴメントが起こったりとかすると、みんなまたいいって思い直すだろうし。

前に会社であるリサーチをした時に、レーベルやアーティストとかいろんな人にインタビューをさせてもらったことがあって、みんな言っていたのは、Red Bullって音楽産業のプレイヤーじゃないから今あるしがらみとか音楽産業的な枠組みとかを取っ払った状態で本当にいいコンテンツとか音楽とかを届ける役割ができるんじゃないかって、それに期待しているって言っていたんですよ。それはすごい僕も同じで。

確かに実際に何かやるってなったら、じゃあブッキングは誰に頼んでとか、どんどん音楽業界に取り込まれてはいくと思うんですけど。それでも音楽を直接売ってないブランドとして、音楽とか文化に関わることの意味みたいなものをもっと真摯に考えることができれば、本当はRed Bull自体のブランディングにももっと寄与するだろうし、アーティストにとっても消費者にとってもwin-win-winな状況になり得ると思っています。

__和田(Miii)さんは?

Miii:作ってやっていく側としては、これから目指すステージ、ライブとかの集客をどんどん増やしたり、売り上げを上げたりしていきたいっていう中で、その先に見える光景はかっこいいものであってほしいというか、やるだけの価値はある、みたいな気持ちになりたいので、そういう目標であってほしいと思っています。今の活動の先に見えていたらいいなっていうのがあって、その中でRed Bullのやり方はセンセーショナルだったとは思うし、宣伝手段もやり方がすごくセンセーショナルで目の覚めるようなものであったと思います。

一方で、誰かがやってくれるかっこいいものばっかりに目をやりすぎないというか、そこに憧れて目指すっていうのに対して、自分らでも何がかっこいいのかを考えて、インディペンデントでもそれをどんどん提案していくべきなのかな、というようなことは思いますね。

__tomadさんは?

tomad:Red BullはCMとかブランドとして別のことに広報のお金かけられるやり方もあるけれど、あえてイベントやるみたいな方法をとっていると思うから、イベントを通してメッセージがちゃんとしたものがあるといいですけどね。CMもあるんでしたっけ?

てぃーやま:「音楽はマーケティングから生まれない」のやつ。

tomad:でもそれって「あるようで自分達が伝えたい意思が何もない」みたいな言葉じゃないですか。うーん、もっとこういうのをRed Bullだから伝えたいみたいメッセージが強烈にあったほうが、今のリスナーも有象無象に選択肢があるから、そっちのほうが食いつくかなとは思っていて、それはたぶん他の企業やインディペンデントなオーガナイザーとかではできないことがRed Bullだったらできるっていう、「この組み合わせでやるの!?」みたいな驚きを起こせる余裕はあると思うんで、それを活かしてほしいなって思います。

__最後に、横山さんはいかがですか? 今回の「Lost In Karaoke」の出演も含めて。

横山:とは言ってもポコラヂとして出演するからには、多少なりともマーケティングに寄与できるようなパフォーマンスを出したいですね。具体的には久しぶりにRed Bullを飲みながらの放送になると思うんですよ。Red Bullのスタジオで最後にポコラヂをやったのもいつだったか覚えてないんですけど、もう1年くらいですかね。その時の初心に戻って。

tomad:飲んでる人と飲んでないのとじゃこんなに変わるんだね、みたいな(笑)。

横山:だって「Red Bullのスタジオでやってる」っていうスタジオのパワーは、機材やネームバリュー、立地とかありまして、そのおかげで友人もたくさん来てくれてたけど、よく考えるとプログラムに一番影響を与えていたのはあの無限に飲めるRed Bullだったみたいなところはあるから。「毎月狂ったようにポコラヂをめげずに放送していた熱狂はむしろRed Bullによってもたらされていたのでは?」みたいな仮説がある。

tomad:それが今証明できる時というか。

横山:そうそう。半年間Red Bullを抜いて、久しぶりにそれを摂取した時にどう変わるのかは見ててほしいかな。それこそが本当のマーケティング、PRなんじゃないかな。ああこんなに普段面白くないトークの人たちが、こんなにしゃべってこんなに面白くなるんだ、みたいなのを、聞いていただきたい。面白い話をがんばってするし、同時にこれはマーケティングのために使ってくれてもいいし、うちら共犯関係でいいんじゃないって感じですね。

てぃーやま:なんかUKとかUSも見ていて思うのは、ブランデッド・コンテンツとかブランドが提供する場っていうのは当然のようにあって、会社の人はマーケティングだと思っているし、アーティスト側のそれを使いたい人は、その機会をうまく使う。ちょっと露出が欲しければブランドとのタイアップを使うけど、セルアウトはしたくないからまた引き下がってインディペンデントなトーンに戻ったりとか、上手な駆け引きがあると思うんですけど。

日本は「広告・タレント・芸能」みたいな世界と「作家性・自己表現・アート」って完全に別々になっちゃってて、でも嘘をつこうとするから「音楽はマーケティングからは生まれない」みたい言葉が出てくると思うんですよ。いや、確かに生まれないけど、マーケティングが音楽をサポートすることはいくらでもあるし、事実として広告出稿してるんだから分かりきった嘘はつかないで普通にマーケティングやればいいのになと思います。

横山:嘘つきあっているみたいな感じになっているよね。

てぃーやま:もうマーケティングと作家性の二項対立みたいな時代じゃないと思う。

横山:だから、Red Bullがミュージシャンの人たちをサポートしてる、でいいじゃん。それをマーケティングとして使ってるし、こっちは機会として使っているし、お金として使っているし。それで良いんじゃない、みたいな。

てぃーやま:〈BBK(Boy Better Know)〉とNIKEだってNIKEっていうブランドだから彼らはサポートしてもらうし、NIKE側も彼らやグライムの中でのNIKEの文脈をリスペクトしながらいろんなマーケティング活動やっていて、NIKE footballがBBKとフットサルの大会をやったりとか。マーケティングだからこそやれることと、アーティスト側がインディペンデントだからやれることは全然別なんだけど、その規模や目的の差異があるからこそ生まれるシナジーみたいなのは確かにあって。企業とアーティストの両方が幸せになる形っていうのはもっと普通に存在すると思うんですよね。

横山:お金出してもらって、いいコンテンツを出して、Red Bullさんにサポートしてもらいましたと、それで良いんじゃないかと思う。

てぃーやま:今だと嘘つかれてるから、アーティスト側も「よろしくお願いします、めっちゃ楽しかったです!」って言うけど内心めっちゃダサいと思ってる、みたいになってしまう。

横山:Red Bullスタジオから始まって、ポコラヂとはいえ、一回その場所から離れて、もう一度Red Bullと一緒に何ができるのかを試してみるいい機会になるかなと思う。

(2018.9.20、東京・青山にて)

Photo by Jun Yokoyama(2017/1/10撮影)

■公演情報
LOST IN KARAOKE
日時: 2018年10月2日(火)開演19:00/終演22:00
場所: カラオケ館西武新宿駅前店(新宿)
料金: 無料(ライブストリーミング配信)
出演: 各部屋割りは下記をご覧ください

【Tokyo Recordings】
Yaffle, OBKR, Taihei Kirioka, ninjoi.

【Neo Tokyo】
YUKA MIZUHARA, あっこゴリラ, DEADKEBAB & PSYCHIC$, LISACHRIS

【Phantom Sounds】
Albino Sound, Aya Gloomy, Maika Loubté, ZVIZMO(テンテンコ× 伊東篤宏)

【Fire in the Booth】
Wardaa, 極onTheBeats, Weny Dacillo, ゆるふわギャング

【Midnight Flow】
Kotsu, galcid, DJ Kali

【Yuzama Showcase】
Batsu, eill, Mecanika, Misumi, バーチャルねこ, KISEKI (Taigen Kawabe [BO NINGEN] x 食品まつり a.k.a foodman)

【ポコラヂ出張編 (MC ROOM)】
遠山啓一, Jun Yokoyama, Miii, tomad, Tomoya Matsumoto

※本イベントはライブストリーミング配信でご覧頂くプログラムです。下記ページより視聴サイトへ
www.redbull.com/jp-ja/music/events/lost-in-karaoke

インタビュー・文: T_L

アシスタント: 加来愛美、伊藤礼香、金子百葉、佐藤純、杉田聖司、杉田流司