ARTIST:

Actress

TITLE:
AZD
RELEASE DATE:
2017/4/14
LABEL:
Ninja Tune
FIND IT AT:
Amazon, Apple Music, Spotify
REVIEWSJune/01/2017

[Review]Actress – “AZD”

 我々は、かつてからコンピューターシステムに指令を与えたり、それらを巧みに操り生活を送るような、そんな近未来的な世界に強い憧れを抱いてきた。かつての多くの映画、主にSF映画では、現実に先立って、空想から生み出されたプログラムやデバイスが登場し、いかにそれらがクールで魅力的であるか、そして我々の生活の一部になりゆくかというような様子を描き上げてきた。一方で、現実には、誰もがそのような夢物語はまだ遠い未来の話だろうと考えていたのではないだろうか。

 ActressことDarren Cunninghamが今年4月に発表したアルバム『AZD』は、我々が無意識の内に到達していた、かつて未来であった“現在(実現した過去)”と、その影響下にあり続けてきた個人を表現している。そして、本作は、それにより完成した作品、すなわち、彼の言うAZDという“ロボット”それ自体と捉えることができる(1)

 本作の1曲目「Nimbus」は、多くの回線が複雑に絡み合った旧式の巨大コンピューター室にいるような感覚をもたらす。Actressは『thump』のインタビューにて、彼が初めて所有したコンピューターの名前こそが “Nimbus”であったと述べている(2)。また、同様に「Runner」は、精密な人型のロボット、レプリカントが登場する1982年公開の映画『ブレードランナー』に影響され制作に至ったものであるという。

 本作6曲目のトラック「X22RME」のMVで、彼は近未来的な、、、、、衣類に身を包んだ風貌で登場し、そこで対象化された大きなモニュメントが作り出す空間を見つめる。最後に響くナレーションは、我々を取り巻く無機質な物質との共生を語り、そしてそれらが一人一人とどのような関係性を持ち、それぞれにとっていかなる意味を成しているかを表現する。都市のような巨大な力を持った空間の中において、個々人が取る行為が全体的な意味を持たないものだとしても、パーソナルな価値付けは日々行われている。

 人が人生を通して毎秒毎に得る要素—継続して変化する外的対象とその間に生まれる外的作用、そしてそれによる個人の思考—は時間とともに深度を増し、そして多様化していく。では、何が我々に思考の機会を与え、それぞれが意味付けされていくのか。アルバムのアートワークに施された人間の皮膚と鉄の質感が交わる様子。実際にその瞬間に、我々は何を感じ、考え、そしてそこから何が生まれているのか。 

 このように本作でActressは、過去に生み出されてきた事物(自律したモノたち)における一つ一つのエレメントに焦点を当て、あくまでパーソナルな領域で関心を向けている。彼個人のフィルターを通した解釈や判断、そして影響の上に制作された作品であるという事実を、強烈なエネルギーを持って一枚のアルバムを通して具現化しているのである。

(1)『Fader』インタビューより http://www.thefader.com/2017/04/14/actress-darren-cunningham-azd-interview

(2) 『thump』インタビューより https://thump.vice.com/en_us/article/actress-new-album-sounds-nothing-like-an-actress-album

文・池田礼
1996年生まれ。青山学院大学総合文化政策学部在籍。電子音楽を中心に幅広い領域で音楽を楽しむ。