INTERVIEWSSeptember/04/2017

[Interview]Kero Kero Bonito – “Bonito Generation”

 ブレイディみかこの『アナキズム・イン・ザ・UK』に、尺八奏者のKiku Dayが英『ガーディアン』紙に寄稿したソフィア・コッポラ監督の映画『Lost In Translation』(2003)に関する記事が引用されている。

 孫引きになるが、そこでDayは、「この映画に登場する日本人は、ひとりも尊厳を持たされてないのである。その意味も良くわからないのに、妙なやり方で一生懸命に西洋のライフスタイルを真似している小さな黄色い人間たちに、この映画を観る人々は爆笑する」と指摘している(1)

 それは、西洋中心主義、すなわち、西洋以外の文化を他者とみなすオリエンタリズムの思想を示唆しているが、Kero Kero Bonitoは、それとは全く違う見方で、日本のカルチャーを彼ら自身の表現に取り入れている。

 Kero Kero Bonitoは、ロンドンで結成された、日本人のSarahとイギリス人のGusとJamieの3人によるグループ。Sarahは、ヴォーカルやリリックを担当し、GusとJamieは、サウンドプロダクションを手がけるといった基本的な役割はあるものの、楽曲からアートワーク、マーチャンダイズに至るまで、3人で話し合って決めているという。

 そこに他者という概念はそもそも存在しておらず、3人が当事者としてそれぞれの個人や文化的背景をフラットに個性として認識し、Kero Kero Bonitoとしての作品を作り上げている。すなわち、UKと日本のカルチャーがミックスされる彼ら独特の表現は、必然的な結果として自然に現れたものと言える。

 Sarahは、Sarah Bonitoとして、Mark ReditoやCosmo’s Midnight、©OOL JAPANなどの作品に客演し、Gusは、公然の秘密としてKane West名義で〈PC Music〉から作品をリリースし、Jamieもまた、WHARFWHIT名義で自身のソロEPを今年5月にリリースしている。

 このように、Kero Kero Bonitoは、メンバーそれぞれが個人で表現を成立することが可能な実力を有しており、彼ら独特のアイデアや豊富な音楽経験を統合して結晶化したのが、今回のデビューアルバム『Bonito Generation』と言える。

 今夏、Kero Kero Bonitoは、日本の大型フェスティバル「SUMMER SONIC 2017」に出演。今回、来日した彼らに、グループ結成の経緯から最新アルバムの制作背景まで、様々な話を聞いてみた。

__英語版のウィキペディアでは2011年結成となっていて、資料では2013年結成となっているのですが実際にはどちらが正しいのでしょうか。

Gus: Sarahが加わる前に『Why Aren’t You Dancing?』をリリースしたのは2011年なんだけど、Kero Kero BonitoとしてはSarahが加入した後の2013年が正しい。

__『Why Aren’t You Dancing?』は、今のKero Kero Bonitoとはサウンドが全く違いますね。

Gus:あのEPは、自分のプロジェクトとしてAugustusというのをやっていて、その中のひとつだったんだ。

__改めて、Kero Kero Bonito(ケロケロボニト)という名前の由来を教えて下さい。

Gus: バンド名を決めるときにいろんな国のオノマトぺをリストアップして。日本語だったらケロケロで、英語だったらいろんな音のものがあって、Bonitoは「鰹節」という意味もあるけれどスペイン語では「美しい」という意味だったりもして、言葉遊びをしながら、面白いなと思ってこの名前にしたんだ。

__こちらも英語版のウィキペディアでは、Kero Kero Bonitoはポルトガル語で”I want I want Beautiful”という意味になると書いてありました。

Gus: そうなんだよ(笑)。この間までは「鰹節」とかの意味しか書いてなかったのに、誰かが編集してるんだよね(笑)。わざわざ過去のインタビューからの引用までひっぱってきていたりして(笑)。

__過去、『DUMMY』のインタビューでGusさんとJamieさんが日本語の出来るラッパーを探していたとの記載がありましたが、どのような経緯でグループの結成に至ったのでしょうか。

Gus: 正直に言えば、実は日本語を話せる人に限って探していたというわけではなかったんだ。日本人とのハーフの友達がいるんだけど、彼がイギリス駐在者向けの「Mix B」というネットの掲示板に投稿をして、そこでたまたまSarahに出会ったんだ。単純にイギリスの中流階級のお金がある普通の人とは組みたくなかったから、そういう意味で、何か個性を持っている人とやってみたいとは思っていたけどね。

__グループでは、3人の役割はそれぞれどのようなものですか。

Gus: ビデオとかマーチャンダイズとか楽曲とか、みんながみんな色んなことをやっているよ。

__例えば、ビジュアルはSarahさんが担当しているのでしょうか。

Sarah:アイデアとかは3人で考えています。私だけではなくて、例えばビデオを制作する時もどんな感じにするか、3人で話し合ってやっています。

__Kero Kero Bonitoは、かなり独特なスタイルだと思いますが、それは結成当初から決めていたのでしょうか。

Gus: もともと友達だったっていうこともあって、具体的にこうしようというのは特になかった。例えば、「Flamingo」で言えば、ここにフルートソロを入れようとか、自分の体型について歌おうとか、エビについて歌おうとか、何かを決めていたわけではなくて、3人の個性が集まった結果、このスタイルに至っている。

__2014年の©OOL JAPANの「Rush Hour」と「Tokyo」という曲に、Sarahさんが参加しているのですが、それはどういった経緯で制作に至ったのでしょうか。

Sarah: Twitterで突然©OOL JAPANからメッセージが入ってて。デモを聴いたら面白いなと思って歌詞を書いて、データを返して出来た、という感じです。

__「Rush Hour」は、「みんなの目が死んでるよ」など、とても刺激的な歌詞ですが、どのように生まれたのでしょうか。

Sarah: その頃は大学を卒業したばっかりで、日本の会社の事務でアルバイトしていた時期だったんです。科学物品の取引をしているところでいろんな大学の教授からオーダーをとったりしていて、アルバイトが終わったら近所のGusの家に行ったりしていたんですけど、そこでのアルバイトが本当に嫌だったというか自分に合っていなくて……。たぶんそれが「Rush Hour」の歌詞にそのまま表れたんだと思います(笑)。

__「Rush Hour」と同時に公開された「Tokyo」という曲は、当時LIQUIDROOMで開催された〈Maltine Records〉の「東京」というイベントに合わせて制作されたと思うのですが、この曲の歌詞もとても興味深いのですが、どのような理由でこういった歌詞になったのでしょうか。

Sarah: はっきり覚えていないんですけど、たぶん「Rush Hour」と同じようなところからきていると思います(笑)。

__『Intro Bonito』についてお聞きします。Kero Kero BonitoのSoundCloudでは、一曲目が「Kero Kero Bonito」で二曲目が「Sick Beat」ですがどちらが先に出来たのですか。

Gus: その二つだと「Kero Kero Bonito」だけど本当の一曲目は違っていて、「Homework」が最初に出来た曲だった。その当時、Sarahがルームシェアしていた小さい部屋で「Kero Kero Bonito」と「Pocket Crocodile」と「Homework」をレコーディングしたのが印象的なセッションだったなって、今でも覚えているよ。

__2014年の8月に『Intro Bonito』をリリースしましたが、発表前と後で何か変化はありましたか。

Gus: 『Intro Bonito』を出すときに、「全て変わるぞ」って感じは無かったけど、『Intro Bonito』があったから『Bonito Generation』が出来たという感触はある。でも『Intro Bonito』を出した時点では特に変化は感じなかったかな。

__その後、Ryan Hemsworthの〈Secret Songs〉に「Flamingo」で参加していますが、その経緯を教えて下さい。

Gus: Ryanに「やりたい?」って聞かれたんだよ(笑)。コンピレーションアルバムだったんだけど、テーマがピンクということもあって、Ryanが書いてよって言わなかったら「Flamingo」という曲は生まれていなかった。

__「Flamingo」は、YouTubeでも200万再生を超えていて、Kero Kero Bonitoを代表する曲のひとつだと思うのですが、この曲の歌詞はどのように生まれたのでしょうか。

Sarah: なんで動物園のフラミンゴはいつもピンクなのか、っていう疑問からはじまって。調べてみたら、みんなフラミンゴって聞いたらまずはピンクのフラミンゴを思い浮かべるから、動物園だと、わざとピンクのものを食べさせて、フラミンゴをピンクにするっていうのがわかって。そこからこの歌詞を考えました。誰だってピンクじゃなくて、例えば虹色とか、何でも好きな色でいいんじゃないのかなって思ったんです。

__2015年の3月にロンドンで開催された「POKO vol.1 with Martine Records」に出演していますが、〈Maltine Records〉については、どのように捉えているのかを教えて下さい。

Gus: Maltineは音楽的方向性で共感できるレーベルのひとつだね。(東京とロンドンで)物理的な距離はあるけれど、「攻めてるポップ」という方向性では〈PC Music〉とも近しいし、イベントに一緒に出演することが出来て良かったと思う。

__では次に、今回のアルバム『Bonito Generation』について聞かせてください。このアルバムのコンセプトを教えてください。また、『Intro Bonito』と『Bonito Generation』の相違点を教えて下さい。

Gus: コンセプトとかビジョンっていうのは前もっては特になかった。アルバムの中で「Try Me」、「Graduation」、「Picture This」は最初の方に書いたもので、人間の深く悩んだり考えたりすることを題材にしている。”Generation”という言葉には大きな深い意味があると思うから、そういう言葉をタイトルに使いたかった。

『Intro Bonito』と『Bonito Generation』の違いに関しては、『Intro Bonito』はミックステープであって『Bonito Generation』はアルバムだということもあって、ミックステープは何やってもいいんじゃないかっていうのに対して、アルバムは自分たち自身を最も世間に表現できる良い方法だと思っている。それと、ミックステープでは細かい音を使っていたけれど、アルバムでは大きい音を使ったり、サビを強くしたり、よりポップミュージックとしての音の構成にすごくこだわった。

__『Bonito Generation』の方がより作り込んでいるという印象を受けました。

Gus: もちろん、時間をかけたからというのもあるね。だからといって『Intro Bonito』が悪いという意味ではないし、時間をかけたから良いものが出来るという訳でもないけどね。

いろんなアイデアを出してごちゃごちゃ何でも入れちゃえっていうのは苦手で、誰にでもわかりやすいように、普通以上に「これだ」というものに向かって作るのが僕たちのやり方なんだ。そして、こういう時代だからこそ、今まで以上にアイデンティティーや個性が強みになっていくとは思う。

__例えば、アルバムの曲で、ミュージックビデオも発表されていますが、「Trampoline」はどのように生まれた曲なのでしょうか。

Sarah: (「Rush Hour」のときのように)また暗闇にハマってたんだと思います(笑)。ずっとドン底に落ち続けることは無くて、どこかでまた上がらなきゃいけなくて、もし、一番底にトランポリンがあったらいいなと思って書きました。それで、こういう曲にしようってGusとJamieに話しました。

__また、ジャケットが「卒業」(Graduation)がテーマのものになっていますが、なぜこのようなアートワークにしたのでしょうか。

Sarah: アルバムのアートワークは、「Graduation」という曲をベースにしているんですけど、3人とも違う理由で卒業式に出れなくて、卒業の写真を作ってみようってところから始まりました。卒業式って、「終わり」と「始まり」という人生のターニングポイントの儀式だとも思ったので。

__Kero Kero Bonitoの特徴の一つに、日本とUKのカルチャーをミックスしている点がありますが、それぞれの文化的背景をどのように捉えて音楽に反映していますか。

Sarah: 私は日本にもイギリスにも住んでいたから、自分にとっては日本もイギリスも一つのカルチャーで、Kero Kero Bonitoを通して二つを同時に表現したいと思っています。いつもどちらかしか表現できなかったから、ずっと二つを合わせたものを表現したかったんです。

__例えば、日本とイギリスの価値観や文化の共通点は何だと思いますか。

Sarah: 違いしか思いつかない(笑)。でも、根本的なところはどこのカルチャーも同じだと思います。ただ、一番慣れるのに時間かかったのは、イギリスに引っ越してきて、ハグをするということでした。日本では握手もしないのが普通なのにイギリスでは男女関係なく友達同士でハグするのにはびっくりしました。

Jamie: 喧嘩したときも、ハグすることで収まったりするからね。

__では、UKの視点から見た場合、音楽の中にふたつの文化をミックスする上で、日本のカルチャーのどのような部分に興味を持ったのでしょうか。

Gus: 日本に関しては、日本ってどこのレストランに行ってもすごいまずいものが出てくるってことはないけど、ロンドンのレストランに入ったらちゃんとしたところに入らないとだいたいまずいものが出てくるから、日本人は「何かを作る」ということへの責任感が備わっているなと思うし、そういうところを尊敬している。

それは実はポップミュージックにも言えることで、「これとこれをやってポップミュージックです」というわけじゃなくて、中田ヤスタカがPerfumeをプロデュースしたり、松任谷由実の美しい旋律とか、Foodman(食品まつり a.k.a foodman)の音楽を聴くと職人的というか、自分のやっていることに対して誇りと責任を持って作っているんだっていうのを感じることができたり、そういったところが日本の文化の素晴らしいところだと思う。

__最後に、今、Foodman(食品まつり a.k.a foodman)の名前が出ましたが、もう少し詳しく話を聞かせてください。

Gus: (日本語で)フードマン、大好き(笑)。どうしてFoodmanが、急に『Pitchfork』とか『Resident Advisor』で取り上げられるようになったのかはわからないんだけど、いろいろなライターが取り上げていて、彼の独特な視点に着目している。

これはあくまでも僕の見解だけど、Foodmanやtoiret statusは、竹村延和や彼の〈Childisc〉やKiyoshi Izumiの申し子って立ち位置なような気がするんだよね。彼らはUKでは全く知られていなくて、Foodmanを知っていたとしても〈Childisc〉を知っている人はいないと思う。

でも、エレクトロニックミュージックの素晴らしい時代を築き上げてきた人たちなので、再度注目を浴びる必要があると思ってるんだ。素晴らしいMIDI音楽を作ってきた人たちだからね。Foodmanを聴いていると、その時に体験したときと同じような感覚を覚えるんだよ。

(2017.8.18、東京・六番町にて)

Bonito Generation:
1. Waking Up
2. Heard a Song
3. Graduation
4. Fish Bowl
5. Big City
6. Break
7. Lipslap
8. Try Me
9. Paintbrush
10. Trampoline
11. Picture This
12. Hey Parents
13. Forever Summer Holiday (日本限定デビューシングル)
Bonus Tracks
14. Picture This (Felicita Remix)
15. Fish Bowl (Frankie Cosmos Remix)
16. Heard a Song (CFCF Remix)
17. Trampoline (Saint Etienne Remix)
18. Lipslap (Makeness Remix)
19. Break (Jonah Baseball Remix)
[CD](通常盤・初回盤共通収録)

1. Break
2. Lipslap
3. Trampoline
4. Forever Summer Holiday
[DVD] (特典映像:初回生産限定盤のみ収録)

参考文献:
(1)ブレイディみかこ『アナキズム・イン・ザ・UK――壊れた英国とパンク保育士奮闘記』(Pヴァイン, 2013)

インタビュー・文: T_L

アシスタント: 星野智子
1996年生まれ。東京出身。青山学院大学総合文化政策学部在籍、ビートルズ訳詞研究会所属。

通訳: 江里原未来