INTERVIEWSAugust/06/2017

[Interview]Anthem・MALTINE SEED BOX・GOODWEATHER×異レギュラー (Part.2)

八木靖洋(「Anthem」オーガナイザー) × tomad(Maltine Records主宰)

Part.1からの続き)

八木: tomadくんって、イベントの箱決めるときどうしてる?

tomad: 場所ありきで決めるときもあるけど、そうじゃないときはやりたいところで決めますね。そんなに選択肢ないですし。

八木: それは東京に住んでいるからで、俺は静岡に住んでいるけど静岡のクラブに全然遊びに行かないし、MAGOを除いて名古屋のクラブカルチャーに一切お世話になっていないから名古屋をレペゼンする理由もない、MAGOでやる理由はあるけど名古屋でやる理由は全くない。だから、なんかやりたいときに僕は全国から選べる。別にどこでもいいから。「こういうのやりたいな、じゃあ次場所どこだろう」となった時に、「次AnthemをやるならageHaしかない」っていう。それを考えた時に、やっぱでもフロアいっぱいあるから1人じゃ無理だろうなっていう。その時に、Boxはマルチネだろうな、と。やっぱMOGRAはお願いしたいし、あとは「GOODWEATHER」、「異レギュラー」かな、と、スッと決まる。

あと、言葉に出して面白いかっていう線引きは結構あって。「ageHaでパーティーします」っていうのを、地方在住のサラリーマンが言ったら面白いじゃん。ageHaの人にも言われたけど、「300人規模のパーティーからageHaでパーティーやった人はいない」って。でも普通、300人規模しかやったことのない人間にageHaを貸すかって言ったら貸さないと思うんだよね。でもそれを貸してくれたっていうのはtofubeatsやHyperJuice、DJ WILDPARTYだってageHaのarenaでDJしている実績があるから。MOGRAは「あきねっと」での成功があるし、クラブの人間で多分マルチネを知らない人はいないはずだし、「GOODWEATHER」は「Outlook Japan Launch Party」に絡んでいるし。他のフロアはどんな出演者が出るかわからなかったけれど、「Anthem」はageHaに去年の4月に初めて企画書出してから内容があまり変わっていないから、「Anthem」の出演者にageHaを貸してもいいよって思わせるだけの力をみんなが持っていた、ということです。

__それでもなかなか出来るものじゃないじゃないですか。実際赤か黒かもまだわかんないわけですからね。

八木: まあ赤だろうけど(笑)。赤だって思ったほうが楽! tomadも、Maltineイベントするとき毎回しんどいと思うんだよ、パーティーの前とかチケット売れなかったりしたら。

tomad: 大体グロッキーになるところですからね。口座ゼロまで使い切るから。赤だったら、「親に土下座するか……」みたいな。

八木: 結局、俺はスタンスとして、実際の仕事を持ってて、生活とは関係ない部分のお金でパーティーをしていて。なんというかアーティストはもちろんなんだけど、一般人の自分達も自分の立ち位置をちゃんと理解しておかなきゃいけなくて。

tomad: 俯瞰して見とかないと。

八木: 俯瞰してみて、更に低く自分の評価を見積もった方が、絶対人生うまくいくと思う。

tomad: 期待しすぎないっていうのが重要ですね。

八木: そうそう、期待しない方がいい、自分に。

__なるほど。

八木: アーティストは自分自身に期待してほしいけど、俺は普通の人間だから、普通の人間は、謙虚っていうわけではないけどそのくらいで見積もっとかないと、多分人生難しいと思う。

__でも、そこに辿り着くまでがまず難しいですよね。

八木: 実際、「Anthem」をageHaでやるって最初聞いた時どう思った?

tomad: どうなるんだろう、っていうちょっとした不安感はあったし、マルチネのイベントをageHaでやるのはまだ難しそう、っていうのはずっとあったし、そんな感じですね。

八木: そういう考えがなかったわけでもない?

tomad: 無かったわけではないけど、Maltineの面白みが担保できるのかなみたいなのはあった。ageHaだと普通にステージみたいになっちゃうから、もうちょっと距離感近い方が、「マルチネらしさ」は出せるかなと思ってて。tofubeatsがageHaやるとかすごい想像はできるけど……っていうのはあって、八木さんに聞いた時、ageHaの「Anthem」の中でMaltineの立ち位置みたいなのをどう出してくのがいいのかな、っていう悩みはありましたね。

八木: それこそ、「Maltine Seed Box」をトラックメイカー中心にするって決まった時に、そうなって良かったな、っていうのがあって。

tomad: 他のフロアと差別化しないとなみたいなのはすごいあったりとかしてて、まぁでもパソコン音楽クラブ、長谷川白紙とかyuigotとか、一年前はいなかった人が出てきてるし、Tomggg、PARKGOLFとかのフィジカルのアルバム出せるぐらいの力を持ったアーティストもいて、その繋がりも見せながら、大きな枠では、あんまり奇を衒いすぎても良くないなと思って。

八木: それぞれのトラックメイカーの世界をちゃんと聞いてもらう、っていう方向がいいかな。でもMaltine Seedは元々CIRCUS Tokyoでやってたから、その流れをこっちに持ってくるのはちょっとまずいかなっていうのもなんとなく思ってて。

tomad: 僕も思ったんですけど、Boxのちょっと区切られてる感があったからこそ、MALTINE SEEDの延長戦をやっても大丈夫だなという思いはありました。

八木: Boxは最初からMaltineにお願いしようと思ってて、Waterをどうしようと思って、「異レギュラー」をやるのは危ないな、とか。

__めっちゃ人が落ちそう(笑)。

八木: そう、そういう可能性が出てくるからちょっとウォーターはやめて、まあ総合的に見て、Islandは音が綺麗だから、そういう面でも考えて機材ライブとかもあるから「GOOD WEATHER」と「異レギュラー」にして。

tomad: 最初話を聞いた時よりも、客観的に見てイベントがまとまってきたなっていうのはあって。

八木: okadadaに「もうちょっとステップを踏んでageHaにした方がいいんじゃない」っていう風に言われてたけど、最終目標にageHaがあったらなんかあんま面白くなくて。急にageHaでやるから面白い。

__わかるなあ(笑)。

八木: Maltineが次ageHaでやるってなったら、ついにやるんだ!みたいな感じになるけど。「Anthem」をUNITとかでやっても、LIQUIDROOMとかでやっても、ちょっと違うんだよね。

__確かに。

八木: 結婚を理由にして名古屋MAGOの「Anthem」を終わらせてから、「地方のパーティーにみんなで遊びに行く」っていう感じもなくなってきたし、多分あのままやってたらダサくなって終わってた。だからやめ時はすごい良かった。次打ってもそんな変わり映えはしないだろうし。

__もしあの頃から「Anthem」を東京でやっていたら、というのはちょっと考えますね。

八木: 東京でやっても意味がなかったんだよね、tomadがいるから。

__名古屋だから意味があったのかもしれませんね。わざわざ東京から行ってる人も全然いたし。

八木: 名古屋でAnthemやってた時は本当にタイミングが良かった。タイミングって本当に重要で自分は、人と仲良くなった時期がほんとに良かった。DENPAのタイミングで5364さんとかにも会って、仲良くなってNuoohとか遊びに行ったりとか、マルチネ就職説明会の時にtomad君とかと話したりとか、その頃にはokadadaとかtofubeatsとか自分のイベントにも出てもらってるから仲良かったし、ほんとにタイミングに恵まれてたっていうのが超デカかった。

__今回のageHaのタイミングも……。

八木: そう、全部タイミングでしかない。なんていうか、俺の人間的なスペックからみて、人生が出来すぎてる。俺の人間的スペックで、これ以上幸せになることは多分ないと思ってて、どこで人生を違えてもこれ以上の幸せな人生をおくることはできないだろうなって思えるくらいタイミングに恵まれてると思う(笑)。

__マックスじゃないとageHaでイベントは打てないですからね(笑)。

八木: だからほんとにね、俺がどんなにオーガナイザー論みたいのを語ろうが誰の参考にもならないと思うけど、オーガナイズをする上でのそういう心持ちというか、出演者からそれだけたくさんの時間をもらってるんだから楽しませなきゃいけない、って言うのは強く思ってる。こんなに全力投球みたいなパーティーばっかりである必要はもちろんないからあくまで俺がパーティーするときはそういう気持ちでやってますってだけの話なんだけど。あとやっぱプレイヤーがイベントやるのと、オーガナイザーがやるのって全然違って、「異レギュラー」はプレイヤーのイベントだから「みんなで一緒にやろうよ」っていうのが言えるけど、俺はプレイヤーじゃないから「一緒にやってください」としか言えない。

だからずっと思ってるのは、「今夜はブギー・バック」はプレイヤーの曲だって思ってて。”とにかくパーティーを続けよう”は俺は無理。普通になんかあったらパーティーは終わるし、終わらせる美学みたいなやつの方が俺は好き。ちゃんと最終回を持って、まぁ最終回で終わってなかったんだけど、ちゃんと終わりを持たせる方が俺は好きかな。パーティーとかも朝までずっと最高な音楽が鳴って自然に人がいなくなって朝8時くらいに終わるっていうのもいいけど、ちゃんと6時だったら6時っていう「終わりに向けてコトが進んで行く」方が俺は好き。

tomad: 逆に、イベントが東京一極集中になってきてるじゃないですか。僕も前だったら大阪でイベントやろうかなみたいになってたけど、なんか面白みもなくなってきたし、実際ちょっと前とかは地方に可能性あるのかもみたいな時期もあったけど、今はみんな東京に移住しはじめてるし。地方で何か作って行く大変さみたいな感じとか、多分東京にいたら全然わからない部分でもあると思う。

八木: 今俺が住んでるところって東京も名古屋も車で2時間半なの。だったら東京に行っちゃうんだよね。でも昔住んでた浜松は東京まで車で3時間半で、名古屋だったら1時間半で着くから、名古屋に遊びに行くし。今は場所的に日本の真ん中にいるんだけど、そうなると、どこも行かなくていいかなっていうのは結構ある。それはそういう人生の時期っていうのもあるんだけどね。パーティーも、「知り合いが出てるから行く」で、一か月前から予定空けて行くって感じでもない。それは自分も含めみんなが慣れちゃったのか、ほんとにイベントが楽しくなくなってるのかっていうのは、ちょっとわかんないけど、それどう思う?

tomad: まぁ新鮮さがなくなったっていうのは大きいと思うし、多分そこに楽しさもあったんじゃないかな。

八木: 何か新しいことを若い子がやってくれたらまた面白いのができるのかもしれないし、若い子には「Anthem」遊びに来てもらいたいけど、若い子は来れないんだよね、「Anthem」。年齢的に。

tomad: 行けないっていうのも重要ですから。行けないからやるっていう。フラストレーションってわけでは無いけど。

八木: でも俺が「Anthem」始めた頃から一緒で、結局もういい出演者って出尽くしてるから。新しいものは、tomadとかはデモが送られてくるから新しい手札が増えていくけど、俺はそういう手札を見せてもらって、これいいじゃんって勝手に貰っていくだけだから。結局やっぱその意外な組み合わせをやることにはそんなに意味はなくって、正直、こんな組み合わせ今までなかったでしょ、うちだけでしょ、っていうのも当たり前なんだよね。だってやってる人が違うんだから。だから最高だって決まりきってるけどまだ誰もやってないところを、見つけて行くっていう隙間産業しかない。

__確かに。

八木: それでも、他の人から見たら場所が違うだけで、「Anthem」も他のイベントも変わらないのかもしれない。俺は「Anthem」のアリーナのメンツはすごい腑に落ちてるけど俺以外腑に落ちてる人はいないかもしれない。

__腑に落ちやすいメンツではないですよね(笑)。

八木: でもそういう時代ってあったじゃん。実際あったかは覚えてないけどディスク百合おんとtofubeatsが一緒に出てるみたいなイベントとか、もう「Anthem」以降一生ないでしょ。tomadに聞きたいけど、今後、クラブカルチャー内でマルチネのようなバグみたいなことって起こるの?

tomad: 起きるとは思うけど、あと数年はかかると思う。

八木: でも敷居が高くなる流れみたいなのは、あるっちゃあるじゃん。派手なパーティーが下火になって、みんな地に足つけてパーティーしていくみたいな。「Lost Decade」もそうなのかな、そういう流れにしているのか、自然にそうなってるのかわかんないけど。

tomad: 普通に飽きたっていうのはあるんじゃないですか。色々出てるの毎週あるし。みたいな。それよりかはもうお客の30人くらいがめっちゃ楽しい方がいいかな、と。

八木: tomadはどこまでみてる? 先。

tomad: うーん、どこまでみてる………(笑)。でも、アーティスト同士のフックアップとかっていう時代じゃなくなってきてるなっていうのはあって。バンドとかのように個々の活動に寄っていくかもしれない。でも、バンドとトラックメイカーの融合みたいなのをあんまやりたくないなと思って。そっちはそっち、こっちはこっちだし、ちゃんとトラックメイカーはライブをやって、区切れてもいいと思う。その代わりライブでちゃんと見せれるようにパフォーマンスとか演出に力いれていこう、みたいな。

八木: 派手にするってなったら、結局楽器を入れるしかなくなってくるから、やっぱバンドになるっていうのは真理っぽいけどね。

tomad: あと、こういう「Anthem」みたいにでかいのをまだあんまりやろうとは思えないから、それにもっと小さいイベントを熱量ある状態にしていくのが、多分数年後に見たときに、めっちゃでかいイベントをやれるきっかけにもなるのかな、みたいな。

八木: そうだよね、なんか「Anthem」はストーリーがないから。ageHaに至るまでの。

tomad: 事故的な感じだから(笑)。

八木: そう、思いつきだから(笑)。

tomad: でもそういう人が出てくるための種みたいなのはなくちゃいけないなっていう。Maltineがtofubeatsのためにあるかって言ったらまた違うとは思うけど、1人旅立って行ったわけじゃないけど、今は離れて面白い時期みたいな。それでまた時期が来たら何かしらリリースしても面白いだろうし、季節くると戻ってくるみたいな(笑)。

__渡り鳥の習性みたいですね(笑)。

tomad: 今の感じだとなんか戻りつつあるから、『POSITIVE』よりかは、『FANTASY CLUB』も結構Maltine寄りだと思うし。

__そうですね。

八木: 『FANTASY CLUB』のレビューとかをめっちゃ読んだし、ポコラヂとかも聞いてると、俺からみると、みんなすげえ考えてるんだなぁって。tofubeatsのこと好きだし、曲とかも好きだし、聴いてるけど、tofubeatsが何を思ってこれを作ってるかとか一切考えないし。

tomad: だから黙ってやるっていうのも全然正しいし、考えることもそれはそれで。

八木: でもああいう文章にならないとやっぱメディアに上がらないわけだからさ。俺はすごくありがたいんだよね、文章にしてくれる人がいるから今こうやって対談させてもらってるわけだし。tomadは、このイベントに人が入らなかったらどう思う?

tomad: あ、今後どうするかとかそういう感じですか。なんか大きな期待もしてないからっていうか……多い方がいいですけど、人が入らなくてもそんなにショックはないかな。それより出演者が楽しくない方が嫌だなっていうのはある。

八木: だから人は入れたいよね。楽しくなるためには人を入れた方がいいっていうのは絶対あると思うから、期待してたよりあんまり人いなかったね、みたいなのは辛いから。

tomad: 僕も色々「Anthem」合わせってわけじゃないけど、8月に向けて色んなことを走らせてはいるので。三毛猫ホームレスが音源くれたり、PARKGOLFのアルバムも前日だし。一年前から決まってる予定ってなかなかないから、それに合わせて動こうみたいな動きはあるとは思ってて。でもまぁそんなに入らなくてもめっちゃ悲観的にはならないかなみたいなのはあって。人が入ることを100%意識した人選ではない部分もあるし、まぁ入らなかったら、もうやることやってくしかないっていうか。

八木: 本当にありがたいですよ。「Anthem」企画した時から、特典作るよっていうのを初めに言ってくれたのは国士無双とHyperJuiceだったし、ほんとにみなさんのおかげでなんとかなってるっていうのが強すぎる。

__1人で背負うにはやっぱり規模が大きいですよね。

八木: でも、会社でやったからといってうまくいくものでもないしね。若い子は真似しないでほしいね、こんなの破産するからやめた方がいいよ(笑)。賭博中毒みたいなもんですよ。でも賭博は勝つ可能性もあるんだよね。

__勝つ可能性もありますよ(笑)。

◼︎公演情報
Anthem ・ MALTINE SEED BOX ・ GOODWEATHER×異レギュラー
日程: 2017年8月10日(木)
時間: OPEN 23:00 CLOSE 6:00
会場: ageHa ( http://www.ageha.com/ )
料金: 当日 4000yen / 前売3500yen / EP付前売 4200yen(税込 / オールスタンディング)

出演者:
Anthem(ARENA)
dancinthruthenights (okadada × tofubeats) / Sugar’s Campaign / HyperJuice × Pa’s Lam System / DJ WILDPARTY B2B KAN TAKAHIKO / 国士無双 / PICNIC WOMEN × KEITA KAWAKAMI / USK / iserobin / ディスク百合おん / チャーリー / Naohiro Yako / VIDEOBOY / ホンマカズキ

Anthem(WATER)
fu_mou / D-YAMA / BUDDHAHOUSE / VIBES MAFIA / 化級生 × 5364 / chefoba / melo / kei。

MALTINE SEED BOX(BOX)
Lolica Tonica / Miii / PARKGOLF / Tomggg / yuigot / パソコン音楽クラブ / 三毛猫ホームレス + lulu / 長谷川白紙

GOODWEATHER×異レギュラー(ISLAND)
PART2STYLE / CRZKNY / OVe-NaXx / DEKISHI & 粗悪ビーツ / TECHNOMAN feat. HAZY / madmaid / TOTETS PTRN / VΔR$VS / Dayzero & Karnage

Link: Anthem特設サイト

インタビュー・文: 和田瑞生
1992年生まれ。青山学院大学総合文化政策学部卒。UNCANNY編集部所属(非常勤)。ネットレーベル中心のカルチャーの中で育ち、自身でも楽曲制作/DJ活動を行なっている。SWITCH特別編集号『Maltine Book』(2015)共同編集、「ポコラヂ」PA/エンジニアリングなど。

アシスタント: 神ひより
1998年生まれ、青森出身。青山学院大学総合文化政策学部在籍。音楽藝術研究部に所属。
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