- INTERVIEWSNovember/06/2014
【Interview】HyperJuice (fazerock & hara) – “TRAPPIN RIDDIM”
2013年の結成当初から、クラブからインターネットまで、さまざまなシーンから注目を浴び続けたfazerockとharaによるサウンドユニット「HyperJuice」。日本のネットレーベル〈Sabacan Records〉(通称:鯖缶)からリリースされた『Lil’ Sabacan EP』、同じく「鯖缶」より、ラッパーのMINTを招き入れて制作されたMINT×HyperJuice『Rehash Of The Dead EP』に収録された楽曲たちは、どれも時代性を取り入れた攻撃的なダンスミュージックであり、そして国内では類を見ないほどの高いレベルのトラックで、多くのクラブリスナーやアーティストを沸かせた。今や、東京の最先端のクラブシーンに触れている人々の中に、彼らの名を知らないものはいないだろう。
そして、10月29日、時代を揺るがし続ける彼らの新作EP『TRAPPIN RIDDIM』が〈Faded Audio〉よりリリースされた。日本のクラブシーンの今を放送し続けるインターネットラジオ局「Block.FM」で様々なMCによりヘビープレイされた表題曲「TRAPPIN RIDDIM」や、Jinmenusagiによる挑発的なラップが高速のJukeビートに重なる「BADMAN DRUMZ (feat. Jinmenusagi)」が収録された今作は、iTunes Storeにてリリースされると同時にダンスチャートでは1位に到達、総合ランキングでも上位に顔を見せる程の盛り上がりを見せた。
UNCANNYでは、クラブシーン、ひいては音楽シーンにおいてこれからの指標となるであろう彼らの声を聞くべく、インタビューを行った。
_『TRAPPIN RIDDIM』のリリースおめでとうございます。Block.FM等で大変な話題となった今作のEPですが、リリースからしばらく経過しましたが、周りの反響はいかがでしたか。
hara: iTunes StoreではEDMが多いダンスってジャンルでリリースした事もあって、今まで僕達の事を知らなかった人達に届けられた実感があります。沢山の方に聴いてもらえて嬉しいです。
fazerock: ほんとサポートしてくれた方々には感謝しかないです。
_それぞれの楽曲は、どのようなものをイメージして作られましたか?
fazerock: ハードテクノにハマっていて(笑)。 更にアーメンの連打だったりFunkyノリを重視しました。
hara: 2人の中でその時熱かった音楽が形になっています。今回のEPはGrime、Funkyの影響が大きいです。
_M-1「TRAPPIN RIDDIM」は4つ打ちの跳ねたビートとグライムを感じさせる変則的なビートが共存する、既にフロアアンセムとなっている楽曲です。M-2「BLOW YOUR MONEY」も非常に刺激的な作品だと感じました。この2作はどのように制作を進めていったのですか。
fazerock: 「TRAPPIN RIDDIM」の出来た経緯が面白くて、実は僕がUSTでharaのDJを見ていた時に思いついたんですよ。たしかelemog(秋葉原MOGRAで毎月開催されているイベント)だったかな..。すぐラフが出来て、そこから二人で詰めて今の形になりました。
hara: そうそう、elemogってパーティーにソロで出演してたんです。あの時は高速でラップが入るGrimeに〈Patterns〉でリリースされてるようなファンキーなハードテクノをガンガン突っ込むってセットをやってたんです。それを聴いたfazeがその日のうちにラフ作って。そのラフが形になったのが「TRAPPIN RIDDIM」ですね。
fazerock: 「BLOW YOUR MONEY」も実はすんなり二人の意見が合致して..。
hara:「BLOW YOUR MONEY」は完成したの最速だったんじゃないかな?
_M-3「BADMAN DRUMZ (feat. Jinmenusagi)」では、ラッパーであるJinmenusagiを招いて楽曲を制作されましたが、このコラボレーションに至ったまでの経緯を教えて下さい。
fazerock: 前にMOGRAとかで何回か一緒にやったりしていて、単純にファンだったので今回声をかけました。
hara: 僕がJinmenusagiくんと同い年なんですけど、同年代のMCで1番かっこよかったからです。ずっと一緒にやってみたかったけど中々機会がなくて。でも今年の春にネットで話題になった#FightClubJP(ラッパーMomentによる音源投下から開始した、インターネット上でのムーヴメント)でJinmenusagiくんが出した曲が凄すぎて「何も決まってないけど1曲やりませんか?!」って即連絡しました。
fazerock: 実はこのトラックが二転三転して今の形になっていて、声を貰ってからそれに合わせて作り変えたり。最初はかなりメタルだったよね(笑)。
hara: メタルだった。メタルJuke。「BADMAN DRUMZ」の後半は結構メタル感残ってると思う。
_HyperJuiceはDJ(ライブ)活動も非常に活発ですが、今までも様々な現場を体感してきたと思います。そういった活動が作品や方向性に与えた影響というのはありますか。
fazerock: かなりありますね。
hara: ある。「TRAPPIN RIDDIM」が出来た経緯もそうだけど、現場から学ぶことって凄く多いです。
_今まで様々な現場を体感してきた中で、今のクラブシーンをどのように考えていますか。また、どのようにしていきたいと思っていますか。
fazerock: 正直今見えてる範囲もまだ狭いし、どうこうしていくってよりはもっと色々見て学びたいかな。
hara: 良くも悪くもルールが無くて僕は好きです。自由。自由だからこそもっともっとかき混ぜたいです。
後は今まで学んだ事はどんどん下の子達に伝えていきたいですね。僕達もまだまだ駆け出しなんで、あんま偉そうなこと言えないですけど。
_HyperJuiceは、先日もPa’s Lam Systemらとツアーを行うなど、地方での活動も活発に行われています。地方のシーンを見て刺激を受けたことはありますか。
fazerock: みんなまじでDJうまい!!!
hara: Pa’s Lam Systemと周ったツアーはベースミュージック好きな人達のパーティーが多かったんですけど、今までその土地に根付いてない事をやってるから混沌度が東京の比じゃない。刺激受けまくりです。
fazerock: そうそう、どの地方も勢いというか熱意みたいのがすごくて、正直東京も負けてられないなってたくさん刺激をもらいました。
_HyperJuice結成の経緯を教えて戴けますでしょうか。
fazerock: 最初めちゃくちゃビーフだったよね(笑)。
hara: マジで仲が悪かった。会っても絶対挨拶しなかったし、僕。でもMOGRAって箱の店長からベースミュージックとトライバルのパーティー(HEAT-TECH)やらないかって誘われて、そこにfazeも居たんです。それからお互いを認め始めて、「2人で組んだらどこまでいけるんだろうね」って話から結成、今に至ると。
_HyperJuiceのコンセプトとして考えている要素や、お互いのソロ活動とは異なって意識している部分はありますか。
hara: 特にコンセプトとかは無いんですけど、自分のやりたい事とか良いと思ってる事を素直にアウトプットしてあげるのがオリジナルだと思ってるから、それを考えるのが1人か2人かの違いだけです。
fazerock: カッコイイと思ったことをそのままやってるだけです。
_お互いのサウンドのルーツは何でしょうか。それは、HyperJuiceとしての音楽や活動においてどのような点に影響を与えていますか。
fazerock: Breakcoreだよね。
hara: Breakcoreだね。〈Rephlex〉とか〈Warp〉とか〈Planet-μ〉とか〈Peaceoff〉とか〈ROMZ〉とか〈19頭身〉とか〈MURDER CHANNEL〉とか〈Shansui〉とか「FUCKOKA」とか「MIDI_sai」とか挙げてったらきりがないけど、一言で言うならばBreakcore。
fazerock: 元々おれはバンド畑で大学1年までバンドをやっていて、それまでクラブミュージックってほぼ全然聴かなくて。Breakcoreで一気にやられましたね。当時同じ大学だったmismiにEVAコンピを教えてもらって、そのあたりでネットレーベルの存在を知ってあとはもうどんどんのめり込んで行きました。
hara: 中学の頃Aphex TwinとかSquarepusherが大好きで、mixiで色々コミュニティ漁ったり、myspaceを掘ってたらBreakcoreってジャンルを見つけて。速い音楽が好きだったから夢中で聴いてました。Breakcoreってジャンルは定義が定まってなくて、ヨーロッパのRAVEミュージックからディズニーチャンネルでプレイされてるようなポップスまでサンプリングしてて、本当になんでもありなんです。その頃に固定概念みたいなのぶっ壊されちゃったので、今のスタイルが生まれたと思います。日本でそういう音楽聴いてる人をで探してたら今のネットレーベルの最初期に辿り着いて、仲間が一気に増えたのも大きい。fazeとも出会ってなかったと思うし。
_『TRAPPIN RIDDIM』以降の作品はどのようにしていきたいと考えていますか。
fazerock: 作りたいものを作っていこう!笑
hara: 一回アルバム作りたいです。CDで。今回は作風の近い曲を集めたけど、次はもっとバラエティに富んだ物にしたい。
_HyperJuiceの登場は、都内の若手シーンに重大な影響を与えていると感じています。若手DJやトラックメイカーに対して、メッセージがあればどうぞ。
fazerock: 正直おれらも若手のつもりだったから、どんどん下の世代が出てきてちゃんとしなきゃって気にはさせられました。
hara: みんなでブチ上がってこうな!
fazerock: 楽しいことだけして行こう!!
_逆に、HyperJuiceのお二人が刺激を受けている同世代のアーティストや、若い世代のアーティストがいたら教えて下さい。
fazerock: 同い年だし、やっぱtofubeatsは意識しちゃうよね..。
hara: トラックメイカーで言えばPa’s Lam Systemは凄すぎると思う。あとPARKGOLFも。
fazerock: あとはCarpainter。
hara: Carpainterは最高。愛してる。兄のSeimeiからも刺激受ける事多い。早く(アメリカから)帰ってきて欲しい。
_昨今は、ネットレーベル周辺のカルチャーとクラブカルチャーの距離がどんどん近くなっているように感じますが、HyperJuiceはそれらを繋ぐ重要な架け橋の一つになっていると感じます。今後は、インターネットと現場というのはどう関わっていくと思いますか。
hara: かっこいい人や音は現場にもネットにもいるから、変な偏見さえ無くなれば自然と交わっていくと思います。
_HyperJuiceのこれからの展望を教えて下さい。
fazerock: ハイパージュース新メンバー大募集!ご応募はこちらから(笑)!!(ここでテロップが下に出てくる) ってのは割りと本気で、ほんともっと色んなことが出来るようにしていきたいです。
hara: MC、VJ、照明、ダンサー、ターンテーブリストなど色んなメンバーを増やしてHyperJuiceのプレイでもっとショーが出来るようになりたい。フェスも出たい! あとは来年アルバムリリース。
インタビュー・文:和田瑞生
1992年生まれ。UNCANNY編集部員。ネットレーベル中心のカルチャーの中で育ち、自身でも楽曲制作/DJ活動を行っている。青山学院大学総合文化政策学部在籍。