ARTIST:

Chromeo

TITLE:
White Women
RELEASE DATE:
2014/5/13
LABEL:
Warner Music Japan
FIND IT AT:
Amazon
REVIEWSJuly/29/2014

[Review]Chromeo | White Women

 デビューから10年、相も変わらず美脚を愛してやまないChromeoが、ニューアルバムをドロップした。今作は、先行リリースのシングル4曲を含めた12曲編成。従来からのChromeoのファンにとっては、革新的なアルバムではないかもしれないが、それは正しい選択でもあり、まさにそんなファンの期待を裏切らない音が存分に詰まっている。そして、”Chromeo-Verse”と呼ばれる独特の、図々しくもあり、快活で皮肉っぽくもあるソング・ライティングが今回も遺憾なく発揮されている。

 アルバムジャケットは、真ん中に花嫁姿の美脚美女をDave 1とP-Thuggが挟むような写真になっている。ジャケットの美脚美女はもはや恒例となっているが、アルバムタイトルの『White Women』からもその美脚への執着が伺える。尚、『White Women』はドイツのヌード写真家のHelmut Newtonの処女作である写真集に由来しており、Dave 1が影響を受けたという(注1)。Chromeoの美脚、セクシャリティ、誘惑への執念は、曲やジャケットへの拘りに収まらないようだ。

 今作は、過去の作品に比べるとゲスト陣は実に豪華だ。シングル・トラック「Come Alive」で共演したToro y Moiに加え、Beyoncéの妹でもあり前アルバムから引き続き登場したSolange、Vampire WeekendのEzra Koenigなどを迎えている。また、確かに豪華だが、どの曲も違和感無くChromeo色に染まっているのが印象的だ。1曲目からアップテンポでキャッチーな曲が続き、8曲目でEzraのファルセットを聴かせた後に、9曲目が少し落ち着かせた楽曲でファンクから少し離れるが、シンセをきかせた一曲で新たな一面もちらつかせる。そして、最後は自分たちらしさを全面にアピールする形でアルバムは幕を閉じる……。このように、アルバム構成の完成度はかなり高い。

 現代のディスコ・リバイバルのような流れを受けて、Chromeoは、しばしばDaft Punkと比較されることがある。グラミー賞アルバム『Random Access Memories』を発表したDaft Punkに比べれば、確かにChromeoは彼ら程一般をも広く巻き込むようなタイプではないかも知れない。一方で、Chromeoは、良い意味でより詳細にマニアックに、エレクトロの中に、ファンク、ポップ、ロックギター、ディスコを見いだし、偏愛することで、それらを昇華させている。そしてそれは、デビュー当初から何も変わらない彼らのスタイルだ。

 特に近年、ディスコが再評価される中、それらへの愛はChromeoの中にはすでに、そして常に存在していた。そんな彼らが偏愛するディスコ・ファンクという古き良きダンスミュージックをモダン・ヴァージョンへとアップデートし、一心に作品として創りあげたのがこの『White Women』である。自分たちのポテンシャルをまだまだ発揮せんとする心持ちが感じられる快作だ。

注1…VOGUE ”Chromeo on Their New Album, Helmut Newton, and Why They’re a High-Low Band by Gabriella Karefa-Johnson” を参照

文・竹富理紗
2014年度青山学院大学音楽藝術研究部部長。幼少期をアメリカで過ごし、現在大学生活を送る傍ら、Lisandwich名義で、毎月第一火曜日、DJイベント「sheep」を主催するなど、DJ、オーガナイザーとしても活動中。