INTERVIEWSMarch/10/2016

[Interview]Qrion – “Beach” (Part.2)

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(Part.1、”sink”からのつづき)

__この時期にアメリカのエージェンシーSurefireと契約の話が進行していると思うのですが、渡米を決めたのはいつ頃でしょうか?

(2015年の)3月にやったサンフランシスコでのライブが、たぶん人生の中で一番うまくいったライブで。だからもっと自分の好きな事をやって、こういう気持ちになれたらいいなっていうのは3月から思っていました。普通に日本に戻ってきて、ライブしたり制作したりしていて、やっぱりなんか3月にアメリカでやった時の方が、どこかやりやすい部分が多いなって思ったんで、いつか渡米できたらいいな、という風には思っていたんですけど、具体的に渡米するにはどういうものが必要だとかは、たぶん5月のツアーの時にマネージャーとかエージェンシーから提案されて。そういう方法だったらアメリカ行けるんだっていうのが初めてわかって、そこから真剣に考えるようになりました。

__渡米後の経済的な生活の目途は立っているのでしょうか?

お金もアメリカだと、クラブっていうものが定着してるし、音楽が仕事になってるっていうのが結構当たり前っていうか。みんなも「DJは仕事」っていう認識がちゃんとあるので、プロモーターとかが、知名度がなくてもしっかりお金を出してくれるんです。だから、住居とかは友達に助けてもらったりするとして、ライブがきちんと月に2、3回入っていれば、それで生活できる感じでした。

__アメリカツアーの後に、フィジカルリリースとなった『Q』のリリースはどういった経緯で決まったのですか?

サカナクションさんのイベント(「NIGHT FISHING」)があって、そのイベントのプロモーションを兼ねてリリースする、というのがきっかけです。私と、グラフィックを手がけてくれたPATANICAさんは、作るならちゃんとやろうって言って、お客さんに聴いてもらえるようにって制作しました。結果的には、すごいみんな聴いてくれたので良かったです。

__『Q』のリリースに合わせて公開された「nothing」のMVですが、撮影はいつごろで、コンセプトはどのようなものなのでしょうか?

あれはたしか5月のツアー行く前なので、4月のおわりとか、春先ですね。コンセプトとしては、植物がすごい好きだったんで、Tumblrっぽいというか、Tumblrの美意識みたいなのがあって、海外の。それをこううまく取り入れたいねって話をしてて。その時に偶然Jacques Greene っていう〈LuckyMe〉のアーティストが私は好きで、その人のMVが定位置で撮ってるだけの、謎が多いMVがあったんです。それがすごい好きだったので、あんな感じで、しかもインターネットっぽい感じ入れられないかなって考えたら、じゃあ植物園に行こうと思って、撮りました。

__2015年は、PARKGOLF、Giraffage、Skylar Spense、泉まくら、Milk & Bone、How To Dress Wellといったアーティストのリミックスを発表しますが、特に渡米後の作品は、渡米前の作品と質感が変わったように感じます。何かご自身で変化などあったのでしょうか?

んー……、なんか渡米してからは、色々アメリカで音楽だけで生活している人を見て、メジャーデビューするとか、有名になるっていうのも、すごい素敵なことなんですけど、それがなくっても、自分の好きなことを仕事にする人をいっぱい見れたので、なんか自分もこうなろうっていうのは、アメリカを通してすごい思いました。

__そういう意識が知らない内に作品に出ていたのでしょうか。

そうですかね。あと、これだけ自分の曲を聴いてくれる人が国外にこんなにいたんだなっていうのを実感して、もっと真剣に、今以上に真剣にやろうと思いました。

__例えば、これらのリミックスワークは以前と違い、聴いてもらうことを前提に作ってるということでしょうか?

結構自分の好きなようにやる方ではあるんですけど……。聴きやすいのを作ろうとは思ってないんですけど、アメリカを経験してから、前より聴きやすく、謎に、そうなってる……(笑)。自分でもなんで特徴が変わっていくのか分からないんですけど。

__まずは、“wanna die”ではなくなったのでしょうか。

そうですね、なくなった気がします。

__特に、Milk & Boneのリミックスは意外だったのですが、どのような経緯で決まったのでしょうか。

Milk & Boneのエージェンシー、マネージャー会社の人が私の曲が好きで聴いていてくれていて、マネージャーさんが「Qrionどう?」みたいに提案したみたいで、それが通って決まりました。作ったのはたしか夏とか春くらいで、いつリリースされるんだろうと思ってたら急に出てたっていう……(笑)。

__海外契約発表前後からの、海岸で撮影されたアーティスト写真がありますが、これらは、どこで撮影されたものですか?

あれは、サンフランシスコのビーチですね。アメリカに、マネージャー代わりのことをしてくれている人がいるんですけど、その友達がカメラマンをやってて。Flying Lotusのアーティスト写真とか撮ったりしてる方で、雰囲気がすごい合いそうだからどうかなっていうのを提案されて。どんな風に撮るって言われたときに、なんかTwitterで、これがいいとか悪いとかじゃなくて、音楽を聴いてくれてるのは嬉しいんですけど、私のことを若干カワイイカルチャーみたいに思ってる人もいて……。聴いてくれてるのはいいんですけど、ちょっと自分のコンセプトとは違うのになっていうのがあって。そういうのをあんまり感じさせないようにっていう狙いと、女子だからどうこうとか男子だからどうこうとかそういうのじゃなくて、雰囲気として絵になるようなのがいいなって言ったら、じゃあビーチで悲しい感じのを撮ろうってなって、ああなりました。

__たしかに日本人のカワイイカルチャーではないですね。もっとこう、要するにかっこいいというか、海外っぽいというか。これ誰が撮ったんだろうと思っていました。

サンフランシスコのはずれの町に住んでる、ジュリアって人で。女性です。全部で1000枚くらい撮っていて、そこからいいのを30枚くらいピックアップして送ってもらって。何パターンかあります。

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__今後の話をお伺いします。3月にいよいよ渡米ですが、アメリカでまずやってみたいことは何ですか?

海外のレーベルから、アルバムを出すっていうのはやりたいです。

__それはもうだいぶ近いように思います。

近いですかね。信じたいです。

__ほかに、具体的な目標などは決めているのでしょうか?

アメリカで、音楽だけで生活をするっていうのを実践すること、です。

__そして、SXSWへの出演後は、5月まではライブが決定しているんですね。

そうですね。ただ、なんかアメリカの人、割とドタキャンとか多いので。意外と「あれ、そうだったの?」みたいなことが多くて。私のエージェンシーの人も何回かミーティングを忘れてたりだとかそういう感じの人なんで、不安なんですよ(笑)。一応これまで決まったよっていうスケジュール表をもらったんですけど、その人が言うとあんまり説得力がないですよね(笑)。

__会場のHPに名前が載って初めて信じるような……。

そうですね。SXSWも出られたらいいなとしか思ってなかったんですけど、Twitterで、「Qrion、サウスバイ出るんだね」っていうのを海外に住んでいる人がリプライで送ってきて、「ああ、そうなの?」と思ってホームページで探したら、「あ、あった」みたいな(笑)。そのTwitterで知って、マネージャーに聞いたら、「あ、そうだよー」って。なんも教えてくれなかった(笑)。

__次のリリースの予定を話せる範囲で教えてください。

リミックスは今のところはないですね。今までリミックスをたくさんやってて、それにこう慣れてきちゃっているのか、自分の曲を作るのが、ちょっと苦手ではないんですけど、前まではこう、できて、できたって感じだったんですけど、(オリジナルは)ゼロから全部作るじゃないですか、自分で。だから、これで大丈夫なのかなって、自信があんまりなくなってきていて。自分の曲でちゃんと代表的になってるのって、「Beach」以降あんまりパッとしてないんですよ。自分っぽいのがちゃんと入ってて、普段でも聴けるようなのは、「Beach」以降全然出てなくて。アメリカに行くまで、その間にライブのためにも活動のためにも、自分の曲を作る期間にしようと思っていて、作っています。

__また、全く別の質問なのですが、今回やり取りした中で、文面や必要事項などがしっかりしたメールを頂いたのですが、こういったことはどこで学んだのでしょうか。

私も今までは、例えば「~さん」って最初につけるとか全く知らないまま、しかも、ちゃんとした事務みたいな仕事を経験したわけでもないし、常識的な部分もすごい無いんですけど、いろんな人からお仕事の依頼のメールが来たり、ブッキングの依頼が来たりとか、ハコ側の人からのメールとか見て、それで結構学びました。

__でも、学んだとしても、そうしようと思わないと書けないようにも思いました。

多分、普段、学生とかもしてないし、今、音楽が自分のメインの生き方になっているんですけど、メインになってるんだったら、なってるなりに、上下関係とかはあるけど、向こうからは年齢が若いからブッキングするとかじゃなくて、音楽を聴いてよかったから来てくださいとか、ここに出したいんで来てくださいっていうスタンスでオファーを頂いているので、そういうのはちゃんと意識してやらないとダメなのかなっていう考えがあって、しっかり、メールとかはちゃんとしようと思っています。

__ありがとうございます。最後に、渡米前ということであえてお願いしたいのですが、ファンの皆様にメッセージなどがあればお願いします。

これからも頑張っていくので、よろしくお願いします。

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(2016年2月22日、渋谷にて)

インタビュー・文: T_L

アシスタント: 岡田桃佳
1995年生まれ。主にポップスを中心とした洋楽を得意とする。青山学院大学総合文化政策学部在籍。