INTERVIEWSSeptember/02/2014

【Interview】Blonde Redhead – “Barragán” / Hostess Club Weekender 2014.June

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 カート・コバーンが命を絶ち、グランジ・ミュージックが衰退して行った分水嶺が1994年。もう20年も昔のことである。そんな、新たな時代の潮流を生み出そうと同世代のバンド達が試行錯誤していた激動のニューヨーク・ミュージックシーンの中で、Blonde Redheadは産声を上げた。Vo.Gtを務める日本人女性カズ・マキノと、ミラノ出身のアメデオ(Gt,Syn)とシモーネ(Dr)の双子を中心に結成され、1995年にデビューして以来、およそ20年間のキャリアを通じ、8枚のアルバムを発表している。

 20年ものキャリアを抱えるとなると、並のバンドならば、ある程度固まってしまった自らの音楽に胡座をかくか、その時代の流行をどうにか自分たちなりのファクターで解釈し何倍にも希釈した中身が無い様な作品を作り出し、思う様にいかなくなると言うのがほとんどではないだろうか。しかし、Blonde Redheadは、約20年ものキャリアに自惚れる事無く、その真摯な姿勢と飽くなき向上心で常に自らの音楽を磨き上げ、足を止める事無く進化し続けている。

 6月のHostess Club Weekenderでの来日公演を終え、前作『Penny Sparkle』から約4年ぶりの新作『Barragán』のリリースを目前に控えたBlonde Redheadのアメデオとシモーネの2人に(時にはカズ・マキノも飛び入りで)取材を試みた。

_最初に、約2年ぶりの来日公演なのですが、久しぶりの日本はどうでしたか?

シモーネ:まず日本にまた来ることが出来て本当にうれしいよ。日本の人々って凄い感受性豊かでそういう人たちに僕らの音楽を聴いてもらえるのは、本当に誇らしい事だ。ただ、前の来日からもう2年も経ったんだね? 僕たちもあまり覚えていないけど(笑)。

_ありがとうございます。では、早速9月に発売予定の新譜についての質問に移りたいと思うのですが、はじめに、タイトル『Barragán』に込められた意味を教えてください。

アメデオ:これについてはカズに聞いた方が早いんじゃないかな? カズ、こっちに来て〜(隣のブースで取材を終えて待機しているカズ・マキノを呼ぶ)。

カズ・マキノ:もともと聞こえが良くて、意味の無い言葉を探していたんですけど、そしたら友達が「バラガンの家に行こう」とか、とにかく「バラガン」って連呼していて、何でも無い言葉だけど、頭に残っていて……。でも、いざ本当にその「バラガン」の家に行ってみたら、実はそのバラガンって人は私と凄い繋がりが深い人で、ほんの偶然の出来事だったのだけれど実はよく知ってたみたいな。それが凄い好感を覚えたっていうか、いいなあって思ったので。偶然だったけど凄い意味がある事を考えて、そのままタイトルにしたんです。

_今作はBeckやRadioheadとも作業したドリュー・ブラウンをプロデューサーに迎えていますが、彼との作業はどうでしたか?

アメデオ:今作で初めてドリューと仕事をした訳なのだけど、今回のレコーディングは、2つのスタジオを使っていて、今までたくさんの作品(23、Penny Sparkleなど)を録音してきた、ニューヨークのThe Magic Shopと、ミシガンにあるKey Clubと言うスタジオで録音したんだ。ドリューはすごく良いエネルギーを持っているプロデューサーで、いろいろなことに新しく挑戦したよ。例えば一つの事にもの凄く集中して作業をした日もあれば、ほとんど何もしないで、まったりと取りかかった日もあったり、そんな今までとは全然違うやり方で作業をしていって、初めて一緒に作業したけれど、彼の事をよく知るきっかけにもなったレコーディングだったよ。

_そう言った新たな手法でレコーディングしてみて苦労して事等ありましたか?

アメデオ:たくさん困難な事もあったし、くじけそうになった事もあったのだけど、特に一番辛かったのは最後の方の作業で、皆疲れてくるし、自信も無くなったり、何をやっているのかのフォーカスが合わなくなってきちゃったりとか、疑心暗鬼になりかけたこともあったけれど……。また次の日に自分たちのやってきた事を信じ直してみたりいてみて、そういう辛かった事や大変だった事を乗り越えたりしたんだ。結局いつも思うのだけれど、アルバムを作ると言う事は、そういった困難をたくさん乗り越えて出来るんだなって実感したよ。

_そんな中でどのように曲を作り上げていきましたか?

シモーネ:作曲と言う事に関しては、皆で力を合わせてやる事が多かったかな。アメデオがギターの進行やリフを考えて、カズがそこにメロディーを付けたり、僕がリズムをのせて曲を作りあげて行ったりするのが僕たちの中では一番自然な形なんだ。勿論中には、みんなでメロディーから歌ってみて、出来たメロディーにすぐにリズムを乗せて一気に完成させてそのままレコーディングした曲もあるし、毎日何度も再構築を繰り返して、1ヶ月くらいかけていろんな形に変化させてみたんだけど、結局使われなくなっちゃったって曲もあったんだ。でも、そういう風に、努力して作ったけど収録されなかった曲だって決して無駄じゃなくて、次のステップへ行くための過程だって思っているよ。まあとにかく、すぐ完成させちゃうとか、長時間かけてみるとか、いろんな手法で作り上げていったかな。

_これまでの作品、特に前作と今作を比較してみて、また違った印象を受けましたが、どのような変化がありましたか?

アメデオ:今までの作品も、勿論前作も、僕たちの作品ってあんまり似た様な物は無いと思うんだ。常に新しい事をしているし、毎回いろんなアプローチをしてる。今回に関しては新しいプロデューサーだったり、一緒に作品を作る皆が新しいメンバーだったから、その影響だったり、作っている時の日常生活とかその他の些細な事からの影響とかも勿論あるとは思う。だけど、とにかく、常に新しい事をやろうと思っているから、自分たちの作品を比べたりする事も無いし、前の作品と似た様な物を作ろうって考えも絶対出ない。常に自分たちで真新しい何かを、また作ろうと挑んでいるから、そこで変化が生まれるんだ。

_では、また新しいBlonde Redheadとしての作品を作り上げてみて、その中で特に手応えを感じている曲を教えてください。

シモーネ:どの曲にも優劣をつけるつもりは無いけど個人的には「Dripping」と「Defeatist Anthem(Harry and I)」がお気に入りかな。

アメデオ:僕は最後の「Seven Two」が好きかな。ただ、自分たちで曲を「どれが一番だとか決める事は無い」って勿論みんな心の内では思いつつも、ヒットしそうな曲が出来た時とかは「この曲で家が建てられるね!」とか「家の犬を大学に通わせられるね!」ってジョークを言い合う事もあるかな(笑)。でも、まだ自分たちでは手応えを感じたり、満足のいく曲が作れていないと思うんだ。だから「次の作品ではそういう曲を作ってやろう!」って気持ちを常に持って挑んで、これからも音楽を作っていこうと思うよ。

取材・文:武部泰彦
1993年生まれ。青山学院大学文学部在籍。インディーポップやシューゲイザーを好む。

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Artist: Blonde Redhead
Title: Barragán
Number: Kobalt / Hostess
Release date: 国内盤10月1日予定、輸入盤9月2日

1. Barragán
2. Lady M
3. Dripping
4. Cat On Tin Roof
5. The One I Love
6. No More Honey
7. Mind To Be Had
8. Defeatist Anthem (Harry and I)
9. Penultimo
10. Seven Two
(*日本盤、ボーナストラック、歌詞対訳、ライナーノーツ付予定)