ARTICLESNovember/01/2014

Featured | Sugar’s Campaign – Interview by 関西ソーカル

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渋谷のカルチャー祭典「シブカル」のテーマソングにも抜擢され、今最も勢いのあるSeihoとAvec Avecによるポップユニット、Sugar’s Campaign。そんな彼らの9月にCDシングルとして発売され、スマッシュヒットとなった「ネトカノ」のリリースパーティが11月2日に東京、3日に大阪で行われる。

そこでSugar’s Campaignは、重大発表を行うとのことだが、今回、雑誌『関西ソーカル』とUNCANNYによる特別企画として、『関西ソーカル』にて昨年9月に行ったインタビュー記事の一部を掲載することとした。

Sugar’s Campaign Interview (2013.09.28)
インタビュアー: 神野龍一 & black grass G

_最初に、Sugar’s Campaignがいまのメンバーになった経緯から伺いたいと思います。

Avec Avec(以下A):シュガーズは、もともと高校時代に作ったバンドで、最初3ピースのバンドでした。当時はblurみたいなポップ寄りのロックをやっていて、自分は元々ウエスト・コーストのロックとかが好きで、americaとか。あとXTC、トッド・ラングレンとかバカラックみたいな。自分はドラムとPCを担当しながら、クリックに合わせてドラム叩いたりっていうポジションでした。当時はバンドとして2009年の京都のボロフェスタとかにオープニングアクト的に出たりしてて、そこを仕切ってるLive house nanoのもぐら店長にお世話になって大阪や京都でライブ活動してた。それを続けていたんだけど、その後メンバーの就活などでグループの揃った活動ができなくなってきて。自分は大学も辞めて音楽やりたかったからバンドとしてシュガーズをやりながらも、一人DTMでremixしたり曲をネットにあげてたりしてって活動を並行してた。その後バンドのメンバーが就職で抜けて一人での活動のほうを頑張ろうかと。ちょうどそのころチルウェイブがsub popから出たりしていたことで、バンドでやりたいpopなものとDTMでやってたことがつながってきたみたいなシーンがインディーのムーブメントとして起こってきてそこに共鳴して。Seihoとは元々大学のサークルが同じで。サークル内とかではよく一緒にバンドやユニットをやってて、カラフルパンダとか岡村靖幸のコピバンやったりとか。あと、YMOとかダンス☆マンとか(笑)あらゆるバンドを。

Seiho(以下S):2009年の大阪の見放題っていうフェスでベースが仕事の都合で出れなくなって、そこにサポートで自分が参加したのがシュガーズのメンバーとして参加した最初で、その時はまだ代打扱いで。

A:3人でやってたときから時々参加できないメンバーの代わりをやってて、南船場の地下一階でやったとき(風の穴vol.12/2010年9月25日)なんかは二人とも来られなくなって(笑)そこが、自分とSeihoの二人だけでやったスタイルの最初。そのイベントはtofubeatsやokadadaも一緒に出てていま振り返るとすごいなって。tofu君とかはその前にさっき言ったボロフェスタで初めて会ってて。当時は彼は大学に入ったばっかりでDJ中にCDJが壊れたりして(笑)。

S:で、2012年に2人で本腰入れてやるって決めてから、「ネトカノ」をつくったんすよ。これはもう僕が入る前からバンド時代にほとんど完成してて、あと音色のアレンジと、歌詞はまだ全く出来てなかったからそれをしっかり考えたっていうのが最初。

A:それと、とりあえず曲つくろうってなって、4曲くらい作ったんですよ。二人でやるのはいいにしても、何も活動できないし、ライブもできへんから、とりあえずなんかネットにアップロードして世の中の反応をみてみようと。

S:実は「ネトカノ」は、その時は他の曲をしっかりやりたいからそのためのつなぎとして出そうってくらいの意識で(笑)これを出して反応待ってる間に他の曲をつくろうと。歌詞書いて音色決めて、曲として完成させてから自分がPV撮って編集してじゃあこれで出すぞってなって、もともとは「T.O.Y.S」って名前で、よし出すぞってなった直前に全くBibioが全く同じタイトルでEP出して、被ったなどうしようかってskypeでふたりでやりとりしてるときに「ネトカノ」ってタイトルが浮かんで、これがええんちゃうんかってなって、発表して。それから3日したらtomad君に「今度Dommune出るから音源送って」って言われて送ったら、Dommuneで12時またぎでかかった。

A:そもそも最初はtakumaって本名でアニソンとかJ-POPのリミックスとかを作ってて、Sugar’sの音源もSeihoにいろんなレーベルに送るようアドバイスされて、あらゆる海外のレーベルとかに送ったらmushから連絡が来て「君の曲は良かったけども日本語だとちょっとね、君のSoundCloudの曲がいいからこれをリミックスしてよ」って話になって、brothertigerの音源が送られてきて、それが2011年の12月リリースされたのがAvec Avec名義での初仕事になった。その後、その夏に「やけサマ」でtomad君にあった時にリリースを依頼されて、それが「おしえて」になってっていうのがソロ名義での活動の流れですね。で、「ネトカノ」出してからもう2年経つけど、ほとんどライブしかしてない(笑)ライブでやってる曲はもうその時点で完成してて、まだストックされてる曲も山ほどあるけど。

_曲の制作はそれぞれでやってるんですか?

S:最初は、お互い一曲づつだして。

A:こういうのやろうか、みたいな。

S:僕は今のループっぽい曲なんかを作ったりして、でも最終的なボーカルのラインはタクマ(Avec Avec)がやる。

A:トラック自体は一緒につくることはあんまりなくて、そのかわり曲のテーマとか世界観とか歌詞とかを決めるのは一緒にやる。

S:歌詞は一緒に、樟葉から枚方くらいまでまでずっと歩きながら(笑)。

A:歌詞作ってるときは本当楽しい。

S:この時の高揚感は半端ない(笑)。

A:「この曲世界一良いんちゃう?」みたいなこと言いながら(笑)。

_歌詞はどのように作ってますか。以前、楽曲よりもまず曲のコンセプトを綿密に話し合うということきいたんですが。

A:最初の仮歌の段階ではテキトー英語みたいなものをメロディーに当てはめてて歌って。

S:語感を重視してて、ネトカノの時は「トゥ〜アライッ♪」みたいな語感がいいなって思ったら、そこに近い言葉を当てはめるみたいな作り方。その後、「放課後ゆうれい」あたりになってから、もっと自分たちのテーマとか世界観みたいなのをもっと言語化していこうっていうふうになってる。

A:あと視点が男の子なのか女の子なのか、大人なのか子供なのかっていうのはすごい毎回考えますね。大人と子供も結構重要。

S:そう、それと大人と子供。大人が描いてる子供の夢と、子供が夢見てる大人への憧れとか。男から見た女とかもそうですけど、視点が違うから想像出来得ない部分が多いんすよ。男が思っている女の子の歌を男が歌っても、それは全部男の妄想の女でしかない。それが「ネトカノ」も含めてシュガーズの歌のイメージになってます。

_そういう部分で、やっぱり岡村靖幸の影響はすごいありますか?

A:もちろん靖幸はふたりともすごい好きで、靖幸の持ってるセクシャリティの錯綜している感じとか、気持ち悪いけどかっこいいとか、大人か子供とかわからない感じとかはすごい重要だと思ってて。

S:岡村ちゃんもよく歌詞に「ランドセル」とか「水たまり」「レインコート」みたいな子供をイメージする言葉をよく使うけど、それはすごい性的なメタファーとして使うことがすごい多いんですよ。その想像力っていうのは子供が持ち得ないものじゃないですか。そういうイメージの使い方の影響はすごいあるかも。

A:それプラス音の部分でもそうで、特にネトカノの場合とかもそうなんですけど、僕の中での音のバランスを均等に配置しようっていうのがあって。例えば大人っぽい音と子供っぽい音とか、これは具体的にはメロディーとコードに黒人音楽っぽい大人な要素とバブルガムポップスとかJ−POP的に代表される子供っぽい要素をバランス良く置こうと。元々白人のやってる黒人音楽、ブルー・アイド・ソウルとかスタイル・カウンシルみたいなのや、黒人で言えばスティービーワンダーみたいなのが好きっていうのもあって。例えばネトカノのAメロなんかはメロディーの一節ごとにブルーノートが入ったような黒人っぽいメロディーと、和音に沿ったアルペジオみたいな白人っぽいメロディーを交互に入れてて、あんまりアダルト過ぎるのも子供過ぎるのも嫌やから、大人っぽさと子供っぽさのバランスをとろうとしてますね。

S:こういう、メロディーのバランスを、天然で作り出せるのがタクマ(Avec Avec)のすごいところで、後からメロディーを分析したらここがダイアトニックで白人っぽいとか、半音とかブルーノートやセブンスとかで黒人っぽいって説明はできるんですけど、それをひとまとまりのメロディーラインに乗せていけるのがタクマのメロディーセンスの凄さなんすよ。

A:僕はそういう風に箱庭に物をどんどん配置して行くってタイプの曲の作り方をしてて、Seihoは音の志向としては自分とは逆で、無駄な要素をどんどんそぎ落としていくタイプなんですよ。最後まで切り詰めて切り詰めて残ったの本質で勝負するっていう。

_ライブでやっている歌ものの曲が他にも何曲かありますよね。

S:そうですね、歌ものが3、4曲あります。まだ仮タイトルなんですけど「エンドレスナイト」「あの有名な映画のような恋がしたい」「チャイナドラゴン」とか(笑)でもすごい。チャイナドラゴンは中華料理屋の女の子に恋をしてっていう、なんからんま1/2みたいな世界観の曲。

_今はざっくりタイトルが決まってる感じなんですね。基本的にボーカルはバンド時代の人?

A:そうですね。アキオって呼んでる畑田啓太がボーカルで、あと女の子は「おしえて」のボーカルもやってるモモちゃんと。この2人が正式というか主なボーカルですね。別に決まっているわけではなくて僕らのスタンスとしてはゲストを迎えてもいいし基本僕ら2人+男女のボーカルがそれぞれという感じで。

S:アルバムを作るときはゲストボーカルが2、3人入ってくれると嬉しいですね。

_抽象的な質問で申し訳ないんですけど、お二人にとってポップミュージックとはどういうものですか?

A:難しいなあ…僕にとってポップミュージックはなんか…楽しい(笑)。僕の中ではポップっていうのは楽しいとかかわいいに近いんかな。そんなに広く考えてない。

S:多分タクマの言っているポップは大衆的なものではないんですよ。大衆が望んでるものなら悲しい曲も暗い曲も入ってくる、ポップスやから。大衆音楽やから。だけどそういうものを取り除いた陽に向かう、ポジティブに向かってる音楽をタクマはポップって呼んでるんですよ。

A:ポップはただちょっと気持ち悪さもあるからそれも大事で。例えばティムバートンとかきゃりーぱみゅぱみゅとかも絶対気持ち悪さがあるじゃないですか。

S:僕が思うにネガティブな音楽は不安をなくすためにあるんですよ。不思議な話でネガティブな音楽を聞けば聞くほどむしろ不安じゃなくなるんですよ。逆にポップな音楽を聴けば聴くほど不安になるんですよ。

A:あと、構造が好きで箱庭みたいなその感じがずっとある。

S:でもポジティブの先にあるのは不安なんですよね。アメリカンコメディ見てたら明るいけど見続けてると不安を感じるんですよね。逆に暗い映画を見てると安心するんですよね。例えば箱庭のたとえで言ったら、タクマはその中にストーリーを組んでいくんですね。僕の場合だとそこにポツンと子供の靴だけが置いてあって、あとは見てる人に想像させるっていうのが一番気持ちいい。これもまあひとつのストーリーとしては一緒だけど。

A:日本のシティ・ポップはたとえば細野晴臣を聴いててここにアラン・トゥーサンの影響を感じるとか、そういう背景が見えたりするのが好きで。やっぱりビートルズが大きいかな。あとアメリカン・ミュージックでは50年代くらいのティン・パン・アレーとかバカラック、あとロジャー・ニコルズとかが中道を通っていて、それの黒人寄りにスティービーがいて、白人よりにビーチ・ボーイズがいるみたいなポップスの見取り図が自分の頭にある。

S:ポップスの中心は60年代に決まってて、その当時ヒットしてた3つの要素が「ビートルズ」「モータウン」「ボサノヴァ」で、これ以降の音楽はこれらの3つの要素を全て足をかけてるものが流行るっていう。

_シュガーズとしては今後どうしていきたいですか?

A:僕らが目指すのはバナナマン(笑)。

S:バナナマンかな。おぎやはぎやったらピンの仕事あんまないし(笑)。 バナナマンのコントは世界観があるじゃないですか。ラーメンズだとそれはテレビの世界に移植しにくいけど、バナナマンだとテレビに移植されてもその中で世界を作れるんですよ。

A:でもライブを見に行くと何時間きっちりした世界も見れるという。キャラも立ってるしお互い別々の仕事もしてるし。

S:そういう、拡大して世界観の中にリスナーが入り込んでも楽しめる部分と、各々ひとりでもキャラクターが立ってて、一方で違う場所でもふたりがいれば、シュガーズの世界観をその場の中で作り出すことができるみたいな。バナナマンですね。

A:あと、アメリカへのノスタルジーのイメージで、トニー・ベネットみたいな曲とかも書いてみたいです(笑)。

*ノーカット版は是非『関西ソーカル』をご購入ください。

■ライブ情報
Sugar’s Campaign単独公演「ネトカノリリパ」
2014年11月2日(日)東京公演@UNIT
出演:
Sugar’s Campaign / Shiggy Jr.(オープニングアクト)

2014年11月3日(月・祝)大阪公演@Grand Cafe
出演:
Sugar’s Campaign / 水曜日のカンパネラ(オープニングアクト)

*チケットはこちら