NEWSMarch/25/2017

Rina Sawayama、新曲「Cyber Stockholm Syndrome」をリリース

 Rina Sawayamaの新曲「Cyber Stockholm Syndrome」がリリースされた。プロデュースはClarence ClarityとHoost、アートワークはMatilda Finn、John Yuyiが手がけている。

 Rina Sawayamaはロンドンを拠点とするシンガー/プロデューサー。今年初の新曲となった「Cyber Stockholm Syndrome」は、彼女がデジタル世代の生と愛を捉えた作品であり、今年発売になる待望のデビュー・アルバムのリードシングルだ。

 彼女は『The Fader』に対し、本作についてこう明かしている。

“「Cyber Stockholm Syndrome」は、ハッピーだけど悲しくて、正直で、自伝的。私は初めから、本当に心の底から思ったことを書いているっていう実感があった。デジタル化した生活の美しさと不安、その両方に取り組みながら、この曲を書き直し改変して、完成するまで二年かかった。

以前はインターネットというものに対して、人の時間と意志を奪うものだと思っていたけれど、今は違う。私たち自身の保身、および反抗をするうえで、オンラインでの関係はもっとポジティブなつながりだと感じている。

今の時代、デジタルな世界は必要不可欠な支援のネットワークとなり、団結の声となり、保護となり、逃げ道になる。社会に取り残された人々や、私のように社会的不安を感じている人たちは実際に、デジタルの力を借りて自由になれる。これが「Cyber Stockholm Syndrome」のテーマである悲観と楽観、不安と自由ということなんです”

 「Cyber Stockholm Syndrome」——それは思春期にインターネットの爆発的普及を体験した、ジェネレーションYと呼ばれる世代のムードを切り取った豊かな深みのある作品だ。彼女の聡明さを感じさせる前作「Where U Are」や、Arvida Byströmがディレクションをおこなった2015年公開のビデオ「Tunnel Vision」と同様に、彼女がデジタル時代における不安のなか探索を重ねた、ひとつの到達点となった。

 私たちがインターネット上での“ベストな自分”を描こうとする際にぶつかるのは、例外なく模倣され同一化した好意と敵意の関係だ。その愛憎関係に関する問題は、すっかりパーソナルな領域となっている。「Cyber Stockholm Syndrome」はそれでもなお、完全なる陶酔感を含んでいる。「Came here on my own(私のところへきて)/Party on my phone(ここ(オンライン)に集まれ)」、コーラスは歌い、Clarence Clarityによるストイックなビートと、「Touch My Body」時代のマライア・キャリーを思わせるシルキーヴォイスがトラックを押し進める。

 Rinaの行う現代に生じるズレをあぶりだす作業、および2000年代初頭のR&Bを彷彿とさせるその感性は、彼女が受けたさまざまな影響——彼女が幼少期に祖国日本で過ごした時間、ケンブリッジで学んだ政治学、同時に、さまざまなバンドでの活動など——を示唆している。

 クリエイティブな女性アーティストたちとコラボレーションし、Arvidaと共に制作した「Where U Are」(その再生回数はいまや30万回を超えている)は、映像作家であるAli Kurrにも評価され、John YuyiやMatilda Finnともヴィジュアル面でコラボレーションを果たした。今後も活躍が期待される彼女から目が離せない。

Cover art by Matilda Finn and John Yuyi

Link: Rina Sawayama

text by Mao Shida (UNCANNY)