INTERVIEWSAugust/14/2017

[Interview]Blanck Mass – “World Eater”

 「動物的」であることは、すなわち欲求に隷属することである。欲求を満たすことで、人は快を得ることができる。そして「快を得ること」で満たされた他者を見て、人は人に欲望する。現実では、人は理性によってそれらの欲求、欲望を抑制し、共存繁栄を目指す。出し抜こうとする者を除いては。

 UKのアーティスト、Benjamin John Powerによるソロ・プロジェクト、Blanck Mass。今年3月にブルックリンのレーベル〈Sacred Bones Records〉よりリリースされた最新アルバム『World Eater』は、人類の存続そのものへの懸念や、潜在的な暴力と怒りをテーマに制作されたという。また、一方でそれらは彼の言葉によれば”actual love songs”でもあるという。

 以下の彼自身の回答にもあるように、収録された楽曲はそれぞれが複雑な構成ながらも物語性を持ち、内在するノイズや歪みはただ突き放すための作用を狙ったものではない。言い換えれば、それらは、根源的なものを暴き、晒しながらも、祝祭的な音響を持つという対立的な要素が混合しているとも言える。

 Blanck Massは、今月開催される「Hostess Club All-Nighter」への出演が決定しており、Blanck Massとしては今回が初の来日公演となるという。以下は、来日直前の彼へメールインタビューを行ったものである。

__本作について、あなたは「人間の内部には獣の部分があり、その存在を知っている私たちはそれを制御すべきだ」と述べています。改めて本作におけるテーマを教えて下さい。

近年、人類は縄張り意識をもとに行動しているようで、僕が生きている間にもその人間の中にある獣的な部分を僕は確かに見てきた。事実上それが人間の進化した特性だから仕方がないと僕たちはわかっているけど、そういう遺伝的な獣の部分はコントロールする必要がある。僕たち人間は、僕たちの中に眠っている獣のせいで、もう地球上からいなくなることができないくらいのところまで来てしまっている。

__『World Eater』というアルバムタイトルの意味を教えて下さい。

『World Eater』は、最近の人間の地球上での生態学的な影響と、僕たちそれぞれの中に眠る獣の部分の両方に関係している。内的なこととグローバルなことの両方を意味している。

__アルバムからのシングル「Silent Treatment」についても詳細を教えて下さい。

「Silent Treatment」は、コミュニケーションの断絶についての曲。それはよく混乱と怖れを結果として招くし、だから僕たち人類は今こんなめちゃくちゃな状況に置かれているんだ。

__あなたは、本作について、「個人的なバランスを取り戻すための手段だった」と述べていますが、これは具体的にはどのような意味なのでしょうか。

それは、アルバムの枠組みの中での、よりセンシティヴな側面について触れたんだ。例えば、「Please」とか「Silent Treatment」とか。全体のテーマとして、このアルバムが伝えようとしていることはとてもアグレッシヴだから、楽曲制作をしていくにつれて僕の潜在意識は何かもっと優しいものを求めていたのかもしれない。

__本作に収録された楽曲について、あなたは、“actual love songs”と述べていますが、一般的に言われるようなラブソングとは異なっています。本作における“actual love songs”とはどのような意味なのでしょうか。

「一般的なラブソング」というのがどんなものかがよくわからないけど、セリーヌ・ディオンとかってことかな? 僕の意見では、このアルバムのコンテクストにおいて、この作品は、暗く閉鎖的な曲たちでありながら、多くの光を与えていると思うんだ。

__ダニー・ボイルが演出した2012年のロンドン・オリンピックの開会セレモニーであなたの「Sundowner」が起用されています。セレモニーでは、イギリスのNHSやGOSHがクローズアップされました。このようなダニー・ボイルが掲げたセレモニーのテーマは、あなたの音楽制作にも何かつながるものがあるのでしょうか。

そのオープニング・セレモニーに関われたことは素晴らしいことだったし、アビー・ロードで「Sundowner」を演奏するロンドン交響楽団を見るのはさらに素晴らしい経験だった。

__「Hostess Club All-Nighter」での来日公演を控えていますが、どのようなライブセットを予定していますか。

本当に楽しみにしている。7年前に僕がBlanck Massとは別でやっているバンドで来日して以降日本には行ってないんだ。僕と仲の良い友達で、僕のAVを担当してくれているDan Tombsを一緒に連れて行くんだけど、彼のおかげでライブのショーのヴィジュアルは毎回違うんだ。

__最後に、あなたの作品に内在する静と動のインスピレーションはどこから得ているのか教えて下さい。

それらは、イラストレーションを学んだ経験に基づいている。物語(narrative)と動態(dynamic)というこのふたつは、僕がこれまで取り組んできた全ての作品において、とても重要な側面になっていると言えるね。

*質問作成において、公式ウェブサイトなどを参照した。

World Eater:
1. John Doe’s Carnival of Error
2. Rhesus Negative
3. Please
4. The Rat
5. Silent Treatment
6. Minnesota / Eas Fors / Naked
7. Hive Mind

■公演情報
HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER
出演: St.Vincent / Mogwai / Ride / The Horrors / BEAK> / Cigarettes After Sex / Blanck Mass / Matthew Herbert(DJ)
日程: 2017/8/19(土)<サマーソニック2017 ミッドナイトソニック>
時間: Open/Start:22:30/23:30
会場: 幕張メッセ

チケット:
・一般価格 9,500円(税込)
・SUMMER SONIC・SONICMANIA購入者限定特別価格 5,000円(税込)

*SUMMER SONIC東京各券種またはSONICMANIAのいずれかを購入されている場合は特別価格にてご購入いただけます。
*予定枚数に達し次第特別価格での販売は終了いたします。
*SUMMER SONIC各種入場券、SONICMANIAの入場券ではHOSTESS CLUB ALL-NIGHTERへはご入場頂けません。
*一般先行・一般発売での購入後の差額の払い戻しは致しません。
*SUMMER SONIC・SONICMANIAの入場券を購入せずに特別価格のチケットを購入された場合は、当日一般価格との差額をお支払いいただきます。

注意事項:
*HOSTESS CLUBALL-NIGHTER入場券のご利用有効期限は8月19日(土)午後22:30~8月20日(日)午前5:00までとなります。
*出演アーティスト変更による払戻しは致しません。
*オールナイト公演のため20歳未満入場不可。
*写真付IDチェック有
*各ステージの入場制限を行う場合がございます。

企画・制作・招聘:Hostess Entertainment / Creativeman

インタビュー・文:T_L

翻訳:小林香織
1994年生まれ。青山学院大学総合文化政策学部在籍。インディ、ポップ、アメリカのカルチャーなどを担当。