INTERVIEWSApril/03/2015

[Interview]LIZ × tofubeats × Pa’s Lam System – “CAND¥¥¥LAND”

3月末、〈Mad Decent〉のシンガー、LIZの来日公演が恵比寿LIQUIDROOM、代官山AIRで行われた。Lidoがプロデュースした楽曲「Y2K」が収録されたEP『Just Like You』のフリーリリースや、今までのポップ・ミュージックに囚われないスタイルで多くのリスナーを魅了する彼女だが、昨年10月にリリースされたtofubeats『First Album』に収録された「CAND¥¥¥LAND feat. LIZ」の登場は、彼女の存在をますます日本に認知させるきっかけとなった。Trapサウンドとパラパラの融合を標榜し、LIZによるソウルフルな歌声が重なったこの楽曲は、ネットレーベルのリスナーだけでなく、様々な人々に衝撃を与えた。今回は、LIZの来日を記念し、tofubeatsと、2015年1月にリリースされた『First Album Remixes』に収録され、クラブリスナーを熱狂させた「CAND¥¥¥LAND feat. LIZ – Pa’s Lam System Remix」を制作したPa’s Lam Systemを迎えた3組による鼎談企画を急遽実施。3月26日の恵比寿LIQUIDROOMの公演の直前、楽屋にて行った。来日公演は終了してしまったが、このインタビューが彼女らのこれからの活動を追う一つのきっかけとなれば幸いだ。

__来日公演、おめでとうございます。日本はどうですか?

LIZ: 日本は大好きで、来る度に家に戻ってきたようなアットホームな気分になるの。日本のファッションに影響を受けて音楽を作ることもあるから、この国は心地いいし、みんなが恥ずかしがらずに色々なファッションをするから、見ていてもとっても楽しい。街を歩いていると、色々なものがカラフルだったり、面白い標識があったりして、凄くポジティブな印象がある。それがすごく心地いいの。まるで、自分の頭のなかにあるイメージが街の中にあふれているみたい。

__それは例えば、渋谷とか原宿とか?

LIZ: 日本に初めて来たのが5年前で、その時原宿に初めて行ったのだけど、今日の朝もまた原宿に行ったの。あと、(銀座の)ドーバーストリートマーケットに行ってナイキで買い物をしたわ。

__日本の音楽のカルチャーやアーティストについてどう思うかお聞きしたいです。

LIZ: ええ、日本のカルチャーにはとてもインスパイアを受けているし、勿論音楽だってそうよ。例えば、きゃりーぱみゅぱみゅみたいなファッション、音楽のダイナミックさはとても面白いと思う。とても可愛いよね。あと、増田セバスチャンのアートワークの世界観が好きで、次の私のシングルのアートワークは増田セバスチャンにお願いしたいと思ってるの。

__昨年、LIZはtofubeatsと「CAND¥¥¥LAND」(tofubeats『First Album』収録)を制作しましたが、彼と一緒に音楽を作ってみてどうでしたか。

LIZ: tofubeatsとは、最初はTwitterでやり取りをしていたの。

tofubeats: (LIZには)デモをいくつか送ったよね?

LIZ: そう、それでいくつかトラックを貰っていたのだけど、その中に「CAND¥¥¥LAND」があったの。この曲はR&Bっぽい雰囲気もあるし、楽しくて踊れる展開もあって、作っていてとても楽しかった。

__「CAND¥¥¥LAND」の最初の展開は、パラパラという日本で昔流行ったダンスを取り入れたものなんです。音楽はユーロビートを日本っぽくしたものなんですけど。

tofubeats: (パラパラの踊りは)ちょっとVoguing(Vogueのダンススタイル)っぽいよね。

__(パラパラを踊っている動画を見せる)

LIZ: わあ、凄いキュート!普段、アメリカでのライブの時などはダンサーを2人付けているのだけど、今回日本には連れてこられなかったの。でも、これを彼女たちが踊ったら面白いかもしれない。

tofubeats: (「CAND¥¥¥LAND」の)振り付けビデオがあるので今度踊ってほしいですね。

__動画、あるんですか(笑)。

tofubeats: 公開はしていないけど(笑)。

__LIZは、最近だとRyan Hemsworthなど、今まで様々なアーティストとコラボレーションをしてきたと思うのですが、コラボレーションにどういう楽しみを感じますか。

LIZ: コラボレーションは、自分の中でもちょっと違ったスタイルを見せることが出来て、そこから自分の本当のスタイルのファンになってくれる事もあるから楽しい。一緒に音楽を作ってくれること自体もとても嬉しい。

__tofubeatsさんにもお聞きしたいと思います。「CAND¥¥¥LAND」に実際声が乗ってどうでしたか。

tofubeats: もうめちゃくちゃ嬉しかった。前からLIZのEPは聞いていたので。今回は、LIZのEPに入っていたどれっぽくもない曲を出来たので凄く嬉しかったです。

__確かに、結構違うカラーを感じました。やっぱりパラパラが入ってくる感覚が凄く面白かったと感じたのですが、またこういう曲を作ろうという考えはありますか。

tofubeats: でも、何曲も作っちゃうと「パラパラの人」になっちゃうので。折を見てまたパラパラをやりたい。前のリリースパーティーの時だけかけたパラパラの音源があるんですけど、それもまだ寝かせてあるんで、またいつか、もっと変な形で出せればと思います。

__楽しみにしています。Pa’s Lam Systemの皆様も、今回「CAND¥¥¥LAND」をリミックスしてみてどうでしたか。

tofubeats: 絶対に「CAND¥¥¥LAND」がよかったんですよ、やってもらうのは。

LIZ: このリミックス大好き!とてもカッコいいわ。

じゅうでん(Pa’s Lam System): 僕達の曲は、まず声があってのものが結構多いので。R&B調のものとか、特にFuture Bass的なものも結構作っていたし、(「CAND¥¥¥LAND」のリミックスは)作りやすいな、って印象が最初にあって。

ゆんぼ(Pa’s Lam System): いつもはサンプリングCDから外人が歌う音源を探してきて組み立てるけど、今回は、前から大好きだったLIZのアカペラが届いたので、「いただきっす」みたいな(笑)。

__今回のコラボレーションに加えて、tofubeatsさんは、昨年放送のDiplo & FriendsにMIXを提供されたり、Mad Decentのカルチャーがどんどん日本のインターネットのカルチャーと接近しつつあるように感じます。改めて、Mad Decentというものについて感じるものがあったりしますか。

tofubeats: 俺からすると正直な話、BBC Radio 1Xtraに出れたのは、去年Paul Devroが僕のDJを観てくれたからなんですけど、その日のセットが本当に最悪で(笑)。みんな「良い」って言ってくれたんですけど、俺はもう「最悪だ」「雑にやりすぎた」と。そうしたら後から(Paulから)連絡が来たから、もう何が良いんだか分からない(笑)。でもラジオのミックスは頑張って作りました。全部コーヒー飲みながら喫茶店で作って。

__Pa’s Lam Systemの皆さんはどうですか? やはりMad Decentは憧れであると思うし。

tofubeats: うん、こっちの方が憧れ強そう。スターだと思うし。

ゆんぼ: 僕らは、古くはRuskoから辺りでクラブ・ミュージックに入って……。Mad Decentもそうだし…。やっぱり流行りを作るのが上手いっていうか、最先端で、且つアガるし流行る音楽を一番に出すみたいな。常に流行の先端を先取りするのが上手いレーベルだな、というのが、クラブ・ミュージックを聴き始めて一番に思ったのと、あとはロゴがカッコいい(笑)。

__ロゴやデザインの壊し方も上手いですよね。ロゴが逆さまに印刷されたキャップが出たりとか。

ゆんぼ: そう、デザインとか、ヴィジュアルとか……。

tofubeats: ちゃんと現地のMerchantから買ってるの?

ゆんぼ: ちゃんとインターネットのMad Decentのストアで、送料は割り勘で、って(笑)。新作が出るとFacebookに新作情報が上がるから、「今シーズンの新作がヤバいから買おう」って感じで。

tofubeats: 東京の僕らくらいのDJはみんなMad Decentの服を着てる、っていう。

__Pa’s Lam Systemの皆さんは明日共演ですからね。

ゆんぼ: まあ……いつも通りに(笑)。でも「LIZヤバい!」ってなって一年足らずで共演になったのはびっくり。

__Pa’s Lam Systemもカッコいいから、早くあっち側からも見つかって欲しいですね。まあ見つかってるとか思うんですけど(笑)。

ゆんぼ: トーフさんがバチバチに全面に出てくれて、かつ僕達のことも教えてくれる流れがあるのは日々感謝してる。

tofubeats: こう、パズラムを投げた力で俺がその場に留まる、みたいな感じになれば。

__(笑)。

tofubeats: banvoxとかパズラムとかはビッグチューンが作れるから。僕はビッグチューンを作る気は無いし、作れないから。……(僕は)手数みたいな、ね(笑)。やっぱり(パズラムは)派手なのが作れるから。Paulも「bit by bit」が好きだ、って言ってて。海外に曲単位でわかるやつが作れるパズラムは凄いというか。俺は、「ミックスがなんか謎だな」ってのはできるけど、「コレ!」みたいなのはできないから、(パズラムは)もっと出来ると思うしやってほしい。

__その言い方はとてもしっくりきます。何というか、EDM的な売れ方をしてほしいというか。

tofubeats: でも、(パズラムは)オルタナティブ。

__そう、オルタナティブで。やっぱり尖っていることがカッコいいというか。

ゆんぼ: EDMブームに入ろう、という気持ちは、今まで一度も無いし、それっぽいものを作ろうと思ったことも無いし……。

__今後はどういうふうにやっていきたいですか。

ゆんぼ: うーん、やっぱりその時その時で。

しゅんいち(Pa’s Lam System):その時で、やっぱりカッコいいやつを。

__ありがとうございます。それでは、お互いに何か質問はありますか?

LIZ: 私は、まずは2組のライブを観ないことにはね!

ゆんぼ: (LIZがセーラームーンのアクセサリーを持っているのを見て)セーラームーンだと誰が好き?

LIZ: ピンク色のキャラが好き、やっぱり「ちびうさ」とか。ライブだと、セーラームーンのシーンの映像を使ってヴィジュアルを作ったりしているの。セーラームーンは、日常的な生活もしているけれど、スーパーヒーローにもなれるというところに共感が出来るの。

__他に、日本のアニメで好きなものはありますか。

LIZ: 『ベルサイユのばら』のキャラクターに似ているって友達に言われたことはあるわ。

tofubeats: 「ベルばら」は宝塚でしっかり観てますよ(笑)。あと、言える範囲でLIZの次のリリースのプランが聞きたい。

LIZ: ええ、新しいシングルは準備しているわ。「Rule the world」っていう曲。

tofubeats: プロデューサーは誰?

LIZ: SOPHIEよ。日本から帰ったら直ぐにビデオを撮って、4月中には出す予定。

__アルバムのプランはありますか?

LIZ: いくつか曲を出すプランはあるけれど、アルバムは今年中に出せるといいなと思ってる。でも、EPとかが先に出るかも。Wave Racerとコラボレーションした楽曲も、今回のツアーで歌う予定よ。

__えー!

tofubeats: (Pa’s Lam Systemに)やっぱり、お願いしたほうがいいよ、リミックス。

__僕もLIZとPa’s Lam Systemで一緒に何かやって欲しいと思います。

LIZ: ええ、是非!

ゆんぼ: LIZは青春時代に、どんな音楽を聞いていましたか。

LIZ: NSync、Britney Spears、Mariah Careyとかのポップ・ミュージックを良く聞いていたわ。

tofubeats: そこからどうして2stepとかが好きになったんですか?

LIZ: Craig Davidとかも聞いていて、そういった音楽には元から興味があったの。私はポップ・ミュージックも好きなんだけど、それをもっと今っぽく色々なことをしていきたいというのがあった。PaulがA&Rになって、Mad Decentっていうクールなものに入っていく中で、サウンドがそういう風に成長していった。だから、ベースはポップ・ミュージックで、それをどう今っぽく表現するか、というところでそこに辿り着いたの。

__最後に一つ。Mad Decentのカルチャーと、日本のMaltine Recordsのカルチャーがあって。そういったものの中心にあったのが、やっぱり「インターネット」という存在だな、と思ってて。そういうもののお陰で、今回のように海を越えてコラボレーションが出来るようになったりして。その関わりにおいて、音楽にどんな変化が出てくると思いますか。

LIZ: 色々なアーティストがツアーで色々な場所に出ているけど、そういう中でインターネットでコミュニケーションが取れて、曲も作れるし、実際、今日みたいに、作った後に本人たちに会う機会も多いの。そういう手段もあるってことが、よりコラボを実現させやすくなっていると思っています。

tofubeats: 僕も大体そういう感じなんですけど、僕らは極東にいるので。で、僕が病気で飛行機に乗って行けないので、だから助かってる(笑)。

__リスナーにとっても、アーティストが無料で出した音源を手軽に聞けるような風になってきているように思います。実際にPa’s Lam Systemはフリーで音源を多く配信していますが、そこに何かこだわりがあったりはしますか。

ゆんぼ: インターネットで、っていうこだわりは特に無いけれど、クラブ・ミュージックを発表する場として一番手っ取り早いのがインターネットだから、それを使ってるっていうのがあって。例えば、郵便でMDを送るのが流行ってたらそれを使ってたと思うし。

tofubeats: 「電車みたいなもん」ってよく言うんですけど、それが停まってるから使うっていう。それかバスやったらバス乗るし。

ゆんぼ: あったものは使わせてもらいます、っていう感じで。あと手間がかからないから素人でも出しやすいっていうのがあって、今後、そういうのも普通になってくると思う。例えば100万人の音楽を作っている人がいて、1曲ずつインターネットに上げていたら、その100万曲の中で「ヤバい!」ってなる1曲を見つけるのはもっと大変になると思うし、逆にそういう1曲を探す楽しみももっと増えてくると思う。ワールドワイドに情報が速攻で手に入るようになるのは電脳化とかしないと無いかもしれなくて、今のところインターネットが最速の手段だから、今後もそこで膨大な動きがあるんじゃないかなあ、と。

__ありがとうございます。では、LIZから日本のファンに一言頂いていいですか。

LIZ: 東京でライブ出来るのがとっても嬉しい。外を歩いていたら、路上でファンの女の子が声をかけてくれて、そういうことがあまり無かったからとても嬉しかった。日本のファンがもっと増えてくれたらもっと嬉しい。

tofubeats: (サポート出来るように)頑張ります。

(2015年3月26日、LIQUIDROOMにて)

Photo by 松島豊裕
Translation by 本名光輝

インタビュー・文:和田瑞生
1992年生まれ。UNCANNY編集部員。ネットレーベル中心のカルチャーの中で育ち、自身でも楽曲制作/DJ活動を行っている。青山学院大学総合文化政策学部在籍。