- ARTICLESDecember/31/2017
The Best 50 Albums of 2017 (20 – 1)
10. M.E.S.H.『Hesaitix』
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09. Laurel Halo『Dust』 [Interview]
08. Kelela『Take Me Apart』
07. Mura Masa『Mura Masa』
06. Blue Hawaii『Tenderness』 [Interview]
05. Arca『Arca』 [Review]
04. Jlin『Black Origami』
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03. tofubeats『FANTASY CLUB』 [Interview] [Review]
02. Chino Amobi『PARADISO』 [Interview]
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01. The xx『I See You』
2017年について − 仮象・連帯・友愛
tofubeats『FANTASY CLUB』
レビューに記した「現実にあるかのように見えて、存在しないもの」とは、すなわち仮象を意味する。tofubeatsは、ポスト・トゥルースをひとつのテーマとして、本作『FANTASY CLUB』を制作したという。ケヴィン・ケリーが指摘した様に、かつて、インターネットは「革命」と言われていたが、気がつかないうちにそれは、私たちの生活の中で当たり前のものとなっている。ポスト・トゥルースは、インターネットの致命的な負の側面であるが、インターネットそのものは、数多の恩恵を齎したことも事実であり、tofubeatsが本作で投げかけたテーマは、私たち各々が真剣に受け止めるべき共通のイシューである。さらに本作で、tofubeatsは、本拠地とする神戸を作品に反映させることで、現代のグローバリゼーションにおけるローカルの意味についても私たちに問うている。そして、その答えもまた様々であろう。このように本作は、何度も新たな発見や解釈を私たちに与えてくれる。
Chino Amobi『PARADISO』
かつて、マルコムXは、有色人種による世界的な連帯を目指したという。Chino Amobiが主宰する〈NON〉は、〈NON WORLDWIDE〉とその名が示すように、所在地を超え、南アフリカのAngel Ho、ベルギー出身で現在はロンドンを拠点とするNkisiが共同設立者として名を連ねている。本作『PARADISO』において、Chino Amobiは、硬質なノイズを奏でることで、その知性と共に強い怒りを表現する。インターネットによるネットワークは、物理的な距離を無効化することで彼らの創作の連帯を可能とし、本作でChino Amobiは、様々なアーティストと協働することで、彼の想像するPARADISOの世界を作り上げた。数世紀前、歴史上行われた残酷な分断は、今現在も負の遺産として悲惨な影響を残している。マルコムXは、1965年2月21日、マンハッタンでの演説の際にその志半ばで暗殺された。そして、2017年現在、Chino Amobiは、アフリカをルーツとする彼らが置かれているその現実を本作に記述し、世界へと伝えている。
The xx『I See You』
友愛を語ることは、繊細すぎるのだろうか。昨年から続く様々な政治的事象の諸問題はさらに複雑さを増し、慎重に積み上げて来たはずの世界の歴史は後退し始め、むしろさらなる分断へと向かう危険性をも孕んでいる。The xxの本作『I See You』は、愛について率直に歌った作品である。そして公開されたアルバム収録曲のミュージックビデオはどれも、温もりや優しさ、繊細さ、さらには、それらの感情に対する郷愁をも想起させる作品になっている。The xx のメンバーであるRomy、Oliver、Jamie xxの3人は、幼少期からの友人であるという。そして、アルバムがリリースされた1月に、Romyは自身のInstagramで、同性のデザイナーHanna Marshallとの婚約を発表した。哲学的な意味における友愛とは、共同体を維持するための極めて古典的な概念である。本作でThe xxは、その友愛を持って、私たちが進むべき道へと後押しするように寄り添おうとしている。
Text by T_L (2017.12)
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