INTERVIEWSFebruary/22/2017
[Interview]Sherwood & Pinch – “Man Vs. Sofa”

 〈On-U Sound〉の主宰者であり、UKを代表する音楽プロデューサーのひとり、Adrian Sherwoodと、〈Tectonic〉を主宰するダブステップ・アーティストPinchことRob Ellisによるプロジェクト、Sherwood & Pinch。2015年のファーストアルバム『Late Night Endless』を経て、プロジェクト開始から5年が経過した現在、彼らは今月24日に最新アルバム『Man Vs. Sofa』のリリースを控えている。それぞれが自身のレーベル持つ独立した音楽家、経営者である彼らにとって、改めてこのプロジェクトはどのような意味を持っているのだろうか。「VICE PLUS」ローンチ・パーティ出演のため来日した彼らに、最新アルバムを中心に話を伺った。

__今作『Man Vs. Sofa』というアルバム・タイトルの意味を教えてください。

Pinch: 人間が楽なものに身を任せて、心地よい良いスペースに落ち着いてしまっている様子を描いたものだよ。

Sherwood: 人間が人生において屈することなく戦い続けていくっていうことの比喩なんだ。

Pinch: テレビをみたりしてダラダラする行為を“Sofa”に例えているんだよ。

Sherwood: ソファの上で過ごすことに満足しないで、人間に、「がんばれ、立ち上がれ」って鞭を打つようにね。

__アルバムのコンセプトについて教えてください。

Sherwood: コンセプトのようなものは特に考えなかった。強いて言うなら、俺たちが意識しているのは、自分たちが作品にどんなフレーバーを取り入れるかってことだ。今作の場合は、自分たちが満足するような、オープンマインドで挑戦的な作品を作りたかったっていうことかな。だから今回の制作はとてもまじめに取り組んだ。コンセプトというよりは、いかに満足できる作品を作るかっていう目的を持っていた。

Pinch: コンセプトっていうより、アプローチと呼ぶべきかもしれないね。

__社会、経済など環境の変化が作品に反映されることはありますか?

Sherwood: 例えば、俺が初めて日本に来た時はバブルの時代で、今はもちろんその状況は変わっているように、俺たちはいつも変化を目の当たりにしていて、見るものは常に変化している。だから、直接的ではないにしろ、反映されることはもちろんないとは言えないけれど、シリアの問題とか、クレイジーなリーダーについてとか、そういうのを意識して批判的に反映しているわけではない。パワフルなアティチュードを持った作品を作ることを意識していたからね。

__では、この作品はあなた方二人が抱く、世界に対する自然な感情から完成した、ある意味ではとてもピュアでクリアな作品ということでしょうか?

Sherwood: ロブ(Pinch)が毎週のようにDJをするように、俺たちは常に音楽の世界で生きているし、音楽を愛していて、俺にも個人のプロジェクトがある。そうしてそれぞれが見て、感じてきたものをこうしてSherwood & Pinchとして2人で1つになった時に、1つの音を通して落とし込んでいく。だから、パワフルなフィーリングがこもっているんだ。政治とか、社会で起きている変化とか、日々いろんなことを見て、その感情を共有して曲をつくっている。

Pinch: 特にこれといった表現を意図しているというよりかは、いろんな状況を通して自然に自分の中から出てくるフィーリング、そして心境であると思う。

Sherwood: ダイナミックでモダンなプロダクションでありながらも真にヘルシーなテンションで、メロディは最高に美しく、気持ち良さを誘う作品作り。それが、俺たちがしようとしたことだ。

__今作の発売にあたりプレスリリースでPinchさんが「制作プロセスが飛躍的に進化した」とおっしゃっていたと思うのですが、それは具体的にはどのように変化したのでしょうか。

Pinch: ライブを共同でやるようになったり、お互いの作品により接するようになって、一緒に過ごす時間も増えたんだ。それによってお互いのことをより深く理解し合えるようになってきたしプレイの仕方もわかってきた。それに加えて、Adrianが新しく広いスタジオを持ったことで、よりよいレコーディングを行えるようなったよ。新しくビンテージ機材が増えたりして、新鮮だったし、環境が整ったことによってよりリラックスして良い活動ができるようになったんだ。

__Sherwoodさんはこれまでに何度もLee Perry(Lee“Scrach”Perry)さんとは共同プロジェクトを行っていますが、今回の「Lies」はどのようにコラボレーションを行ったのでしょうか。

Sherwood: もともとこの曲のヴォーカルを入れたものを用意していて、それは今回アルバムに収録されているヴァージョンとは少し違ったんだ。Leeと2人で嘘について考え直したり、“God doesn’t love lies”ってさ 。最終的に、もともと歌詞のパートだったところにサックスの音を入れることで、とても美しい音が出来上がって、彼も俺もとても満足している。彼とはもう30年くらい付き合いがあって、大切な友人でもあるんだけど、このトラックは俺にとってベストであると言っても過言ではないと思う。

__このアルバムで、坂本龍一さんの「戦場のメリークリスマス」をカヴァーした理由を教えてください。

Sherwood: 昔からこの曲のメロディが大好きで、これまでに何度もカヴァーしようとしていたんだけど、どうもうまくいかなかった。多分5回くらいやり直したかな。だから前作の頃から制作はしていたんだ。それで、満足のいく1曲が出来上がったのがちょうど今回のアルバムを制作していた時だったから、収録することにした。

__アルバムジャケットについてお伺いします。このイラストは何をイメージしているものですか?

Pinch: 〈Tectonic〉のアートワークを手がけてくれているAlexという人が作ってくれたんだけど、彼とはもう3年くらいの付き合いだから、彼にこのアルバムがどんな作品なのかっていうのを伝えて、基本的には彼のことを信用しているから任せたよ。彼に伝えたのは、とりあえず、人間とソファが格闘している絵を描くことだけはやめてほしいってことくらいかな(笑)。

このイラストは、地下鉄の駅で電車を待っている群衆を描いたもので、これから仕事に行く人、そうでない人、色んな人がいて、それは見る人が自由に想像して、解釈してほしいと思っている。

__Sherwoodさんは冨田勲さんの追討公演に出演したり、今作では坂本龍一のカヴァーを制作したりなどしていますが、それぞれ日本の音楽シーンから影響を受けたり、また現在気になっているアーティストはいますか?

Sherwood: AUDIO ACTIVEとコラボレーションしたり、これまでにも日本のアーティストとは何度か仕事をしている。冨田勲や坂本龍一なんかは、クラシックのトレーニングを受けているアーティストだから、とても影響を受けてきたし、尊敬もしている。

Pinch: 僕はGOTH-TRADとかかな。

Sherwood: 最近のアーティストは知る機会がないっていうのもあるな……。そういえば、にせんねんもんだいが一昨年に出したアルバムはお気に入りだね。とてもサウンドが独特で、日本の音楽シーンで重宝すべき存在だと思う。

__共同プロジェクトを開始してから5年が経過していますが、何か変化はありましたか?

Pinch: このプロジェクトを進めていく上でお互いがより理解し合えるようになったことでサウンドにおけるスペースを深くシェアできるようになったことかな。各々がバラバラに何かをもたらすのではなくて、その1つのスペースのなかで2人が楽しめるもの、共有できるものを一緒に落とし込むことができるようになってきたんだ。

Sherwood: 俺たちはファーストアルバムで多くのゲストを迎え入れて、随分と彼らに頼っていたけれど、今回はより自分たちにフォーカスすることで完成させることができたアルバムだと思う。言うならば“Coming of age album”(大人のアルバム)で、他のアーティストではなく、自分たちを信じて、自分たち自身を頼ることができるようになったんだ。

だから、今後は一組のユニットとして、Sherwood & Pinchと他のアーティストが出会うというような、「Sherwood & Pinch meets (ゲストアーティスト)」っていう形にしていきたいと思っている。彼らの力を“借りる”のではなくて、本当のコラボレーションとして実現していければと思う。

__最後に、Sherwood & Pinchという名前により一組のアーティストとして活動しているあなたたちにとって、お互いがどのような存在なのか教えてください。

Sherwood: 今はお互い親友のような、家族みたいな存在になっている。一緒に音楽活動をしていくことがとても楽しいし、このプロジェクトに真剣に取り組みながらも、実は仕事っていう感じがしない。それほど楽しんでやっているってことだ。

Pinch: 仕事として何かを続けていく上で一緒に楽しめるかどうかっていうのはとても重要で、それが、ぼくにとってのAdrianなんだ。常に魅力を感じることができる、彼はそんな存在だよ。

(2017.2.7、渋谷にて)

 Sherwood & Pinchは、2017年2月8日に、渋谷・VISIONにて開催された「VICE PLUS LAUNCH PARTY」に出演。Biz Markieの次に登場した彼らは、本作同様、含蓄のある重厚なベースミュージックを会場に鳴り響かせた。以下は、ライブ出演時の彼らの写真となる。

Photo (VICE PLUS LAUNCH PARTY) by Mariko Kurose



Man Vs. Sofa:
01. Roll Call
02. Itchy Face
03. Midnight Mindset
04. Lies
05. Unlearn
06. Man Vs. Sofa
07 . Charger
08. Merry Christmas Mr Lawrence
09. Juggling Act
10. Retribution
11. Gun Law
12. Bullshit Detector *Bonus Track for Japan

インタビュー・文:池田礼
1996年生まれ。青山学院大学総合文化政策学部在籍。電子音楽を中心に幅広い領域で音楽を楽しむ。

通訳: 原口美穂

Photo by Marc Sethi

Photo (VICE PLUS LAUNCH PARTY) by Mariko Kurose