ARTICLESDecember/24/2016
On Beat! (16) by Chihiro Ito – Microdisney “Everybody Is Fantastic”
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夜に地図なしで歩く。
ミクロのディズニーと俺。

前回のThe Smithsの記事を書いた後、この連載を読んでくれている、UK在住の友人に、UKのバンドをいくつか教えてもらいました。

今回はその中で1番気になったバンド、”Microdisney”(非常に小さいディズニー)について書きます。

僕は彼らの音楽を一曲も聴いた事もありませんでした。
アートワークですら、初めて見ました。

今まで書いた音楽は、事前に知っていた作品ばかりです。

しかし、今回は全く知らず、インターネット上を日本語で検索しても、ほとんど情報がなく、こんな機会もあまりないので、逆に新鮮で、書こうと思ったのでした。

Microdisneyは1980年にアイルランドの南西の街、コークでCathal Coughlan(ヴォーカル)とSean O’ Hagan(ギター)の2人で、結成されました。バンド名が変わっていたので、ディズニーとの関係について、いろいろ調べましたが、ディズニーの一家がアイルランドからの移民であった事以外には、特に見つかりませんでした。

彼らの曲は、普段、英語をあまり使わない僕でも、解りやすい言葉を使っています。曲の中の言葉の意味が一つずつ、肯定されているように聴こえるのは、Cathalの持つ、詩の力であると思います。そして、彼らの曲に思慮深さが感じられるのは、どこか夕方の風景の様な淋しげで美しいメロディだけのせいではなく、その自然体な言葉使いの中にも理由があるように思います。

Cathalはパンクロックや70年代のビーチボーイズ、ニールヤングなどから、Seanはラジオなどから流れる、パンクやポップミュージック、オールディーズのロックから影響を受けたと、インタビューで語っています。

最初のシングル、”Hello Rascals”(こんにちは、ゴロツキ達)(’82)は、彼らのホームタウンのアイルランドのコークで録音され、〈Kabuki Records〉からリリースされました。2枚目のシングル、”Pink Skined Man”(ピンク色した肌の男)(’83)発表後、しばらくしてバンドはロンドンに移り、〈Rouge Trade〉と契約し、今回取り上げた、1枚目のオリジナル・アルバム『Everybody is Fantastic』(’84)を発表します。アルバムの数曲はThe SmithsのプロデューサーのJohn Porterと共同で録音されています。シングル曲の”Dolly”や、”Escalator in the Rain”など、彼らの代表曲も入っています。

ファースト・アルバム発表後、最初の82年と83年に発表されたシングル2枚を中心に編集したアルバム『Love Your Enemies』(’84)を発表します。『Love Your Enemies』はCDでのリイシュー盤のタイトルで、オリジナルのタイトルは『We Hate You South African Bastards!』(私たちは南アフリカのろくでなし達が嫌い!)でした。これは、当時の南アフリカでのアパルトヘイト政策を批判している様にも思えるタイトルですが、そうでもなく、曖昧な意味のみを伝えたかったのではないだろうかと、感じさせます。このアルバムは編集版ですが、ファースト・アルバムよりも暗く、重い音作りになっています。殆どの曲のリズム楽器がドラムではなく、機械による打ち込みの電子音で、デュオで活動していた面影を感じさせます。

また、この時期に彼らは、BBCのラジオDJ、John Peel(1939-2004)に評価され、彼の番組で、何度も録音を行いました。この時の彼らのライブの様子はBBCが公開しているアーカイブからも無料で聴くことができます(このサイトは要登録ですが、沢山の楽曲があります。The Alarmというバンドらと一緒にMicrodisneyの曲を数曲、聴く事がきるページにつながります)。

いつしかバンドは、Jon Fell(ベース)と、Tom Fenner(ドラム)が固定メンバーとして参加し、バンド形態になります。

その後、同じく〈Rough Trade〉からリリースされた1985年のアルバム『The Clock Comes Down the Stairs』(階段を降ちてくる時計)(’85)はNMEのインディ・ミュージックのチャートで1位を獲得します。

彼らは、メンバーを少しずつ変えながら、レコード会社を移籍し、ヴァージン・レコードから発表した『Crooked Mile』(’87)では、音質もだいぶ凝ったつくりに変わります。このアルバムに入っている”Town to Town”は彼らの最大のヒット曲になりました。そして、『39 minutes』(’88)を発表後、ヴァージン・レコードを離脱し、翌年彼らは解散します。

彼らはアルバムごとの変化があるバンドでした。解散した理由は、彼らなりにこのバンドで出来ることをやり尽くしたから、あるいは、The Smithsよりも変化するのが速すぎたからではないかと思いました。良くも悪くもですが。

ヴォーカルのCathalは解散後、Fatima Mansionsや、ソロで活動を行っています。
ギターのO’Haganはその後、The High Llamasを結成し、Stereolabにも参加します。

冒頭の文、そのままですが、僕はよく、夜に歩きながら、アルバムごと音楽を聴いています。この方が音楽に集中できる為です。

歩きながら聴くと、このバンドの音楽はしっくりきます。
まるで、その為に造られたように、歌詞と音楽が伝わってくるような気分になります。

僕はこの音楽を聴いた時に、まだ行ったことのない、アイルランドの広い空の下に、このバンドの歌に出てくるような、もの思いにふけったような青年たちがいるのかなぁと、ふと考えます。それは、僕がいままで世界中で見てきた、少し変わった思慮深い友人たちや、僕自身のような気がしています。

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Artist: Microdisney
Title: Everybody Is Fantastic
Release date: 1984
Label: Rough Trade Records / Rev-Ola Records/ Cherry Red Records

文・画:伊藤知宏
1980生まれ。阿佐ヶ谷育ちの新進現代美術家。東京、アメリカ(ヴァーモント・スタジオ・センターのアジアン・アニュアル・フェローシップの1位を受賞)、フランス、ポルトガル(欧州文化首都招待[2012]、O da Casa!招待[2013])、セルビア(NPO日本・ユーゴアートプロジェクト招待)、中国を中心にギャラリー、美術館、路地などでも作品展を行う。谷川俊太郎・賢作氏らともコラボレーションも行う。鎌倉駅前の民泊、タローズハウスで建築士(香月真大)と華道家(萩原亮大)とコラボレーション中。東京在住。”人と犬の目が一つになったときに作品が出来ると思う。”

HP: http://chihiroito.tumblr.com